発表年:1963年
ez的ジャンル:『Getz/Gilberto』前夜系ボッサ・ジャズ
気分は... :The Pharcyde「Runnin'」つながりで・・・
今回はジャズ・サックス奏者Stan Getzがブラジル人ギタリスト/コンポーザーLuiz Bonfaと共演したアルバム『Jazz Samba Encore!』(1963年)です。
白人ジャズ・サックス奏者の巨匠であり、世界的ボサノヴァ・ブームの立役者でもあるStan Getz作品の紹介は、当ブログで初となります。また、もう一人の主役ブラジル人ギタリスト/コンポーザーLuiz Bonfaの紹介は、奥方Maria Toledoとの夫婦アルバムLuiz Bonfa & Maria Toledo『Braziliana』(1965年)以来となります。
正直、Stan Getzのアルバムって片手が数える程度しか持っていません。しかも、持っている作品は人気作『Getz/Gilberto』(1963年)をはじめ、彼がブラジル音楽に接近したボッサ・ジャズ作品のみです。
本作『Jazz Samba Encore!』(1963年)は、『Jazz Samba』(1962年)、『Big Band Bossa Nova』(1962年)に続く、彼のボッサ・ジャズ作品第3弾であある。タイトルの通り、第1弾作品『Jazz Samba』のアンコールというかたちで制作されたものですが、前2作がジャズ・ミュージシャンのみで作ったボッサ・ジャズ作品であったのに対して、本作ではLuiz Bonfa、Antonio Carlos Jobim等のブラジル人ミュージシャンを迎えてレコーディングしている点です。
本作が伏線となり、Joao Gilberto、Antonio Carlos Jobim、Astrud Gilberto等を迎え、世界的にボサノヴァ・ブームを巻き起こした大ヒット作『Getz/Gilberto』(1963年)が生まれることとなります。
そんな流れでいえば、人気作『Getz/Gilberto』(1963年)を紹介した方がいいのかもしれませんが、ど定番すぎて気恥ずかしいところもあるので『Jazz Samba Encore!』としました。というか、一連の彼のボッサ・ジャズ作品の中で最も聴いているのが『Jazz Samba Encore!』なんですよね。
1963年2月にN.Y.でレコーディングでされた本作には、Stan Getz(ts)以下、Luiz Bonfa(g)および奥方のMaria Toledo(vo)、Antonio Carlos Jobim(g、p)、George Duvivier(b)、Tommy Williams(b)、Dave Bailey(b)、Paulo Ferreira(ds)、Jose Carlos(ds)、Dave Bailey(ds)といったミュージシャンが参加しています。
今日本作に対する注目が高い要因の1つに、「Saudade Vem Correndo」が収録されている点があるでしょう。Hip-Hopの天才アーティストであった故J Dilla(Jay Dee)の出世作ともいえるThe Pharcyde「Runnin'」のサンプリング・ソースとなっていたのが「Saudade Vem Correndo」でした。
まぁ、そんなことを抜きにしても、いいアルバムだと思います。本場ブラジルのミュージシャンに刺激を受けて、Stan Getzのプレイが冴え渡ります。それに呼応するかのように、Luiz Bonfaも最高のギター・プレイを披露してくれます。そして、奥方Maria Toledoのクールなヴォーカルがアルバム全体にメリハリをつけてくれます。。
『Getz/Gilberto』もいいですが、僕は本作を推します。
全曲紹介しときやす。
「Sambalero」
Luiz Bonfa作。Maria Toledoの素敵なスキャットと共に始まるロマンティックなオープニング。サンセット・モードのボッサ・ジャズとしてはサイコーです。Stan Getzの優しく語りかけるようなサックスもいいムード!
