2016年04月24日

Musiq Soulchild『Life On Earth』

新境地も織り込んだ最新作☆Musiq Soulchild『Life On Earth』
Life on Earth
発表年:2016年
ez的ジャンル:進化するネオ・ソウル
気分は... :愛は地球を救う?

今回は個人的にも大好きな人気男性R&BシンガーMusiq Soulchild、待望の新作『Life On Earth』です。

これまで当ブログで紹介したMusiq Soulchild作品は以下の5枚(発売順)。

 『Juslisen』(2002年)
 『Soulstar』(2003年)
 『Luvanmusiq』(2007年)
 『Onmyradio』(2008年)
 『Musiqinthemagiq』(2011年)

本作『Life On Earth』は、『Musiqinthemagiq』(2011年)以来、5年ぶりのアルバムということになります。

それまで『Luvanmusiq』(2007年)、『Onmyradio』(2008年)、『Musiqinthemagiq』(2011年)という3枚をリリースしてきたAtlanticを離れ、本作からMy Block Inc.へ移籍しています。

My Block Inc.は、Musiq Soulchild本人と共に本作のプロデュースを手掛けたWarryn Campbellが立ち上げたレーベルです。Warryn CampbellとMusiq Soulchildは『Luvanmusiq』『Onmyradio』でもタッグを組んだ仲です。

また、本作はMy Block Inc.とインディ最大手eOneとのパートナーシップによるリリースとなります。

eOneとのパートナーシップがあるとはいえ、メジャーのAtlanticからインディのMy Block Inc.への移籍と聞いて、都落ちイメージを抱く方もいるのかもしれませんが、きっと本人は自由な創作活動を求めて、新天地を選んだのだと思います。

この間の彼の活動を振り返っても、そのあたりを推察できるのでは?

2013年には全編レゲエで貫いたSyleena Johnsonとの共演アルバム『9ine』をリリースしています。さらに昨年はThe Husel名義でのfree EPをドロップし、サウス調のダークなサウンドとエフェクトがかかったヴォーカルで、従来にはない音楽性を示してくれました。また、昨年はpUrPlE wOnDaLuV名義でも活動していました。

このように、ここ数年の彼は新たな刺激を求めて、さまざまなチャレンジを試みていました。そして、それらの活動で得た糧をMusiq Soulchild名義の新作に還元しようと考えたとき、窮屈なメジャーより自由なインディの方が彼の方向性にフィットしたのだと思います。

さて肝心の中身ですが、普遍的なMusiq Soulchildらしさと、ここ数年で切り拓いた新境地と上手く折り合いをつけた内容に仕上がっています。The Huselのように劇的に変化させるのではなく、これまでの作品で確立してきたMusiq Soulchildの魅力を大きく損なわない範囲で、新しいエッセンスを加えている感じです。

個人的には、このアプローチは成功しているのではないかと思います。ただし、The Huselの流れでオートチューンのかかったヴォーカルが多いので、そのあたりで好き/嫌いは分かれるかもしれませんが・・・

アルバムにはWillie HynJoiStaRRRapsodyの3名がフィーチャリングされています。

JoiStaRRはJoi Campbell名義で多くのアーティストに楽曲提供している女性R&Bシンガー/ソングライターです。特にWarryn Campbellプロデュース作品で彼女の名を目にすることが多いですね。本作でも参加曲ではソングライティングにも関与しています。

RapsodyKendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』Anderson .Paak『Malibu』といった話題作にもフィーチャリングされていた女性ラッパーです。

進化するMusiq Soulchildを支持します。

全曲紹介しときやす。

「Wait A Minute」
Willie Hynをフィーチャー。The Huselでの活動が反映されたHip-Hop調トラックとオートチューン・ヴォーカルが印象的なオープニング。彼の新たな側面を楽しみましょう。Edwin Birdsong「Rapper Dapper Snapper」、The Mohawks「The Champ」ネタ。

「Who Really Loves You」
レゲエのエッセンスも取り込み、これまでの彼と新しい彼を融合させた1曲に仕上がった哀愁チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=iSF3LeN6vgQ

「Heart Away」
この曲もThe Huselでの活動が反映された1曲。Five Stairsteps「Don't Change Your Love」ネタのドラムループの力強いビートが印象的です。

「Loving You」
Tony! Toni! Tone!「Lovin' You」を引用したスロウ。オートチューン・ヴォーカルには、こういう曲が合っているかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=0OptftjvSEU

「I Do」
アルバムからの先行シングル。全米R&Bチャート第12位となっています。普遍的なMusiq Soulchildらしさが出た1曲に仕上がっています。彼の新たな側面に戸惑った人もこの曲を聴いて一安心するのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=mRU8lnSTpFw

「Changed My Mind」
ホーン隊をはじめ、ヴィンテージ感のあるサウンドで楽しませてくれる1曲に仕上がっています。

「Walk Away」
かつてアルバムにおけるWarryn Campbellとのタッグを思い出させてくれる感じの1曲に仕上がっています。リラックスした感じがいいですね!
https://www.youtube.com/watch?v=cWYaDpXfMOI

「Far Gone」
Rapsodyをフィーチャー。本作の特徴である低音部が強調されたサウンドを聴くことができます。これまでの彼と新しい彼を融合させた雰囲気の1曲に仕上がっています。終盤のドラムンベース調になりそうでならない感じが面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZxGEcqBpSxg

「Part Of Me」
JoiStaRRをフィーチャー。甘く切ないメロディをJoiStaRRとMusiq Soulchildが歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=d-uQeIHmgP8

「Alive And Well」
メロディアスな曲を求める人は、この曲なんかいいのでは?女性コーラスも加わったポップな味わいの1曲に仕上がっています。

「The Girl」
JoiStaRRをフィーチャー。この曲のみMusiq Soulchildと共にKC & Cooper(KC Knight/Shawn Cooper)がプロデュースしています。オートチューンの好き/嫌いで好みが分かれるかもしれませんが、感動的なスロウに仕上がっています。

「Life On Earth」
新たなサウンドに挑むMusiq Soulchildとメロディを大切にするMusiq Soulchildが折り合いをつけたようなタイトル曲で、アルバムの余韻に浸りながらエンディングを迎えます。

Musiq Soulchildの他作品もチェックを!

『Aijuswanaseing』(2000年)
Aijuswanaseing

『Juslisen』(2002年)
Juslisen

『Soulstar』(2003年)
Soulstar

『Luvanmusiq』(2007年)
Luvanmusiq

『Onmyradio』(2008年)
OnMyRadio

『Musiqinthemagiq』(2011年)
Musiqinthemagiq

Musiq Soulchild & Syleena Johnson『9ine』(2013年)
9ine by Musiq Soulchild & Syleena Johnson (2013-09-24) 【並行輸入品】
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2016年04月23日

Barbara & Ernie『Prelude To...』

フリーソウル隠れ名盤!異色の男女ユニット☆Barbara & Ernie『Prelude To...』
プレリュード・トゥ・・・
発表年:1971年
ez的ジャンル:フリーソウル系異色男女ユニット
気分は... :R.I.P. Prince

今回はフリーソウルの隠れ名盤Barbara & Ernie『Prelude To...』(1971年)です。

Barbara & Ernieは女性の黒人セッション・シンガーBarbara Masseyと男性の白人セッション・ギタリストErnie Calabriaによる異色ユニット。

Barbara Masseyは70年代に活躍したセッション・シンガーでQuincy JonesGrover Washington Jr.をはじめ、ジャズ、ソウル、ロック、ポップス等の幅広いジャンルのアーティストの作品に参加しています。

もう一人のErnie Calabriaは1960年代からHarry Belafonte等の作品でセッション・ギタリストとして活躍しています。

そんなBarbara & Ernie唯一のアルバムが本作『Prelude To...』(1971年)です。

プロデュースはRoberta Flack作品等でお馴染みのJoel Dorn。黒人女性シンガーと白人男性ギタリストの異色ユニットの誕生のきっかけを作ったのも、おそらくJoel Dornが動いたのでは?

レコーディングにはErnie Calabria(g、sitar、b、vo)、Barbara Massey(vo、p、el-p、autoharp)以下、Joe Beck(el-p)、Keith Jarrett(p)、Richard Tee(org)、Sam Brown(g)、Chuck Rainey(b)、Bill Salter(b)、Grady Tate(ds)、Ray Lucas(ds)、Ralph MacDonald(congas、per)、Eumir Deodato(conductor、strings arr)、Myrna Summers & The Interdenominational Singers(chor)等が参加しています。

無名の二人のアルバムに豪華なバック陣が集結したのも、プロデューサーJoel Dornの人脈でしょうね。

アルバム全体は、派手さはありませんがジャズ、ソウル、ロック、サイケ、ポップス、ソフトロック、フォーク、ゴスペル等が入り混じったジャンルレスな魅力に溢れています。まさにフリーソウル的な魅力に溢れた1枚です。60年代後半から70年代初めの空気感が伝わってくるサウンド・センスは絶妙です。また、そんなサウンドの中で可憐に輝くBarbaraのヴォーカルの素晴らしさもアルバムを魅力的なものにしています。

グルーヴィー&パーカッシヴな「My Love And I」、サイケ風味の「Play With Fire」、サイケ&ソフトロックな「Searching The Circle」、天使の歌声とシタールが織り成す「Listen To Your Heart」あたりが僕のお気に入りです。

Jefferson Airplaneのカヴァー「Somebody To Love」以外は彼らのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Play With Fire」
サイケ風味のパーカッシヴ・サウンドと透明感のあるBarbaraのヴォーカルが織り成すジャンルレスなグルーヴィー・サウンドは実にフリーソウル的です。
https://www.youtube.com/watch?v=EApQoFzmJXw

「Somebody To Love」
Darby Slick作。Jefferson Airplane、1967年の大ヒット曲をカヴァー。お馴染みのヒット曲を大胆なアレンジでドープにカヴァーしています。Ernieの弾くベースラインが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=s-adoM4p9p0

Smif-N-Wessun「Wrektime」のサンプリング・ソースになっています。
Smif-N-Wessun「Wrektime」
 https://www.youtube.com/watch?v=mQ8KT-nboqc

「Prelude」
美しいピアノの弾き語りが感動的な前半から、中盤以降はCarpenters調のポップな味わいで楽しませてくれます。

「Listen To Your Heart」
Barbaraの天使のような歌声とErnieのシタールが織り成すドリーミーな1曲です。心が浄化されるサウンドですね。
https://www.youtube.com/watch?v=lDyzHhzwAXc

The Chemical Brothers「A Modern Midnight Conversation」のサンプリング・ソースになっています。
The Chemical Brothers「A Modern Midnight Conversation」
 https://www.youtube.com/watch?v=g-1symjMW2U

「For You」
Ernieの弾くベースが牽引するアシッドな哀愁チューン。60年代後半から70年代前半の空気感がよく伝わってくる演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=c7esDZalT9M

Fu-Schnickens feat. Phife Dawg「La Schmoove (Remix)」、Black Milk「Cold Day」等のサンプリング・ソースになっています。
Fu-Schnickens feat. Phife Dawg「La Schmoove (Remix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=VtJAAj6WwLs
Black Milk「Cold Day」
 https://www.youtube.com/watch?v=5cth0TkuTtc

「Searching The Circle」
ブレイクと共に始まるサイケ&ソフトロックな仕上り。「Play With Fire」と同じく、このユニットの持つジャンルレスま魅力に溢れたサウンドを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=T7lbTR8lbrU

「My Love And I」
僕の一番のお気に入り。フォーキー&グルーヴィー&パーカッシヴ&ミステリアスな魅力に溢れたフリーソウル的な仕上り。Barbaraのヴォーカルの魅力を引き立てます。終盤にはホーン隊も盛り上げてくれます。

「Do You Know」
SSW的な雰囲気のフォーキー・チューン。BarbaraとErnieのヴォーカル・ワークがいい感じです。Barbaraのオートハープがいいアクセントになっています。

「Satisfied」
土着的なサウンドに、Keith Jarrettのピアノ、Richard Teeのオルガン、Myrna Summers & The Interdenominational Singersのゴスペル・コーラスが加わった音世界は土着的ゴスペルとでも呼びたい感じです。

Brother Ali「Uncle Sam Goddamn」のサンプリング・ソースになっています。
Brother Ali「Uncle Sam Goddamn」
 https://www.youtube.com/watch?v=46l236O7Iv8

さて、本作とは全く関係ありませんが、今日はこの話題に触れずにはいられません。
Prince殿下が突然の逝去・・・

最近では聴くことが少なくなりましたが、『1999』(1982年)から『Lovesexy』(1988年)あたりまではリアルタイムで熱狂的に彼の作品を聴いたものです。

僕にとってはMJ以上のスーパースターがPrinceだったかもしれません・・・心よりご冥福をお祈り致します。
Prince「I Wish U Heaven」
 https://www.youtube.com/watch?v=M-8RGNfUYWE
Prince「When 2 R In Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=Ficeonpsg5c
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2016年04月22日

Freddie McCoy『Spider Man』

USジャズ・ヴァイヴ作品。タイトル曲が再評価☆Freddie McCoy『Spider Man』
スパイダー・マン
録音年:1966年
ez的ジャンル:USジャズ・ヴァイヴ
気分は... :スパイダーマン!

今日はBGM的なジャズ・ヴァイヴ作品Freddie McCoy『Spider Man』(1966年)です。

Freddie McCoy(1932-2009年)はUSジャズ・ヴィヴラフォン奏者。

60年代後半にPrestigeから『Lonely Avenue』(1965年)、『Funk Drops』(1966年)、『Spider Man』(1966年)、『Peas 'N' Rice』(1967年)、『Listen Here』(1968年)、『Soul Yogi』(1968年)、『Beans & Greens』(1968年)という7枚のアルバムをリリース。さらにCobblestoneから『Gimme Some!』(1971年)をリリースしています。

今日では知名度の低いジャズ・ヴァイヴ奏者ですが、60年代後半の短期間に名門Prestigeから7枚ものリーダー作を出しているのは凄いですね。

今日紹介する『Spider Man』(1966年)は、タイトル曲がDJ/クラブジャズ方面で再評価されたため、CD化された作品です。多分、本作が唯一CD化されているFreddie McCoy作品だと思います。

人気アメコミ・ヒーローのスパイダーマンが描かれたジャケは、良くも悪くも印象には残りますね。

レコーディング・メンバーはFreddie McCoy(vibe)、Charlie Wilson(p)、Steve Davis(b)、Rudy Lawless(ds)という編成です。

正直、タイトル曲「Spider Man」以外はどうってことないB級作品かもしれません。しかしながら、ヴァイヴの響きが好きな僕としては、BGMとして流す作品として、こういうアルバムも嫌いじゃありません。

聴く人を選ぶ作品かもしれませんが、ジャズ・ヴァイヴ好きの方はチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Hav' Mercy」
Freddie McCoy作。ソウル・ジャズなオープニング。本来のFreddie McCoyの持ち味って、こういったフィーリングなのかもしれませんね。

「Yesterdays」
Jerome Kern作。1933年の『Roberta』のために書かれたスタンダードをカヴァー。少し憂いを帯びたバラードを緩急をつけた演奏で聴かせてくれます。

「The Girl From Ipanema」
Antonio Carlos Jobim作のボサノヴァ名曲をカヴァー。ラウンジ・ジャズ的なボッサ・サウンドで楽しませてくれます。ボサノヴァとヴァイヴの響きは合いますね。

「Spider Man」
Freddie McCoy作。本作のハイライト。躍動するアッパーなラテン・ジャズは確かにクラブジャズ・ファンを魅了する演奏だと思います。でも、この演奏からスパイダーマンはイメージできませんが(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=zRvD8Y7PU9k

「That's All」
Alan Brandt/Bob Haymes作のスタンダードをカヴァー。素敵なヴァイヴの音色が栄えるロマンティックなバラードです。個人的にはジャズ・ヴァイヴによるバラードも好きなので、この演奏も結構気に入っています。

「Speak Out, Deagan!」
Freddie McCoy作。ラストはウォーキング・ベースが先導する小粋な演奏で締め括ってくれます。

気づけば、もう金曜日ですね。
今週は1週間があっという間でした。
posted by ez at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月21日

Gigi『Gigi』

Bill Laswellの奥方でもあるエチオピア出身の女性ジャズ・シンガー☆Gigi『Gigi』
Gigi
発表年:2001年
ez的ジャンル:Bill Laswell系エチオピアン・ワールド・ジャズ
気分は... :大地の音!

連夜飲んだくれていたので2日間更新できずにいました(泣)

今回はエチオピア出身の女性ジャズ・シンガーGigiが2001年にリリースした『Gigi』です。

Gigi(本名:Ejigayehu Shibabaw)は1974年エチオピア生まれの女性ジャズ・シンガー。

1998年にUSを拠点に活動するようになり、公私のパートナーとなった奇才Bill Laswellとのタッグでエチオピアン・ワールド・ジャズ作品をリリースしています。

これまで『Tsehay』(1997年)、『One Ethiopia』(1998年)、『Gigi』(2001年)、『Illuminated Audio』(2003年)※『Gigi』のリミックス作品、Abyssinia Infinite feat. Ejigayehu "Gigi" Shibabaw『Zion Roots』(2003年)、『Gold & Wax』(2006年)、Gigi W Material『Mesgana Ethiopia』(2010年)といったアルバムをリリースしています。

今日紹介する『Gigi』(2001年)は、彼女の名を世界に知らしめるターニング・ポイントとなった作品です。

プロデュースは勿論、夫のBill Laswell

レコーディングにはHerbie Hancock(key)、Wayne Shorter(sax)、Pharoah Sanders(sax)といったUSの大物ジャズ・ミュージシャンが参加しています。

それ以外にもBill Laswell(b、g、key)やKarsh Kale (ds、tabla、key)、Nicky Skopelitis(g)、Henry Threadgill(sax)といったBill Laswell人脈のミュージシャン、Hamid Drake(ds、per)、Tony Cedras(accordion)、Thomas Gobena (b)、Mikias Abebayehu (ds)、David Gilmore(g)、Zakki Jewad(g)、Abegasu Shiota(key)、Amina Claudine Myers(key)、Dereje Mekonnen(key)、Abdou M'Boup(per)、Aiyb Dieng(per)、Melaku Gelaw(per)、Setegne Satenaw(per)、Mark Taylor(french horn)、Art Baron (tb)、(back vo)、Abonesh Adenew(back vo)、Dawit Melesse(back vo)、Hebest Tirunehe(back vo)、Imani Uzuri(back vo)、Mizanekristos Yohannes(back vo)、Tigist Shibabaw(back vo)といったミュージシャンが参加しています。

Bill Laswellプロデュースということで、彼の個性が色濃く出たサウンドをイメージする方もいるかもしれませんが、そこは奥方GigiのエチオピアンDNAとその素晴らしい歌声を尊重したエチオピアン・ワールド・ジャズに仕上がっています。

Herbie HancockWayne ShorterPharoah Sandersといった大物たちは過度に目立つことはなく、バック・ミュージシャンの一人に徹しています。

Gigiとバック・コーラス隊が織り成すエチオピア/アフリカらしい節回しがエスニック・サウンドと相俟って、アフリカの大地を感じる感動的な音世界が伝わってきます。

その一方で、USコンテンポラリー・ジャズのエッセンスを上手く織り交ぜ、リスナーの間口を拡げる工夫もみまれます。また、クロスオーヴァー・ジャズ的な演奏や、アルバム未収録ですがRestless Soul等によるリミックスが出た曲などクラブミュージックとの接点もあります。

ワールド・ジャズ/エスニック・ジャズがお好きな方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Gud Fella」
タブラやアコーディオンの響きによるエスニック・ムードたっぷりのオープニング。ワールド・ジャズらしいオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=zvoZbLxkT4I

アルバム未収録ですが、Restless Soul(Phil Asher)Tony Allenによるリミックスもあります。
「Gud Fella (Restless Soul Offcentre Mix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=5tS6GeB_em8

「Mengedegna」
アフリカらしい郷愁感とUSジャズのエッセンスが融合した1曲。Gigiの演歌を思わせるような節回しがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=T2_ui2_8r8k

「Tew Ante Sew」
軽やかなアフリカン・リズムをバックに、Gigiとコーラス隊が息の合ったヴォーカル・ワークを聴かせています。アフロ・ジャズ好きの人はグッとくる1曲だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=_6naaiPsbcI

「Abay」
N.Y.でレコーディングされたワールド・ジャズらしい洗練を感じる演奏です。Gigiの伸びやかな歌声が心地好いです。
https://www.youtube.com/watch?v=aY69Minqsfc

「Bale Washintu」
Gigiとコーラス隊の素晴らしいヴォーカル・ワークに魅了される1曲。郷愁感とアフリカの大地を感じる1曲です。

「Guramayle」
素敵なメロディと透明感のあるGigiのヴォーカルに魅了されるビューティフルなワールド・ジャズ。
https://www.youtube.com/watch?v=LQX8xCTJpnQ

「Sew Argen」
アフロ・ジャズな中にもドリーミーな雰囲気を感じる1曲。Gigiの伸びやかな歌声が聴く者を魅了します。終盤のダビーな感じはBill Laswellらしいかもしれませんね。

「Aynama」
Gigiとコーラス隊の掛け合いとアフロ・ジャズらしいホーン・アンサンブルが印象的です。

「Kahn」
この曲はUSジャズのエッセンスとバランスの取れた躍動感のある演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=S6PysJNOcGM

「Zomaye」
クロスオーヴァー・ジャズ的な格好良さを持った1曲。クラブミュージック好きの人はアンテナに引っかかるはず!
https://www.youtube.com/watch?v=BjmOxcwXb44

「Abet Wubet」
レゲエにも通じる大らかな雰囲気が心地好いです。

「Nafeken」
前曲からの流れがとてもいいビューティフルな仕上がり。Gigiの真摯なヴォーカルが聴く者を魅了します。
https://www.youtube.com/watch?v=_f1BQfK6n0w

「Adwa」
ラストはPharoah Sandersのサックスがスピリチャルな雰囲気を醸し出す厳かなバラードで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=fBTFdgs-hAk

ご興味がある方はGigiの他作品もチェックを!

『One Ethiopia』(1998年)
One Ethiopia

『Illuminated Audio』(2003年) ※『Gigi』のリミックス作品
Illuminated Audio

Abyssinia Infinite feat. Ejigayehu "Gigi" Shibabaw『Zion Roots』(2003年)
ザイオン・ルーツ

『Gold & Wax』(2006年)
Gold & Wax (Dig)

Gigi W Material『Mesgana Ethiopia』(2010年)
Mesgana Ethiopia
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2016年04月18日

Black Heat『No Time To Burn』

ワシントンDCファンクの熱さを感じる2nd☆Black Heat『No Time To Burn』
ノー・タイム・トゥ・バーン
発表年:1974年
ez的ジャンル:ワシントンDCファンク/ソウル
気分は... :レスター今日も勝てるか?

今回はUSファンク・グループBlack Heatの2ndアルバム『No Time To Burn』(1974年)です。

ワシントンDCで結成されたファンク・バンドBlack Heatの紹介は、1stアルバム『Black Heat』(1972年)、『Keep On Runnin'』(1975年)に続き3回目です。

2ndアルバムとなる本作にはグループ唯一のヒット(R&Bチャート第46位どまりですが)である「No Time To Burn」が収録されています。

本作におけるグループのメンバーは、Esco Cromer(ds、per、vo)、Bradley Owens(g、vo)、Rodney Edwards(tp、flh)、Raymond Green (congas)、Johnell Grey(key、vo)、Naamon "Chip" Jones(b、vo)、Ray Thompson(sax、fl)という7名。

プロデュースはJimmy DouglassJoel Dorn

アルバム全体を通じて、彼らのファンク魂を感じる1枚に仕上がっています。また、ワシントンDCのバンドということでGo-Goが生まれる素地のようなものを意識して聴くのも楽しいかもしれません。

シングルにもなったタイトル曲「No Time To Burn」Kool & The Gangのカヴァー「Love The Life You Live」、J Hip-Hopのサンプリング・ソースとしても知られる「Rapid Fire」あたりが人気かもしれませんね。

個人的には「You Should've Listened」「M & M's」あたりもグルーヴィー&パーカッシヴな格好良さがあってお気に入りです。

レア・グルーヴ好きの方はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「No Time To Burn」
Bradley Owens/Johnell Grey/Naamon Jones作。サイケデリック・ソウル調のクラヴィネットの音色が印象的なファンク・チューン。サウンドが実に強靭です。前述のように、シングルとして全米R&Bチャート第46位になっています。
https://www.youtube.com/watch?v=OlbAdjz0RPE

「You Should've Listened」
Bradley Owens作。僕の一番のお気に入り。グルーヴィーなクラヴィネット、パーカッシヴなリズム隊印象的なファンク・チューン。中盤のブレイクや涼しげなフルートの音色とハードなギター・サウンドとのコントラストもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=4Nx3-B-r0qY

Raw Fusion「Throw Your Hands in the Air」のサンプリング・ソースとなっています。
Raw Fusion「Throw Your Hands in the Air」
 https://www.youtube.com/watch?v=wKUWV8afMrc

「Check It All Out」
Bill Patterson/Leroy Butler作。情感たっぷりのソウルフル・ヴォーカルによるスロウ・ファンク。
https://www.youtube.com/watch?v=G0waDDIryzQ

The Coup「Not Yet Free」、Plomien 81「Lawstory」のサンプリング・ソースとなっています。
The Coup「Not Yet Free」
 https://www.youtube.com/watch?v=-liNf9GEt8A

「Love The Life You Live」
Kool & The Gangのカヴァー。オリジナルは『Music Is the Message』(1972年)に収録されています。オリジナルの持つ格好良い疾走感を受け継ぎつつ、さらにファンク度を増している好カヴァーです。
https://www.youtube.com/watch?v=oX__3kA6rxU

Silver Bullet「Undercover Anarchist」のサンプリング・ソースとなっています。
Silver Bullet「Undercover Anarchist」
 https://www.youtube.com/watch?v=RBZA0NrdYU0

「Super Cool」
Bradley Owens/Naamon Jones作。ニューオリンズ・ファンク調の演奏でアルバムの構成にアクセントを加えています。
https://www.youtube.com/watch?v=1_cJ0ocNzOM

「M & M's」
Black Heat作。グルーヴィー&パーカッシヴなファンク・サウンドは僕好み。Bradley Owensのワウワウ・ギターやRay Thompsonのサックスも快調です。
https://www.youtube.com/watch?v=2Mvq6oyrC-I

「Things Change」
Al Johnson/Johnell Grey/Naamon Jones作。じっくり聴かせるソウル・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=STlsPdExzVc

「Rapid Fire」
Al Johnson作。1分半強の短いインスト・チューンながらも印象に残ります。Al Johnson作品だからですかね。
https://www.youtube.com/watch?v=KVVCKGoKmw0

J Hip-Hop好きにはスチャダラパー「5th Wheel 2 the Coach」、Tokyo No.1 Soul Set「Jive My Revolver」のサンプリング・ソースとしてもお馴染みかもしれません。僕の場合、Tokyo No.1 Soul Set「Jive My Revolver」は当時愛聴していました。

スチャダラパー 「5th Wheel 2 the Coach」
 https://www.youtube.com/watch?v=EDNLyxfUVb8
Tokyo No.1 Soul Set「Jive My Revolver」
 https://www.youtube.com/watch?v=U64zZDwoUgk

「Times Have Changed」
Al Johnson作。ラストは哀愁モードの変拍子ファンクで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=hRrBwpQt4LA

Black Heatの過去記事もご参照下さい。

『Black Heat』(1972年)
ブラック・ヒート

『Keep On Runnin'』(1975年)
キープ・オン・ランニン
posted by ez at 01:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする