発表年:2003年
ez的ジャンル:Soulquarians系ジャズ+R&B/Hip-Hop
気分は... :2015年、最初の1枚は・・・
今日から通常のエントリーに戻ります。
毎年、年明け最初に紹介する1枚を何にするか、結構悩んでセレクトしています。
今年も結構悩みました。実家で過ごしたこともあり、元旦、2日は殆ど音楽を聴かずに過ごしました。そんな中で唯一聴いたのが年末に当ブログでも紹介したD'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』でした。
そんな流れで2015年最初の1枚は、『Black Messiah』にも参加していた人気ジャズ・トランペット奏者Roy HargroveによるプロジェクトThe RH Factorの第1弾アルバム『Hard Groove』(2003年)にしてみました。
Roy Hargroveは1969年テキサス州生まれのジャズ・トランペット奏者。
初リーダー作『Diamond in the Rough』(1990年)を皮切りに、今日までコンスタントにリーダー作を発表し続けている人気サックス奏者であり、サイドメンとしても多くの大物ジャズ・ミュージシャンの作品に参加しています。
ジャズ・ミュージシャンとしては、アフロ・キューバン・バンドを率いたRoy Hargrove's Crisol名義の『Habana』(1998年)Herbie Hancock、Michael Breckerと共演した『Directions in Musi』(2002年)で2度のグラミーを受賞しています。
また、1990年代後半から2000年代初めにかけて、R&B/Hip-Hopシーンで大きな影響力を持ったミュージシャン・コレクティブThe Soulquariansのメンバーとして、D'Angelo、故Jay Dee(J Dilla)、Erykah Badu、Q-Tip、Common、、?uestlove(The Roots)等と共に名を連ね、R&B/Hip-Hop作品でも活躍しています。
例えば、D'Angelo『Voodoo』(2000年)、Common『Like Water For Chocolate』(2000年)、Erykah Badu『Mama's Gun』(2000年)というSoulquariansを代表する3枚にHargroveは参加しています。
当ブログで紹介した作品でいえば、上記の3枚に加え、Erykah Badu『Worldwide Underground』(2003年)、Buckshot LeFonque『Buckshot LeFonque』(1994年)にもHargroveが参加しています。
そんなHargroveがジャズとR&B/Hip-Hopの接点拡大を図ったプロジェクトがThe RH Factorです。The RH Factor名義で『Hard Groove』(2004年)、『Distractions』(2006年)という2枚のアルバムをリリースしています。
特に第1弾となる本作には、D'Angelo、Erykah Badu、Q-Tip、Common、Pino Palladino(b)、James Poyser(key)というSoulquariansメンバーが大挙して参加しており、Soulquarians系ジャズ作品として一聴の価値があると思います。
上記メンバー以外にもAnthony Hamilton(vo)、Renee Neufville(元Zhane)(vo)、Shelby Johnson(vo)、Stephanie McKay(vo)といったR&B系ミュージシャンも参加しています。
また、ジャズ・サイドからもMeshell Ndegeocello(b)、Bernard Wright(key)、Cornell Dupree(g)、Steve Coleman(as)、Keith Anderson(ts)、Jacques Schwarz-Bart(ss、fl、g)、Jason Thomas(ds)、Willie Jones III(ds)、Reggie Washington(b)、Chalmers 'Spanky' Alford(g)等が参加しています。
Soulquarians絡みでいえば、Anthony Hamilton、Shelby Johnson、Jacques Schwarz-Bart、故Chalmers 'Spanky' Alfordの4名は、D'Angeloのツアー・バンドとして結成されたスーパーグループThe Soultronicsの一員でした。Hargrove、?uestlove(The Roots)、Pino Palladino、James PoyserもThe Soultronicsのメンバーでしたね。
ジャズ・ミュージシャンとR&B/Hip-Hopアーティストの交流という点では、Guru『Jazzmatazz』(1993年)、Greg Osby「3-D Lifestyles」(1993年)、そしてHargroveも参加したBuckshot LeFonque『Buckshot LeFonque』(1994年)あたりが先駆けだったと思います。
Hargroveは『Buckshot LeFonque』への参加経験から、Soulquariansメンバーを巻き込んでジャズとR&B/Hip-Hopの融合を図る着想を持ったのかもしれませんね。
ただし、ジャズとR&B/Hip-Hopのサウンド的な融合を前面に押し出すというよりも、1枚のアルバムの中にジャズ、ジャズ・ファンク、R&B/Hip-Hopの楽曲を同居させることに重きを置いたアルバムという印象を受けます。
その意味では、ジャズとR&B/Hip-Hopのサウンド的融合を見事に示したRobert Glasper Experimentによる『Black Radio』(2012年)、『Black Radio 2』(2013年)のようなインパクトはありません。
しかしながら、ジャズ作品にSoulquarians勢をはじめとするR&B/Hip-Hopアーティストを巻き込んだという点で、再評価されて然るべきアルバムではないかと思います。
こういう作品を年明け1発目に紹介するということは、今年もJazz The New Chapterに影響される1年になるのかなぁ(笑)
まぁ、今ジャズの話題作もできる限りチェックしたいと思いますが、あくまで年代、ジャンルに囚われないのが当ブログのスタンスですから、今年もバラエティを重視して作品をセレクトしていきたいと思います。
全曲紹介しときやす。
「Hardgroove」
Bernard Wright作。タイトルのつけ方がお見事ですね(笑)。少しミステリアスな雰囲気のジャズ・ファンクでアルバムは幕を開けます。
