2016年05月01日

Ed Motta『Perpetual Gateways』

AOR路線にJazz志向を加味した最新作☆Ed Motta『Perpetual Gateways』
Perpetual Gateways
発表年:2016年
ez的ジャンル:AOR系ブラジル男性シンガー
気分は... :AOR or Soul or Jazz?

今回は新作ブラジルものからEd Motta『Perpetual Gateways』です。

ブラジルNo.1ソウル・シンガーTim Maiaの甥であり、1971年リオ・デ・ジャネイロ生まれの巨漢男性シンガー・ソングライターEd Mottaの紹介は、前作『AOR』(2013年)に続き2回目になります。

前作『AOR』は、タイトル通りAORに精通した彼らしい極上のAOR作品でした。勿論、AOR人気の高い日本でも各方面で絶賛され、2013年には来日公演を果たしています。

最新作『Perpetual Gateways』も前作のAOR路線を踏襲したものですが、Soul GateJazz Gateという二部構成にしているのが特徴です。特にJazz Gateを設けたというのが肝です。

プロデューサーに人気男性ジャズ・シンガーGregory Porter作品のプロデュースで知られるKamau Kenyattaを迎えているのもJazz Gateを意識したものでしょう。

『AOR』には、David T.WalkerJean-Paul "Bluey" Maunickといった米英の人気ギタリストが参加していましたが、本作のゲスト・ミュージシャンも豪華です。

Patrice Rushen(p、clavinet)、Greg Phillinganes(p、el-p、clavinet)、Hubert Laws(fl)、Marvin "Smitty" Smith(ds)、Cecil McBee, Jr.(el-b)、Tony Dumas(b)、 Curtis Taylor(tp)、Rickey Woodard(ts)、Charles Owens(ts)といったミュージシャンが本作に参加しています。こうしたメンバーを集められたのは、プロデューサーKamau Kenyattaの人脈による拠るところが大きいでしょう。

Soul GateではCecil McBee, Jr.がエレクトリック・ベースを弾き、Jazz GateではCecil McBee, Jr.に代わり、Tony Dumasがアコースティック・ベースを弾いている点がメンバー編成の特徴です。

こうしたメンバーが一堂にL.A.で会し、レコーディングが行われました。

Soul Gateは前作のAOR路線を踏襲したものであり、Steely Dan調のAORチューンがズラリと並びます。その意味では、Soul GateというよりAOR Gateという内容です。

一方、Jazz Gateは『AOR』では聴けなかったEd Mottaの一面に出会えます。『AOR』の内容をイメージして聴くと、本格的にジャズしているので多少面喰うかもしれません。

このJazz Gateをどう感じるかで、本作は賛否両論分かれるかもしれません。

個人的には、Jazz Gateの演奏も楽しめましたが、Soul GateとJazz Gateの比重が5:5ではなく、7:3くらいでも良かった気が・・・というのが本音です。

それでも「Captain's Refusal」「Hypochondriac's Fun」「Heritage Deja Vu」といったAORチューン、本作ならではのジャズ・セッションを楽しめる「The Owner」「A Town In Flames」、ブラジル色を取り入れた「Overblown Overweight」など聴き所の多い佳作だと思います。

全曲Ed Mottaのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Captain's Refusal」
Steely Dan調のメロディと爽快メロウ・サウンド、さらにDonald FagenばりのEdのクセのあるヴォーカルが織り成す極上のAORでアルバムは幕を開けます。Marvin "Smitty" SmithのドラミングとGreg Phillinganesの鍵盤が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=RMSKepM2S94

「Hypochondriac's Fun」
Patrice Rushenのクラヴィネットがファンキーに先導するミディアム・グルーヴ。「Captain's Refusal」同様、Steely Dan好きが喜ぶ仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=R1j0Y4MWgpQ

「Good Intentions」
都会的なサウンド、ミステリアスなメロディ、Edの哀愁感の中に優しさを感じるヴォーカルがよく調和しています。Patrice Rushenの小粋なピアノもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=AMQbb5FCfCE

「Reader's Choice」
Edがしみじみと歌い上げるメロウ・バラード。Curtis Taylorの情感たっぷりのトランペット・ソロも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=F1nj2bS9syg

「Heritage Deja Vu」
躍動感のあるミディアム・グルーヴ。Marvin "Smitty" SmithとCecil McBee, Jr.のリズム隊、Patrice Rushenのピアノ、Rickey Woodard、Curtis Taylorによるホーン隊の見事なバッキングによる都会的サウンドを存分に楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=K7kX_U4_rxs

ここまでがSoul Gate、ここからがJazz Gateとなります。

「Forgotten Nickname」
Soul Gateとのコントラストが明らかなオーセンティックなジャズ・バラードでしっとりと聴かせます。Hubert Lawsのフルート・ソロも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=iAUjRM5KXVc

「The Owner」
Jazz Gateらしい息の合ったセッションを楽しめる演奏です。Soul Gateでは聴けないJazz Gateならではの都会的サウンドを聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=Q7rcztq5WA0

「A Town In Flames」
白熱したセッションを楽しめるJazz Gateのハイライト。特にMarvin "Smitty" Smithのドラミングが目立ちます。そんなエキサイティングな演奏のせいか、EdのヴォーカルもSoul Gateとは大きく印象が異なるのが面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=Gmp-p9PQtvk

「I Remember Julie」
Edが参加メンバーとのセッションを楽しんで様子が伝わってくる1曲。ここではEdが主役というより参加メンバーの演奏を全面に打ち出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=gGqITMKIO5k

「Overblown Overweight」
ラストはブラジル人ミュージシャンらしくブラジル色を取り入れた演奏で楽しませてくれます。個人的にJazz Gateは、こういった演奏がさらに1、2曲あれば言うことなしだったのですが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=OBgqa41Tq6c

ご興味がある方はEd Mottaの他作品もチェックを!

『Manual Prático Para Festas, Bailes e Afins Vol.1』(1997年)
パーティ・マニュアル(1)

『As Segundas Intenções do Manual Prático....』(2000年)
As Segundas Intencoes Do Manue

『Dwitza』(2002年)
Dwitza

『Poptical 』(2003年)
ポップティカル

『Aystelum』(2005年)
Aystelum

『Chapter 9』(2008年)
Chapter 9

『Piquenique』(2009年)
Piquenique

『AOR』(2013年)
AOR
posted by ez at 02:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする