2015年06月25日

Bain『Love In Blue』

ミネアポリス発のチルアウトなオルタナティヴR&B☆Bain『Love In Blue』
bain love in blue.jpg
発表年:2014年
ez的ジャンル:オルタナティヴR&B/チルアウト・ソウル
気分は... :どこまでも青く・・・

今回は新作アルバムからミネアポリスを拠点とするオルタナティヴR&BユニットBainの1stアルバム『Love In Blue』です。

昨年のリリースですが、今年5月に国内盤CDがリリースされ、広く音楽ファンに知られるようになった1枚です。

BainDavis BainErick AndersonJayanthi Kyleによるユニット。

販売元やCDショップの売り出し方はR&B作品として売り出していますが、Robin Hannibalが手掛けたRhye『Woman』(2013年)あたりに近いオルタナティヴ感があります。

リーダーのDavis BainSade『Love Deluxe』(1992年)、Maxwell『Maxwell's Urban Hang Suite』(1996年)をフェイバリット・アルバムに挙げており、そうした影響は本作にも反映されています。特に、女性ヴォーカリストJayanthi Kyleを加えたのは、多分にSadeを意識したものでしょう。

個人的にはダウナーやチルアウトな雰囲気がありながらも、サウンド偏重にならずメロディを大切にしている点に好感を持ちました。

僕は国内盤CDを5月のリリースと同時に購入し、iPhoneで愛聴していますが、数あるプレイリストの中からついつい本作を選択してしまうケースが多くなっています。それはメロディを想起しやすく「もう一度聴きたい」と思わせる魅力があるからだと思います。

R&Bというジャンルに囚われずに聴いた方が楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Wherever」
オススメその1。少しダウナーなジャジー&メロウといった雰囲気が印象的なオープニング。彼らがメロディをとても大切にしているのがわかります。

「The One」
オススメその2。ギター・サウンドが印象的なメロウ・グルーヴ。アルバムの中でも最もキャッチーな仕上りなのでは?Jayanthiのクールなヴォーカルもいい感じ。

「After」
本作の中では異色のダンサブル・チューン。このユニットの音楽性の幅を知らせるためには有効な1曲だと思います。

「Let Me Know」
オススメその3。Davis Bainのクール・ヴォーカルで歌い上げる哀愁のメロディにグッとくるチルアウト・ソウル。

「Plateau」
ダウナーな雰囲気がオルタナティヴR&Bっぽくていいですね。Jayanthiの哀愁ヴォーカルにグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=LMuinXvEWBc

「The Way」
オススメその4。Sadeを引き合いの出すのが頷ける哀愁メロウ。ホーンも入ったジャジーなヒンヤリ・モードは暑気払いに最適です!
https://www.youtube.com/watch?v=UWuZlG1xDpU

「Love This Strong」
オススメその5。少し気怠いJayanthiのクールなヴォーカルに癒されるチルアウト・ソウル。美しいストリングスも実に効果的です。

「Love & Light」
ラストはジャジー&メロウな雰囲気で締め括ってくれます。この曲を聴いていたら、一晩中飲んで夜明けと共にタクシーで帰るときの気怠さとシンクロしてしまいました(笑)

「After (Moods Remix)」
国内盤ボーナス・トラック。「After」のエレクトロなリミックスです。

サッカー女子W杯はなでしこが勝ち上がりましたね。
ラストに自らのミスで失点しましたが、TVで観ていてグループリーグのようなイライラ感はなく、納得できた一戦でした。この大会4戦目で先発メンバー11名も一番ハマっていた気がします。特にFW2名は現状この組み合わせがベストなのでは?

不安定なグループリーグから、決勝トーナメントに入り尻上がりに調子を上げていくというのは、男子W杯でも好成績を残すパターンだと思うので、このまま勢いにのって欲しいですね。
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2015年06月24日

Lenny Williams『Pray For The Lion』

元Tower Of Powerのリード・シンガーによる1stソロ・アルバム☆Lenny Williams『Pray For The Lion』
Pray for the Lion by Wounded Bird Records 【並行輸入品】
発表年:1974年
ez的ジャンル:元Tower Of Power系男性ソウル
気分は... :粘り強さ!

今回は元Tower Of Powerのリード・シンガーLenny Williamsの1stソロ・アルバム『Pray For The Lion』(1974年)です。

Lenny Williamsは1945年アーカンソー州出身の男性ソウル・シンガー。1968年にソロ・デビューし、数枚のシングルをリリースした後にTower Of Powerに加入します。

そして、『Tower Of Power』(1973年)、『Back To Oakland』(1974年)、『Urban Renewal』(1975年)というTower Of Power絶頂期の3枚でリード・シンガーを務め、グループの成功と共に彼自身も名声を得ます。

しかし、そんな絶叫期にTower Of Powerを脱退し、再びソロ活動を開始したLennyの1stソロ・アルバムとなったのが本作『Pray For The Lion』(1974年)です。

その後も80年代後半までコンスタントに作品をリリースするなど実力派シンガーとして活躍します。

本作『Pray For The Lion』(1974年)は、Eugene Mcdanielsがプロデュースし、レコーディングにはDean Parks(g)、David Stallings(g)、Mike Melvoin(p)、Gary King(b)、Lenny White(ds)、Chuck Findley(tp)、Jimmy Zito(tp)等が参加しています。

アルバムには「Compared To What」「There's Always Mystery (When You're Making History) 」のようなファンキー・グルーヴも収録されていますが、聴き所はミディアム〜スロウのバラードだと思います。

個人的には「Sometimes Love」「We're Gonna See It Through」「Problem Solver」あたりがオススメです。

派手さのある作品ではありませんが、ソウル・シンガーLenny Williamsの魅力がじんわりと伝わってくる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Compared To What」
Roberta Flackヴァージョンでお馴染みのEugene Mcdaniels作品。近年でいえば、John Legend & The Rootsによるニュー・ソウル・カヴァー集『Wake Up!』のヴァージョンをお聴きになった人も多いのでは?当ブログではLes McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(1969年)のヴァージョンも紹介済みです。ここでは軽快なファンキー・グルーヴで快調に飛ばしてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=UowR887vtV4

「Open Book」
Lennyのソウルフル・ヴォーカルの魅力が引き立つミディアム・チューン。Ugly Drums and Lady Blacktronika「The Day I Should Have Died」のサンプリング・ソースになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=V4qkVkZ6GkU

「Sometimes Love」
個人的には一番のお気に入り。哀愁メロウですが大人の色気が漂う素敵なミディアム・バラードに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=qyZ7hhAvng0

「There's Always Mystery (When You're Making History) 」
うねるグルーヴとホーン隊が活躍する、なかなか格好良いファンキー・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=N6xUjEOKVVk

「We're Gonna See It Through」
このバラードも味わい深いビューティフル・バラードです。派手さはありませんがジワジワくるのがいいですね。

「River」
Eugene McdanielsがUniversal Jones名義でリリースした楽曲のカヴァー(オリジナルは『Universal Jones Vol 1』収録)。ゴスペル・テイストの厳かな雰囲気がいい感じです。

「Problem Solver」
「Sometimes Love」と並ぶ僕のお気に入り。聴く者を優しく包み込み、励ましてくれる素敵なバラードです。じんわりと熱いものが込み上げてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=zHeNrAN91Rg

「All That's Love」
大きな愛を感じるミディアム・バラード。Statik Selektah feat. Action Bronson, Termanology & Bun B「Never a Dull Moment」のサンプリング・ソースにもなっています。

「Money」
この曲もEugene Mcdaniels作。レイドバックしたファンキーさがいい感じです。

「Keep On Keeping On」
ラストもジェントルなバラードで味わい深く締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=gHPRQL0o1Es

ご興味がある方は他のLenny Williams作品もチェックを!

『Choosing You』(1977年)
Choosing You

『Spark of Love』(1978年)
Spark of Love: Expanded Edition

『Layin' In Wait』(1989年)
Layin' In Wait

『Here's To The Lady』(1996年)
Here's to the Lady

『Love Therapy』(2000年)
Love Therapy

『My Way』(2004年)
My Way

『It Must Be Love』(2007年)
It Must Be Love

『Unfinished Business』(2009年)
Unfinished Business

『Still In The Game』(2012年)
Still in the Game by Music Access Inc. 【並行輸入品】
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2015年06月22日

Lill Lindfors & Marcus Osterdahls Orkester『Kom I Min Varld』

キュートなジャケがたまりません!☆Lill Lindfors & Marcus Osterdahls Orkester『Kom I Min Varld』
コム・イ・ミン・ヴェールデ
発表年:1968年
ez的ジャンル:北欧系女性ジャズ・シンガー
気分は... :コレはジャケ買いするでしょう!

今回はスウェーデンの国民的女性シンガー『Kom I Min Varld』(1968年)です。

前々から欲しい1枚でしたが、今年遂にCD化が実現し、手元に置くことができました。このキュートなジャケを見ただけで名盤決定!な1枚ですね(笑)

キュートな北欧女性シンガー作品として再評価を高めているLill Lindforsの紹介は、『Du Ar Den Ende』(1966年)に続き2回目となります。

サバービア好きの人にとってLill Lindforsは、デンマークの女性シンガーBirgit Lystagerと並ぶキュート系の北欧女性シンガーの代表格として再評価が高まった女性シンガーですよね。

そのLill Lindforsの再評価のきっかけとなったのが、本作『Kom I Min Varld』(1968年)に収録されたブラジリアン名曲「Tristeza」のカヴァー「Teresa」です。

同じ「Tristeza」の北欧ボッサ・カヴァーは、Birgit Lystagerのヴァージョン「Christina」(アルバム『Birgit Lystager』収録)も人気ですね。

共に子供達のコーラス入りの好カヴァーですが、リリース年から推察すると、Birgit LystagerヴァージョンはLindforsヴァージョンをお手本にしたのでしょうね。

その意味では、本作『Kom I Min Varld』Birgit Lystager『Birgit Lystager』(1970年)はセットで聴くことをオススメします。

Birgit Lystager『Birgit Lystager』(1970年)
ビアギッテ・ルゥストゥエア

アルバムには「Teresa」以外にも、英米、欧州のさまざまなタイプの曲のスウェーデン語によるカヴァーが収録されています。個人的には、「Kom I Min Varld」「Var Frihet」「Har Ar Jag」あたりがオススメです。

ジャケのLill Lindforsの表情にグッときた方は迷わずゲットすべきでしょう!

全曲紹介しときやす。

「Teresa」
前述の通り、このオープニングが本作のハイライト。Haroldo Lobo/Niltinho作のブラジリアン名曲「Tristeza」のカヴァー。当ブログでは前述のBirgit Lystagerヴァージョン以外に、Sergio Mendes & Brasil'66Elis Regina、、Carlos LyraSonido 5のヴァージョンを紹介済みです。本ヴァージョンは子供達のコーラスを配したキュート&ラブリーなカヴァーに仕上がっています。Lindforsの無邪気な歌声は子供達のコーラスとのシナジー大ですね。聴く者をハッピーな気分にしてくれる至極のカヴァーです。
https://www.youtube.com/watch?v=_T1_Yc-lqmM

「Om Du Gar Din Vag」
Jacques Brel作「Ne Me Quitte Pas」のカヴァー。英語ヴァージョン「If You Go Away」でも知られる曲ですね。当ブログではDusty SpringfieldFreda Payneの英語カヴァーを紹介済みです。ここでは哀愁モードの切ない歌声をLindforsが聴かせてくれます。

「Kom I Min Varld」
タイトル曲はなんとJohn Lennon/Paul McCartney作品。PaulがCilla Blackのために書いた「Step Inside Love」のカヴァーです。オリジナル同様、ボッサな出だしとスウィンギン・ロンドンなサビのコントラストが印象に残るドラマチックな仕上りです。

「I Mej Finns En Sang」
Chopin(ショパン)の「練習曲作品10第3番ホ長調(別れの曲)」をスウェーデン語歌詞で歌っています。ピアノとオーケストレーションをバックに情感豊かな歌声を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=uLi8p1IFFNA

「Kom Vi Gor En Karneval」
Sonny Rollins「Don't Stop The Carnival」のカヴァー。開放的で陽気な仕上りです。

「Om Vi Hade En Dag」
Michel Fugain「Je N'aurai Pas Le Temps」のカヴァー。John Rowlesの英語ヴァージョンでも知られる曲です。オルガンの音色が印象的な切ないカヴァーに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=GT-2uc7kzRs

「Jag Ar Fran Topp Till Ta」
Marlene Dietrichが主演映画『Der Blaue Engel(嘆きの天使)』(1930年)で歌った「Ich bin von Kopf bis Fuss auf Liebe Eingestellt(また恋したのよ)」をカヴァー。ロマンティックなアレンジのバックを従え、しっとりと歌い上げます。

「Var Frihet」
USのR&BグループSand PebblesのR&Bヒット「Love Power」(1967年)をカヴァー。グルーヴィーなR&BサウンドにのってLindforsのヴォーカルも躍動します。

「Den Forsta Sommaren」
Tino Rossi「Cette Nuit-La」のカヴァー。美しいバックとロマンティックなLindforsの歌声がよくマッチしています。

「Satt Lite Fart」
Nina Simone 「Don't Take All Night」のカヴァー。ブルージーな仕上りですが、スウェーデン語での歌い回しが独特の味わいを与えてくれます。

「Tills Det Blir Tid For Dej Att Ga」
Buffy Sainte-Marie「Until It's Time For You to Go」。オリジナルとは雰囲気がかなり異なるロマンティックな仕上りです。

「Har Ar Jag」
Gladys Knight & The Pips「Take Me In Your Arms And Love Me」をカヴァー。これは選曲の妙ですな。この曲自体が北欧ポップ・サウンドやLindforsのキュートな歌声によくマッチしていると思います。曲全体の躍動感がいいですね。

「Nu」
Bee Gees「Words」をカヴァー。オリジナルの雰囲気を受け継いだカヴァーですが、本作の空気によくマッチしています。

「Igelkottaskinnet」
ラストはトラディショナルのリメイク。遊び心のある小粋なスウィング感がいいですね。

『Du Ar Den Ende』(1966年)
たった一人のあなた

『Fritt Fram』(1975年)
Fritt Fram

『Du Ar Det Varmaste Jag Har』(1978年)
Du Är Det Varmaste Jag Har
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2015年06月21日

Robert Glasper『Covered』

現行音楽シーンのキーマン!最新作はカヴァー集☆Robert Glasper『Covered』
カヴァード
発表年:2015年
ez的ジャンル:進化形ジャズ・ピアノ・トリオ
気分は... :カヴァー・センスがドンピシャ!

今回は話題のジャズ・ピアニストRobert Glasperの最新作『Covered』です。

ジャズに止まらないクロスオーヴァーな活動でシーンを牽引する先鋭的アーティストRobert Glasperに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。

 『Double Booked』(2009年)
 『Black Radio』(2012年)
 『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年) ※リミックスEP
 『Black Radio 2』(2013年)

Robert Glasper Experiment名義の『Black Radio』、その続編『Black Radio 2』でジャズ界のみならず音楽シーン全体に大きなインパクトを残したRobert Glasper

注目の最新作はExperiment名義ではなく、『In My Element』(2007年)以来のピアノ・トリオ作品となっています。メンバーもRobert Glasper(p)、Vicente Archer(b)、Damion Reid(ds)という『Canvas』(2005年)、『In My Element』のメンバー編成が復活しています。

『Covered』はタイトルの通り、カヴァー集です。ただし、ジャズ作品のカヴァーは1曲のみで、残りはRadioheadJoni MitchellMusiq SoulchildJohn LegendBilalKendrick LamarJhene Aikoといったロック、R&B、Hip-Hop系アーティストのカヴァーが並びます。

また、カヴァー以外に『Black Radio 2』収録曲のリメイク、故J Dillaへのトリビュート第3弾、本作用に用意したオリジナル曲も含まれます。

レコーディングは2014年12月2日、3日の2日間ハリウッドのキャピタル・スタジオにて、スタジオ・ライブ形式で行われました。

カヴァーのセレクト、アルバム構成からも察しがつくように、ピアノ・トリオによるジャズ作品でありながら、コアなジャズ・ファン向けに制作されたものではなく、『Black Radio』同様に普段あまりジャズに接することが少ない人向けに聴かせることを意図した作品に仕上がっています。

『Black Radio』『Black Radio 2』でR&B、Hip-Hop系リスナーの心を掴むことに成功したGlasperが、そうしたリスナーのジャズへの興味を喚起するためにピアノ・トリオという典型的なジャズのフォーマットを用意したのでしょうね。

また、『Black Radio』シリーズでのR&B、Hip-Hop的アプローチのイメージがあまりにも広く浸透しすぎたため、その呪縛から解放される意味でも、こういった典型的なジャズ・フォーマットの作品が必要だったのかもしれませんね。ロック、R&B、Hip-Hopといった他ジャンルの音楽の魅力をジャズ・ピアノ・トリオで最大限伝えるという点に、『Black Radio』シリーズと『In My Element』の橋渡し的な役割も感じるアルバムです。

僕自身、今年に入ってから最も頻繁に聴いていたGlasperのアルバムが『In My Element』だったので、本作の方向性をすんなり受け入れることができました。また、カヴァーしているアーティストを眺めてもJhene Aiko以外は当ブログでも紹介済みのお気に入りアーティストばかりであり、そのあたりも僕を大きく惹きつけました。

おそらく『Black Radio』シリーズほどの商業的成功は見込めないと思いますが、"今ジャズ"作品として興味深く聴ける1枚だと思います。

本作を聴きながら、Robert Glasperが次にどんなステージへ向かうのかを妄想してみるのも楽しいのでは?

全曲紹介しときやす。 ※国内盤

「Introduction」
Glasper自身がアルバムのコンセプトを説明し、メンバー紹介を行います。

「I Don't Even Care」
『Black Radio 2』(デラックス盤)収録曲のリメイク。オリジナルはMacy GrayとJean GraeをフィーチャーしたHip-Hopビートの哀愁チューンでしたが、ここではドラムンベース調にリメイクしています。同じ『Black Radio 2』収録曲でもNorah Jonesをフィーチャーした「Let It Ride」に近い雰囲気です。また、終盤にはThe Roots「You Got Me」のフレーズの引用も聴こえてきます。

「Reckoner」
Radioheadをカヴァー。オリジナルは『In Rainbows』(2007年)に収録されています。『In My Element』でも「Everything in Its Right Place」(オリジナルは『Kid A』収録)をカヴァーするなど以前からRadioheadへのリスペクトを示していたGlasperなので、彼らしいセレクトといえるでしょう。Radioheadの世界観をピアノ・トリオで見事に表現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Lsl4TW3Hm1o

Radiohead「Reckoner」
 https://www.youtube.com/watch?v=rOoCixFA8OI

「Barangrill」
Joni Mitchellをカヴァー。Joniのオリジナルは当ブログでも紹介した『For The Roses』(1972年)に収録されています。オリジナルの雰囲気を受け継ぐ美しい演奏でJoni作品の素晴らしさを再認識させてくれます。

Joni Mitchell「Barangrill」
 https://www.youtube.com/watch?v=1tDpyvgk0kk

「In Case You Forgot」
Glasperのオリジナル。リラックスした雰囲気の中での気分転換といった感じで、各メンバーのソロを楽しめます。途中、Cyndi Lauper「Time After Time」、Bonnie Raitt「I Can't Make You Love Me」のフレーズが引用されています。

「So Beautiful」
『Black Radio』にも参加していたMusiq Soulchildをカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した
『Onmyradio』(2008年)に収録されており、シングルとして全米R&Bチャート第8位となっています。Musiq Soulchildらしさを残しつつ、しっかり"今ジャズ"しているところさすがですね。この曲の魅力を見事に引き出していると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=GS2Y_CkaXP0

Musiq Soulchild「Sobeautiful」
 https://www.youtube.com/watch?v=2ZCmSkHf3Yw

「The Worst」
新進の女性アーティストJhene Aikoをカヴァー。このセレクトはGlasperの20代の従姉妹の愛聴曲からピックアップしたものらしいです。オリジナルはEP『Sail Out』(2013年)に収録されています。美しさと憂いを醸し出すGlasperのピアノ・タッチに魅了されます。
https://www.youtube.com/watch?v=2g6MsY8vD1A

Jhene Aiko「The Worst」
 https://www.youtube.com/watch?v=-sp0PmE5t1Q

「Good Morning」
John Legendをカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Evolver』(2008年)に収録されています。この曲の持つ穏やかな魅力をピアノ・トリオならではの美しい演奏で余すことなく伝えてくれます。アルバムの中でも特にキャッチーな1曲なのでは?

John Legend「Good Morning」
 https://www.youtube.com/watch?v=6D1Zl3BbLCY

「Stella By Starlight」
Victor Young作の有名スタンダード「星影のステラ」をカヴァー。本作では異色のセレクトですが、ライブ・レパートリーということで本作に収録されたようです。なお、国内盤はExtended Versionが収録されています。本作はわかりやすい演奏が多いですが、この曲に限ってはジャズ・ピアノ・トリオらしいアレンジになっています。

「Levels」
Glasperのニュースクール大学時代からの盟友Bilalの楽曲をカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Airtight's Revenge』(2010年)に収録されています。オリジナルはFlying Lotusの影響を色濃く感じるLAビート・ミュージック的な仕上がりでしたが、ここではジャズ・ピアノ・トリオで新たな息吹を吹き込んでいます。Damion Reidのドラムが"今ジャズ"らしくていいですね。

Bilal「Levels」
 https://www.youtube.com/watch?v=qleLHf0_Swg

「Got Over」
ベテラン男性シンガーHarry Belafonteをフィーチャーしたオリジナル曲。D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』のリリースにも影響を及ぼした2014年8月に起きたミズーリ州セントルイス、ファーガソンでの黒人少年射殺事件(警察官が丸腰の黒人少年を射殺)がモチーフになっているようです。社会活動家としても知られるBelafonteのモノローグを通して、人種差別への鋭いメッセージを投げ掛けます。

「I'm Dying of Thirst」
人気と実力を兼ね備えたHip-HopアーティストKendrick Lamarの作品をカヴァー。オリジナルは『Good Kid, M.A.A.D City』(2012年)に収録されています。ここではピアノ・トリオの演奏をバックに、Glasperの6歳の息子らが近年の人種差別絡みの事件の犠牲者となった黒人被害者の名前を読み上げられます。Glasperらがこのようなメッセージを発していた矢先に、サウスカロライナ州の教会で白人の若者が黒人9人を射殺するというヘイトクライムが発生してしまいました。アメリカ社会の抱える闇の根深さを感じずにはいられません。

Kendrick Lamar「I'm Dying of Thirst」
 https://www.youtube.com/watch?v=tM6seEs7wgs

「Dillalude 3」
国内盤ボーナス・トラック。『In My Element』に収録された「J Dillalude」、『Black Radio Recovered: The Remix EP』に収録された「Dillalude #2」に続く、故J Dillaへのトリビュート第3弾です。Glasperの流麗なピアノの音色とDamion Reidの叩き出す乾いたビートのコントラストがJ Dillaへのレクイエムらしくていいですね。

Robert Glasperの他作品もチェックを!特に『In My Element』(2007年)は、本作とセットで聴くと楽しめると思います。

『Mood』(2003年)
MOOD

『Canvas』(2005年)
Canvas

『In My Element』(2007年)
In My Element

『Double Booked』(2009年)
Double Booked

『Black Radio』(2012年)
ブラック・レディオ

『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Black Radio Recovered: the Remix Ep

『Black Radio 2』(2013年)
ブラック・レディオ2
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2015年06月20日

Inner Life『I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) 』

Jocelyn Brownをフィーチャーしたダンス・クラシック☆Inner Life『I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) 』
I'm Caught Up
発表年:1979年
ez的ジャンル:Patrick Adams/Greg Carmichael系N.Y.ディスコ
気分は... :Jocelyn Brownサイコー!

今回はJocelyn BrownをフィーチャーしたN.Y.ディスコ作品Inner Life『I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) 』(1979年)です。

Inner Lifeは、N.Y.ディスコを代表するプロデューサーPatrick AdamsGreg Carmichaelらによるディスコ・プロジェクト。ガラージの歌姫Jocelyn Brownをフィーチャーしたプロジェクトとして有名ですね。

「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」「Ain't No Mountain High Enough」等のディスコ・ヒットを放ち、『I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) 』(1979年)、『Inner Life』(1980年)、『Inner Life II』(1981年)という3枚のアルバムをリリースしています。

これまで当ブログで紹介したPatrick Adams絡みのN.Y.ディスコ作品として、Donna McGhee『Make It Last Forever』(1978年)、Phreek『Patrick Adams Presents Phreek』(1978年)、Rainbow Brown『Rainbow Brown』(1981年)があります。

Inner Lifeは、Jocelyn Brownをフィーチャーしている分、これらのユニット以上に注目度が高いユニットかもしれませんね。

そんなディスコ・プロジェクトの1stアルバムとなるのが本作『I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) 』(1979年)です。

Patrick AdamsGreg Carmichaelらがプロデュースを手掛け、Jocelyn BrownKrystal Davisらがヴォーカルを務めます。

何といっても、Jocelyn Brownの代表曲の1つといえるダンス・クラシック「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」がハイライトですが、それ以外にも当時のN.Y.ディスコらしいダンス・サウンドを楽しめる1枚です。ニューヨリカン・テイストのパーカッシヴな感覚が強調されているのも僕好みです。

Jocelyn Brown好き、Patrick Adams好きの人はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」
前述のように本作のハイライトであり、不朽のダンス・クラシック。Patrick Adams/Greg CarmichaelによるN.Y.ディスコ・サウンドとJocelyn Brownのエモーショナルなヴォーカルが見事に調和した高揚感溢れるダンス・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zr6jSfBjzx8

Chubb Rock「Caught Up」、Jungle Brothers「U Make Me Sweat」、Mariah Carey feat. Wale「You Don't Know What to Do 」等のサンプリング・ソースとなっています。また、Risco Connectionのカヴァーも要チェックですね。
Risco Connection「I'm Caught Up」
 https://www.youtube.com/watch?v=SAi1Rwgv6Mw

「I Hope It's The Right Time」
パーカッシヴなリズムと軽快なギター・カッティングが心地好いディスコ・チューン。Jocelynとバック・コーラスの掛け合いがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=spM1K-trErg

「I Want To Give You Me」
「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」に続くシングル曲。軽快に疾走するディスコ・チューン。この曲でもJocelyn Brownの魅力全開です。「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」に次ぐ本作のハイライトだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=KCHuL7ESN_c

「You Got Me Dancing」
ストリングス&ホーン・アレンジの妙が冴え渡るパーカッシヴなディスコ・チューン。リード&コーラスの息の合ったヴォーカル・ワークもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=DcL1VXgfyTo

「You Don't Have Dancing On Your Mind」
パーカッシヴなリズムとエレガントなオーケストレーションとヴォーカル隊が一体化したディスコ・チューン。ニューヨリカンなテイストが僕好みです。

「I Want To Give You Me (Radio Edit)」
「I Want To Give You Me」のエディット・ヴァージョン。

「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair) (Radio Edit)」
「I'm Caught Up (In A One Night Love Affair)」のエディット・ヴァージョン。

『Inner Life』(1980年)
INNER LIFE + 4

『Inner Life II』(1981年)
II +8

Patrick Adams関連作品の過去記事もご参照下さい。

Donna McGhee『Make It Last Forever』(1978年)
Make It Last Forever

Phreek『Patrick Adams Presents Phreek』(1978年)
パトリック・アダムス・プレゼンツ・フリーク

Rainbow Brown『Rainbow Brown』(1981年)
レインボウ・ブラウン+2(紙ジャケット仕様)
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