2015年01月12日

Herbie Hancock『Feets Don't Fail Me Now』

ヴォコーダー・ヴォーカルとディスコ・サウンドを前面に打ち出した1枚☆Herbie Hancock『Feets Don't Fail Me Now』
フィーツ
発表年:1979年
ez的ジャンル:Hancock流ディスコ/ファンク
気分は... :トップランナーは賛否両論巻き起こす!

今回はスーパー・ピアニストHerbie Hancockが1979年にリリースした『Feets Don't Fail Me Now』です。

これまで紹介したHancock作品は以下の8枚(録音年順)。

 『Inventions And Dimensions』(1963年)
 『Empyrean Isles』(1964年)
 『Maiden Voyage』(1965年)
 『Speak Like A Child』(1968年)
 『The Prisoner』(1969年)
 『Fat Albert Rotunda』(1969年)
 『Thrust』(1974年)
 『Sunlight』(1978年)

本作『Feets Don't Fail Me Now』(1979年)は、『Sunlight』(1978年)でヴォコーダー・ヴォーカルを披露し、時代の潮流に合わせたアプローチを示したHancockがヴォコーダー・ヴォーカルと共にディスコ・サウンドを前面に打ち出したアルバムです。

昔も今も賛否が真っ二つに分かれるHancock作品かもしれませんね。大雑把にいえば、正統派ジャズ・リスナーからは否定され、ディスコ/ファンク好きからは支持が高いといった構図なのでは?

Hip-Hopを採り入れた『Future Shock』(1983年)のリリース時もそうでしたが、世間に賛否両論を巻き起こす問題作を提示しながら、ジャズを現在進行形にアップデートするのが、ジャズ界のトップランナーHerbie Hancockのやり方であり、その意味ではディスコにアプローチした本作も実にHancockらしいのでは?

プロデュースはHancock本人とDave Rubinson & Friends Inc.

レコーディングにはHerbie Hancock(key、vo)以下、James Gadson(ds)、Eddie Watkins(b)、Ray Obiedo(g)、Bill Summers(per)、The Waters(Julia Tillman Waters/Maxine Willard Waters/Oren Waters/Luther Waters )(back vo)、Ray Parker, Jr.(g、ds)、Coke Escovedo(timbales)、Sheila Escovedo(congas)、James Levi(ds)、Freddie Washington(b)、Wah Wah Watson(g)、Bennie Maupin(sax)等のミュージシャンが参加しています。

Robert Glasper Experimentのようなジャズの枠を飛び越えた"今ジャズ"が評価される時代だからこそ、その先駆けでジャズの枠に囚われない立ち位置のHancock作品が再評価されるべきだと思います。

全曲紹介しときやす。

「You Bet Your Love」
Herbie Hancock/David Rubinson/Allee Willis/Jeffrey Cohen作。『Sunlight』に収録されていた人気曲「I Thought It Was You」をディスコ調に発展させたようなオープニング。Hancockのヴォコーダー・ヴォーカルとThe Watersのバック・ヴォーカルの掛け合いが実にキャッチーです。華のあるディスコ・ファンクは本作のハイライトでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=EQObvsw84Y4

本曲はThe Groovelines「Got to Dance Disco」、The Phantom's Revenge「French Cheese Funk」、Motor City Drum Ensemble「Send a Prayer Pt.2」でサンプリングされています。

「Trust Me」
Herbie Hancock/David Rubinson/Allee Willis作。メロウ路線がお好きな方には本曲がオススメ。少し切ない哀愁のメロディをヴォコーダー・ヴォーカルで歌い上げるメロウ・フュージョンです。
https://www.youtube.com/watch?v=aljgI-JSqh0

本曲はサンプリング・ソースとしても人気であり。Casual「Later On」、Lord Bean「I Veri Criminali」、Jesse Boykins III「Trust」、Fritz Da Cat feat. Lordz of Vetra「Interludio (Lordz of Vetra)」、Koushik「In a Green Space」、J Doe feat. James Fauntleroy「Don't Need Those」でサンプリングされています。
Casual「Later On」
 https://www.youtube.com/watch?v=asfH2R8aojM
Lord Bean「I Veri Criminali」
 https://www.youtube.com/watch?v=iz4EdVkBwIo
Jesse Boykins III「Trust」
 https://www.youtube.com/watch?v=KTMcFytpPRU

「Ready or Not」
Ray Parker, Jr./Jeffrey Cohen作。80年代ディスコ・ファンク/ブラコンがお好きな人であれば、気に入るであろうダンス・チューン。Zapp「Dance Floor」あたりにも通じるファンク・グルーヴですね。Coke Escovedo、Sheila Escovedo(Sheila E.)によるラテン・フレイヴァーのスパイスも僕好み。Alex Gopher「Super Disco」でサンプリングされています。
https://www.youtube.com/watch?v=JVea516qq6M

「Tell Everybody」
Herbie Hancock/David Rubinson/Bruce Good/Jeffrey Cohen作。ブラジリアン・フレイヴァーも散りばめたファンキー・グルーヴ。Bill Summersの活躍が目立ちます。ここでもThe Watersのバック・ヴォーカルが華やかに盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=4MMlQxqeTGw

「Honey From the Jar」
Herbie Hancock/Jeffrey Cohen作。アルバムの中でいいアクセントになっています。少しレイジーなリラックス感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=5-IkxQ6Vyis

「Knee Deep」
Herbie Hancock/Melvin Ragin作。曲名からFunkadelicのP-Funk名曲を連想しますが同名異曲です。この曲だけ演奏メンバーが他曲と異なるせいか、アルバムの中では少し浮いているかも?それでも格好良いファンク・グルーヴにはグッときます。ブレイクもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=LGFSSho8aZg

Herbie Hancock作品の過去記事もご参照下さい。

『Inventions And Dimensions』(1963年)
Inventions & Dimensions

『Empyrean Isles』(1964年)
エンピリアン・アイルズ+2

『Maiden Voyage』(1965年)
処女航海

『Speak Like A Child』(1968年)
スピーク・ライク・ア・チャイルド

『The Prisoner』(1969年)
ザ・プリズナー

『Fat Albert Rotunda』(1969年)
ファット・アルバート・ロトゥンダ<紙ジャケット仕様>

『Thrust』(1974年)
Thrust

『Sunlight』(1978年)
Sunlight
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2015年01月11日

Jennifer Souza『Impossivel Breve』

ミナス新世代によるブラジリアン・ニュー・フォーク!☆Jennifer Souza『Impossivel Breve』
永遠でないもの
発表年:2013年
ez的ジャンル:ミナス新世代系ブラジリアン・ニュー・フォーク
気分は... :自分を大切に・・・

今回はミナス新世代によるブラジリアン・ニュー・フォーク作品Jennifer Souza『Impossivel Breve』(2013年)です。2013年の作品ですが、昨年11月に国内盤がリリースされ、注目が集まっている作品です。

Jennifer Souzaはミナス・ジェライス州出身の女性シンガー・ソングライター。

Pedro HamdanDaniel DebarryHenrique MatheusLeonardo MarquesThiago Correaと組むブラジリアン・ニュー・フォークの重要グループTransmissorのメンバーとして、これまで『Nacional』(2008年)、『Sociedade do Crivo Mutuo』(2011年)、『De La Nao Ando So』(2014年)といったアルバムをリリースしています

そんな彼女の初ソロ・アルバムが本作『Impossivel Breve』(2013年)です。

Transmissorの盟友Thiago Correaがプロデュースを手掛け、レコーディングにはJennifer Souza(vo、g、violao、accordion、org)、Frederico Heliodoro(b)、Felipe Continentino(ds)、Thiago Correa(org、el-p、per、back vo)、Joao Machala(tb、horn arr)、Alaecio Martins(tb)、Jonas Vitor(sax)、Juventino Dias(tp、flh)、Henrique Matheus(g)といったミュージシャンが参加し、ゲストとしてFabio Goes(vo、p)、Gabriel de Oliveira(p)、Tiago Macedo(prog)、Tiago Sa(vo)、Artenius Daniel(back vo)の名がクレジットされています。

特にFrederico Heliodoro(b)、Felipe Continentino(ds)の2人が演奏面で大きく貢献しています。この2人はミナス新世代を代表するマルチ奏者/コンポーザーAntonio Loureiroに近いミュージシャンです。また、サンパウロを拠点に活動するシンガー・ソングライターFabio Goesは、Jenniferが熱狂して聴いてきたミュージシャンのようです。

フォーキー・サウンドに程良くジャズ・フィーリングが効いているあたりが、ブラジリアン・ニュー・フォークらしさなのかもしれませんね。その意味ではブラジリアン・コンテンポラリー・ジャズや今ジャズに関心がある方が聴いても楽しめるのでは?

美しさと透明感と切なさとが同居する感じに僕はグッときてしまいました。

楽曲はすべてJenniferのオリジナルです(共作含む)。

全曲紹介しときやす。

「Sorte ou Azar」
Jennifer Souza作。邦題「幸運、または不運」。フォーキーな中にジャジーなエッセンスが織り込まれたサウンドと、透明感の中に切なさを併せ持つJenniferのヴォーカルがよくマッチしたオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=YLWFLyPYoiU

「Vouloir」
Jennifer Souza作。邦題「望み」。Jenniferの切なる歌声がグッとくる哀愁チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=h_uYEmPtJP4

「Pedro & Lis」
Jennifer Souza/Artenius Daniel/Ludmila Fonseca作。Fabio Goesがゲスト参加。二人のデュエットによる味わい深いフォーキー・チューンです。
https://www.youtube.com/watch?v=5Iw7kMHZZMI

「Esparadrapo」
Jennifer Souza/Flavia Mafra作。邦題「サージカルテープ」。Felipe Continentinoの叩くリズムが先導するビューティフル・フォーキー。ホーン・アンサンブルも含めた素敵なアレンジがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OgvJ3JgitVU

「Logo Tudo Acabado」
Jennifer Souza/Ludmila Fonseca作。邦題「すべてが終わる」。邦題のように、憂いを帯びたJenniferのヴォーカルによる哀愁モードの仕上がり。Tiago Macedoのエレクトロなスパイスが幻想的な雰囲気を創り出します。
https://www.youtube.com/watch?v=1zowQbaMJJY

「Le Flaneur」
Jennifer Souza作。邦題「あてどなく歩いて」。美しくも何処か切ないヴォーカル&メロディが感動的です。Jenniferのソングライターとしての才能を実感できます。
https://www.youtube.com/watch?v=LKCa8vW-1NA

「Para Kerouac」
Jennifer Souza/Artenius Daniel作。邦題「ケルアックのために」。力強いリズムと共に疾走しますが、Jenniferのヴォーカルはあくまで繊細なのがいいですね。Henrique Matheusのギターが利いています。
https://www.youtube.com/watch?v=LZOEvEgXeYs

「Possivel Breve」
Jennifer Souza作。邦題「来る瞬間」。美しいメロディのフォーキー・サウンドに本作らしいジャズ・フィーリングが見事に融合した素晴らしい仕上がり。この感性がミナス新世代らしさなのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=vtu9fCTfV3w

「Cuida de Si」
Jennifer Souza作。邦題「自分を大切に」。素敵なメロディを優しく歌い上げる美しく感動的なエンディング。
https://www.youtube.com/watch?v=Xi7sT4CW7ZY

国内盤にはシークレット・トラックとしてライブ音源の「Ensemble Margre La Distance(邦題:離れていても心は同じ)」が収録されています。

日本では入手しづらいようですが、Transmissorのアルバムも聴いてみたいですね。

いよいよ今日からNFLのディビジョナル・プレイオフですね。
まずは「レイブンズ対ペイトリオッツ」、「パンサーズ対シーホークス」の2試合。特に「レイブンズ対ペイトリオッツ」は好試合が期待できそうですね。
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2015年01月10日

Patato & Totico『Patato & Totico』

双頭ユニットによるパーカッシヴ・アフロ・キューバン☆Patato & Totico『Patato & Totico』
パタート&トティーコ
発表年:1968年
ez的ジャンル:トライバル・パーカッション系アフロ・キューバン
気分は... :トライバルに覚醒する・・・

今回はパーカッシヴなアフロ・キューバン作品、Patato & Totico『Patato & Totico』(1968年)です。

Patato & Toticoは、キューバ出身のコンガ奏者Carlos "Patato" Valdesと、同じくキューバ出身のシンガーEugenio "Totico" Arangoのユニット。

Carlos "Patato" Valdes(1926-2007年)は、数多くの有名ミュージシャンとのセッションに参加したアフロ・キューバンを代表するコンガ奏者。一方のCarlos "Patato" Valdes(1934-2011年)もシンガーおよびパーカッション奏者として活躍しました。

