発表年:1991年
ez的ジャンル:Native Tonguesフォロワー系ニュースクールHip-Hop
気分は... :ピーチファズ?
今回は90年代前半ニュースクール期のアルバムからK.M.D.『Mr. Hood』(1991年)です。
K.M.D.はN.Y.ロングビーチで80年代後半に結成されたHip-Hopグループ。メンバーは現在MF Doomとして活躍するZev Love X、彼の弟DJ Subro、Onyx the Birthstone Kid(オリジナル・メンバーのRodanとの交代で加入)の3名。
1990年にElektra RecordsからシングルPeachfuzzでデビューし、1991年には1stアルバムとなる本作『Mr. Hood』をリリースします。彼らのElektraとの契約には3rd BassのMC Serchも力を貸した模様です。ちなみに3rd Bassのヒット・アルバム『The Cactus Album』(1989年)にZev Love Xがゲスト参加しています。
順調な、1993年に2ndアルバム『Black Bastards』を制作したものの、人種差別的なジャケが問題となると同時に、メンバーのDJ Subroが事故により突然逝去するという不幸に見舞われ、あっけなくその活動に終止符を打つことになりました。
お蔵入りになっていた『Black Bastards』は2000年にリリースされています。
さて、本作『Mr. Hood』ですが、Native Tonguesフォロワー的なユルさ、楽しさに満ちた1枚です。雰囲気としてはDe La Soulの不朽のHip-Hopクラシック・アルバム『3 Feet High And Rising』(1989年)に近い感じでしょうか。A Tribe Called Quest好きの人も気に入るはずです。
プロデュースもStimulated Dummiesプロデュースの2曲を除き、グループ自身で手掛けています。アルバムにはNative TonguesからBrand Nubianが客演しています。
「Peachfuzz」、「Nitty Gritty」、「Who Me? (With An Answer From Dr. Bert)」というシングル曲をはじめ、ニュースクール期らしい空気に包まれたHip-Hopチューンにグッときてしまいます。
Hip-Hop黄金期の素晴らしさを実感できる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Mr. Hood At Piocalles Jewelry/Crackpot」
架空の人物Mr. Hoodが登場するオープニング。Eddie Floyd「Bring It on Home to Me」ネタのリズム・トラックに Johnny Guitar Watson「Superman Lover」のギター・ネタが加わるトラックと、ユルい感じのフロウは正に『3 Feet High And Rising』的ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=I2V3NH5D8z0
「Who Me? (With An Answer From Dr. Bert)」
シングル曲。Native Tongues的ユーモラスな雰囲気にグッとくるHip-Hopクラシック。The Isley Brothers「I Turned You On」、Bad Boys feat. K Love「Veronica」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=7ETgOjhLT6Q
「Boogie Man!」
この曲はStimulated Dummiesプロデュース。The Nite-Liters「Itchy Brother」をサンプリングしたファンキー・トラックが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=WHMqEn1ky70
「Mr. Hood Meets Onyx」
Booker T. & the M.G.'s「No Matter What Shape (Your Stomach's In)」をサンプリングしたスキット的な仕上りです。
「Subroc's Mission」
軽快なフロウで駆け抜けていきます。The Hassles「4 O'Clock in the Morning」、Adriana Caselotti「Dwarfs' Yodel Song」 をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=u6mX1hFcIFM
「Humrush」
この曲はStimulated Dummiesプロデュース。オールドスクール的なフロウでニュースクール的なユルさがあるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OdMo7XJwtBA
「Figure Of Speech」
派手さはありませんが好きです。Billy Paul「Me and Mrs. Jones」のサンプリングの使い方が絶妙ですね。Le Pamplemousse「Monkey See, Monkey Do」もサンプリングしています。
https://www.youtube.com/watch?v=W2Lp0P-mIRU
「Bananapeel Blues」
タイトルの通りブルース調です。ブルース調のHip-Hopチューンって意外にないかもしれませんね。Gil Scott-Heron & Brian Jackson「H2Ogate Blues」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=JpYcFMQnfYU
「Nitty Gritty」
Brand Nubianをフィーチャーしたシングル曲。Native Tongues好きのハートを掴む文句なしのHip-Hopクラシックですね。Shirley Ellis「The Nitty Gritty」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=bCLQYkipwoU
「Trial 'N Error」
印象的なベースラインのループをはじめとするジャズ・ネタのトラックに合わせた軽快なフロウはNative Tonguesフォロワーらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=mT9MgIMzsi8
「Hard Wit No Hoe」
Bobby Byrd「I Know You Got Soul」 ネタやSamba Soul「Mambo No. 5」ネタのリフを使ったトラックが格好良い1曲。
「Mr. Hood Gets A Haircut」
Mr. Hoodが登場するスキット。
「808 Man」
Donny Hathaway「Magnificent Sanctuary Band」ネタのリズムとThe Blackbyrds「Supernatural Feeling」ネタの上モノを組み合わせたトラックが実にキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=aB9eF92wjfw
「Boy Who Cried Wolf」
ユーモアの中に彼ららしいコンシャスなメッセージが込められた1曲。
「Peachfuzz」
彼らのデビュー・シングルにしてHip-Hopクラシック。ジャジー&メロウなトラックとユルいトラックは、A Tribe Called Questあたりと一緒に聴きたくなります。Bobbi Humphrey「Blacks And Blues」、O.C. Smith「On a Clear Day (You Can See Forever) 」ネタ。
https://www.youtube.com/watch?v=Q_3GgAALPkQ
「Preacher Porkchop」
ラップで説教しているかのようなコンシャスHip-Hop。
「Soulflexin'」
ニュースクールらしい空気に包まれた1曲。ファンキー・トラックが実にキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=eBsLtY15Q8U
「Gasface Refill」
ラストは彼らのアイデンティティを示した力強いライムを聴かせてくれます。The Pazant Brothers &The Beaufort Express「Chick A Boom」 、Eddie Harris「Get Down With It」ネタ。
https://www.youtube.com/watch?v=ToXlydl4lwE
幻の2nd『Black Bastards』(2000年)も評価が高いアルバムなのでチェックを!
『Black Bastards』(2000年)