発表年:2002年
ez的ジャンル:UKブラック系アトランタ・インディ・ソウル
気分は... :参加メンバーが興味深い!
今回はUK出身、アトランタを拠点に活躍する女性R&BシンガーJulie Dexterの1stアルバム『Dexterity』(2002年)です。
Julie Dexterはジャマイカ系の両親を持つイギリス、バーミンガム出身の女性シンガー。
90年代前半のアシッド・ジャズ全盛期にUKクラブ・シーンで活動を開始します。ソウル、ジャズ、レゲエといったジャンル横断型のスタイルで様々なセッションに参加しています。
1999年には拠点をUSアトランタへ移し、2000年にはEP『Peace Of Mind』をリリースしています。ソロ・アルバムとしては『Dexterity』(2002年)、『Conscious』(2004年)、『New Again』(2011年)といった作品をリリースしています。
また、アトランタを拠点に勢力的に活動するベーシスト/プロデューサーKhari Simmonsと共演したメロウ・ボッサ作品Julie Dexter & Khari Simmons『Moon Bossa』(2006年)は当ブログでも紹介済みです。
当ブログで紹介した作品でいえば、Anthony David『3 Chords & the Truth』(2004年)、Angela Johnson『A Woman's Touch Vol.1』(2008年)といったアルバムにもゲスト参加しています。
クロスオーヴァー感覚のオーガニック/ジャジーな女性R&B/ソウル・シンガーというイメージの強いアーティストですね。その中でも1stアルバムとなる『Dexterity』(2002年)はジャマイカンのDNAを持つ彼女のレゲエ色が強く打ち出された1枚です。
実は今年に入ってから頻繁に聴いているアルバムが本作とMe'Shell Ndegeocello『Comfort Woman』(2003年)の2枚です。共にレゲエ色が強いR&B/ソウル作品ですね。
Me'Shell Ndegeocello『Comfort Woman』は、元Robert Glasper ExperimentのChris Dave(ds)が全面参加していたことで『Jazz The New Chapter』でもセレクトされ、再び注目されている盤です。
それに対して、本作『Dexterity』はリリースから10年以上を経た今日では注目されることが少ないアルバムかもしれません。それでも参加メンバーを追っていくと、派手さはありませんが興味深いミュージシャンが多数参加しています。
当ブログで紹介したアーティストでいえば、前述のアトランタを拠点に勢力的に活動するベーシスト/プロデューサーKhari Simmons、そのKhari Simmonsのクロスオーヴァーなソウル/ジャズ・ユニットJivaの女性ヴォーカリストRhonda Thomas、80年代に活動していたソウル/ファンク・グループDream Machineの元メンバーJames McKinney(key)が参加しています。
それ以外にも?uestlove、James Poyser、Kamal Grayらとのプロダクション・ユニットThe Grand WizzardsのメンバーとしてThe Roots作品を手掛けたAnthony Tidd(b)、ボルチモアを拠点に活動するNu JazzユニットFertile Ground、Robert Glaspertらが参加したアルバム『The Heartbeat』(2014年)が話題となったドラマーLil John Roberts、ロンドンを拠点に活動する才能豊かなコンポーザー/アレンジャー/プロデューサー/サックス奏者のJason Yarde(el-p、sax)や、Jason Yardeもメンバーであるホーン・セクション・ユニットJason & The Angrynotes、等のミュージシャンが参加しています。
レゲエ色が強く打ち出されていますが、同時にR&B/ソウル、ジャズのフィーリングも巧みに織り交ぜたクロスオーヴァー感覚は、今の僕の嗜好によくフィットします。
本作はJulieが立ち上げた自身のレーベルKetch A Vibeからのリリースです。プロデュース。アレンジ、ソングライティング(共作含む)はJulie自身が手掛けています。
今聴いても、結構面白い1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Intro」
軽やかなアルバムのイントロ。
「Ketch A Vibe」
前述の自身のレーベル名を冠した本曲は、ジャジーフィーリングの人力ドラムン・ベースです。JTNCに感化された今ジャズ・ファンの方は興味深く聴けるはずです。ドラムはWylee Kyat。
https://www.youtube.com/watch?v=-qHiRSqpoUo
「Love」
ボルチモアを拠点に活動するNu JazzユニットFertile Groundをフィーチャー。本作を象徴するジャズ・フィーリングを採り入れたレゲエ・サウンドを堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=rwjk0SjG3UM
「Faith」
オルガンの音色が印象的なオーガニック・ソウル。リラックした雰囲気のブルージー・サウンドがいいですね。Rhonda Thomasがバック・コーラスで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=oOGx2utUsTs
「How Can You Feel」
Lil John Robertsがドラムを叩き、Jason & The Angrynotesがホーン隊を務めるレゲエ・チューン。本作らしいグルーヴを堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=A__2aeQwJg8
「God Bless The Dub」
タイトルの通り、ダビー・チューンです。ダビーなのに透明感があるのはJulieの澄み切ったヴォーカルのおかげでしょうね。
「What Do I Do」
レゲエを採り入れながらも、軽やかなメロウ・フィーリングを重視した本作ならではの雰囲気の仕上がりです。Eric Appapoulayeのギター&ベースが効いています。
https://www.youtube.com/watch?v=tviirPFsLrU
「That's Livin'」
Khari Simmons参加曲。後のJulie Dexter & Khari Simmons『Moon Bossa』を予感させるジャジー・メロウです。
https://www.youtube.com/watch?v=POupz8-P6nM
「Walk With Me」
Eric Appapoulayeのアーシーな味わいのギターとレゲエ・リズムの組み合わせが面白い1曲。
「I Dream」
メロウ・ボッサ調の本曲は、『Moon Bossa』を彷彿させます。Julian Siegelのバス・クラリネットがいい味わいです。
https://www.youtube.com/watch?v=gH9naqeyjU8
「Judgement Day」
トライバルな雰囲気の小曲。
「How Long」
ミステリアスなジャジー感が印象的なスピリチュアル・ジャズ調の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=Dkr1Xxq6JWc
「Moving On」
Eric Appapoulayeのアコースティック・ギターに先導され、Julieがしっとりと歌い上げるジャジー・メロウ。
「Walk Reprise」
「Walk With Me」のリプライズでアルバムは幕を閉じます。
Julie Dexterの他作品もチェックを!
『Conscious』(2004年)
Julie Dexter & Khari Simmons『Moon Bossa』(2006年)
『New Again』(2011年)
Me'Shell Ndegeocello『Comfort Woman』(2003年)も近いうちに取り上げたいと思います。