発表年:2015年
ez的ジャンル:今ジャズ系トランぺッター
気分は... :赤い衝撃!
今回は新作ジャズからジャズの未来を担うトランペッターChristian Scottの『Stretch Music』です。
Christian Scottは1983年ニューオリンズ生まれ。サックス奏者のDonald HarrisonはChristianの叔父になります。
2006年にはデビュー・アルバム『Rewind That』(2006年)をリリースし、同作はグラミー賞にもノミネートされました。その後もコンスタントにリーダー作をリリースし、現在のジャズ・シーンを牽引するトランぺッターとして大きな期待を担う存在となっています。
また、Jamire Williams、Kris Bowers、Ben Williams、Matthew Stevens、Gerald Clayton、Logan Richardson、Walter Smith IIIによる若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーにもなっています。
Jazz The New Chapterの中でも大きくクローズアップされているトランペッターですね。
その『Jazz The New Chapter 3』でも取り上げられていた待望の新作が『Stretch Music』です。厳密にはChristian Scott aTunde Adjuah名義でのリリースです。
ジャケのポーズからして格好良すぎですね。
レコーディング・メンバーはChristian Scott(tp、flh)、Elena Pinderhughes(fl)、Braxton Cook(as)、Corey King(tb)、Cliff Hines(g)、Lawrence Fields(p、el-p)、Kris Funn(b)、Corey Fonville(ds、sampler)、Joe Dyson Jr.(ds、sampler)、さらにスペシャル・ゲストとしてMatthew Stevens(g)、Warren Wolf(vibe)がクレジットされています。
特に、これまでのドラマーJamire Williamsに代わり、Corey Fonville、Joe Dyson Jr.という2人のドラマーが加わり、さらにサンプリング・パッドも駆使している点が注目です。Corey Fonvilleは注目のバンドButcher Brownのメンバーでもあります。
アルバム全体として、"今ジャズ"を実感できる1枚だと思います。先人達からジャズの伝統を継承しつつ、ジャズに囚われないロック、ポストロック、ラテン、Hip-Hop等多様な音楽のエッセンスを自然なかたちで取り入れています。また、社会メッセージ性の強い演奏や、神秘性に満ちた演奏もあり、その音世界はどんどん広がるを見せます。まさにストレッチ・ミュージックですね。
今ジャズ的な醍醐味を存分に楽しめる1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Sunrise In Bejing」
ポストロック的なミニマル・リズムとElena Pinderhughesのフルートを大きくフィーチャーした美しい演奏が融合した本作らしいオープニング。彼のイノベータ―的な姿勢が反映されています。
https://www.youtube.com/watch?v=L1JnHCqqu64
「Twin」
エスニック/ラテン風味のリズムをバックに、Christian、Braxton Cook、Corey Kingのホーン隊がエモーショナルなアンサンブルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ktU_X7CDaBM
「Perspectives」
サウンドスケープのような幻想的なサウンドの中をChristianのトランペットが丁寧に歌い上げます。星空を見上げながら聴きたい演奏です。
「West Of The West」
ロックなリズム隊、覚醒的な鍵盤にホーン隊が絡む強烈なドライヴ感は、エレクトリック・マイルスの現代版といった趣の刺激があります。
「Liberation Over Gangsterism」
タイトルからして社会メッセージ性が感じられます。Lawrence Fieldsの美しいピアノのイントロに続く、Elena Pinderhughesのフルートが奏でる美しくも虚しい音色にメッセージが凝縮されています。
「The Corner」
Kris Funn作。短い演奏ですが、作者Kris Funnのベースをバックに、Braxton Cookの素晴らしいサックスを聴かせてくれます。
「Of A New Cool」
今ジャズらしい格好良さ、Christianの美学のようなもの感じるクールな演奏です。各プレイヤーの活き活きとしたプレイにグッときます。ゲスト参加のWarren Wolfのヴァイヴも華を添えてくれます。
「Runnin 7's (For Big Chief Donald Harrison Sr.)」
タイトルの通り、叔父のサックス奏者Donald Harrisonに捧げられた演奏です。トライバル色の強い演奏はもっと長尺で聴きたいですね。特に終盤の重量グルーヴは格好良すぎです。
「Tantric」
タイトルが象徴するように神秘的な美しさに魅了される演奏です。Christianの奏でる美しい音色は瞑想の世界のようです。
「The Last Chieftan」
NEXT Collectiveの同僚でもあるMatthew Stevensのギターをフィーチャー。ロック色の強いスケール感の大きなドラマティック演奏です。
「The Horizon」
Lawrence Fields作。ラストはJ Dilla的な人力ビートと作者Lawrence Fieldsのピアノが織り成すHip-Hop的な演奏で締め括ってくれます。
Christian Scottの他作品もチェックを!
『Rewind That』(2006年)
『Anthem』(2007年)
『Live At Newport』(2008年)
『Yesterday You Said Tomorrow』(2010年)
Stefon Harris/David Sánchez/Christian Scott『Ninety Miles』(2011年)
『Christian Atunde Adjuah』(2012年)
Next Collective『Cover Art』(2013年)