発表年:2015年
ez的ジャンル:キーボードの魔術師系進化形ジャズ
気分は... :ローズの音色、ローズの香り・・・
今回は新作ジャズ・アルバムからMarc Cary『Rhodes Ahead Vol. 2』です。
Marc Caryは1969年N.Y.生まれのジャズ・キーボード奏者。
音楽一家に生まれ、自然とミュージシャンへの道を歩んでいったMarcは、N.Y.のジャズ・シーンでキャリアを重ね、1995年には初リーダー作『Cary On』(1995年)をリリース。その後もコンスタントに作品をリリースする一方で、Joe Claussell『Language』(1999年)、Q-Tip『The Renaissance』(2008年)等の作品に参加し、、Me'Shell Ndegeocello、Erykah Badu等のバック・バンドを務めたハウス/クラブミュージック、Hip-Hop、ネオソウルとの接点も多いミュージシャンです。
その意味ではRobert Glasperに通じるものがあるジャズ・キーボード奏者ですね。Marcの方が年上ですが・・・
そんな"キーボードの魔術師"Marc Caryのデビュー20周年を飾る新作が本作『Rhodes Ahead Vol. 2』です。
タイトルからもわかるように、1999年にリリースされた『Rhodes Ahead』の続編にあたるアルバムです。『Rhodes Ahead』は、プログラミングも交えてMarcがハウス/クラブミュージックに接近したアルバムでした。その続編となる本作は、Marc Caryの考える現在進行形のジャズを具現化した、実に"Jazz The New Chapter"的な1枚に仕上がっています。
レコーディングには、Marc Cary(el-p、syn、org)以下、前作Marc Cary Focus Trio『Four Directions』(2013年)にも参加していたBurniss "Earl" Travis II(b)、Sameer Gupta(tabla)、それ以外にTarus Mateen(b)、Terreon "Tank" Gully(ds)、Sameer Gupta(tabla)、Igmar Thomas(tp)、Jabari Exu(djembe)、Daniel Moreno(per)、Sharif Simmonds(vo)、Arun Ramamurthy(violin)、Aurelian Budynek(g)が参加しています。
僕の場合、本格的なジャズ作品よりも他ジャンルの融合を狙ったジャズ作品を好む傾向がありますが、本作はそんな僕の嗜好にフィットする1枚です。目立ったゲスト等が参加しているわけではありませんが、随所にMarc Caryというミュージシャンのジャズの枠に囚われない音楽性が反映され、聴く者を飽きさせません。
今ジャズ作品には進化形ジャズ・ドラマーが付き物ですが、本作ではTerreon "Tank" Gullyのドラミングがスリリングですね。僕が本作を気に入った要因の1つが、彼のドラミングにあります。特に「Astral Flight 17」、「Spices and Mystics」でそうしたドラミングも満喫できます。
それ以外に「Beehive」、「7th Avenue North」あたりが僕のオススメです。
今ジャズ好きの人はぜひチェックを!
キーボードの魔術師の音色をご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Prelude to the Hit」
アルバムのイントロ。
「Beehive」
Harold Mabern作。Lee Morganが『Live At The Lighthouse』(1971年)で演奏していたことでも知られる楽曲ですね。リズム隊が生むスリリングなグルーヴをバックに、Igmar ThomasのトランペットとMarcの鍵盤が快調な音色を響かせます。
https://www.youtube.com/watch?v=MOVFd1JZ1Wg
「7th Avenue North」
Marc Cary作。メロウな中にも幻想的な空気が漂います。Marcの鍵盤のエレクトリック感とSameer Guptaのタブラの組み合わせがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=DBBcIHXJnYY
「Essaouira Walks」
Marc Cary作。変拍子で疾走する70年代クロスオーヴァー/フュージョン風の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=BRFQx2Zo9jU
「Astral Flight 17」
Marc Cary作。Terreon "Tank" Gullyのドラミングに今ジャズ好きの人は食いつくであろう1曲です。そのドラムに、エレクトリック・ベースとMarcのシンセが生み出すフューチャリスティック&コズミックなサウンドが実に格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=XMSMp_TMOdY
「African Market」
Marc Cary作。タイトルの通りアフリカン・テイストですが、ヴォコーダーが入り、ほのぼのとしたリラックス感が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=aZKyoqL3NE4
「For Hermeto」
Marc Cary作。Marcのメロウな鍵盤さばきとIgmar Thomasのトランペットの響きが心地好い演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=ZYGK0o52mng
「Spices and Mystics」
Marc Cary作。この演奏も今ジャズ好きは聴き逃せません。Terreon "Tank" Gullyのドラミングがスリリングなビートを刻み、Marcのの鍵盤、Arun Ramamurthyのバイオリン、Igmar Thomasのトランペットが幻想的な雰囲気を醸し出します。特にバイオリンがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=GIp_R3pB9Nk
「Below the Equator」
Marc Cary/Sameer Gupta作。スピード感のある演奏で疾走します。Marcの鍵盤さばきも楽しめますし、終盤のリズミックな展開もエキサイティングです。
https://www.youtube.com/watch?v=AWYMV0dJ3wY
「You Can't Stop Us Now」
Alan Palmer作。少しスペイシーなシンセの音色が印象的なジャズ・ファンク・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=ZlSJBuH-tsk
「The Alchemist's Notes」
Marc Cary/Sharif Simmonds作。Sharif Simmonsのポエトリーが入ったコズミックな演奏で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=KrRymwBgyyM
「Manchild Wild」
国内盤ボーナス・トラック。ギア・チェンジしてスピードアップする中盤以降がスリリングでいいですね。
Marc Caryの他作品もチェックを!
『Cary On』(1995年)
『Listen』(19997年)
『Rhodes Ahead』(1999年)
Marc Cary Trio『Trillium』(2000年)
Marc Cary's Focus Trio『Focus』(2006年)
Marc Cary & Shon "Chance" Miller『AbStraKT/BlaK』(2006年)
『For the Love of Abbey』(2013年)
Marc Cary Focus Trio『Four Directions』(2013年)