2015年08月07日

Severin Browne『New Improved Severin Browne』

Motownからリリースされた男性SSW作品☆Severin Browne『New Improved Severin Browne』
ニュー・インプルーヴド・セヴリン・ブラウン
発表年:1974年
ez的ジャンル:マイルド・ヴォイス系男性SSW
気分は... :ビールが美味い!

今日は70年代男性SSW作品からJackson Browneの実弟Severin Browneの2ndアルバム『New Improved Severin Browne』(1974年)です。

Severin Browneの紹介は、1stアルバム『Severin Browne』(1973年)に続き2回目となります。

1970年代に入り、Motownのスタッフライターとして楽曲提供してしたSeverinがMotownでレコーディングの機会を得て制作したアルバムが『Severin Browne』(1973年)と本作『New Improved Severin Browne』(1974年)の2枚です。

フリーソウル人気曲「Stay」の収録により、1st『Severin Browne』の再評価が高まりましたが、2ndとなる本作『New Improved Severin Browne』(1974年)もなかなか魅力的です。

プロデュースは Larry Murrayが手掛け、レコーディングにはSeverin Browne(vo、g、p)以下、Jeff Porcaro(ds)、David Hungate(b)、David Paich(p、accordion)といった後のTotoのメンバーや、名手Russ Kunkel(ds)、Richard Bennett(g)、Alan Lindgren(el-p、syn)、Dean Webb(mandolin)、Bobby Torres(per)、Joe Porcaro(per)、Steve Leeds(sax)、(steel drums)といったミュージシャンが参加しています。

今日的にはカリビアンなメロウ・チューン「Romance」がハイライトだと思います。それ以外の楽曲も派手さはありませんが、Severinらしいセンスが光る心憎い楽曲が並びます。マイルドな語り口のSeverinの味わい深いヴォーカルも作品を魅力的なものにしています。

"Jackson Browneの弟"という余計な修飾は抜きにして楽しんで欲しいですね。

「Romance」以外はSeverinのオリジナルです(共作含む)。

ジャケのように缶ビール片手に寛ぎながら聴きたい1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Love Notes From Denver」
レイドバック感覚の味わい深いオープニング。Richard Bennettのペダル・スティールが実に効果的です。

「Tickle My Lips」
スワンプ調の中に洒落たセンスを巧みに取り入れているところが心憎いですね。Severinのセンスの良さを感じる1曲です。

「Romance」
Jules Shear作。本作のハイライトはコレ。スティール・ドラムも入ったカリビアンなメロウ・チューン。トロピカル気分で何とも心地好いです。
https://www.youtube.com/watch?v=o97LhI4FzhA

「More Dreams In The Sea」
さり気なさの中に小粋なセンスが光る1曲。ソングライターとしてSeverinが高い評価を得ていたのが頷けます。

「Confessions Of A Madman」
ワルツ調のビューティフル・バラード。ジワジワときます。

「Love Song」
シンガー・ソングライターらしい感動バラード。アコーディオンやマンドリンの音色が盛り上げてくれます。

「The Sweet Sound Of Your Song」
Severinのジェントルなヴォーカルにヤラれてしまうメロウ。かなり好きです。

「Do, Magnolia, Do」
スワンプながらもブルーアイド・ソウル的な味わいもあります。このあたりはMotown作品らしいのでは?

「Cooking School」
哀愁のメロディが印象的です。しかしながら、「クッキングスクール」とカタカナ表記にするとビミョーですね(笑)

「Beginning To Believe」
ラストはPatti Dahlstromとの共作。メロウなエレピが醸し出すセンチメンタルな雰囲気にグッときます。

未聴の方は1st『Severin Browne』(1973年)もセットでどうぞ!

