Hip-Hop/R&Bファンも注目のジャズ・アルバム☆
Terrace Martin『Velvet Portraits』♪
発表年:2016年
ez的ジャンル:Hip-Hop/R&B×L.A.ジャズ
気分は... :L.A.ジャズ隆盛!
今回は新作ジャズからHip-Hop/R&Bファンからも注目される1枚
Terrace Martin『Velvet Portraits』です。
Terrace MartinはL.A.サウスセントラル生まれのプロデューサー/サックス奏者。父はジャズ・ドラマーの
Curly Martin。
高校時代にLAビート・ミュージックの雄
Flying Lotusの右腕として活躍する天才ベーシスト
Thundercat、大作
『The Epic』で昨年のジャズ・シーンを盛り上げたサックス奏者
Kamasi Washingtonと出会い、後に彼らと
Snoop Doggのツアーに参加しています。
また、ビートメイカーとしても活動していたTerraceはSnoopとの出会いでチャンスを掴み、
Snoop Dogg、
Kendrick Lamar等数多くのHip-Hopアーティストのプロデュースを手掛けるようになりました。
ジャズ・ミュージシャンとHip-Hopビートメイカーという2つの側面を持つ
Terrace Martinの知名度を一気に広めたのが、2015年最大の衝撃作
Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』のプロデュースです。
同作がHip-Hopファンに大きなインパクトを与えたのは勿論のこと、L.A.ジャズと西海岸Hip-Hopの融合という点で"今ジャズ"ファンのTerrace Martinに対する関心を高めました。昨年発売された『Jazz The New Chapter 3』でも
Robert Glasper、
Kamasi Washingtonと並び
Terrace Martinのインタビュー記事が大きく取り上げられています。
そんな注目のミュージシャン/プロデューサーの最新作が
『Velvet Portraits』です。
これまで彼自身のアルバムとしては、
Mursとの共演アルバム
『Melrose』(2011年)、
Musiq Soulchild、
Kendrick Lamar、
Robert Glasper、Wiz Khalifa、Snoop Dogg、
Lalah Hathaway等の豪華メンバーがゲスト参加した
『3ChordFold』(2013年)という2枚をリリースしています。
最新作
『Velvet Portraits』は、Terraceの広いミュージシャン人脈が窺える豪華メンバーが集結しています。
Terraceが高校時代から親交を持ち、互いの作品に参加し合う関係にある
Robert Glasper(p、el-p)、天才ベーシスト
Thundercat(b)、
Thundercatの兄
Ronald Bruner Jr.(ds)、
Kamasi Washington(sax)といった
Brainfeeder勢、人気ジャズ・ファンク・グループ
Snarky Puppyのメンバー
Robert "Sput" Searight(key、per)、話題のR&B作品や最近では
Dr. Lonnie Smithの最新作『Evolution』や
Robert Glasperがサントラを手掛けた帝王
Miles Davisの伝記映画『Miles Ahead』に参加しているトランペット奏者
Keyon Harold(tp)、
Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』にも参加していたベーシスト
Brandon Owens(b)およびサックス奏者
Adam Turchinといった"今ジャズ"注目ミュージシャンがズラリと名を連ねます。
また、
Earth, Wind & Fireの大ヒット曲「Let's Groove」をMaurice Whiteと共作したキーボード奏者
Wayne Vaughnや、Wayneの妻Wandaが在籍する女性ソウル・グループ
The Emotionsといった
EW&F関連のミュージシャンや、
Donny Hathawayの娘
Lalah Hathawayの参加はソウル/ファンク好きの興味を引きます。
さらには前述のWayne Vaughnの娘で
Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』や
Dr. Dre『Compton』といった話題作にも参加している女性シンガー
Wyann Vaughn、前作『3ChordFold』にも参加し、フィーチャリング・ヴォーカリストとしても人気の女性シンガー
Tone Trezure、Snoop Dogg、Terrace Martin、
Kendrick Lamarとも親交のあるギタリスト
Marlon Williams 、LAのミュージシャン集団
1500 or Nothin'のメンバーの一人である
Uncle Chucc、大物ベーシストAndrew Goucheの娘であり、プロデューサー/ソングライターとして活躍する
Tiffany GoucheといったHip-Hop/R&Bの注目アーティストも参加します。
忘れていましたが、Terraceの父親
Curly Martin(ds)も参加しています。
こうした参加ミュージシャンからイメージされるように、ジャズとHip-Hop/R&Bが見事に調和したアルバムに仕上がっています。
一番のフィットするのは"今ジャズ"ファンでしょうが、L.A.のHip-Hop/R&Bに興味がある人が聴いてもかなり楽しめます。
Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)ほどのインパクトはありませんが、ジャズ・サイドからのHip-Hop/R&Bへのアプローチという点では
『Black Radio』級の重要作と言えるのでは?
昨年リリースされた
Kamasi Washington『The Epic』、そして本作、さらに発売されたばかりの
Carlos Nino & Friends『Flutes, Echoes, It's All Happening!』(こちらも近々エントリーします)の3枚に、今のL.A.ジャズの魅力が凝縮されていると思います。
全曲紹介しときやす。
「Velvet Portraits」幻想的なサウンドによるアルバムのプロローグ。
https://www.youtube.com/watch?v=J9PPRpAUqJ8「Valdez off Crenshaw (Valdez in the Country)」Terrace MartinとRobert "Sput" Searightの共同プロデュース。名盤『Extension Of A Man』に収録されていた
Donny Hathawayの名曲「Valdez in the Country」のリメイク。サックス奏者としてのTerraceのプレイを楽しめます。ゆったりとしたファンキー・メロウな雰囲気がいいですね。ミニ・ムーグの音色も僕好み。Marlon Williamsのギター・ソロもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=3rZJVwKgv_4「Push」Tone Trezureをフィーチャー。
Curtis Mayfieldの
『Superfly』あたりに収録されていそうなファンキー・グルーヴ。Tone Trezureのソウルフル・ヴォーカル、Robert "Sput" Searightのファンキー・オルガン、父Curly Martinのドラミングが目立っています。
https://www.youtube.com/watch?v=rCLFHmwTmpo「With You」Terrace自身のヴォコーダーが印象的なメロウ・チューン。
Zapp「Computer Love」あたりが好きな人は気に入るはず!Casey Benjaminのヴォコーダーをフィーチャーした
Robert Glasper Experiment名義の作品ともイメージが重なります。
https://www.youtube.com/watch?v=mOhBN-cnqsA「Curly Martin」Robert Glasper、
Thundercat、Ronald Bruner Jr.をフィーチャー。タイトルの通り、父Curly Martinに捧げられた演奏です(父Curlyは不参加ですが)。JTNC好きは歓喜するスリリングな"今ジャズ"演奏を存分に堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=hO10m-t0jNI「Never Enough」Tiffany Goucheをフィーチャー。Tiffanyの従兄弟であり、当ブログでも度々登場する注目の男性R&Bアーティスト
SiRあたりに通じるアトモスフィックなR&Bチューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=s4m_Z2MgnHU「Turkey Taco」DJ PoohとTerraceの共同プロデュース。Wyann Vaughn & Wayne Vaughnという父娘をフィーチャーしています。さらにWyannの母であるWanda Vaughn(
The Emotions)もバック・コーラスで参加。ダークなサウンドとWyann & Wanda母娘の妖しげなヴォーカルが織り成す音世界はクセになります。
https://www.youtube.com/watch?v=V4pbpJOzIag本作の日本語解説では、この曲を
The Emotions参加曲と誤解してか、"
EW&Fへのオマージュ"と評しています。感じ方は人それぞれですが、このダークなサウンドはどう聴いても
EW&Fじゃないでしょ(笑)。
『To Pimp A Butterfly』に参加しているのもWayneじゃなくWyannですよ!評論家のYさん、売れっ子かもしれませんが、仕事が雑なのでは?
「Patiently Waiting」Uncle Chuccと
The Emotionsをフィーチャー。ヴィンテージ感のあるゴスペル・バラード。Uncle Chuccがメインで
The Emotionsはバック・コーラス隊に徹しています。
https://www.youtube.com/watch?v=CiXyZvQja_U「Tribe Called West」Keyon Harroldのトランペットをフィーチャー。タイトルの通り、
A Tribe Called Quest(ATCQ)へのオマージュ。
ATCQ調の浮遊するジャジー・サウンドをバックにKeyon Harroldがトランペットが音空間を揺らめきます。
https://www.youtube.com/watch?v=SqQwuZBKbd8「Oakland」Lalah Hathawayをフィーチャー。彼女の寂しげなヴォーカルが心に沁みる哀愁メロウなジャジー・ソウルに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=wE1HJZ9j6n4「Bromali」Marlon Williamsのギターをフィーチャーしたインスト・チューン。淡々とした演奏なので、他の曲に比べて印象が薄いかも?
https://www.youtube.com/watch?v=xBHuxg3iJMI「Think of You」Kamasi Washingtonと女性シンガーRose Goldをフィーチャー。キュートなRose Goldのヴォーカルが印象的なメロウ・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=WLiRqplwG_U「Reverse」Robert GlasperとCandy Westをフィーチャー。テープ逆回転のようなサウンドが印象的です。タイトルはそれを意図したものなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=nyOi4NVyqQw「Mortal Man」Kamasi Washingtonがアレンジしたストリングスでドラマチックにスタートしますが、本編は浮遊感のあるコズミック&スピリチャルなサウンドが展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=-it0IZ8a0hgTerrace Martinの他作品もチェックを!
Murs & Terrace Martin『Melrose』(2011年)
『3ChordFold』(2013年)