2015年10月25日

Luciana Souza『Speaking In Tongues』

ヴォイスの可能性を探った進化形ワールド・ジャズ☆Luciana Souza『Speaking In Tongues』
Speaking in Tongues
発表年:2015年
ez的ジャンル:ワールド・ジャズ系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :秋の夜長とヴォイス、そしtハーモニカ・・・

今回は僕が大好きなブラジリアン女性ジャズ・シンガーLuciana Souzaの最新作『Speaking In Tongues』です。

シンガー/ギタリスト/コンポーザーWalter Santosを父親に、詩人Tereza Souzaを母親に持つブラジル、サンパウロ生まれ、現在はL.A.を拠点に活動する女性ジャズ・シンガーLuciana Souzaについて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の3枚。

 『Brazilian Duos』(2002年)
 『Duos II』(2005年)
 『The New Bossa Nova』(2007年)
 『Tide』(2009年)

最新作『Speaking In Tongues』は、ヴォイスの可能性を探った意欲作であり、Leonard Cohenとの共作2曲以外は歌詞のないヴォイスのパフォーマンスを披露してくれます。

本作もプロデュースは旦那のLarry Kleinし、レコーディングにはLionel Loueke(g、vo)、Gregoire Maret(harmonica)、Massimo Biolcati(b)、Kendrick Scott(ds)が参加しています。

西アフリカ、ペナン出身のLionel LouekeJazz The New Chapter(JTNC)の流れでも注目される才能溢れるギタリストですね。スウェーデン出身でイタリア系の血を引くベーシストMassimo Biolcatiは、Lionel Louekeらと組んだジャズ・トリオGilfemaのメンバーです。スイス出身のGregoire MaretPat Metheny Groupにも参加したハーモニカ奏者です。当ブログで最近紹介した作品でいえば、Cassandra Wilson『Glamoured』(2003年)で印象的な演奏を披露してくれました。Kendrick Scottは期待される"今ジャズ"ドラマーの一人であり、最新作『We Are the Drum 』への注目度も高いですね。

このようなメンバー構成になると、猫も杓子もJTNCの文脈で語りたがる今のご時世ですが(苦笑)、当ブログではあまり強調しすぎないようにしましょう。

アルバム全体は、LucianaやLionel Louekeら参加メンバーの持つワールド・ジャズ感覚をさらに発展させ、新境地を拓いた意欲作に仕上がっています。演奏も動と静のコントラストがあり、僕の事前イメージ以上にLouekeのギターをはじめ刺激的な音も楽しめます。

また、ワールド・ジャズ的サウンドの中でKendrick Scottのドラミングも存在感を示しており、新進ジャズ・ドラマーの才能も堪能できます。Maretのハーモニカもかなり効いていて、改めてハーモニカという楽器の魅力を認識できました。

Lucianaや参加メンバー達によるワールド・ジャズの新境地を存分に楽しみましょう。
今の時期にぴったりなジャズ作品だと思います。

Luciana Souza EPK of new album "Speaking in Tongues"
 https://www.youtube.com/watch?v=y_5UGuhhiP4

全曲紹介しときやす。

「At The Fair」
Scottの叩く変幻自在のリズムをバックに、LucianaのヴォイスとMaretのハーモニカが寄り添いながら駆け巡ります。中盤のLouekeのギターとMaretのハーモニカの掛け合いはなかなかエキサイティングです。

「Hymn」
Louekeのアコースティック・ギターとMaretのハーモニカがLucianaのヴォイスが一体となって聴く者を優しく包み込んでくれる透明感のある演奏です。

「Straw Hat」
刺激的なLouekeのギターの唸りと共に始まるエキサイティングな演奏です。Scottの躍動感のあるドラミングに牽引され、Lucianaのスキャットも絶好調です。Louekeのギターに改めて惚れ直してしまいます。

「Split」
Leonard Cohenとの共作の1曲目。抑えたミステリアスな雰囲気の演奏が印象的です。ゆっくりと流れていく感じがいいですね。

「Filhos De Gandhi」
アフロなトライバル感を取り入れた刺激的な演奏です。こういった演奏ではやはりLouekeのギターが活きますね。また、Scottも"今ジャズ"ドラマーらしいドラミングで魅了してくれます。

「A Pebble In Still Water」
Pedro AznarのスキャットをフィーチャーしたPat Metheny Groupのような雰囲気の美しい演奏です。こういう曲にはMaretのハーモニカがよく似合います。

「Free At Last」
Biolcatiのベースが牽引するGilfema的な雰囲気を発展させたような素晴らしいワールド・ジャズを楽しめます。

「A.M.」
LucianaのスキャットにMaretのハーモニカが絡む哀愁モードの真夜中のスキャットといった趣が実にいいですね。

「No One To Follow」
Leonard Cohenとの共作の2曲目。ラストはしっとりとした哀愁バラードで締め括ってくれます。ここでもMaretのハーモニカが胸に染み入ります。

Luciana Souzaの他作品もチェックを!

『Brazilian Duos』(2002年)
Duos Brasileiros

『Norte E Sul/North and South』 (2003年)
Norte E Sul/North and South

『Neruda』 (2004年)
Neruda

『Duos II』(2005年)
Duos II

『The New Bossa Nova』(2007年)
New Bossa Nova

『Tide』(2009年)
Tide

『Duos III』 (2012年)
Duos III [輸入盤]

『The Book of Chet』 (2012年)
The Book of Chet [輸入盤]
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2015年10月24日

Two Banks Of Four『City Watching』

Rob GallagherとDemusによるUKクラブジャズ・クラシック☆Two Banks Of Four『City Watching』
シティ・ウォッチング
発表年:2000年
ez的ジャンル:UKクラブジャズ・クラシック
気分は... :ダークな格好良さ!

UKクラブジャズ・クラシックよりTwo Banks Of Four『City Watching』(2000年)です。

Two Banks Of Four(2BO4)は元GallianoRob Gallagherと、Young Disciples等を手掛けた敏腕エンジニアのDemusDill Harris)によるクラブジャズ・ユニット。

これまで『City Watching』(2000年)、『Three Street Worlds』(2003年)、『Junkyard Gods』(2008年)という3枚のアルバムをリリースしています。

アルバムの完成度という点では、「Banks Of The Nile」「One Day」といった名曲を収録の2nd『Three Street Worlds』(2003年)も捨て難いですが、アンダーグラウンドなダーク感とシャープな格好良さが目立つと同時に、今年に入って再発CDがリリースされ再び注目が高まっている1st『City Watching』(2000年)を取り上げました。

レコーディングにはKate St. John(reeds)、Chris Bowden(sax)、Kevin Davey(tp)、Sally Herbert(violin)、Andy Hamill(b)、Alias Nelson(g)、Tony Vegas(scratches)、Culture G(vo)、Doug & Jean Caramouce(vo)、Marsha White(vo)、Paul Jason Fredericks(vo)、The Red Egyptians(vo)が参加しています。また、Ski Oakenfullがアレンジが参加しています。

全体として、プログラミングと生音を巧みに融合させたUKクラブジャズ・クラシックと呼ばれるに相応しい内容になっています。ダンス・ミュージックでありながら、しっかりジャズしているのが魅力ですね。

ダークでミステリアスなクラブ・アンセム「Skylines Over Rooftops」、ブロークンビーツ感覚の好カヴァー「Afro Blue」、エキゾチックなスピリチュアル・ジャズ「Erols Cafe」、荒削りな疾走感が格好良い「Last Dance」等が僕のオススメです。

UKクラブジャズらしい格好良さに溢れた1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Skylines Over Rooftops」
オススメその1。ダークでミステリアスな魅力を持ったオープニングはクラブ・アンセム。中盤以降のアンダーグラウンドな疾走感がたまりません。
https://www.youtube.com/watch?v=G4eky6_y9sE

「Theme De La Tete」
ワルツ調の美しいインスト。映画のサントラのような趣がありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=nHPyWsq3ac8

「Afro Blue」
オススメその2。Mongo Santamaria作の人気アフロ・キューバン・クラシックをカヴァー。John ColtraneやDee Dee Bridgewater、最近ではErykah BaduをフィーチャーしたRobert Glasper Experimentのカヴァーでもお馴染みですね。本ヴァージョンは女性ヴォーカルをフィーチャーしたブロークンビーツ感覚で疾走するクラブジャズで聴かせてくれます。間違いなく格好良いです。
https://www.youtube.com/watch?v=88e3MlG7L-o

「Time Flies」
ダークな緊張感がUKクラブジャズっぽいですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=7AbdajJJW20

「Erols Cafe」
オススメその3。タイトルにそそられます(笑)。Pharoah Sanders「Village Of The Pharoahs」を引用したエキゾチックな雰囲気の実験的なスピリチュアル・ジャズ。

「Last Dance」
オススメその4。荒削りな疾走感が格好良いダンス・チューン。コズミックな雰囲気やスクラッチも含めてグッド!終盤のトランペットもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=otZ_E0N2fTU

「Speedy's Auto Repair」
ダークに疾走するインスト。タイトル通りスピーディーです。

「Perilous Ways」
オススメその5。アシッド・ジャズ重要バンドGalliano出身らしいジャズHip-Hop。Tony Vegasによるスクラッチもかなり効いています。

「Hook & A Line」
オススメその6。本作らしい格好良いダークネスを堪能できる1曲。闇夜を駆け抜けていく感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=CLYF318Ahpg

「Routemaster」
ミステリアスかつ哀愁モードで疾走るインスト。ロンドンの曇り空が似合いそうな雰囲気ですね。

「Street Lullaby Pt. 1/Lullaby Reprise」
哀愁モードのヴォーカル・チューン。美しいストリングスが雰囲気を盛り上げてくれます。後半はディープなインストへ展開します。
https://www.youtube.com/watch?v=u24owmN3TbY

「Street Lullaby (2 Banks Of 4 Remix)」
国内盤ボーナス・トラック。「Street Lullaby」のリミックスその1。

「Street Lullaby (Fourtet Remix)」
国内盤ボーナス・トラック。オススメその7。「Street Lullaby」のリミックスその2。Four Tetによるリミックスです。個人的にはオリジナル以上に、フューチャリスティックなダンス・チューンに仕上がった本リミックスが好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=xNTHRMAgCkU

Two Banks Of Fourの他作品もチェックを!

『Three Street Worlds』(2003年)
Three Street Worlds

『Junkyard Gods』(2008年)
ジャンクヤード・ゴッズ
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2015年10月22日

Judee Sill『Heart Food』

悲運の女性SSWの美しくも切ない2nd☆Judee Sill『Heart Food』
ハート・フード
発表年:1973年
ez的ジャンル:悲運の女性SSW
気分は... :寂しげな歌声が愛おしい・・・

今回は悲運の女性シンガー・ソングライターJudee Sillの2ndアルバム『Heart Food』(1973年)です。

Judee Sillは1944年L.A.生まれ。

複雑な家庭環境で育ってきた影響からか、Judeeは10代で家出をし、非行を繰り返していました。ドラッグに溺れる一方でクラブやコーヒー・ハウスでライヴ活動を行うなどミュージシャンの道を志すようになります。

そんな中でL.A.のガレージ・バンドThe LeavesのメンバーJim PonsがJudeeの楽曲「Dead Time Bummer Blues」を気に入り、グループでレコーディングします。さらにThe Leaves解散後にJim Ponが加入したThe TurtlesがJudeeの楽曲「Lady-O」をシングル曲として取り上げたことで彼女の名がシーンで知られるようになります。

そんな彼女に目を付けたのがDavid Geffenであり、Geffenが設立したばかりのAsylum Recordsとの契約に成功します。Jackson Browneをデビューさせるために設立されたAsylumでしたが、結果としてJudeeのデビュー・アルバム『Judee Sill』(1971年)が記念すべきAsylumの第1弾アルバムとなりました。

『Judee Sill』からのシングル「Jesus Was a Cross Maker」Graham Nashがプロデュースし、さらにGraham NashDavid Crosbyのツアーのオープニング・アクトをJudeeが務めました。

Asylumとしては、JudeeをJoni Mitchellのようなアーティストとして売り出したかったのでしょうが、期待したほどの成功を収めることはできませんでした。全体的に地味だし、キリスト教的な歌詞はヒッピー全盛の時代に若者の支持は得られづらかったのでしょうね。

1973年には今回紹介する2ndアルバム『Heart Food』(1973年)をリリースしますが、こちらの売れ行きも芳しくなく、Asylumとの契約を打ち切られてしまいます。

1979年にドラッグの過剰摂取につき死亡。享年35歳。

悲運のシンガー・ソングライターという点でいえば、Nick Drakeあたりとイメージが重なりますね。

フォークと宗教音楽、バロック音楽が結びついたJudeeの美しくも儚い音世界には、聴く者の胸を揺さぶる何か特別なものが宿っている気がします。

Turtlesも取り上げた「Lady-O」Graham Nashプロデュースの「Jesus Was a Cross Maker」が収録された1st『Judee Sill』(1971年)を最初に取り上げるべきかもしれませんが、今回は個人的に彼女の曲で一番好きな「The Kiss」が収録されている2nd『Heart Food』(1973年)を取り上げました。

前作も手掛けたHenry Lewyがプロデュースし、レコーディングにはJim Gordon(ds)、Buddy Emmons(g)、Spooner Oldham(key)、Chris Ethridge(b)、Gloria Jones(vo)、Louie Shelton(g)、Richard Perissi(french horn)、Harris Goldman(violin)、David Schwartz(viola)、Carolyn Willis(vo)、Emil Richards(per)、Bobbye Hall(per)等が参加しています。

僕の一番のお気に入り「The Kiss」やフリーソウル人気曲「Soldier Of The Heart」あたりがハイライトだと思います。

それ以外であれば、ソウルフルな「Down Where The Valleys Are Low」、エレピの効いたフォーキー「The Phoenix」も僕好み。また、ラストの大作「The Donor」はミサのエッセンスを取り入れたJudeeならではの世界観が反映された1曲です。

「The Kiss」に代表される彼女の美しくも何処か寂しげな歌声がたまらなく愛おしくなります。

楽曲はすべてオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「There's A Rugged Road」
カントリー・タッチのオープニング。将来へ希望を抱きながら、現在の孤独で苦しい状況を耐え忍ぶ開拓者を歌う歌詞は、Judeeの当時の心情を反映したものなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=3FLrRyRKWGc

「The Kiss」
前述のように僕が一番好きなJudee作品。かのXTCのAndy Partridgeをして、"これまで聴いた最も美しい歌"と言わしめた名曲です。フォークとバロック音楽が結びついた彼女らしい純粋無垢な美しくも儚い音世界の魅力が最も実感できる曲だと思います。苦悩や苦しみから解放されたいと神に救いを求める彼女の美しすぎる歌声と、その後の彼女を待ち受ける不運を重ね合わせると胸に込み上げてくるものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=UdnQkQYT63E

そういえば、"北欧のStevie Wonder"ことTuomoが本曲にインスパイアされて作った「Hold Me (Till The Morning)」という曲を当ブログで紹介したのを思い出しました。
Tuomo「Hold Me (Till The Morning)」
 https://www.youtube.com/watch?v=5EResJk9tWo

「The Pearl」
この曲もカントリー・タッチです。綺麗なパールを周囲に長らく求めてきたが、実は自分の中にあることに気づきつつ、それを掴めずにいるモヤモヤ感が歌われています。
https://www.youtube.com/watch?v=wJDfet1w05E

「Down Where The Valleys Are Low」
オルガンやヴァイヴの音色や女性コーラスが印象的なソウル・フレイヴァーの仕上がり。自分の居場所を探す切なる願いが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=mV_erIikfA4

「The Vigilante」
70年代西海岸女性SSWらしいカントリー・フレイヴァーの仕上がり。穏やかな語り口ながらもJudeeのキリスト教的倫理観が表現されています。
https://www.youtube.com/watch?v=E7Uk5ul-tME

「Soldier Of The Heart」
ファンキーな味わいの本曲は、アルバムの中で最もキャッチーな仕上りであり、Free Soulのコンピにも収録されました。Judeeらしからぬ躍動感ですが、「The Kiss」と並ぶ本作のハイライトだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=nlxyuei6PzI

「The Phoenix」
シンプルながらも味のあるフォーキー・チューン。エレピの音色が効いています。不死鳥のように生き抜こうしつつ、葛藤するJudeeの切なる歌声がたまらくいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=VrxtJorXiiQ

「When The Bridegroom Comes」
当時のJudeeの恋人であったDavid Omer Beardenとの共作。ピアノの弾き語りで結婚式の花嫁について歌ったものですが、花嫁と精霊を結び付けるあたりがJudeeらしい歌世界かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=cz_tQD4DgwM

「The Donor」
ラストは9分を超える大作。ミサの歌詞が繰り返し歌われる、Judeeの宗教音楽からの影響が色濃く反映されたある意味最もJudee Sillらしい曲かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=I61zfxc2cHo

『Judee Sill』(1971年)
ジュディ・シル

『Dreams Come True』(2005年)
ドリームズ・カム・トゥルー
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2015年10月21日

The Real Seduction『It's Real』

再評価が高い90年代男性R&Bグループ☆The Real Seduction『It's Real』
the real seduction it's real.jpg
発表年:1993年
ez的ジャンル:実力派男性R&Bグループ
気分は... :この実力で1作のみとは・・・

今回は90年代男性R&Bグループ作品からThe Real Seduction『It's Real』(1993年)です。

The Real Seductionはニューオリンズで結成された男性R&Bグループ。メンバーはStacy BrandonTracy BrandonのBrandon兄弟、Lawrence Lee Pierce IVDennis Gordonという4名。

大きな商業的成功を収めることはなく、本作『It's Real』(1993年)のみでシーンから姿を消したグループですが。僕もリアルタイムで聴いていた時はノーチェックでした。しかしながら、90年代R&B名作として『It's Real』は今日高い評価を得ています。

80年代から活動している実力派コーラス・グループであり、その素晴らしいヴォーカル・ワークを如何なく発揮しているのがアルバムの魅力だと思います。

同時に、曲ごとに多彩なプロデューサーを起用し、アルバムにメリハリが効いている点も本作のトータルな魅力を高めています。

Eddie "DJ Eddie F" FerrellHeavy D & the Boyz)、Nevelle HodgeBobby "Bobcat" ErvinJoshua ThompsonGene LennonDamon ThomasThe Underdogs)、Todd Chapman等がプロデュースを手掛けています。

シングルになった「Ain't Nothin Wrong」や至極のスロウ・ジャム「This Is What I Would Do」あたりがハイライトだと思いますが、それ以外の曲も聴き応え十分です。

再評価されるのも納得の充実の1枚です。
とりあえず「Ain't Nothin Wrong」「This Is What I Would Do」を聴いてみてください!

全曲紹介しときやす。

「We Got Style」
ア・カペラを実力を示すアルバムのイントロ。

「Ain't Nothin Wrong」
シングルにもなった代表曲。Heavy D & the BoyzのEddie "DJ Eddie F" FerrellとNevelle Hodgeのプロデュース。IntroのKenny "G-Love" Greeneがバック・コーラスで参加しています。キャッチーなNJSは90年代男性R&B好きには間違い仕上がりです。この1曲のみでも本作は買いなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=spFAR8UZ0no

「Amnesia」
L.L. Cool J等で知られるBobby "Bobcat" Ervinプロデュース。甘く危険な香りが漂うこの時代らしいR&Bグルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=Mb-uHND5Zts

「Baby Where Were You」
この曲もシングルになりました。Joe「All the Things (Your Man Won't Do)」のソングライティング&プロデュース等で知られるJoshua ThompsonとGene Lennonのプロデュース。素晴らしいヴォーカル・ワークを前面に打ち出したオーセンティックなバラード。
https://www.youtube.com/watch?v=PETFJm9xjJs

「Everytime I See You」
後にThe Underdogsで売れっ子プロデューサーとなるDamon Thomasプロデュース。イントロだけ聴くとオールドスクールHip-Hopかと思いましたが、本編はヴォーカル・アレンジが絶妙な美メロのミディアムです。
https://www.youtube.com/watch?v=Hgtq-48Pm5s

「All I Am」
Todd Chapman/Dave Pensadoプロデュース。切々と歌い上げるビューティフルなミディアム・スロウ。
https://www.youtube.com/watch?v=T_f7IhUybIs

「This Is What I Would Do」
Damon Thomasプロデュース。ソロ・デビュー前のJesse PowellやSheree Fordがバック・コーラスで参加しています。「Ain't Nothin Wrong」と並ぶハイライトかもしれませんね。曲良し、ヴォーカル良し、プロダクション良しと三拍子揃った傑作スロウ・ジャムだと思います。Sheree Fordの女性コーラスが加わることで、グッとムードが高まるのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=_oW9a73sB9c

「Love Around The World」
Biff Vincent/Mike Eckart/Charlie Watts プロデュース。僕好みの軽快&爽快なミディアム・グルーヴ。愛に満ちた感じがいいですね。ラップ・パートもいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=AZi7HmbnEms

「I Cry」
メンバー自身とDa Nayborhoodzのプロデュース。ドゥー・ワップ・スタイルでヴォーカル・グループとしての実力を存分に示してくれます。

「Missing」
SteviDubプロデュース。切ないメロディを素晴らしいヴォーカルで歌い上げます。ヴォーカルの実力があってこそ、こういう仕上りになるのでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=5aEQVvtKB9g

「Stop Frontin」
Amy Shiotaniプロデュース。オーセンティックなスロウ・ジャムですが、ラップ調ヴォーカル等のアクセントで懐の深さを示してくれます。

「30 Minute Love Caper」
メンバー自身のプロデュース。再びドゥー・ワップ・スタイルでヴォーカル・グループとしての意地を示して、アルバムを締め括ってくれます。

アルバムのクレジットをみると、Thanks欄に日本向けのクレジットがあり、その中には久保田利伸の名もあります。このあたりはどのような関係があったのですかね?
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2015年10月20日

Shadow『Shadow』

元Ohio Playersメンバーによる3人組。Leon Wareプロデュース!☆Shadow『Shadow』
シャドウ
発表年:1980年
ez的ジャンル:アーバン/ライト感覚メロウ・ソウル
気分は... :濃すぎないのが魅力!

今回は元Ohio Playersのメンバー3名が結成したグループShadowの2ndアルバム『Shadow』(1980年)です。

ShadowBilly Beck(key、vo)、James "Diamond" Williams(ds、per、vo)、Clarence "Chet" Willis(g、b、vo)という元Ohio Playersのメンバー3名によるグループ。

グループはDon Mizellプロデュースによる『Love Lite』(1979年)、Leon Wareプロデュースによる『Shadow』(1980年)、『Shadows In The Streets』(1981年)という3枚のアルバムをリリースしています。

また、当ブログでも紹介したLeon Ware『Rockin' You Eternally』(1981年)にも彼らが参加しています。

本作『Shadow』(1980年)はLeon Wareとタッグを組んだ第1弾作品となります。

良く悪くも濃すぎないのがこのグループの特徴であり、濃厚なファンク/ソウルを期待すると、少し肩透かしを食うかもしれません。それよりもAOR寄りのアーバン・メロウ感覚が本作の魅力だと思います。Leon Wareにプロデュースを依頼したのも、そうした意図があったのでしょう。

彼らのスモーキーなヴォーカル・ワークは何処となくMichael McDonaldを連想させるとことがあり、その意味でAOR好きの人も楽しめる1枚だと思います。

特に、シングルにもなった「Mystery Dancer」「Hot City」の2曲は、まさにMichael McDonaldがブギー・ダンサー/メロウ・ダンサーを歌う様をイメージしてしまいます。勿論、僕のお気に入りの2曲です。

それ以外に「I Can't Keep Holding Back (My Love)」「Beyond The Finish Line」「Village Destiny」もオススメです。

「I Can't Keep Holding Back (My Love)」以外はメンバーとLeon Wareのソングライティングによるものです。

全曲紹介しときやす。

「Mystery Dancer」
ファンキーなベースライン、カッティング・ギターと共に始まるブギー・ダンサーがオープニング。シングルにもなりました。Michael McDonaldをイメージさせるスモーキーなヴォーカル・ワークがいいですね。ドラマチックなストリングスも効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=BcF1GU-H7rc

「I Can't Keep Holding Back (My Love)」
Leon Ware/Linda Clay作。哀愁のメロウ・バラード。Leon Ware/らしいアーバン・メロウを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=N6P4vkbSnXg

「Hot City」
スモーキーなコーラス・ワークが活きるアーバン・ダンサー。この曲もシングルになりました。Michael McDonaldがメロウ・ソウルを歌うとこんな感じなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=2TB0j9z-yAc

「You Can Do It」
AOR調のメロウ・バラード。このグループの濃すぎないヴォーカルワークがプラスに作用していると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=XDyyGWPMcWo

「Can You Keep It Up」
キャッチーなダンス・チューン。華やかなサウンドが80年代らしくていいですね。アレンジの妙が光ります。
https://www.youtube.com/watch?v=f93_OwS-_NM

「Sweet Movin' (In My Life)」
疾走するファンキー・グルーヴ。僕好みの曲調ではありませんが、この時代ってこのタイプの曲が多かったですね。
https://www.youtube.com/watch?v=uMdWMY_n68s

「Beyond The Finish Line」
軽くレゲエ・フレイヴァーも取り入れたメロウなミディアム・グルーヴ。ヴォコーダーも飛び出すのはZapp/Rogerファミリーとの関わりも深かったBilly Beckらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=3ALrvsn8ltA

「Village Destiny」
このグループの魅力がよく伝わってくるメロウ・ソウル。彼らがメロウ大王Leon Wareにプロデュースを依頼した意図が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=0sx6jp-JXZk

ご興味がある方は1st『Love Lite』(1979年)、3rd『Shadows In The Streets』(1981年)もチェックを!

『Love Lite』(1979年)
ラヴ・ライト

『Shadows In The Streets』(1981年)
Shadows In The Streets
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