『Severin Browne』(1973年)
セヴェリン・ブラウン
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2015年08月05日

Genai『Heavens Not So Far Away』

男女デュオから変則トリオ編成になったハワイ産クール・ブリーズ☆Genai『Heavens Not So Far Away』
ヘヴンス・ノット・ソー・ファー・アウェイ
録音年:2000年
ez的ジャンル:ハワイ産クール・ブリーズ
気分は... :海と戯れる夏・・・

今回はハワイで結成された男女デュオGenaiの2ndアルバム『Heaven Not So Far Away』(2000年)です。

シカゴ生まれ、ハワイ育ちの黒人女性シンガーGinai K. Johnston、同じくシカゴ生まれでハワイ、L.A.を拠点に活動していたマルチ・ミュージシャンOliver Wendellによってハワイで結成された男女デュオGenaiの紹介は、デビュー・アルバム『Heaven On Earth』(1999年)に続き2回目となります。

2ndとなる本作『Heaven Not So Far Away』における大きな変化は、第三のメンバーとしてRobbie Danzieを迎えている点です。

ソウル/R&B通の方ならば、Robbie Danzieの名を聴いてピンと来るかもしれませんね。彼女は80年代に活躍した女性ヴォーカル・グループKrystolのメンバーだった女性シンガーです。

Ginai K. Johnstonのスケジュールが思うように確保できず、その対応として一時的にRobbieがグループに加わり、シンガー2人体制で乗り切ろうとしたのが背景のようです。全10曲中7曲でRobbieがリード・ヴォーカルを務め、残り3曲でGinaiがリードを務めています。

内容的には1st『Heaven On Earth』と同様に、ジャズ、ソウル、ブラジル、ラテンのエッセンスを巧みにまとめあげたアーバンなジャジー・ソウル/AORを聴かせてくれます。

前作では「Africa」Toto)、「Runaway」The Salsoul Orchestra)>、「Brazil(Aquarela Do Brasil)」(Ary Barroso)、「The Biggest Part Of Me」(Ambrosia)、「It's Too Late」Carole King)、「Human Nature」(Michael Jackson)といった有名曲カヴァーで楽しませてくれましたが、本作ではBilly Joel「Just The Way You Are」Antonio Carlos Jobim「Corcovado-How Insensitive」Sade「Kiss of Life」といったカヴァーを取り上げています。

ただし、本作ではオリジナルの比率が高くなっており、Ginaiが限定参加となる中で、もう一人のOliver Wendellがプロデュース/ソングライティング面でユニットを牽引したアルバムといえるでしょう。

オリジナルならば「Heavens Not So Far Away」「Wave」「Melody Sweet」、カヴァーならば「Just The Way You Are」「Kiss Of Life」がオススメです。

海と戯れる夏・・・といった雰囲気のジャケもいいですね。

全曲紹介しときやす。

「Heavens Not So Far Away」
今の季節にぴったりの涼しげなボッサ調のメロウ・サウンドにのって新加入のRobbieが艶やかな歌声を聴かせてくれる素敵なアコースティック・メロウ。このオープニングを聴けば、本作の素晴らしさがわかるはず!
https://www.youtube.com/watch?v=0VZnmKaZyXw

「Afraid To Love」
Ginaiがリード・ヴォーカルをとる哀愁モードの仕上がり。Robbieのヴォーカルとの違いを味わうのも楽しいと思います。

「Just The Way You Are」
Billy Joelの名曲「素顔のままで」をカヴァー。この名曲をボッサ調のアコースティック・メロウで聴かせてくれます。夏モード、ハワイモードらしい「素顔のままで」に仕上がっていると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=2qABluU8qWo

「Just The Way You Are」に関して、当ブログではMeta Roos & Nippe Sylwens BandTill BronnerDardanellesのカヴァーも紹介済みです。

「Melody Sweet」
Oliverのジャジー&メロウなサウンド・センスが光る大人のジャジー・ソウル。新加入Robbieのヴォーカルには、このタイプの曲が良く似合います。

「Wave」
タイトルからAntonio Carlos Jobimのカヴァーだと早合点してしまいましたが、彼らのオリジナルでした。Ginaiがリード・ヴォーカルをとるボッサ・フレイヴァーを加えたムーディーなジャジーAORに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=jBPs0VNYQOQ

「What You Call Love」
抑えたサウンドでRobbieが艶やかなヴォーカルの魅力を前面に打ち出しています。

「Corcovado-How Insensitive」
「Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)」、「How Insensitive」というAntonio Carlos Jobimの名曲2曲のメドレー。Ginaiのポルトガル語ヴォーカルがこなれていないせいか、フェイク・ボッサな感じが思いきり出ていますが、それがこのユニットらしいかも?

「Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)」に関して、当ブログではこれまでJoanie SommersCannonball AdderleyWanda Sa(Wanda De Sah)Mario Castro-Neves & Samba S.A.Diane Denoir/Eduardo MateoEarl OkinDardanellesCassandra WilsonO QuartetoJon Hendricksのヴァージョンを紹介済みです。

「How Insensitive」に関しても、、当ブログではTriste JaneroDuke PearsonOscar PetersonEarl OkinStacey KentStan Getz & Luiz Bonfaのカヴァーを紹介済みです。

ご興味がある方はこれらの記事もご参照ください。

「Kiss Of Life」
Sadeの名曲をカヴァー。オリジナルは『Love Deluxe』に収録されています。さらっとした感じのカヴァーですが、Robbieのヴォーカルの魅力を実感できます。個人的には今年の入り、当ブログでも紹介した『Jazz The New Chapter』の流れで注目度が高まった男性R&BシンガーChris Turnerの「Kiss Of Life」を聴く機会が非常に多いので、本カヴァーにも思わずグッときてしまいます。当ブログではGiovancaのカヴァーも紹介済みです。
https://www.youtube.com/watch?v=56cL8gKZiPw

「A Little More Time」
ダンサブルな仕上り。ただし、アルバムの中では少し浮いているかも?聴き手はあまりのこのタイプの曲を求めていないのでは?

「Cry Is All I Do」
Robbieの表現力の豊かさが光る1曲。その意味では本作ならではの仕上がりかもしれません。

Genaiの他作品もチェックを!

『Heaven On Earth』(1999年)
ヘヴン・オン・アース

『Rejoice』(2001年)
リジョイス

『Let Love』(2002年)
レット・ラヴ

『Dance With Me』(2004年)
ダンス・ウィズ・ミー
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2015年08月04日

『今の気分は...2015年8月4日編』

過去記事から10曲セレクトするシリーズです。

今回は1980年、90年代カテゴリーからレゲエ/ラテンの楽曲をセレクトしました。

全て過去記事で紹介済なので、気に入った曲があれば過去記事もご参照下さい。

Kofi「Didn't I 」
https://www.youtube.com/watch?v=uLoXiuxtu9Y
From 『Black...with Sugar』(1989年)
ブラック...ウィズ・シュガー(紙ジャケット仕様)

Sandra Cross「Fit And Ready」
https://www.youtube.com/watch?v=YqpEHmyDJvc
From 『Foundation Of Love』(1992年)
Foundation of love

Susan Cadogan「La La at the End」
https://www.youtube.com/watch?v=dIVnFgy8-7E
From 『Soulful Reggae』(1992年)
ソウルフル・レゲエ(紙ジャケット仕様)

Beats International「The Sun Doesn't Shine」
https://www.youtube.com/watch?v=kmkV99QcPXE
From 『Excursion On The Version』(1991年)
Excursion on the version (1991)

Maxi Priest「Pretty Little Girl」
https://www.youtube.com/watch?v=ktMad5XE7RY
From 『Intentions』(1986年)
Intentions

Aswad「Bittersweet」
https://www.youtube.com/watch?v=SydYdbtcLuw
From 『Distant Thunder』(1988年)
Distant Thunder by Mango 【並行輸入品】

Ruben Blades「La Cita」
https://www.youtube.com/watch?v=duN5BR5lN80
From 『Agua de Luna』(1987年)
Agua de Luna

Willie Colon「Junto a Ti」
https://www.youtube.com/watch?v=-hM22SVB__U
From 『Top Secrets』(1989年)
Top Secrets

Juan Luis Guerra & 4.40「Oajala Que Llueva Cafe」
https://www.youtube.com/watch?v=XZOLOggfWp0
From 『Ojala Que Llueva Cafe』(1989年)
Ojala Que Llueva Cafe

Ralph MacDonald「Catch of the Day」
https://www.youtube.com/watch?v=jE4nSZMkWsE
From 『Port Pleasure』(1998年)
ポート・プレジャー
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2015年08月03日

Vernon Burch『Get Up』

ダンス・クラシック「Get Up」収録☆Vernon Burch『Get Up』
ゲット・アップ
発表年:1979年
ez的ジャンル:サーファー・ディスコ系ディスコ・ソウル
気分は... :ファンキー・ディスコで暑気払い!

今回はワシントンDC生まれのシンガー/ギタリストVernon Burchの4thアルバムであり、サーファー・ディスコ人気作『Get Up』(1979年)です。

10代半ばでThe Delfonicsのセッションに参加し、Bar-Kaysにも一時在籍していたVernon Burchの紹介は、フリーソウル人気作でもある2ndアルバム『When I Get Back Home』(1977年)に続き2回目となります。

僕のような「Mr. Sin」「To Make You Stay」といったフリーソウル人気曲でVernon Burchの名を知った者にとっては、2nd『When I Get Back Home』の印象が強いですが、リアルタイムで聴いていた人にとっては、ディスコ定番曲「Get Up」が収録された本作『Get Up』の方がVernon Burchを代表する1枚なのかもしれませんね。

本作『Get Up』(1979年)は、「Mr. Sin」「To Make You Stay」といったフリーソウル人気曲をイメージして聴くと、ギャップがあるかもしれないディスコ路線の1枚に仕上がっています。

名ドラマーJames GadsonVernon Burch本人がプロデュースを手掛け、Tom Tom 84Fred WesleyRichard EvansTony Colemanがアレンジャーに起用されています。

Vernon Burch(vo、g)、James Gadson(ds)、David Shields(b)、Michael Thompson(key)、The Waters(back vo)がレコーディングに参加しています。

前述のタイトル曲「Get Up」「Never Can Find The Way (Hot Love)」といったシングル曲をはじめ、「Sammy-Joanne (One Half Woman One Half Man)」「Arrogant Lady」といったファンキーなディスコ/ファンクが本作の特長です。

また、そういったファンキー・サウンドの中で埋もれず存在感を示すVernon Burchのリード・ヴォーカルとバック・コーラスを務めるThe Watersによるヴォーカル・ワークも魅力的です。

ファンキー・ディスコで暑気払いはいかがですか?

全曲紹介しときやす。

「Never Can Find The Way (Hot Love)」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr./James Gadson作。シングルにもなったオープニング。個人的にはタイトル曲以上に気に入っています。Tom Tom 84のアレンジが冴え渡るキャッチー&ダンサブルなモダン・ソウルに仕上がっています。Vernonのリードとバック・コーラスのThe Watersの一体感もグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=uyF71e6LgjU

「Sammy-Joanne (One Half Woman One Half Man)」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr.作。David Shieldsのベースをはじめとするファンキー・グルーヴがたまらないディスコ・ファンク。Vernonのヴォーカル&ギターも存在感を示してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=OJOc0P4-bEM

「For You」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr.作。軽やかに疾走するファンキー・メロウ。パンチには欠けますが、この爽快感も捨て難い魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=yjQnp3KkM-E

「Dr. Do It Good」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr.作。スペイシー・シンセとうねるファンキー・リズムでグイグイと畳み掛ける重量ファンク。Fred Wesleyによるストリングス・アレンジも効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=XeDrQxuYPKI

「Get Up」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr.作。前述のようにディスコ定番として当時から人気のあったタイトル曲。Vernonのヴォーカル&ギター・カッティング、James Gadsonらのファンキー・リズム、The Watersによるアゲアゲなコーラス・・・どこをとってもダンス・クラシックらしい1曲ですね。また、Deee-Lite「Groove Is in the Heart」でサンプリングされた中盤のブレイク部分と♪ヒュー♪というスペイシーなシンセ音も印象的です。「Groove Is in the Heart」以外にAfrika Bambaataa「Death Mix (Part 2)」等のサンプリング・ソースにもなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=y5Tn7dSkaG8

「Try A Little Tenderness」
Harry Woods/Jimmy Campbell/Reginald Connelly作。Otis Reddingのヒットでお馴染みの名ソウル・バラードをカヴァー。当ブログではB.E.F.Ann Burtonのカヴァー紹介済みです。本ヴァージョンはVernonのソウル・マンとしての一面を見せつつも、本作らしいダンサブルなアレンジで聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=HXfPrCCRwEs

「Arrogant Lady」
Vernon Burch/Sandy Zahir作。Tom Tom 84による開放的なホーン・アレンジと共に一気に駆け抜けるファンキー・ブギー。
https://www.youtube.com/watch?v=bqnJBUcD7mg

「Once Again In My Life」
Vernon Burch/Howard Redmon, Jr./James Gadson作。ラストはメロウ・バラードでしっとりと締め括ってくれます。途中レゲエ調のサウンドも聴けます。
https://www.youtube.com/watch?v=LQfb7hhDJqc

未聴の方は2ndアルバム『When I Get Back Home』(1977年)もぜひチェックを!

『When I Get Back Home』(1977年)
When I Get Back Home: Expanded Edition
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2015年08月02日

Quantic Presents The Western Transient『A New Constellation』

Quanticによるジャズ・プロジェクト始動!☆Quantic Presents The Western Transient『A New Constellation』
A NEW CONSTELLATION [帯解説・ボーナストラック収録] (BRC477)
発表年:2015年
ez的ジャンル:ラテン・フレイヴァー・メロウ・ジャズ
気分は... :アナログ&アンサンブル・・・

今回は新作アルバムからQuanticことWill Hollandの新プロジェクトQuantic Presents The Western Transient『A New Constellation』です。

UK出身のDJ/ミュージシャン/プロデューサーQuanticに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。

 The Quantic Soul Orchestra『Stampede』(2003年)
 The Quantic Soul Orchestra『Pushin On』(2005年)
 Quantic & Alice Russell With The Combo Barbaro『Look Around The Corner』(2012年)
 Quantic『Magnetica』(2014年)

2007年からのコロンビアでの生活に一区切りをつけ、コロンビア時代の成果を踏まえつつ、エレクトロ・サウンドとの融合など新たなアプローチに取り組んだ『Magnetica』を昨年リリースしたQuanticことWill Holland

その後、N.Y.を拠点にしつつ、米国各地でDJやライブ活動を重ねるうち、彼の中でL.A.でのインストゥルメンタル・ジャズのスタジオ・アンサンブルへの欲求が高まり、実現したのが本プロジェクトThe Western Transientです。

Will Holland(Quantic)がプロデューサー、バンド・ディレクター、リズム・ギターを務め、それ以外にWilson Viveros(ds)、Sylvester Onyejiaka(sax、fl)、Todd Simon(tp、flh)、Brandon Coleman(key、moog)、Gabe Noel(b)、Alan Lightner(per、steel drum)という6名のミュージシャンがスタジオに集まり、一緒にレコーディングした作品が本作です。

参加ミュージシャンの当ブログ紹介作品への参加を調べてみると、Wilson ViverosはQuantic & Alice Russell With The Combo Barbaro『Look Around The Corner』(2012年)、Brandon ColemanはFlying Lotus『You're Dead!』(2014年)、Kamasi Washington『The Epic』(2015年)、Todd SimonはFlying Lotus『Cosmogramma』(2010年)、Alan LightnerはDexter Story『Seasons』(2013年)に参加しています。

このように見ると、L.A.音楽シーンへの重要作に参加している連中であることが確認できると思います。特にBrandon Colemanは、僕の中で最近気になっていたミュージシャンだったので、本作への参加は実に興味深いですね。

また、スタジオ・アンサンブルをテーマにした本作ではレコーディングにアナログ・テープを用い、伝統的なサウンドへのこだわりを見せています。このあたりもQuanticらしいこだわりですね。

オープニングの「Latitude」を聴いた時には、予想外に真正面からジャズしているので面喰いましたが、2曲目以降はQuanticらしいラテンのエッセンスを散りばめたメロウ・ジャズな演奏で魅了してくれます。全体的にゆったりとした演奏が目立ちますね。

これまでの活動とは大きく異なるジャズ・サウンドというよりも、これまでの成果をジャズ・ミュージシャンとのスタジオ・アンサンブルで進化させたサウンドという印象が強いです。個人的にはラテンなエッセンスもしっかり織り込まれており安堵しました。

楽曲はすべてWill Holland(Quantic)のオリジナルです。

本作で唯一違和感を覚えたのは国内盤解説でしょうか(笑)

全曲紹介しときやす。

「Latitude」
柔らかい温もりのアンサンブルとアナログへのこだわりが感じるられるサウンドが本作を象徴しているオープニング。正直、この正統派ジャズのアプローチは意外でした。

「Jumble Sale」
僕の一番のお気に入り。ラテン・フレイヴァーの効いた和やかなメロウ・グルーヴ。このあたりはQuanticらしさが出た演奏だと思います。スタジオ・アンサンブルならではのシンクロ感が実に心地好いですね。

「A New Constellation」
タイトル曲は夕陽を眺め、ゆったりとした時の流れを感じながら聴きたい気分のメロウな演奏です。Sylvester Onyejiaka、Todd Simonによるホーン・アンサンブル、Brandon Colemanのムーグが主役ですかね。

「Requiescence」
ラテン・フレイヴァーの効いたメロウ・ミディアム。ゆったりと過ごす夏の休日といった趣がいいですね。

「Nordeste」
この曲はブラジルのエッセンスも取り入れています。Quanticの引き出しの多さと、このメンバーによるスタジオ・アンサンブルの魅力が見事に結びついた演奏です。Brandon Colemanのムーグが効いています。

「Bicycle Ride」
Quantic自身のギターが目立つ哀愁モードの演奏です。コロンビア時代の成果をスタジオ・アンサンブルとして進化させているのがいいですね。

「Creation (East L.A.)」
アルバムからの先行シングル。スティール・ドラムの音色が鮮やかな、カリビアン/ラテン・テイストの仕上がり。息の合ったホーン・アンサンブルも含めてアルバムで最もキャッチーな演奏だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=sO4GnlMBYaU

「Mirzan」
前曲に続きスティール・ドラムの音色が聴かれるメロウ・ミディアム。アナログ・レコーディングならではの効果がよく出ていると思います。

「The Orchard」
本編のラストもメロウな演奏でロマンティックに締め括ってくれます。

国内盤CDには「Latitude (To The Point Version)」「Creation (East L.A) (The Reflex Revision)」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

Quantic関連の他作品もチェックを!

The Quantic Soul Orchestra『Stampede』(2003年)
Stampede

The Quantic Soul Orchestra『Pushin On』(2005年)
Pushin On (TRUCD074)

The Quantic Soul Orchestra with Spanky Wilson『I'm Thankful』(2006年)
I'm Thankful

The Quantic Soul Orchestra『Tropidelico』(2007年)
Tropidelico (TRUCD139)

Quantic『The 5th Exotic』(2001年)
The 5th Exotic

Quantic『Apricot Morning』(2002年)
Apricot Morning (TRUCD034)

Quantic『Mishaps Happening』(2004年)
Mishaps Happening

Quantic『An Announcement to Answer』(2006年)
An Announcement to Answer (TRUCD100)

The Limp Twins『Tales From Beyond the Groove 』(2003年)
Tales from Beyond the Groove (TRUCD057)

Quantic & His Combo Barbaro『Tradition in Transition』(2009年)
Tradition in Transition (TRUCD190)

Quantic Presenta Flowering Inferno『Death of the Revolution』(2008年)
Death Of The Revolution [日本語解説付き国内盤] (BRTRU163)

Quantic Presenta Flowering Inferno『Dog With a Rope』(2010年)
Dog With A Rope [ボーナストラック2曲・日本語解説付き国内盤] (BRC-262)

Quantic & Alice Russell With The Combo Barbaro『Look Around The Corner』(2012年)
Look Around The Corner [解説付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC325)

Ondatropica『Ondatropica』(2012年)
Ondatropica

Quantic『Magnetica』(2014年)
Magnetica [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC415)
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