N.Y.でレコーディングされた本作はストリート感覚のアフロ・キューバン・サウンドを満喫できる1枚です。

レコーディング・メンバーはCarlos "Patato" Valdes(congas)、Eugenio "Totico" Arango(vo)、Israel "Cachao" Lopez(b)、Francisco Valdes(claves)、Arsenio Rodriguez(tres)、Hector Cadavieco(vo)、Mario Cadavieco(vo)、Tony Mayari(vo)、 Virgilio Marti(vo)です。アフロ・キューバンを代表するトレス・ギター奏者Arsenio Rodriguezの参加が目立ちますね。

Patatoのトライバルで覚醒的なコンガのリズムに、アフロ・キューバンならではの歌力を感じるToticoのヴォーカル、名手Arsenio Rodriguezのギターが絡むアフロ・キューバンな音世界は格別です。

これだけ覚醒的なアフロ・キューバンはなかなか無いのでは?
オープニングの「Mas Que Nada」を聴けば、その衝撃度がわかると思います。

格好良いアフロ・キューバンをお探しの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Mas Que Nada」
Jorge Ben作の名曲カヴァーでアルバムは幕を開けます。トライバルな覚醒感のあるパーカッシヴな「Mas Que Nada」は異色です。
https://www.youtube.com/watch?v=rRRhgSsxnl8

本曲に関して、当ブログではSergio Mendes & Brasil'66Tamba TrioLill LindforsSteen Rasmussen Feat. Josefine CronholmOscar PetersonIsabelle AubretSonido 5のヴァージョンを紹介済みです。ご興味のある方はそれらの記事もご参照下さい。

「Ya Yo E」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。呪術の儀式ような雰囲気が漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=Vw3kCcW7NK4

「Ingrato Corazon」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。Arsenio Rodriguezの哀愁モードのトレス・ギターに、トライバルなパーカッションとヴォーカル隊が絡みます。ヴォーカルは哀愁モードなのに、リズムはハイテンションなのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Hs5Ll0DhSeE

「Que Linda Va」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。アフロ・キューバンらしいヴォーカルの掛け合いと共に疾走します。Arsenio Rodriguezのギターのメロウな味わいがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=LiZ0JvPXuIs

「Nuestro Barrio」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。Arsenio Rodriguezのトレス・ギターを堪能できます。ヴォーカル、コンガ、トレス・ギターが生み出す豊かな音世界に感動です。
https://www.youtube.com/watch?v=adjf9qSnJQI

「Aqua Que La Caer」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。アフロ・キューバンらしい疾走感を楽しむのであれば、本曲あたりもいいのでは?哀愁ギターと疾走するコンガの絡みがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=9ydW-QOUqtI

「En El Callejon」
Eugenio Arango作。Toticoのヴォーカルを存分に楽しめる1曲。ラテンならではの哀愁メロディを情感たっぷりに歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=2dfDake_EpE

「Caridad Malda」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。ヴォーカル、コンガ、トレス・ギターの三位一体感が素晴らしい1曲。覚醒的なリズムがテンションを上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=CR8139Fwe6U

「Rezo Abacua」
Carlos Valdes/Eugenio Arango作。Toticoのヴォーカルと呼応するコーラス隊との掛け合いが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Et5y7KKSJU0

「Dilo Como Yo」
Eugenio Arango作。ラストはストリート感覚に溢れたアフロ・キューバン・グルーヴで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=KI0MLxHEwMA

ご興味がある方はCarlos "Patato" ValdesEugenio "Totico" Arangoの他作品もチェックを!

Carlos "Patato" Valdes『Authority』(1976年)
オーソリティ (紙ジャケット仕様)(BOM24156)

Carlos "Patato" Valdes『Ready For Freddy』(1976年)
レディー・フォー・フレディ(紙ジャケット仕様)(BOM24159)

Carlos "Patato" Valdes『Masterpiece』(1993年)
Patato Masterpiece

Carlos "Patato" Valdes『Unico Y Diferente』(1997年)
Unico Y Diferente

Kako, Totico y El Trabuco『La Maquina Y El Motor』
Maquina Y El Motor
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2015年01月09日

Evie Sands『Estate Of Mind』

女性SSWによるブルーアイド・ソウル作品☆Evie Sands『Estate Of Mind』
エステイト・オブ・マインド + 4(生産限定紙ジャケット仕様)
発表年:1975年
ez的ジャンル:女性SSW系ブルーアイド・ソウル
気分は... :You Can Do It !

今回は女性SSWによるブルーアイド・ソウル作品Evie Sands『Estate Of Mind』(1975年)です。

Evie Sandsは1946年N.Y.ブルックリン生まれの女性シンガー/ソングライター。

シンガーとして、1963年にシングル「The Roll」でデビュー。その後もコンスタントにシングルをリリースしますが、大きなヒットには恵まれませんでした。

しかしながら、彼女がシングルで歌った「Take Me For A Little While」(1965年、Trade Martin作。Vanilla Fudge、Patti LaBelle & The Bluebellesもカヴァー)、「I Can't Let Go」(1965年、Chip Taylor/Al Gorgoni作、The Holliesヴァージョンがヒット)、「Angel Of The Morning」(1967年、Chip Taylor作。Merrilee Rush & The Turnabouts、Melba Montgomery、Juice Newton等もカヴァー)等の楽曲は今日でも名曲として評価されています。

70年代に入ると、『Any Way That You Want Me』(1970年)、『Estate of Mind』(1975年)、『Suspended Animation』(1979年)といったアルバムをリリースしています。同時に、ソングライターとしての評価を高めていきました。

2ndアルバムとなる本作『Estate of Mind』(1975年)は、ブルーアイド・ソウル色を強めたアルバムです。同時に、「Love In The Afternoon」「Take It Or Leave It」「One Thing On My Mind」「I Love Makin' Love To You」といった多くのアーティストがカヴァーしているEvieの人気曲のオリジナルが収録されています。これらの人気曲をEvieはBen WeismanRichard Germinaroとの共作で書き上げています。

プロデュースはDennis Lambert & Brian Potterというヒット・メイカー・コンビ。Dennis Lambert & Brian Potter作品も3曲収録されています。

レコーディングにはEvie Sands(vo、g、key)以下、Michael Omartian(key、syn)、David Hungate(b)、Ed Greene(ds)、
Dean Parks(g、sitar)、Gary Coleman(per)、
Victor Feldman(per)、Ernie Watts(horns)、Ginger Blake(back vo)、Julia Tillman Waters(back vo)、Oren Waters(back vo)等のミュージシャンが参加しています。

フリーソウル・クラシックとしてもお馴染みの「I Love Makin' Love To You」をはじめ、素敵な曲が揃っています。

女性SSW好き、ブルーアイド・ソウル好き、AOR好きの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「A Woman's Work Is Never Done」
邦題「女は生きる」。Dennis Lambert/Brian Potter作。ロッキン・テイストのAORチューンです。好き/嫌いがはっきり分かれるタイプの曲かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=_RVI_B30h1M

「Love In The Afternoon」
邦題「昼さがりの情事」。Ben Weisman/Evie Sands/Richard Germinaro作。Barbra Streisandヴァージョンでもお馴染みの曲ですね。当ブログではDionne Warwickのカヴァーも紹介済みです。SSWらしい素敵なラブソングをDean ParksのシタールやErnie Wattsのサックスが盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Ksli2GDYK_Y

「You Brought The Woman Out Of Me」
邦題「夢見る貴方」。Dennis Lambert/Brian Potter作。本作らしいブルーアイド・ソウル・フィーリングを楽しめる1曲。Freda Payne、Hot等がカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=-5b-zZbJ8O4

「Take It Or Leave It」
邦題「恋するバラード」。Ben Weisman/Evie Sands/Richard Germinaro作。素敵なホーン・アンサンブルと共に始まるラブ・バラード。切ない恋心を歌い上げるEvieのヴォーカルにグッときます。The Manhattans、Brenda & The Tabulations、本田 美奈子等がカヴァーしています。

「Call Me Home Again」
Evie Sands作。本作唯一のEvieの単独作品。正統派バラードを透明感のあるヴォーカルで丁寧に歌います。

「One Thing On My Mind」
邦題「もうひとつのお願い」。Evie Sands/Richard Germinaro作。AORダンサー的な仕上がりの本曲も人気があるのでは?Phyllis HymanDionne Warwick、The Persuasions、石川セリ等がカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=sAT4gqx8AxU

「Yesterday Can't Hurt Me」
邦題「昨日にさよなら」。Dennis Lambert/Brian Potter作。Don Brown等がカヴァーしています。切ない雰囲気のEvieのヴォーカルからは甘酸っぱい恋の味がします。さすがはDennis Lambert & Brian Potter。
https://www.youtube.com/watch?v=DshRwf1OBZw

「I Love Makin' Love To You」
邦題「夢のささやき」。Ben Weisman/Evie Sands/Richard Germinaro作。『Free Soul Travel』にも収録されていたフリーソウル・クラシック。僕がEvie Sandsを知るきっかけになった楽曲です。本作らしいメロウ・フィーリングのブルーアイド・ソウルを満喫できます。当ブログでも紹介したMadelaineをはじめ、Allman & Woman(Gregg Allman/Cher)、Arthur Prysock等がカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=zdmpnoOpgqY

「Early Morning Sunshine」
邦題「想い出のささやき」。Ben Weisman/Evie Sands/Richard Germinaro作。子供向けTV番組『Captain Kangaroo』の挿入歌として使われた曲のようです。子供に語りかけるような優しさに満ちたカントリー・タッチの仕上がり。

「(Am I) Crazy Cause I Believe」
邦題「心のときめき」。Evie Sands/Richard Germinaro作。ラストは落ち着いた雰囲気の大人のメロウ・チューンで締め括ってくれます。

CDには1976年にレコーディングした以下の4曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

「Music Man」
OrleansのJohanna Hall/John Hall作。美メロのメロウ・バラードはなかなか感動的です。本曲を聴けば、ボーナス・トラックで得した気分になるのでは?

「Signed, Sealed, Delivered」
Stevie Wonder/Lee Garrett/Syreeta Wright/Lula Mae Hardaway作。Stevie Wonder、1970年のヒット曲をカヴァー。オリジナルは『Signed, Sealed & Delivered』(1970年)に収録されています。溌剌とした歌声でStevieのヒット曲を歌い上げます。

「You Can Do It」
Ben Weisman/Evie Sands/Richard Germinaro作。アルバム本編にも通じる都会的ブルーアイド・ソウルのフィーリングを堪能できます。

「The Way You Do The Things You Do」
Smokey Robinson/Robert Rogers作。The Temptations、1964年のヒット・シングルをカヴァー。ソウル・フィーリングとポップ・フィーリングのバランスが絶妙です。

ご興味がある方はEvie Sandsの他作品もチェックを!

『Any Way That You Want Me』(1970年)
Any Way That You Want Me

『Suspended Animation』(1979年)
Suspended Animation
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2015年01月08日

David Banner & 9th Wonder『Death Of A Pop Star』

Erykah Badu、Anthony Hamilton等が参加。異色のHup-Hopタッグ☆David Banner & 9th Wonder『Death Of A Pop Star』
Death of a Pop Star
発表年:2010年
ez的ジャンル:ソウルフルHip-Hop
気分は... :ポップ・スターは死んだのか?

ミシシッピ出身のMC/プロデューサーDavid Bannerと天才トラックメイカー9th Wonderのコラボ作品『Death Of A Pop Star』(2010年)です。

David BannerCrooked Lettazを経て、2000年に1stソロ・アルバム『Them Firewater Boyz, Vol. 1』をリリースし、その後もコンスタントに作品をリリースすると同時に、プロデューサーとしても数多くの作品を手掛けています。

ノースカロライナ出身の9th Wonderは説明不要の天才プロデューサー/トラックメイカー
ですね。

正直、David Bannerは僕にとって馴染みの薄いアーティストですが、9th Wonderの名前と、サイバー感のあるジャケ、Erykah BaduAnthony HamiltonMarsha AmbrosiusLudacrisといったゲストの名に惹かれて本作を購入しました。

9th Wonderも数多くのソロ・アルバムやコラボ・アルバムをリリースしていますが、意外にアルバム単位で手を出しづらいアーティストのような気もします。その意味では本作あたりはお手軽な1枚なのでは?

聴く前はジャケのようなハイパーなHip-Hop作品をイメージしてしまいますが、全体的には60〜70年代ソウルへのリスペクトを感じるソウルフルなHip-Hop作品という印象です。いくつかハイパーなエッセンスを感じるトラックもありますが・・・

プロデュースは9th WonderDavid BannerWarryn Campbelの3名が主に務め、それ以外にTHX、Eric "E. Jones" Jonesも手掛けています。

アルバムには前述のErykah BaduAnthony HamiltonMarsha AmbrosiusLudacris以外にHeather VictoriaLisa IveyBig Remoがゲスト参加しています。

9th Wonderの才能とDavid Bannerの個性が上手く噛み合った素晴らしいHip-Hop作品だと思います。ボーナス・トラックも含めて、尻上がりにキャッチーなトラックが目立っていきます。

9th Wonderが気になる方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Diamonds On My Pinky」
コーラス隊も入った厳かな雰囲気にサイバーなエッセンスが加わったトラックをバックに、David Bannerが力強いフロウを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=--lMR_OwbO0

「No Denying (Channel 3) 」
Barbara Jean English「Just Like a Lady」ネタのMelodye Perryによるソウルフル・ヴォーカルとDavid Bannerのワイルドなフロウがよくマッチしています。サウスHip-Hopらしい味わいを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=W2BRklJqoks

「Mas 4」
The Supremes「Stoned Love」ネタのトラックをバックに、David Bannerが捲し立てます。
https://www.youtube.com/watch?v=W2XsrRWJWBw

「The Light」
Love「Doggone」ネタのパワフルなブレイクを使ったハイパー・チューン。ジャケのような近未来感が表れています。

「Slow Down」
Heather Victoriaの女性ヴォーカルをフィーチャーしたシングル曲。The Whispers「On Impact」をサンプリングしたトラックにHeather VictoriaのヴォーカルとBannerのラップが絡む、シングル曲らしいキャッチーな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=HKLOeDJcQv4

「Be With You」
Ludacris、Marsha Ambrosiusをフィーチャーした本曲がアルバムのハイライトかもしれませんね。シングルにもなりました。Tyrone Davis「Be With Me」ネタのフレーズをMarsha Ambrosiusを歌い上げ、華やかに盛り上げてくれます。LudacrisとBannerの個性のぶつかり合いも楽しいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=7F17gUybI04

「Stutter」
Anthony Hamiltonをフィーチャー。サイケ・ソウル調のレトロ感のあるトラックが印象的です。Joi Starrの女性バック・ヴォーカルも貢献しています。なかなか完成度の高い1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=EbQMnqIIKFY

「Silly」
Erykah Baduをフィーチャー。ここではBannerに加え、9th Wonderもラップしています。白日夢のようなトラックの中をErykah姐さんの声が浮遊します。
https://www.youtube.com/watch?v=EcttwWH0rZg

「Something Is Wrong」
Lisa Iveyをフィーチャー。ソウルフルな味わいという点では本トラックも魅力的です。Lisa Iveyのヴォーカルの素晴らしさも忘れてはいけません。

「Strange」
Big Remoをフィーチャー。The Sylvers「Cry of a Dreamer」ネタを巧みに使ったソウルフル・チューン。ずっしりとした重みがありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=LoIXcXNoVI4

僕の保有CDには以下の3曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

「Love Me Down」
Billy Paul「I Want Cha' Baby」ネタのセクシー・ソウルフル・トラックがいい感じです。本編に負けない素晴らしい出来栄えだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=DE-PDGIM0PM

「Hip-Hop」
Marsをフィーチャー。ソウルフル・トラックという点では本トラックも魅力的です。
https://www.youtube.com/watch?v=fisRLk-9X5s

「Mas (Remix)」
「Mas」のリミックス。オルガンを使ったハイパー・レゲエ調の仕上がり。

NFLはディビジョナル・プレイオフの対戦カードも決まりました。ある意味、4試合の好カードを連日楽しめるディビジョナル・プレイオフの週末が、最もNFLを楽しめる2日間かもしれませんね。

特に「レイブンズ対ペイトリオッツ」、「カウボーイズ対パッカーズ」の2試合は好試合になりそうですね。個人的には、AFCはペイトリオッツ、ブロンコス、NFCはパッカーズ、シーホークスと上位チームが順当に勝ち上がる気がします。個人的にはカウボーイズを応援したいですが、敵地でのパッカーズ戦は厳しいかなと・・・

今から楽しみです。
posted by ez at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする