発表年:2015年
ez的ジャンル:クラブミュージック経由UKジャズ
気分は... :因果応報
今回は新作アルバムからロンドン出身のサックス奏者Sean Khanの2ndアルバム『Muriel』(2015年)です。
昨年末に購入したもののタイミングを逸していましたが、ようやく紹介できました。
Sean Khanは2000年代初めの西ロンドンのクラブ・シーンで活躍したユニットSK Radicalsを率いていたサックス奏者です。
SK Radicalsはブロークン・ビーツとジャズ・ファンクを融合したサウンドで人気し、『When Will We Belong』(2001年)、『Urban Eclectiks』(2009年)という2枚のアルバムをリリースしています。
SK Radicals「On The Street」
https://www.youtube.com/watch?v=H0FZBvfv9v8
SK Radicals「Someday I Will」
https://www.youtube.com/watch?v=xdNueRbQCwc
その後、2011年にソロ名義の第1作『Slow Burner』をFar Out Recordingsをリリースしています。
本作『Muriel』はFar Outからリリースされたソロ第2弾アルバムです。
前作『Slow Burner』にはStevie Wonder、Wayne Shorter、Joe Hendersonといったソウル、ジャズ界の大物ミュージシャンが参加していました。
それに対して本作には、The Cinematic OrchestraやNicola Conte、Gaetano Partipilo等の作品への参加でも知られるHeidi Vogel、AzymuthのベーシストAlex Malheirosの娘であり、クラブ方面でも人気のブラジル人女性シンガーSabrina Malheiros、UKソウルの重鎮Omarといった、よりクラブ寄りのヴォーカリストが参加しています。
さらに、IncognitoのリーダーJean-Paul "Bluey" Maunickの息子であり、Sabrina Malheiros作品のプロデュースでも知られるDaniel Maunickがミックスを務め、UKクラブ・ミュージックの牽引者4Heroや
Henry Wu、Ben Haukeといった注目株がリミックスを手掛けています。
それ以外にMike Edmonds(b)、Laurie Lowe(ds)、Andy Noble(p、el-p)、John Hoare(tp)、Nathan Mansfield(tp)がレコーディングに参加しています。
アルバムの内容は、大きくゲストをフィーチャーしたヴォーカル曲、インスト曲、ヴォーカル曲のリミックスに分けられます。
正直、クラブ寄りのヴォーカル曲およびそのリミックスと正攻法にジャズ/フュージョンしているインスト曲のギャップがあり、アルバムとしての統一感に欠ける面があるのは事実ですが、それでもヴォーカル曲、リミックス曲の充実ぶりに惹かれてしまう1枚です。
とりあえず「Don't Let The Sun Go Down」、「Things To Say」、「Samba Para Florence」、「Sister Soul」というヴォーカル曲とラストのリミックス3曲をチェックすれば、本作の魅力を実感できるはずです。
また、"今ジャズ"好きの人とには「What Has Jazz Become?」あたりも面白いと思います。
全曲紹介しときやす。
「Things To Say」
Diana Martinezの女性ヴォーカルをフィーチャー。爽快に疾走するキャッチーなジャズ・ファンク・グルーヴ。溌剌としたDiana Martinezに惹かれます。
https://www.youtube.com/watch?v=TpF8DjFhVb8
「Samba Para Florence」
Heidi Vogelの女性スキャットをフィーチャー。タイトルの通り、ブラジリアン・フレイヴァーの効いたメロウ・グルーヴです。主役Seanのサックス・ソロも快調です。
https://www.youtube.com/watch?v=PT-m2mvl-Ek
「Sister Soul」
Sabrina Malheirosをフィーチャー。モロにブラジル色を出してくると思いきや、意外にも北欧ジャズ的な雰囲気です。でもエレガント&キュートな感じで大好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=hyiH9guEC1w
「Muriel」
タイトル曲はフュージョン調のミステリアスなインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=pj12es-FoX8
「Dance For Little Emily」
Seanのオールド・ジャズへの愛情を感じるインスト。ストレート・アヘッドなジャズを聴かせてくれます。
「What Has Jazz Become?」
「Part I: Goya Music」「Part II: Jaco, Herbie And Gil」「Part III: What Has Jazz Become?」から成る組曲。「Part I: Goya Music」は"今ジャズ"的な演奏が興味深いです。「Part II: Jaco, Herbie And Gil」のタイトルにはJaco Pastorius、Herbie Hancock、Gil Scott-HeronというSeanが敬愛するミュージシャン達の名が込められています。「Part III: What Has Jazz Become?」はGenevieve Grantのポエトリー・リーディングをフィーチャーしています。
「Don't Let The Sun Go Down」
Omarをフィーチャー。本作のハイライトと呼べる"今ジャズ"的UKソウルです。UKソウル好きも"今ジャズ"好きも楽しめるはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=mJ_mgs9-tew
「Trane's Shadow」
John Coltraneをはじめとする50〜60年代ジャズへの愛情に溢れたインスト。
「Fire Within (For Louie Malle)」
60年代のHerbie Hancock作品あたりを彷彿させる美しい演奏で本編を締め括ってくれます。
「Samba Para Florence (Henry Wu Remix)」
ここからはリミックス・タイム。最初は「Samba Para Florence」のHenry Wuによるリミックス。ブラジリアン・メロウ・グルーヴをシャープなフロア向けサウンドへ再構築してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=F1T3OHiZJmQ
「Don't Let The Sun Go Down (4hero Remix)」
「Don't Let The Sun Go Down」の4Heroによるブラジリアン・フレイヴァーのリミックス。オリジナルと並ぶ本作のハイライトなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=zfTJDRJ2ZNU
「Things To Say (Ben Hauke Remix)」
「Things To Say」のBen Haukeによるリミックス。才気あるリミックスで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=FyLBwei3P3g
ご興味がある方は1stアルバム『Slow Burner』(2011年)やSK Radicalsのアルバムもチェックを!
『Slow Burner』(2011年)
SK Radicals『When Will We Belong』(2001年)
SK Radicals『Urban Eclectiks』(2009年)