2015年10月19日

Peter Tosh『Equal Rights』

レゲエ界の“歩くカミソリ”の挑発的な代表作☆Peter Tosh『Equal Rights』
Equal Rights
発表年:1977年
ez的ジャンル:闘争系ルーツ・ロック・レゲエ
気分は... :カネか功徳か・・・

今日はソリッドな雰囲気の作品が聴きたい気分・・・

そこでセレクトしたのは、The Wailersの元メンバー、レゲエ界の"歩くカミソリ "Peter Toshの代表作『Equal Rights』(1977年)です。

Peter Toshは1944年ジャマイカ、キングストンのトレンチタウン生まれ。

1961年頃のJoe Higgsの紹介で、Bob MarleyBunny Wailerと出会い、彼ら3名を含む6名のコーラス・グループThe Teenagersを結成します。

グループはThe Wailing RudeboysThe Wailing Wailersと名前を変えながら活動を続け、最終的にはMarley、Wailer、Toshの3名が残り、The Wailersを名乗るようになりました。

そして、ご存知の通り、Island Recordsとの契約に成功した The Wailersは、1973年にアルバム『Catch a Fire』をリリースし、レゲエを全世界に知らしめ、音楽界に衝撃を与えました。

しかしながら、Island第2弾アルバム『Burnin'』(1973年)を最後にToshはBunny Wailerと共にグループを脱退してしまいます。Bob MarleyをフロントマンとしてプッシュしたいIslandの社長Chris BlackwellらとTosh、Wailerの間に大きな確執が生じたようですね。

ソロ活動を開始したPeter Tosh『Legalize It』(1976年)、『Equal Rights』(1977年)という過激なメッセージを打ち出したアルバムで、Bob Marleyとは異なるかたちでレゲエ・シーンにインパクトを与えました。

さらに、The Rolling Stonesとツアーを一緒に回ったことから、『Bush Doctor』(1978年)、『Mystic Man』(1979年)、『Wanted Dread & Alive』(1981年)という3枚のアルバムはRolling Stones Recordsからリリースされました。

その後も『Mama Africa』(1984年)、『No Nuclear War』(1987年)といったアルバムをリリースしますが、1987年9月11日に自宅で3人組の暴漢に襲われ、射殺されてしまいます。享年42歳。

長身の元祖ルード・ボーイといったイメージが強いPeter Toshですが、そんな彼の闘うレベル・ミュージックを象徴する作品が『Equal Rights』(1977年)です。直訳ですが『平等の権利』という邦題がしっくりきます。

本作ではバック・バンドWord Sound & Powerを結成し、Toshの強烈なメッセージをサウンド面で支えています。メンバーは後にレゲエ界最強のリズム・セクションとなるSly & RobbieSly Dunbar(ds)、Robbie Shakespeare(b)、元The WailersEarl Lindo(key)とAl Anderson(g)、さらにベテランのSkully(per)という編成です。やはり、Sly & Robbieによる無駄を排除した鋭いリズムは"歩くカミソリ"Toshにぴったりですね。

それ以外に盟友Bunny Wailer(back vo)をはじめ、Carlton Barrett(ds)、Tyrone Downie(key)といったThe Wailersメンバー、Harold Butler(clavinet)、Abdul Wali(g)、Karl Pitterson(g)、"Dirty" Harry Hall(ts)、Bobby Ellis(ts)がレコーディングに参加しています。

Peter Tosh自身がプロデュースを手掛けています。

The Wailersの名曲のセルフ・リメイク「Get Up, Stand Up」、Toshのテーマ曲と呼べる「Stepping Razor」、Toshの剥き出しのメッセージが印象的なタイトル曲「Equal Rights」、トラディショナルな黒人霊歌を改題した「Downpressor Man」などレベル・ミュージックとしてのレゲエの持つパワーを感じさせる曲がズラリと並びます。

神様Bob Marleyとは異なるオーラを放つ、"歩くカミソリ "Peter Toshの魅力が見事に凝縮された1枚だと思います。

バックを務めるWord Sound & Powerの格好良い演奏も魅力です。

全曲紹介しときやす。

「Get Up, Stand Up」
『Burnin'』(1973年)に収録されたToshとBob Marleyの共作曲の歌詞の一部を改変したセルフ・リメイク。Marleyのヴォーカルのイメージが強いレゲエ・アンセムですが、Toshにしてみれば、コレは俺の曲という思いがあるのかもしれませんね。確かにキャラ的にはMarleyよりToshにイメージに近い曲かもしれませんね。Word Sound & Powerによるソリッドなサウンドが最高にクールですね。
https://www.youtube.com/watch?v=mnq1whAJ05Q

「Downpressor Man」
Nina Simone等も歌っていたトラディショナルな黒人霊歌「Sinnerman」をラスタファリアニズムの人が使うアムハラ語を用いたタイトルを冠してリメイクしたもの。The Wailers時代の1966年のヴァージョンをはじめ、何度となくToshは本曲をレコーディングしています。本ヴァージョンは切れ味のあるバックとToshのヴォーカルが一体となり、聴く者の心を鋭くえぐります。
https://www.youtube.com/watch?v=Wu59WhIN8rk

Sinead O'Connor、Goldfinger、Bushman、さらには息子のAndrew Tosh等もカヴァーしています。

「I Am that I Am」
邦題『俺は俺』。自身の存在を訴える少し哀愁を帯びたヴォーカルが印象的です。Toshを過小評価したIsland Records、Chris Blackwellあたりへの対抗心も感じられますね。
https://www.youtube.com/watch?v=ZPUNyxvEma4

「Stepping Razor」
映画『Rockers』のサントラにも収録された"歩くカミソリ"Toshのテーマ曲と呼べる代表曲。Joe HiggsがルードボーイToshのために書いた楽曲であり、The Wailing Wailers時代の1965年にもレコーディングしています。デンジャラスな"カミソリ"ルードボーイのイメージにピッタリの格好良い演奏です。Sublime、Bushmanもカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=9o_jVHmU_V4

Peter Tosh & The Wailing Wailers「Stepping Razor」
 https://www.youtube.com/watch?v=Lys7Q8EOzOs

「Equal Rights」
♪俺が平和などいらない♪俺が欲しいのは平等の権利と正義だけ♪という強烈がメッセージが刺さるタイトル曲。ルーツ・ロック然とした演奏も含めてレゲエらしい名曲だと思います。この曲もBushmanがカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=iqeOTg2a-l8

「African」
アルバムの中では比較的リラックスした雰囲気の演奏ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=95UyWWUdY6k

「Jah Guide」
タイトルの通り、ラスタ色が全面に出た曲です。ルーツ・ロックらしいゆったりとしたグルーヴがいい感じですね。
https://www.youtube.com/watch?v=G_hGGdNDuf4

「Apartheid」
ラストはタイトル通り、南アフリカの人種隔離政策を歌ったものです。ゆったりとした中にもファンキーな味わいのある演奏が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=1jOvXC2BAoY

Peter Toshの他作品もチェックを!

『Legalize It』(1976年)
Legalize It

『Bush Doctor』(1978年)
Bush Doctor

『Mystic Man』(1979年)
Mystic Man

『Wanted Dread & Alive』(1981年)
ウォンテッド・ドレッド・アンド・アライヴ

『Mama Africa』(1984年)
Mama Africa

『No Nuclear War』(1987年)
No Nuclear War
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2015年10月18日

Winfree『Past, Present & Future』

人気トークボクサーによるモダン・ファンク/ブギー☆Winfree『Past, Present & Future』
winfree past, present & future.jpg
発表年:2015年
ez的ジャンル:トークボクサー系モダン・ファンク/ブギー
気分は... :自由を勝ち取る!

今回は新作R&BアルバムからWinfree『Past, Present & Future』です。

Winfreeはオハイオ出身のシンガー/トークボクサー。オハイオといえば、トークボックスのオリジネイター故Roger Troutmanと同郷であり、それだけで期待してしまうアーティストですね。

これまで『My Diary』(2006年)、『Gotham City』(2009年)、『Somethin 2 Ride To』(2011年)、『No Negativity』(2014年)といったアルバムをリリースしており、トークボクサー好きには名の知れたアーティストといえるでしょう。

これまでもHip-Hopアーティストをフィーチャリングしたウエッサイ/G-Funk系のサウンドが印象的でしたが、本作ではフランス人ファンク/ソウル・プロデューサーWadzにプロデュースを委ね、さらに洗練された極上のモダン・ファンク/ブギーを聴かせてくれます。

Wadzが主宰するFonkfatherz Recordsからのリリースとなります。

アルバム全体としては、WinfreeのトークボックスやラッパーをフィーチャーしたHip-Hop色は控えめですが、その分、メロウに洗練されたモダンなファンク/ブギー・サウンドを前面に打ち出した内容となっています。キャッチーかつメロディアスな曲も多いので80年代ブラコン好きの人もかなり楽しめるはずです。

個人的には「Rocket」「Shake It Tonight」「Love Touch」「Work It Out」といったメロウ・ファンクがお気に入りです。スロウ系では「Beautiful」「Teardrop」がオススメです。

SFアニメ的なジャケもいい感じですね。
かなり僕の嗜好ど真ん中な1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Beautiful」
オススメその1。Joe Sample「In All My Wildest Dreams」をサンプリングしたメロウ・チューンがオープニング。2Pac「Dear Mama」、TQ「Westside」でも用いられたサンプリング・リソースを用いるあたりに、WinfreeやWadzのウエッサイ/G-Funk愛を感じますね。
https://www.youtube.com/watch?v=p4dhBIW33WA

「Love Touch」
オススメその2。流行のモダン・ディスコ/ブギー・サウンドに呼応するメロウ・ダンサー。トークボックスも実に爽快です。

「Blink Of An Eye」
80年代ブラコン好きの人が喜びそうなアーバン・メロウ。キラキラ感のあるシンセ・サウンドがいいですね。

「Rocket」
オススメその3。重心の低いグルーヴとキャッチーなメロディ、キラキラしたサウンドのバランスが絶妙なメロウ・ファンク。
https://www.youtube.com/watch?v=vmQVezcv0zo

「Somebody」
メロディアスかつセクシーなモダン・ソウル。Winfreeのヘタウマ・ヴォーカルが見事にハマっています。

「Work It Out」
オススメその4。Simply Whitneyの女性ヴォーカルをフィーチャー。華やかな女性ヴォーカルが加わり、華やかさが増したメロウ・ファンクに仕上がっています。

「Past, Present & Future」
タイトル曲はWinfreeのファルセット・ヴォーカルがハマったスロウ・ジャムです。
https://www.youtube.com/watch?v=OMR8vET5F2Q

「360」
オススメその5。軽快なグルーヴ感が魅力のモダン・ディスコ・ファンク。さりげないトークボックスもいいですね。Wadzの音作りの巧さを感じます。

「All That I Ever Dreamed Of」
この曲も80年代ブラコン調ですね。Winfreeのヴォーカルの声質がWadzのメロウ・ファンク・サウンドによくマッチしています。

「Teardrop」
オススメその6。小粋なセンスが光るメロウ・バラード。Winfreeがファンク一辺倒ではないことを認識させてくれる素敵な1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=K6sePVk8uQ0

「Afraid Of Love」
Wadzのシンセ・サウンドの妙にグッとくるミディアム・ファンク。

「Shake It Tonight」
オススメその7。Atomicのラップをフィーチャーしたスタイリッシュなモダン・ファンクで締め括ってくれます。アルバムの中でWinfreeのトークボックスが最も目立つ曲でもあります。

ご興味がある方はWinfreeの他作品もチェックを!

『My Diary』(2006年)
My Diary

『Gotham City』(2009年)
ゴッサム・シティ

『Somethin 2 Ride To』(2011年)
サムシング・トゥー・ライド・トゥー

『No Negativity』(2014年)
ノー・ネガティヴィティ

また、本作を気に入った方は、本作と同じくWadzがプロデュースし、Fonkfatherz RecordsからリリースされたTim Jones『Everyday』も同時チェックするといいのでは?こちらはよりウエッサイ/G-Funk色の強い仕上がりです。Winfreeも参加しています。

Tim Jones『Everyday』(2015年)
tim jones everyday.jpg
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2015年10月17日

Voices In Latin『Something Cool』

女性シンガー/アレンジャーの才が発揮されたセルメン路線のポップ作品☆Voices In Latin『Something Cool』
Something Cool
発表年:1968年
ez的ジャンル:女性シンガー/コンポーザー/アレンジャー系ラテン・ポップ
気分は... :実にクール!

今回はUKの女性シンガー/コンポーザー/アレンジャーBarbara MooreによるユニットVoices In Latinの『Something Cool』(1968年)です。

いわゆるライブラリー・ミュージックをメインに活動してきた人なので、なかなか表舞台で出てくることは少ないですが、長きに渡りUK音楽業界に貢献してきた人です。

Barbara Mooreは1932年イギリス、ブラッドフォード生まれ。父Arthur Birkbyが著名なアレンジャーであった影響で、彼女も音楽の道を歩むようになります。

彼女自身は父と同じくアレンジャーを目指していましたが、当時の音楽業界では女性アレンジャーが活躍できる環境が整っておらず、セッション・シンガー/ピアニストとして、テレビ、ラジオ、レコーディングの仕事をこなし、キャリアを重ねていきます。BBCの人気音楽番組『Top of the Pops』等で有名ミュージシャンのバック・コーラスを務めた女性ヴォーカル・グループThe Ladybirdsにも参加していた時期があるようです。

1966年にはソロ・アルバム『A Little Moore Barbara』をリリースし、それに続いてリリースされたのがVoices In Latin名義でリリースされた本作です。

一応、Voices In Latinはヴォーカル・グループという体裁をとっていましたが、実質はBarbara Mooreのソロ・アルバムと言って差し支えないでしょう。バック・ヴォーカルにはLadybirdsの中心シンガーMaggie Stredderも参加しています。

本国UKでは『Voices In Latin』、USでは『Something Cool』のタイトルでリリースされました。上記ジャケはUS盤であり、UK盤はジャケも異なります。お馴染みなのはコチラのUS盤ジャケなのでは?

アルバムの内容としては、ユニット名からも想像できますが、Sergio Mendes & Brasil '66を意識したラテン・フレイヴァーのポップ・アルバムに仕上がっています。ヴォーカル&スキャットを配した小粋なポップ・サウンドは、Barbaraのアレンジャーとしての才を楽しむにはうってつけかもしれません。

有名曲カヴァー、オリジナル曲共に曲良し、ヴォーカル&スキャット良し、アレンジ良しと三拍子揃っているのがいいですね。Barbara本人の小粋なピアノが意外に効いているので、そのあたりでも楽しめます。

セルメン好きの人は間違いなく気に入るはず!

全曲紹介しときやす。

「Sunshine Superman」
Donovanの大ヒット曲をカヴァー。少しテンポを上げた躍動感のあるグルーヴィーな仕上がりがかなりいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=woV-KX5mhnc

「Hideaway」
Barbara Moore作。素敵なコーラスワークと透明感のあるサウンドにグッときます。実にロマンティックです。
https://www.youtube.com/watch?v=5abK61aJZ4s

「Bidin' My Time」
Georgie Fameのカヴァー。スウィンギン・ロンドンのヒップな感覚も取り入れた小粋なアレンジが絶品です。

「Busy」
Barbara Moore作。セルメン好きの人であれば、Barbara自身の小粋なピアノとコーラス・アレンジにセルメン好きの人はグッとくるはず!

「I've Walked Alone」
Barbara Moore作。ソフトリーな魅力にうっとりしてしまいます。「Hideaway」とセットで聴くとサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=VPaG8raZbDY

「Sunny」
Bobby Hebbの1966年のヒット曲のカヴァー。お馴染みの曲ですが、グッと抑えたアダルトな雰囲気のヴォーカル&アレンジがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=YAJjcTFC6dQ

当ブログでは以前にDusty SpringfieldBirgit LystagerClementineAnn BurtonJose FelicianoPapikのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はそれらもチェックを!

「Tea For Three」
Barbara Moore作。Barbaraの小粋なピアノが牽引するボッサ・ポップ。キュートなスキャットも含めてかなり僕好みの1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=xnVLBRb9QM4

「How Do You Know」
Barbara Moore/Tony Kemp作。Barbaraのアレンジャーとしての才が存分に発揮されたラテン・ポップ。何処となくUKっぽさもあっていいですね。僕の一番のお気に入り。

「The Look Of Love」
Dusty Springfieldのヒットでお馴染みのBurt Bacharach/Hal David作品(映画007シリーズ『Casino Royal』の主題歌)のカヴァー。当ブログではDelfonicsGimmicksChristopher ScottCharles Hullのカヴァーも紹介済みです。ここではテンポを落としたムーディーな仕上りで聴かせてくれます。

「Sara」
Barry Morgan作。ラストはグルーヴィーなブラジリアン・グルーヴで格好良くキメてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=g7bwv0qkN0s

本作以外のBarbara Moore作品であれば、『Vocal, Shades and Tones』(1972年)が代表作のようです。

Barbara Moore『Vocal, Shades and Tones』(1972年)
Vocal, Shades and Tones
posted by ez at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月16日

Eddie Henderson『Heritage』

James Mtume、Patrice Rushen参加のジャズ・ファンク作品☆Eddie Henderson『Heritage』
ヘリテイジ (完全期間限定盤)
発表年:1976年
ez的ジャンル:エレクトリック・マイルス・フォロワー系ジャズ・ファンク
気分は... :二刀流!

今回はジャズ・トランぺッターEddie Hendersonが1976年にリリースした『Heritage』です。

Eddie Hendersonは1940年N.Y.生まれ。ジャズと医学という二つの道を同時に歩み、医学博士号を持つ異色のジャズ・ミュージシャンとして、サンフランシスコを拠点に注目されるようになります。1970年前半はHerbie Hancockのグループで活躍し、70年代半ば以降はエレクトリック・マイルスばりのジャズ・ファンク作品をリリースしています。

80年代はリーダー作がリリースされませんでしたが、90年代に入り再び活動を活発化させ、コンスタントに作品をリリースしています。

当ブログで紹介した作品であれば、Gary Bartz『Music Is My Sanctuary』(1977年)、Pharoah Sanders『Journey To The One』(1980年)、Courtney Pine『Modern Day Jazz Stories』(1995年)、Barrio Jazz Gang『2』(2010年)といった作品にHendersonが参加しています。

本作は『Sunburst』(1975年)に続くBlue Note第2弾アルバムであり、エレクトリック・マイルスを受け継いだようなジャズ・ファンクを存分に楽しめる1枚です。

Norman Connors作品等で知られるSkip Drinkwaterがプロデュースを手掛け、レコーディングには以下、Eddie Henderson(tp、flh)、Julian Priester(tb)、Hadley Caliman(ss、bcla、fl)、Patrice Rushen(el-p、clavinet、syn)、Paul Jackson(el-b)、Mike Clark(ds)、Woody Theus(ds)、Billy Hart(ds)、James Mtume(conga、per)といったミュージシャンが参加しています。

人気サンプリング・リソースでもあるジャズ・ファンク「Inside You」、Kyoto Jazz MassiveがリワークしたPatrice Rushen作の「Kudu」あたりがハイライトですかね。メロウかつスピリチュアルな雰囲気の「Time and Space」もオススメです。

エレクトリック・マイルス好き、ジャズ・ファンク好き、James Mtume好き、Patrice Rushen好きの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Inside You」
James Mtume作。Paul Jacksonのベースラインが牽引するジャズ・ファンク。重心の低いグルーヴに絡むHendersonのミュートがいい感じです。Patrice Rushenのシンセもいい空気感を演出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=psxzgnUiWT4

前述のように人気サンプリング・リソースであり、ouls of Mischief「Tell Me Who Profits」、Dayze「Straight Underground」、Jay Z feat. Memphis Bleek「Coming of Age」、Mac & Storm feat. Kine「So Fly」、J-Flexx「Ball While U Can」、Homeliss Derilex「Player Status」、Roce feat. Manu Key「Je Fais Ma Justice」といった曲で使われています。

Souls of Mischief「Tell Me Who Profits」
 https://www.youtube.com/watch?v=Rk_M1hkLQ4U
Dayze「Straight Underground」
 https://www.youtube.com/watch?v=n9U_kKKeHCE
Jay Z feat. Memphis Bleek「Coming of Age」
 https://www.youtube.com/watch?v=K8SdZoGOtSE
Mac & Storm feat. Kine「So Fly」
 https://www.youtube.com/watch?v=mWzHtk62-H0
J-Flexx「Ball While U Can」
 https://www.youtube.com/watch?v=F3OSdGXsOvQ
Homeliss Derilex「Player Status」
 https://www.youtube.com/watch?v=RyIOMCTkLSI
Roce feat. Manu Key「Je Fais Ma Justice」
 https://www.youtube.com/watch?v=p1D8J8helMI

「Acuphuncture」
Julian Priester作。フュージョン・テイストのエレクトリック・マイルスといった趣です。ここでもHendersonのミュートが冴えます。Patrice Rushenの奏でる鍵盤の音色とMtumeによるパーカッシヴなリズムがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=fJzwXA0N6fk

「Time and Space」
Eddie Henderson作。メロウかつスピリチュアルな雰囲気の演奏が印象的です。壮大かつ幻想的なスケール感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=eBk4DUTDk5U

「Nostalgia」
Patrick O'Hearn作。この演奏もスピリチュアルな雰囲気を醸し出します。大地のジャズ・サウンドといった雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2NAPvmF6EaE

「Kudu」
Patrice Rushen作。「Inside You」と並ぶ本作のハイライトでしょうね。Paul JacksonのベースとMike Clarkのドラムが牽引する疾走感のあるアッパーなジャズ・ファンクです。エレクトリック・マイルス的なエッセンスをキャッチーに昇華させている感じがいいですね。Hendersonのトランペットも絶好調です。
https://www.youtube.com/watch?v=wN1jgVj_Yko

クラブジャズ好きの方はKyoto Jazz Massiveによるリワークもお馴染みですね。
Kyoto Jazz Massive「Kudu」
 https://www.youtube.com/watch?v=EGv9KD420hs

「Dr. Mganga」
Brent Rampone作。混沌としたホーン・アンサンブルとトライバルなリズムが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=PmKwk4V4d4U

「Dark Shadows」
Eddie Henderson作。印象的なHadley Calimanのバス・クラリネットと共に始まるダークな空気感を持った演奏が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Qb3yT74C1cE

One Be Lo「Oggie」のサンプリング・リソースにもなっています。
One Be Lo「Oggie」
 https://www.youtube.com/watch?v=z-X7SHoohrE

Eddie Hendersonの他作品もチェックを!

『Anthology 2』(2002年)
『Realization』(1973年)と『Inside Out』(1973年)の全曲収録
Anthology 2

『Sunburst』(1975年)
サンバースト

『Comin' Through』(1977年)
カミン・スルー

『Mahal』(1978年)
マハール(迷宮)
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2015年10月15日

Bilal『1st Born Second』

Soulquarians絶頂期にリリースされた1stアルバム☆Bilal『1st Born Second』
1st ボーン・セカンド
発表年:2001年
ez的ジャンル:The Soulquarians系ネオソウル
気分は... :やっぱりSoulquarians・・・

今回は男性R&B/ネオソウル・シンガーBilalの1stアルバム『1st Born Second』(2001年)です。

1979年フィラデルフィア生まれの男性R&BシンガーBilalの紹介は、『Airtight's Revenge』(2010年)に続き2回目です。

今年に入り、新作『In Another Life』(2015年)をリリースしましたが、イマイチ話題になりませんでしたね。Kendrick Lamarも参加しているのですが・・・

前回は『Jazz The New Chapter(JTNC)』強化月間の中で、JTNC的な1枚として『Airtight's Revenge』(2010年)を取り上げましたが、僕の中で最も愛着のあるBilal作品はやはり1stアルバム『1st Born Second』(2000年)ですね。

ご存知の通り、Bilalは、?uestloveThe Roots)、Erykah BaduQ-TipD'AngeloMos DefCommonJay Dee(J Dilla)等と共にThe Soulquariansメンバーとして名を連ねていました。

Common『Like Water For Chocolate』収録の「The 6th Sense」Guru『Jazzmatazz (Streetsoul)』収録の「Certified」でフィーチャリングされ注目を集めたBilalが、その全貌を示したアルバムが本作『1st Born Second』(2000年)です。

2001年といえば、前年にD'Angelo『Voodoo』Common『Like Water For Chocolate』Erykah Badu『Mama's Gun』というSoulquariansを代表する作品が続々とリリースされたSoulquarians絶頂期であり、本作も上記3枚ほどの話題にはなりませんでしたが、Soulquariansの充実ぶりを反映した1枚に仕上がっています。

アルバムには、?uestloveThe Roots)、Mos DefCommonJay Dee(J Dilla)Pino PalladinoJames PoyserといったSoulquariansメンバーが参加しています。

それ以外にDr. DreRaphael SaadiqJames MtumeMike CityDre & Vidal(Andre Harris/Vidal Davis)等がプロデュースを手掛け、今を最も旬なジャズ・ピアニストRobert Glasper(Bilalとはニュースクール大学時代からの盟友)やRobert Glasper ExperimentのメンバーCasey Benjaminもレコーディングに参加しています。

参加メンバーの豪華さが目立つアルバムですが、それに負けない存在感を放つBilalという個性的な才能があるからこそ、アルバムが魅力的なものになっています。

「Soul Sista」「Fast Lane」「Love It」といった曲がシングルになっていますが、それ以上に「Reminisce」「Sometimes」といったSoulquarians色の強い楽曲が僕のお気に入りです。シングル曲ならばstrong>「Love It」ですかね。

「All That I Am (Somethin For The People)」「You Are」「Slyde」あたりもキャッチーでオススメです。

JTNC好きの人には、Robert Glasper参加の「When Will You Call」「Love Poems」「Second Child」が楽しめるはずです。

Bilalという個性およびSoulquariansの充実ぶりを楽しめる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
アルバムのイントロ。

「For You」
Megahertzプロデュース。少しダークなサウンドと乾いたリズムをBilalの少しクセのあるヴォーカルが切り裂いていくようなミディアム。
https://www.youtube.com/watch?v=SboO7Zzdf7g

「Fast Lane」
Dr. Dreプロデュース。シングルにもなりました。淡々したサウンドをバックに、Bilalが独特のハイトーン・ヴォーカルで切々と歌い上げます。Scott Storchによる揺らぎのあるキーボードの音色も印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=i_j8ZMtQRLo

「Reminisce」
オススメその1。CommonMos Defをフィーチャー。Jay Dee(J Dilla)プロデュース。Jay Deeらしい乾いた質感のビートに引き立てられ、Bilalのヴォーカルも実に魅力的です。そして、最初と最後にMos DefCommonのラップが盛り上げてくれる!Soulquarians好きにはたまらない1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=8YZjMLRmuV8

Pete Rock & C.L. Smooth「They Reminisce Over You (T.R.O.Y.) 」をサンプリング。また、LA音楽シーンの重要ミュージシャンMiguel Atwood-FergusonがBilal本人をフィーチャーしたカヴァーをリリースしています。Knxwledge「Riminise」のサンプリング・ソースにもなっています。
Miguel Atwood-Ferguson feat. Bilal「Reminisce」
 https://www.youtube.com/watch?v=uoQ8QGl0Fiw

「All That I Am (Somethin For The People)」
オススメその2。Dahoud Darienプロデュース。メロディアスかつキャッチーなグルーヴが魅力の1曲。聴きやすいネオソウルがお好きな人にオススメ!
https://www.youtube.com/watch?v=ke67lHxPf8A

「Sally」
Dr. Dre/Mel-Manプロデュース。Dr. Dre色がよく出た仕上がり。Soulquarians中心の聴き方をすると、少し浮いている気もしますが、コレはコレで楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=knfRUu_EZ0M

「Sometimes」
オススメその3。The Soulquariansプロデュース。ドラムに?uestlove、ベースにPino Palladino、フェンダーローズにJames Poyserが参加した生音サウンドをバックに、Bilalのヴォーカルを存分に堪能できます。「Reminisce」と並びSoulquarians好きにはグッとくるはず!
https://www.youtube.com/watch?v=TTKWkJt1QIw

Kendrick Lamar「The Heart Pt. 1」、Pro Era「School High」のサンプリング・ソースになっています。

「Love It」
オススメその4。Mike Cityプロデュース。シングルにもなりました。Mike Cityのパンチの効いたトラックとBilalのヴォーカルとの相性はバッチリです。
https://www.youtube.com/watch?v=AJncE7vurq0

「C'mere (Skit)」
Andres Levin プロデュースのスキット。

「Soul Sista」
記念すべきBilalの1stシングル。映画『Love & Basketball』(2000年)のサントラにも収録されています。
Raphael Saadiqがプロデュースし、James Mtume も共同プロデューサーとして名を連ねています。淡々した曲調ですが、それをヴォーカルの力で最後まで持っていってしまうところがBilalの魅力だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Zgp6-DzZgK0

「When Will You Call」
オススメその5。Aaron Comess/Bilalプロデュース。ニュースクール大学時代の盟友Robert Glasperがキーボードを弾いています。今ならば話題となる共演ですが、当時はGlasperの参加など殆どの人が目に留めずにいたでしょうね。オーセンティックながらも生音らしい臨場感が伝わってくるミディアム・バラードに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=R1gi4z5e7Qk

「Queen Of Sanity」
Aaron Comess/Bilalプロデュース。この曲もRobert Glasperが参加しています。丁寧に歌い上げるBilalのヴォーカルが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=ol8SL1OFiJY

「Love Poems」
オススメその6。Aaron Comess/Bilalプロデュース。Bilal自らが奏でるヴァイヴの音色が印象的なジャジー・メロウなミディアム。途中でスキャットも披露し、Bilalのジャズ魂にも触れることができます。今でいえば、Chris Turnerあたりと一緒に聴きたい感じですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0BrI6zVoUNI

「You Are」
オススメその7。Dre & Vidal(Andre Harris/Vidal Davis)プロデュース。キャッチーなネオソウル・チューン。Dre & Vidalの確かな仕事ぶりが光ります。
https://www.youtube.com/watch?v=Q7CVpXD-lL8

「Home」
Bilalプロデュース。ホーン隊を加えたレゲエ調の仕上がり。ホーン隊の一員の中にRobert Glasper ExperimentのメンバーCasey Benjaminの名前を確認できます。
https://www.youtube.com/watch?v=nFV9nsBnVz8

「Slyde」
オススメその8。Dahoud Darienプロデュース。Bilalのヴォーカルのエキセントリックな魅力をうまく引き出しているネオソウル・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=ZMV_YtPq6A8

「Second Child」
Bilalプロデュース。ラストはRobert Glasper参加の生音セッションで締め括ってくれます。ある意味Jazz The New Chapter的かも?
https://www.youtube.com/watch?v=_CqBw-7phP8

Bilalの他作品もチェックを!

『Airtight's Revenge』(2010年)
Airtight's Revenge

『A Love Surreal』(2013年)
Love Surreal

『In Another Life』(2015年)
In Another Life
posted by ez at 03:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする