録音年:1970年
ez的ジャンル:エレクトリック・マイルス
気分は... :カオスの先に見えるものは・・・
久々にジャズ界の帝王Miles Davisのオリジナル・アルバム『Live Evil』(1970年)です。
ジャズ界の帝王Miles Davisに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の16枚。
『Bag's Groove』(1954年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Cookin'』(1956年)
『Miles Ahead』(1957年)
『Milestones』(1958年)
『Someday My Prince Will Come』(1961年)
『E.S.P.』(1965年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Nefertiti』(1967年)
『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
『In A Silent Way』(1969年)
『On The Corner』(1972年)
『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
『Dark Magus』(1974年)
『Agharta』(1975年)
『The Man With The Horn』(1981年)
少し前にMiles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』を紹介しましたが、記事にも書いた通り、あのアルバムは僕の中で"Robert Glasperが総指揮をとったMiles音源の再構築コンピレーション"という位置づけなので、上記のMiles作品のリストには加えません。
そんなモヤモヤ感も含めて、ここ数か月Milesのオリジナル・アルバムを取り上げたい思いが強くなっていました。
『Live Evil』は電化マイルス時代の変則2枚組ライブ・アルバムです。全8曲中の半分が1970年12月19日ワシントンD.C.のThe Cellar Doorで行われたライブ録音、残りの4曲が同年N.Y.で行われたスタジオ録音となっています。これをプロデューサーTeo Maceroが驚異の編集テクニックで仕上げた1枚です。ライブ録音4曲もTeo Maceroによる編集が施されています。リリースは1971年。
The Cellar DoorでのライブはMiles Davis(el-tp)、Gary Bartz(ss、as)、John McLaughlin(el-g)、Keith Jarrett(el-p、org)、Michael Henderson(el-b)、Jack DeJohnette(ds)、Airto Moreira(per)というライン・ナップです。
スタジオ録音は上記メンバーに加え、Steve Grossman(ss)、Wayne Shorter(ss)、Herbie Hancock(el-p)、Chick Corea(el-p)、Joe Zawinul(el-p)、Hermeto Pascoal(ds、whistling、vo、el-p)、Khalil Balakrishna(el-g)、Dave Holland(b)、Ron Carter(b)、Billy Cobham(ds)、Conrad Roberts(narration、poem)がレコーディングに参加しています。
特に「Sivad」、「What I Say」、「Funky Tonk」、「Inamorata and Narration by Conrad Roberts」というライブ録音4曲はエレクトリック・マイルスらしいハイテンションの演奏を存分に楽しめます。そんな動のライブ録音と対を成すようにスタジオ録音の4曲は静寂に包まれます。
あと今回聞き直して感じたのは、Airto Moreiraの全面参加、スタジオ録音の3曲で奇才Hermeto Pascoalをフィーチャリングしており、ブラジリアン・エッセンスが意外に効いているなぁ、という点です。
衝撃作『Bitches Brew』と同じAbdul Mati Klarweinがアートワークを手掛けたジャケットも秀逸です。
全曲紹介しときやす。
「Sivad」
Mile Davis作。タイトルは"Davis"を逆さに綴ったものです。実態は「Directions」と「Honky Tonk」の合体。前半はHendersonとDeJohnetteによる強力リズム隊をバックに、Milesのワウ・トランペットがロッキン・ギターのような唸りを上げます。中盤以降は邪悪なムードの気怠さが印象的です。Airtoが随所でいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=eSpDfuIuftU
「Little Church」
Hermeto Pascoal作。ブラジルの奇才Hermeto Pascoalをフィーチャーしたスタジオ録音。演奏面でMilesは殆ど目立っていませんが、こうした奇才ミュージシャンを抜擢する行為自体がMilesですね。
https://www.youtube.com/watch?v=_Hk9L6lfo2s
「Medley: Gemini/Double Image」
Mile Davis作の「Gemini」、Joe Zawinul作の「Double Image」のメドレー。ブルージーな雰囲気の中でのJohn McLaughlinのギターとMilesのトランペットの掛け合いが聴き所です。
https://www.youtube.com/watch?v=oe1tHhQR6vY
「What I Say」
Mile Davis作。HendersonとDeJohnetteのリズム隊が最高に格好良い本作のハイライト。Keith Jarrettのエレピ&オルガンもグッド!そんなハイテンションのサウンドと共にMilesも絶好調のプレイで応えます。電化マイルスの魅力が詰まった演奏だと思います。ラストはDeJohnetteの圧巻のドラム・ソロで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Lb-jR8OSXaY
「Nem Um Talvez」
Hermeto Pascoal作。Hermeto Pascoalをフィーチャーした2曲目。サウダージな郷愁感が漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=TWs7cY-fEn0
「Selim」
Hermeto Pascoal作。Hermeto Pascoalをフィーチャーした3曲目。タイトルは"Miles"を逆さに綴ったものです。PascoalのヴォーカルとMilesのトランペットが寄り添う哀愁モードの小曲です。
「Funky Tonk」
前半は再びMilesのワウ・トランペットが唸りを上げ、電化マイルスならではの邪悪なブラック・グルーヴを存分に楽しめます。ここではGary Bartzのソプラノ・ソロも印象的です。それに続くMcLaughlinのギターあたりからカオス・モードが一気に加速します。最後は悪魔の囁きのようなJarrettのエレピで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=xW3T0dD35PY
「Inamorata and Narration by Conrad Roberts」
ラストも「Funky Tonk」の流れを受け継ぐハイテンションのライブ演奏です。各プレイヤーが見せ場を作ってくれます。特に中盤でのMilesのワウ・トランペットは圧巻です。最後はConrad Robertsのナレーションと共にエンディングを迎えます。
https://www.youtube.com/watch?v=GzM4_Lf_dSc
Miles Davisの過去記事もご参照下さい。
『Bag's Groove』(1954年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Cookin'』(1956年)
『Miles Ahead』(1957年)
『Milestones』(1958年)
『Someday My Prince Will Come』(1961年)
『E.S.P.』(1965年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Nefertiti』(1967年)
『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
『In A Silent Way』(1969年)
『On The Corner』(1972年)
『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
『Dark Magus』(1974年)
『Agharta』(1975年)
『The Man With The Horn』(1981年)