発表年:2016年
ez的ジャンル:進化するネオ・ソウル
気分は... :愛は地球を救う?
今回は個人的にも大好きな人気男性R&BシンガーMusiq Soulchild、待望の新作『Life On Earth』です。
これまで当ブログで紹介したMusiq Soulchild作品は以下の5枚(発売順)。
『Juslisen』(2002年)
『Soulstar』(2003年)
『Luvanmusiq』(2007年)
『Onmyradio』(2008年)
『Musiqinthemagiq』(2011年)
本作『Life On Earth』は、『Musiqinthemagiq』(2011年)以来、5年ぶりのアルバムということになります。
それまで『Luvanmusiq』(2007年)、『Onmyradio』(2008年)、『Musiqinthemagiq』(2011年)という3枚をリリースしてきたAtlanticを離れ、本作からMy Block Inc.へ移籍しています。
My Block Inc.は、Musiq Soulchild本人と共に本作のプロデュースを手掛けたWarryn Campbellが立ち上げたレーベルです。Warryn CampbellとMusiq Soulchildは『Luvanmusiq』、『Onmyradio』でもタッグを組んだ仲です。
また、本作はMy Block Inc.とインディ最大手eOneとのパートナーシップによるリリースとなります。
eOneとのパートナーシップがあるとはいえ、メジャーのAtlanticからインディのMy Block Inc.への移籍と聞いて、都落ちイメージを抱く方もいるのかもしれませんが、きっと本人は自由な創作活動を求めて、新天地を選んだのだと思います。
この間の彼の活動を振り返っても、そのあたりを推察できるのでは?
2013年には全編レゲエで貫いたSyleena Johnsonとの共演アルバム『9ine』をリリースしています。さらに昨年はThe Husel名義でのfree EPをドロップし、サウス調のダークなサウンドとエフェクトがかかったヴォーカルで、従来にはない音楽性を示してくれました。また、昨年はpUrPlE wOnDaLuV名義でも活動していました。
このように、ここ数年の彼は新たな刺激を求めて、さまざまなチャレンジを試みていました。そして、それらの活動で得た糧をMusiq Soulchild名義の新作に還元しようと考えたとき、窮屈なメジャーより自由なインディの方が彼の方向性にフィットしたのだと思います。
さて肝心の中身ですが、普遍的なMusiq Soulchildらしさと、ここ数年で切り拓いた新境地と上手く折り合いをつけた内容に仕上がっています。The Huselのように劇的に変化させるのではなく、これまでの作品で確立してきたMusiq Soulchildの魅力を大きく損なわない範囲で、新しいエッセンスを加えている感じです。
個人的には、このアプローチは成功しているのではないかと思います。ただし、The Huselの流れでオートチューンのかかったヴォーカルが多いので、そのあたりで好き/嫌いは分かれるかもしれませんが・・・
アルバムにはWillie Hyn、JoiStaRR、Rapsodyの3名がフィーチャリングされています。
JoiStaRRはJoi Campbell名義で多くのアーティストに楽曲提供している女性R&Bシンガー/ソングライターです。特にWarryn Campbellプロデュース作品で彼女の名を目にすることが多いですね。本作でも参加曲ではソングライティングにも関与しています。
RapsodyはKendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』、Anderson .Paak『Malibu』といった話題作にもフィーチャリングされていた女性ラッパーです。
進化するMusiq Soulchildを支持します。
全曲紹介しときやす。
「Wait A Minute」
Willie Hynをフィーチャー。The Huselでの活動が反映されたHip-Hop調トラックとオートチューン・ヴォーカルが印象的なオープニング。彼の新たな側面を楽しみましょう。Edwin Birdsong「Rapper Dapper Snapper」、The Mohawks「The Champ」ネタ。
「Who Really Loves You」
レゲエのエッセンスも取り込み、これまでの彼と新しい彼を融合させた1曲に仕上がった哀愁チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=iSF3LeN6vgQ
「Heart Away」
この曲もThe Huselでの活動が反映された1曲。Five Stairsteps「Don't Change Your Love」ネタのドラムループの力強いビートが印象的です。
「Loving You」
Tony! Toni! Tone!「Lovin' You」を引用したスロウ。オートチューン・ヴォーカルには、こういう曲が合っているかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=0OptftjvSEU
「I Do」
アルバムからの先行シングル。全米R&Bチャート第12位となっています。普遍的なMusiq Soulchildらしさが出た1曲に仕上がっています。彼の新たな側面に戸惑った人もこの曲を聴いて一安心するのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=mRU8lnSTpFw
「Changed My Mind」
ホーン隊をはじめ、ヴィンテージ感のあるサウンドで楽しませてくれる1曲に仕上がっています。
「Walk Away」
かつてアルバムにおけるWarryn Campbellとのタッグを思い出させてくれる感じの1曲に仕上がっています。リラックスした感じがいいですね!
https://www.youtube.com/watch?v=cWYaDpXfMOI
「Far Gone」
Rapsodyをフィーチャー。本作の特徴である低音部が強調されたサウンドを聴くことができます。これまでの彼と新しい彼を融合させた雰囲気の1曲に仕上がっています。終盤のドラムンベース調になりそうでならない感じが面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZxGEcqBpSxg
「Part Of Me」
JoiStaRRをフィーチャー。甘く切ないメロディをJoiStaRRとMusiq Soulchildが歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=d-uQeIHmgP8
「Alive And Well」
メロディアスな曲を求める人は、この曲なんかいいのでは?女性コーラスも加わったポップな味わいの1曲に仕上がっています。
「The Girl」
JoiStaRRをフィーチャー。この曲のみMusiq Soulchildと共にKC & Cooper(KC Knight/Shawn Cooper)がプロデュースしています。オートチューンの好き/嫌いで好みが分かれるかもしれませんが、感動的なスロウに仕上がっています。
「Life On Earth」
新たなサウンドに挑むMusiq Soulchildとメロディを大切にするMusiq Soulchildが折り合いをつけたようなタイトル曲で、アルバムの余韻に浸りながらエンディングを迎えます。
Musiq Soulchildの他作品もチェックを!
『Aijuswanaseing』(2000年)
『Juslisen』(2002年)
『Soulstar』(2003年)
『Luvanmusiq』(2007年)
『Onmyradio』(2008年)
『Musiqinthemagiq』(2011年)
Musiq Soulchild & Syleena Johnson『9ine』(2013年)