発表年:1977年
ez的ジャンル:闘争系ルーツ・ロック・レゲエ
気分は... :カネか功徳か・・・
今日はソリッドな雰囲気の作品が聴きたい気分・・・
そこでセレクトしたのは、The Wailersの元メンバー、レゲエ界の"歩くカミソリ "Peter Toshの代表作『Equal Rights』(1977年)です。
Peter Toshは1944年ジャマイカ、キングストンのトレンチタウン生まれ。
1961年頃のJoe Higgsの紹介で、Bob Marley、Bunny Wailerと出会い、彼ら3名を含む6名のコーラス・グループThe Teenagersを結成します。
グループはThe Wailing Rudeboys、The Wailing Wailersと名前を変えながら活動を続け、最終的にはMarley、Wailer、Toshの3名が残り、The Wailersを名乗るようになりました。
そして、ご存知の通り、Island Recordsとの契約に成功した The Wailersは、1973年にアルバム『Catch a Fire』をリリースし、レゲエを全世界に知らしめ、音楽界に衝撃を与えました。
しかしながら、Island第2弾アルバム『Burnin'』(1973年)を最後にToshはBunny Wailerと共にグループを脱退してしまいます。Bob MarleyをフロントマンとしてプッシュしたいIslandの社長Chris BlackwellらとTosh、Wailerの間に大きな確執が生じたようですね。
ソロ活動を開始したPeter Toshは『Legalize It』(1976年)、『Equal Rights』(1977年)という過激なメッセージを打ち出したアルバムで、Bob Marleyとは異なるかたちでレゲエ・シーンにインパクトを与えました。
さらに、The Rolling Stonesとツアーを一緒に回ったことから、『Bush Doctor』(1978年)、『Mystic Man』(1979年)、『Wanted Dread & Alive』(1981年)という3枚のアルバムはRolling Stones Recordsからリリースされました。
その後も『Mama Africa』(1984年)、『No Nuclear War』(1987年)といったアルバムをリリースしますが、1987年9月11日に自宅で3人組の暴漢に襲われ、射殺されてしまいます。享年42歳。
長身の元祖ルード・ボーイといったイメージが強いPeter Toshですが、そんな彼の闘うレベル・ミュージックを象徴する作品が『Equal Rights』(1977年)です。直訳ですが『平等の権利』という邦題がしっくりきます。
本作ではバック・バンドWord Sound & Powerを結成し、Toshの強烈なメッセージをサウンド面で支えています。メンバーは後にレゲエ界最強のリズム・セクションとなるSly & RobbieのSly Dunbar(ds)、Robbie Shakespeare(b)、元The WailersのEarl Lindo(key)とAl Anderson(g)、さらにベテランのSkully(per)という編成です。やはり、Sly & Robbieによる無駄を排除した鋭いリズムは"歩くカミソリ"Toshにぴったりですね。
それ以外に盟友Bunny Wailer(back vo)をはじめ、Carlton Barrett(ds)、Tyrone Downie(key)といったThe Wailersメンバー、Harold Butler(clavinet)、Abdul Wali(g)、Karl Pitterson(g)、"Dirty" Harry Hall(ts)、Bobby Ellis(ts)がレコーディングに参加しています。
Peter Tosh自身がプロデュースを手掛けています。
The Wailersの名曲のセルフ・リメイク「Get Up, Stand Up」、Toshのテーマ曲と呼べる「Stepping Razor」、Toshの剥き出しのメッセージが印象的なタイトル曲「Equal Rights」、トラディショナルな黒人霊歌を改題した「Downpressor Man」などレベル・ミュージックとしてのレゲエの持つパワーを感じさせる曲がズラリと並びます。
神様Bob Marleyとは異なるオーラを放つ、"歩くカミソリ "Peter Toshの魅力が見事に凝縮された1枚だと思います。
バックを務めるWord Sound & Powerの格好良い演奏も魅力です。
全曲紹介しときやす。
「Get Up, Stand Up」
『Burnin'』(1973年)に収録されたToshとBob Marleyの共作曲の歌詞の一部を改変したセルフ・リメイク。Marleyのヴォーカルのイメージが強いレゲエ・アンセムですが、Toshにしてみれば、コレは俺の曲という思いがあるのかもしれませんね。確かにキャラ的にはMarleyよりToshにイメージに近い曲かもしれませんね。Word Sound & Powerによるソリッドなサウンドが最高にクールですね。
https://www.youtube.com/watch?v=mnq1whAJ05Q
「Downpressor Man」
Nina Simone等も歌っていたトラディショナルな黒人霊歌「Sinnerman」をラスタファリアニズムの人が使うアムハラ語を用いたタイトルを冠してリメイクしたもの。The Wailers時代の1966年のヴァージョンをはじめ、何度となくToshは本曲をレコーディングしています。本ヴァージョンは切れ味のあるバックとToshのヴォーカルが一体となり、聴く者の心を鋭くえぐります。
https://www.youtube.com/watch?v=Wu59WhIN8rk
Sinead O'Connor、Goldfinger、Bushman、さらには息子のAndrew Tosh等もカヴァーしています。
「I Am that I Am」
邦題『俺は俺』。自身の存在を訴える少し哀愁を帯びたヴォーカルが印象的です。Toshを過小評価したIsland Records、Chris Blackwellあたりへの対抗心も感じられますね。
https://www.youtube.com/watch?v=ZPUNyxvEma4
「Stepping Razor」
映画『Rockers』のサントラにも収録された"歩くカミソリ"Toshのテーマ曲と呼べる代表曲。Joe HiggsがルードボーイToshのために書いた楽曲であり、The Wailing Wailers時代の1965年にもレコーディングしています。デンジャラスな"カミソリ"ルードボーイのイメージにピッタリの格好良い演奏です。Sublime、Bushmanもカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=9o_jVHmU_V4
Peter Tosh & The Wailing Wailers「Stepping Razor」
https://www.youtube.com/watch?v=Lys7Q8EOzOs
「Equal Rights」
♪俺が平和などいらない♪俺が欲しいのは平等の権利と正義だけ♪という強烈がメッセージが刺さるタイトル曲。ルーツ・ロック然とした演奏も含めてレゲエらしい名曲だと思います。この曲もBushmanがカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=iqeOTg2a-l8
「African」
アルバムの中では比較的リラックスした雰囲気の演奏ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=95UyWWUdY6k
「Jah Guide」
タイトルの通り、ラスタ色が全面に出た曲です。ルーツ・ロックらしいゆったりとしたグルーヴがいい感じですね。
https://www.youtube.com/watch?v=G_hGGdNDuf4
「Apartheid」
ラストはタイトル通り、南アフリカの人種隔離政策を歌ったものです。ゆったりとした中にもファンキーな味わいのある演奏が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=1jOvXC2BAoY
Peter Toshの他作品もチェックを!
『Legalize It』(1976年)
『Bush Doctor』(1978年)
『Mystic Man』(1979年)
『Wanted Dread & Alive』(1981年)
『Mama Africa』(1984年)
『No Nuclear War』(1987年)