発表年:2016年
ez的ジャンル:スペシャル・ユニット系女性ヴォーカル・トリオ
気分は... :静かなるスペシャル作・・・
新作アルバムGretchen Parlato、Rebecca Martin、Becca Stevensという女性アーティスト3名によるスペシャル・ユニットTilleryによる初アルバム『Tillery』です。
今ジャズの歌姫としてわが国でも高い人気を誇るGretchen Parlatoに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。
『Gretchen Parlato』(2005年)
『In a Dream』(2009年)
『The Lost And Found』(2011年)
『The Gretchen Parlato Supreme Collection』(2015年)
※日本独自企画コンピ
また、ここ数年で注目度が一気に高まった女性アーティストBecca Stevensに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の2枚。
Becca Stevens Band『Weightless』(2011年)
Becca Stevens Band『Perfect Animal』(2014年)
残る1人のRebecca Martinは当時のボーイフレンドであったJesse HarrisとのユニットOnce Blueで音楽シーンに登場し、その後ソロ・アーティストとして活動しています。また、USジャズ・ドラマーPaul Motianのグループとの共演作もリリースしています。
そんな各々がアーティストとしての地位を確立している3名が集まったスペシャル・ユニットがTilleryです。2010年に初めて出会った3名がTillery名義で活動を始めたのは2011年。その後も断続的に活動してきましたが、遂にTillery名義でのアルバムが完成しました。
基本的にはRebecca Martin(vo、g、hand per)、Gretchen Parlato(vo、charango、hand per)、Becca Stevens(vo、g、ukulele、charango、hand per)の3名のみでのレコーディングが中心です。
一部の曲にMark Guiliana(ds、per)、Pete Rende(p、key)、Larry Grenadier(b)がゲスト参加しています。Pete Rendeは本作のエンジニアも務めています。
シンプルながらも素敵なヴォーカル・ワールドを存分に堪能できるスペシャルな1枚に仕上がっています。歌はテクニックではなく、歌心であることを改めて実感できます。3人が織り成すヴォーカル・ワークは聴く者をピュアな心にしてくれるはずです。
特に秋に聴く音としては最高なのでは?
年末恒例『ezが選ぶ2016年の10枚』の有力候補となりそうな静かなるスペシャル作です。
全曲紹介しときやす。
「Take Me With U」
オープニングは今年急逝したPrinceのカヴァー。殿下のオリジナルは大ヒット・アルバム『Purple Rain』(1984年)に収録されています。これをオープニングに持ってきたのは殿下へのトリビュートの意味もあるのでしょうね。Rebeccaのギター、Gretchenのチャランゴ、Beccaのウクレレのみのバックで3名がこのユニットらしい素敵なヴォーカル・ワークを聴かせてくれます。
「O I Long To Feel Your Arms Around Me」
Joshua Tillman作。Fleet FoxesのドラマーであったJoshua Tillmanのソロ・プロジェクトFather John Mistyのカヴァー。オリジナルは『Fear Fun』(2012年)に収録されています。やや古い引き合いですが、このフォーキーな味わいは女性版CS&N(Crosby,Stills & Nash)といった雰囲気ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=SkyXLhlSv3E ※スタジオライブ
「No More」
Becca Stevens/William Stevens作。Becca本人のヴァージョンは『Weightless』に収録されています。ここではBeccaのギター、ウクレレのみのシンプルなバックで素敵なヴォーカル・ワークを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=-oTpleL_l2M ※別ヴァージョン
「Magnus」
Gretchen Parlato/Magnus Thompson-Marcelin作。Gretchenのライヴ・レパートリーからのセレクト。3名によるア・カペラ・コーラスでスタートし、Beccaのチャランゴをバックにドリーミーなヴォーカル・ワークを聴かせてくれる本曲はGretchenの個性とBeccaの個性が見事に融合しています。
「God Is In The Details」
Rebecca Martin作。Rebecca本人のヴァージョンは『Twain』に収録されています。ゆっくりと時間が流れていくフォーキー感がいいですね。
「I Wanna Fly So Free」
Gretchen Parlato/Eureka作。Gretchenのオリジナルは難病や障害に立ち向かう子供たちのためにBecca Stevensが中心となって制作したアルバム『Arts For Life: My Life Is Bold』(2010年)で披露されたものです。小鳥の囀りと共に始まるア・カペラ・コーラスを聴いていると童心に帰ります。
「Sweetheart」
Rebecca Martin作。ギターのみならず、キーボード、ベース、ドラムも加わった演奏です。メリハリのある深淵感がいい雰囲気です。
「I Asked」
Becca Stevens作。『Perfect Animal』収録曲のリメイク。Becca Stevensが客演したSnarky Puppy『Family Dinner Volume Two』(2016年)でも本曲を披露しています。ここではオリジナルの雰囲気を残しつつ、シンプルなバックで本作らしいヴォーカル・ワークの栄えるピュアな仕上がりになっています。
「To Up And Go」
Rebecca Martin作。Rebecca本人のヴァージョンは『Twain』に収録されています。切々とした歌声にグッとくるフォーキー・チューンに仕上がっています。
「Push Me Away」
The Jacksonsのカヴァー(Jackie Jackson/Marlon Jackson/Michael Jackson/Randy Jackson/Tito Jackson作)。オリジナルは『Destiny』(1978年)に収録されています。この楽曲の素晴らしさを再認識できる至極のカヴァーに仕上がっています。このユニットがMJとPrinceという今は亡き2人のスーパー・スターの曲を取り上げているのが興味深いですね。
「Tillery」
Becca Stevens作。ユニット名にもなっているタイトル曲は『Perfect Animal』にも収録されています。Jane Tyson Clementの詞を引用した本曲は『Home - Gift of Music (Japan Earthquake Relief) 』(2012年)の中でChris Tordini, Gretchen Parlato & Becca Stevens名義で歌われたヴァージョンがオリジナルです。Beccaらしいフォーキー&エスニックな雰囲気を持った曲ですね。
国内盤CDボーナス・トラックとしてAntonio Carlos Jobimのボサノヴァ名曲カヴァー「Corcovado(Quiet Nights Of Quiet Stars)」が追加収録されています。このカヴァー・セレクトはGretchen主導かもしれませんね。
メンバー3名の関連アルバムもチェックを!
Gretchen Parlato『Gretchen Parlato』(2005年)
Gretchen Parlato『In a Dream』(2009年)
Gretchen Parlato『The Lost And Found』(2011年)
Gretchen Parlato『Live In NYC』(2013年)
Gretchen Parlato『The Gretchen Parlato Supreme Collection』(2015年)
※日本独自企画コンピ
Becca Stevens Band『Tea Bye Sea』(2008年)
Becca Stevens Band『Weightless』(2011年)
Becca Stevens Band『Perfect Animal』(2014年)
Once Blue『Once Blue 』(1995年)
Rebecca Martin『Thoroughfare』(1999年)
Paul Motian Trio 2000 + One『Trio 2000 + One』(1999年)
Rebecca Martin『Middlehope』(2002年)
Rebecca Martin『People Behave Like Ballads』(2004年)
Paul Motian Trio 2000 + One『On Broadway Vol.4 Or The Paradox Of Continuity 』(2006年)
Rebecca Martin『The Growing Season』(2008年)
Rebecca Martin『When I Was Long Ago』(2010年)
Rebecca Martin『Twain』(2013年)