https://www.youtube.com/watch?v=XLHHXo9VAL4
「So Danco Samba (I Only Dance Samba)」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。お馴染みの名曲を軽やかかつメロウに聴かせてくれます。キャッチーながらも洗練されているのがいいですね。
本曲に関して、当ブログではSergio Mendes & Brasil'66、Wanda Sa(Wanda De Sah)、Tamba Trio、Roberto Menescal、Gimmicks、Jazzlife Sextetのカヴァーを紹介済みです。
「Insensatez (How Insensitive)」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。憂いを帯びたMaria Toledoのヴォーカルや作者Jobimのピアノも含めて、サウダージ・モードのボッサ・タイムを満喫できます。主役のGetzのサックスにもさすらい感があります。
https://www.youtube.com/watch?v=FiTjcM3_ZLM
本曲に関して、当ブログではTriste Janero、Duke Pearson、Oscar Peterson、Earl Okin、Stacey Kentのカヴァーを紹介済みです。
「O Morro Nao Tem Vez」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。当ブログではSambalanco Trio、Wanda de Sah featuring The Sergio Mendes Trio With Rosinha De Valenca のカヴァーを紹介済みです。Getzのクールなサックスを満喫するという意味で、この演奏はグッとくるのでは?それに負け次とBonfaもさすがのギター・プレイで聴く者を魅了します。
https://www.youtube.com/watch?v=RakFHyunonQ
「Samba de Duas Notas (Two Note Samba)」
Luiz Bonfa作。前作『Big Band Bossa Nova』に収録されていたJobim作の「One Note Samba」を受けての「Two Note Samba」ということみたいですね。軽快かつクールなジャズ・サンバで小気味よく駆け抜けていきます。
「Menina Flor」
Luiz Bonfa/Maria Toledo作。Maria Toledoのクールな低音ヴォーカルが実にいいですね。バックで盛り上げるLuiz Bonfaのギターもサイコーです。ここでのGetzはサポート役に回っています。
https://www.youtube.com/watch?v=2m12woXpIQ4
「Mania de Maria」
Luiz Bonfa/Maria Toledo作。当ブログではTamba Trioのカヴァーも紹介済みです。GetzとサックスとBonfaのギターを楽しむという意味では本演奏もグッときます。お互いが刺激し合って、演奏が盛り上がってくるのがいいですね。最後のフェードアウトがあっけなく残念ですが。
「Saudade Vem Correndo」
Luiz Bonfa/Maria Toledo作。僕の場合、昨年リリースされたBebel Gilbertoの最新作『Tudo』に収録された本曲のカヴァーをよく聴いていたので、今聴いても実に馴染みます。軽快かつメロディアスなボッサ・サウンドが実に心地好いですね。Maria Toledoの凛としたヴォーカルも華を添えてくてます。
https://www.youtube.com/watch?v=B87mecbaFp4
前述のようにThe Pharcyde「Runnin'」のサンプリング・ソースとしてお馴染みですが、それ以外にDJ Jazzy Jeff feat. Raheem DeVaughn「My Peoples」、Freddie Joachim「Run (Interlude for Dilla)」、Jazz Liberatorz「Music in My Mind (Part 2)」、Marcelo D2「A Procura Da Batida Perfeita」等のサンプリング・ソースとなっています。
The Pharcyde「Runnin'」
https://www.youtube.com/watch?v=1hZKN4AZ63g
DJ Jazzy Jeff feat. Raheem DeVaughn「My Peoples」
https://www.youtube.com/watch?v=owcH2F8M0Fg
Marcelo D2「A Procura Da Batida Perfeita」
https://www.youtube.com/watch?v=PkAnVj2rGto
「Um Abracao no Getz (A Tribute to Getz)」
Luiz Bonfa作。タイトルの通り、Getzに捧げられた曲。Getzのサックスに寄り添うBonfaのギターが素敵です。
「Ebony Samba」
Luiz Bonfa作。ラストは哀愁モードのジャズ・サンバで締め括ってくれます。Maria Toledoのクールなスキャットがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=CdeA_1fV0TU
CDボーナス・トラックとして「Ebony Samba」の別ヴァージョンが追加収録されています。
Stan Getzの他のボッサ・ジャズ作品もチェックを!
『Jazz Samba』(1962年)
『Big Band Bossa Nova』(1962年)
Stan Getz/Joao Gilberto『Getz/Gilberto』(1963年)
Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida『Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida』(1963年)
Stan Getz/Joao Gilberto『Getz/Gilberto #2』(1966年)
未聴の方はLuiz Bonfa & Maria Toledo『Braziliana』(1965年)もぜひ!
Luiz Bonfa & Maria Toledo『Braziliana』(1965年)