https://www.youtube.com/watch?v=5c5nShH2W80
「Common Free Style」
Commonをフィーチャー。
Roy Hargrove/James Poyser/Common作。抜けのいいジャズ・ファンク・サウンドをバックに、Commonがフリースタイルのラップで盛り上げてくれます。Hargroveの快調なトランペットもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=u3a1DTFVKoQ
「I'll Stay」
D'Angeloをフィーチャーした本曲は、Funkadelicのカヴァー(George Clinton/Eddie Hazel)。Funkadelicのオリジナルは『Standing On The Verge Of Getting It On』(1975年)に収録されています。本曲はジャズという雰囲気ではありませんが、D'AngeloのP-Funkカヴァーという試みは、『Black Messiah』を聴いた後に聴くと実にしっくりきます。このダークな雰囲気とジャズ・フィーリングの取り込みは『Black Messiah』を楽しむ意味でも、興味深いカヴァーなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=nyLu4LmWYf8
「Interlude」
ジャズ・ファンクなインタールード。
「Pastor "T"」
Keith Anderson作。軽快なジャズ・ファンク。Hargroveのトランペット、作者Keith Andersonのサックス、Bernard Wrightのシンセと快調なソロが続きます。
https://www.youtube.com/watch?v=0sYy7lLGqlQ
「Poetry」
Q-TipとErykah Baduをフィーチャーした話題曲。また、Meshell Ndegeocelloがベースを弾いています。柔らかいジャズ・サウンドをバックにQちゃんのラップとErykah姐さんのヴォーカルを楽しめます。特に新進ジャズ・ミュージシャンでバックを固めた全編生音プロダクションのQ-Tip『Kamaal The Abstract』との共通点を見出しながら聴くと興味深いですね。Q-Tip/Erykah Badu/Roy Hargrove作。
https://www.youtube.com/watch?v=IMTvT2a_BwU
「The Joint」
Roy Hargrove作。間の取り方が絶妙ですね。この演奏を聴いてRickie Lee Jones「Chuck E.'s In Love」を思い浮かべるのは僕だけでしょうか(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=lSFzly0A1x0
「Forget Regret」
Jacques Schwarz-Bart作。Stephanie McKayの女性ヴォーカルをフィーチャーした哀愁ジャジー・ソウル。ジャズ・ミュージシャンならではのジャジー・ソウルって感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=HMJGUMPiW1M
「Out Of Town」
Roy Hargrove作。Steve Coleman参加曲。Steve Coleman参加らしい鋭いジャズ・グルーヴを堪能できます。エレクトリック・マイルス的な刺激があります。
https://www.youtube.com/watch?v=lXOFs1lHwSo
「Liquid Streets」
Roy Hargrove作。アルバムの中でも最も美しい演奏を堪能できるバラード。Cornell Dupreeがギターで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=wcNdMxlJhOE
「Kwah/Home」
Roy Hargrove作。Anthony Hamiltonをフィーチャー。Anthony Hamiltonの名を一躍有名にした2ndアルバム『Comin' from Where I'm From』(2003年)のリリース後ということで、グッド・タイミングでの彼の起用ですね。Hamiltonの味わい深いソウル・ヴォーカルとHargrove、Jacques Schwarz-Bartのホーン・アンサンブルがよく馴染んだジャズとR&B/Hip-Hopの融合を実感できる1曲です。ベースはMeshell Ndegeocello。ドラムはWillie Jones III、Gene Lakeですが、Soulquarians的なものを求めている僕は?uestloveが叩いているのではないかと妄想してしまいます(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=W7KgjjE_Nd8
「How I Know」
Shelby Johnson/Chalmers 'Spanky' Alford/Pino Palladino/Roy Hargrove作。前述のThe Soultronics以外にPrince殿下のThe New Power Generationのメンバーとしても活躍したShelby Johnsonがリード・ヴォーカルをとるソウルフルな仕上がり。ハモンド・オルガンの音色とHargroveのフリューゲル・ホーンがShelbyのヴォーカルを盛り上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=fwShaap4B0o
「Juicy」
Renee Neufville(元Zhane)をフィーチャー。ネオソウル/Hip-Hopを通過してきたジャズ・ファンク/コンテンポラリー・ジャズといった趣です。Reneeのヴォーカルがサウンドと一体化しているのがいいですね。Steve Mandel/Roy Hargrove作。
https://www.youtube.com/watch?v=KJyWi8AQSXQ
「The Stroke」
Roy Hargrove作。ラストはミディアム・テンポのコンテンポラリー・ジャズ然とした演奏で締め括ってくれます
https://www.youtube.com/watch?v=PYBfQ7cZBiA
CDにはボーナス・トラックとして「Interlude 2」、「Poetry (Edit) 」が追加収録されています。
2ndアルバム『Distractions』(2006年)にもD'Angeloが参加しています。
『Distractions』(2006年)