発表年:2015年
ez的ジャンル:女性SSW系ベルギー産オルタナティヴ・ソウル
気分は... :この才能は本物だ!
今回は新作アルバムの中から、世界が注目するベルギー人女性シンガー・ソングライターSelah Sueの2ndアルバム『Reason』です。
1989年ベルギー、レーフダールの生まれの女性シンガー・ソングライターSelah Sue(本名:Sanne Putseys)の紹介は、デビュー・アルバム『Selah Sue』(2011年)に続き2回目となります。
彼女のデビュー・アルバム『Selah Sue』(2011年)は、年末恒例の『ezが選ぶ2011年の10枚』でもセレクトした作品であり、彼女が才能豊かな女性シンガー・ソングライターであることを世界中のリスナーに知らしめた1枚でした。
レゲエ/ダブ、R&B、ソウル/ファンク、Hip-Hop、ロック、フォーク、エレクトロニカといった多様なジャンルのエッセンスを取り込んだサウンドで軽々とジャンルの壁を飛び越え、同時に多彩なサウンドに埋もれることなく、抜群の存在感を示すコケティッシュなハスキー・ヴォーカルは、我々に大きなインパクトを与えてくれました。
ただし、チャート・アクション的にブレイクしたのは本国ベルギーや欧州の一部のみで、USチャートやUKチャートを賑わしたわけではありません。その一方で、Prince殿下がオープニング・アクトに起用し、Cee Lo Greenがデュエット・パートナーに抜擢し、Me'Shell Ndegeocelloが自らプロデュースを名乗りでるといったように、彼女の才能は大物ミュージシャンたちも認めています。
あれから4年、待望の2ndアルバム『Reason』でもリスナーの期待を裏切ることのない、コケティッシュで、コスモポリタンで、オルタナティヴなSelah Sueワールドを展開しています。
レコーディングはベルギー、ロンドン、ジャマイカ、ロサンゼルスで行われ、メイン・プロデューサーとしてRhyeをはじめ、Boom Clap Bachelors、Parallel Dance Ensemble、Quadronといった様々なユニットでの活動やLittle Dragon等のプロデュースでも知られるデンマーク人プロデューサーRobin Hannibalを起用しています。Rhye『Woman』(2013年)は僕もよく聴きました。
また、Childish Gambino、Haimを手掛けたスウェーデン人プロデューサーLudwig Goranssonも本作に大きく貢献しています。
それ以外にもビート・ジャンキーなスコティッシュDJ、Hudson Mohawke、Deepest Blue、4tune500、M'Black、The Drillでの活動でも知られるイスラエル出身のプロデューサーMatt Schwartzプロデュース・チームThe Charactersでの活動でも知られるR&B界の人気プロデューサーTroy Taylor、UKを拠点に活動するブラジル人プロデューサーUtters等がプロデュースを手掛けています。
こうしたプロデューサー陣の顔ぶれからも想像できますが、前作以上に多彩なサウンドを楽しむことができます。ジャンルを超越したサウンドですが、あえて括るならばオルタナティヴなソウル/R&Bといったところでしょうか。多分、CDショップではソウル/R&Bの売場に置いてあると思います。
前作『Selah Sue』ではトリップ・ホップ調のダウナー&レイジーな哀愁チューンや、ラガ/レゲエ調の曲が印象的でしたが、本作ではそうしたタイプの曲に加え、ポップな曲やクラブ寄りの曲なども収録されています。このバラエティ感は本作の魅力です。
こうしたサウンドの振り幅が大きいにも関わらず、どの曲を聴いても実にSelah Sue的にしてしまうところが、彼女の放つ個性の凄さだと思います。
やはり、この才能は本物だと思います。
ますます惚れ込んでしまいました。
全曲紹介しときやす。
「Alone」
アルバムからのリード・シングル曲。2012年2月Whitney Houstonが亡くなった晩に書かれた楽曲とのこと。それまでの彼女のイメージからすると、かなりポップな印象ですが、コケティッシュなハスキー・ヴォーカルがよく栄えます。Robin Hannibal/Salva Shapira & Itai Shapiraプロデュース。
https://www.youtube.com/watch?v=bEhBom2D-L0
「I Won't Go for More」
Robin Hannibal/Salva Shapira & Itai Shapiraプロデュース。Selah本来のシンガーソングライター的なアコースティックの質感に、R&B的な味わいのホーン・サウンドを上手く織り交ぜています。
https://www.youtube.com/watch?v=cZIS6psYlO4
「Reason」
Robin Hannibalプロデュース。タイトル曲は1stの雰囲気を受け継いだ哀愁モードのエレクトリック・ソウル。この少しダウナーな感じがいいんですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=DE6950P2vXU
「Together」
Ludwig Goranssonプロデュース。俳優/コメディアンでもある男性シンガー/ラッパーChildish Gambinoをフィーチャー。同じくGoranssonがプロデュースを手掛けている関係での客演でしょう。哀愁モードのラブソングですが、Selahのヴォーカルに、Gambinoのヴォーカルが重なり、さらにはGambinoのラップへと表情が変化していきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Dsgzv_QHihs
「Alive」
Ludwig Goransson/Robin Hannibalプロデュース。静かなる決意のようなもの感じるSelahらしい1曲。じわじわ広がっていくエレクトロニックな質感がいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=b0fEUI9YdxU
「The Light」
Robin Hannibal/Hudson Mohawkeプロデュース。Hip-Hopとエレクトロニカを融合させたサウンドとコケティッシュなSelahのヴォーカルがマッチしたキュートなオルタナティヴ・ソウル。
https://www.youtube.com/watch?v=okxpl_x0pv0
「Fear Nothing」
Matt Schwartzプロデュース。かつてMassive Attack「Dissolved Girl」のソングライティングも手掛けたSchwartzらしくトリップ・ホップ調のサウンドに仕上げています。こういったダーク&ダウナーな雰囲気もSelahには似合いますね。
https://www.youtube.com/watch?v=c6Mcn-ICVMU
「Daddy」
Ludwig Goranssonプロデュース。生ドラムの質感を上手く活かしたビューティフル・ソング。Goranssonの音創りの巧さを感じます。『Selah Sue』に「Mommy」という曲が収録されていたので、それに続く「Daddy」なのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=Gm5oZ1kfyHw
「Sadness」
Troy Taylor/Spruillプロデュース。ヴィンテージ感のあるソウル・チューンですが、終盤にラガ・スタイルのラップでアクセントをつけているのが彼女らしいですね。『Selah Sue』にもラガ・スタイルの曲がいくつかありましたが、僕は彼女のラガ・スタイル好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=Ytwh1VFkbj0
「Feel」
Uttersプロデュース。前曲から一転し、フューチャリスティックなクロスオーヴァー・ソウルに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=3Xto8xEMoVU
「Right Where I Want You」
Ludwig Goransson/Robin Hannibalプロデュース。オルガンの音色が印象的なダウナーな哀愁エレクトリック・ソウルです。
https://www.youtube.com/watch?v=OJ7q72CABXw
「Always Home」
Ludwig Goransson/Robin Hannibalプロデュース。Selahの弾き語りをストリングスや鍵盤がサポートします。
https://www.youtube.com/watch?v=jZKdYeCvr9A
「Falling Out」
Ludwig Goranssonプロデュース。ラストはクラブ仕様のダンス・チューン。こういったクラブミュージック調の曲があるといいなぁ、と思っていたので、個人的にはいい締め括り方だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=8TydLLVmcOE
未聴の方は1st『Selah Sue』(2011年)もチェックを!
『Selah Sue』(2011年)