発表年:2000年
ez的ジャンル:N.Y.ノー・ウェイヴ系ニューウェイヴ/ファンク
気分は... :プリミティブな魅力!
今回はN.Y.のガールズ・ニューウェイヴ・バンドESGのコンピ・アルバム『A South Bronx Story』(2000年)です。
※大半の音源は80年代のものなので便宜上80年代カテゴリーに区分します。
ESGはN.Y.ブロンクスで結成されたニューウェイヴ・バンド。グループ名はEmerald, Sapphire and Goldの略です。
メンバーはDeborah Scroggins(b、vo)、Renee Scroggins(vo、g)、Valerie Scroggins(ds、vo)、Marie Scroggins(congas、vo)というScroggins四姉妹と隣人のTito Libran(congas)の5名。
グループは99 RecordsからEP「ESG」(1981年)、「ESG Says Dance To The Beat Of Moody」(1982年)、アルバム『Come Away With ESG』(1983年)をリリースします。
グループはThe Clash、P.I.L.、Gang of Fourといったパンク、ポスト・パンクのグループと共にギグをする一方で、Hip-HopレジェンドGrandmaster Flashと共演したり、あるいは彼女たちの楽曲「Moody」がN.Y.のクラブで大人気となったり、とニューウェイヴ/ポスト・パンクに止まらず、Hip-Hopやハウス/ディスコにも影響を及ぼしました。
ベースとドラムを中心としたミニマルな演奏は、お世辞にも上手いとは言えませんが、パンク/ニューウェイヴ/ポスト・パンクのバンドらしく、テクニックを超越した初期衝動を感じます。
グループは80年代半ばに活動を休止しますが、彼女達の与えたインパクトの大きさは、グループがLarry LevanのParadise Garageの閉店イベントに招かれたり、彼女たちの楽曲「UFO」が現在まで450以上の楽曲のサンプリング・ソースとなっているという事実からも知ることができます。
90年代に入ると、Renee、Valerie、Marieの3名で活動を再開し、現在もReneeやValerieの娘を加えたラインナップで活動を継続している模様です。
本作『A South Bronx Story』(2000年)は、99 RecordsからリリースしたEP2枚、アルバム1枚、さらに活動再開した1991年にPow Wow Recordsからリリースしたアルバム『ESG』からセレクトした編集盤です。
ESGの場合、EP「ESG」(1981年)とアルバム『Come Away With ESG』(1983年)の音源があれば、事足りると思うので、その代表曲を網羅した本作は便利なコンピ作品だと思います。EP「ESG」のジャケをそのまま使っているのも魅力です。
代表曲「UFO」、「Moody」をはじめ、スカスカで、下手くそなのに格好いいN.Y.ノー・ウェイヴのプリミティブな魅力を楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「You're No Good」
EP「ESG」収録。余分なものをすべて削ぎ落して残ったヘタウマ・サウンドの潔さにグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=hOgmf_Vb8S0
「Moody」
EP「ESG」収録。前述のようにガラージ・クラシックとして大人気の1曲。ベース、ドラムにコンガが絡むパーカッシヴ・ファンク・サウンドは確かにハウス/ガラージですね。Tricky「Mellow」等のサンプリング・ソースとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=SgS1_-oWkzY
「UFO」
EP「ESG」収録。前述のように「Moody」と並ぶグループの代表曲。妖しいギターが唸るインスト・ポスト・パンク。一聴すると、何の変哲もない演奏に聴こえるかもしれませんが、DJが45回転の本作を33回転でプレイしたことで大定番サンプリング・ソースとなっていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=0BsS-QQ99aQ
前述のように450以上の楽曲のサンプリング・ソースとなっています。有名Hip-Hopアーティストの多くが1度はこの曲のお世話になっているのでは?当ブログで紹介した曲でいえば、EPMD「Chill」 、TLC「Das Da Way We Like 'Em」、Q-Tip「Let's Ride」等があります。
Big Daddy Kane「Ain't No Half-Steppin'」
https://www.youtube.com/watch?v=2l2O-JOXG_I
LL Cool J「Mr. Good Bar」
https://www.youtube.com/watch?v=wXCiaCz-dSs
EPMD「Chill」
https://www.youtube.com/watch?v=SQZgKYinnuA
TLC「Das Da Way We Like 'Em」
https://www.youtube.com/watch?v=a2CJlXFSWyI
Q-Tip「Let's Ride」
https://www.youtube.com/watch?v=LmM239iHPyQ
「It's Alright」
アルバム『Come Away With ESG』収録。純粋にガールズ・ニューウェイヴとして楽しめるかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=tjJv3cvnfrE
「Moody (Spaced Out)」
アルバム『Come Away With ESG』収録。「Moody」の別ヴァージョンというかスペイシーになったリミックス・ヴァージョンですかね。
https://www.youtube.com/watch?v=HeQRweB-Pzk
「Tiny Sticks」
アルバム『Come Away With ESG』収録。チープなリフが延々続くだけなのに、何故か惹かれるのがヘタウマの魔法なのかも?
https://www.youtube.com/watch?v=26O1d19fSN8
「My Love For You」
アルバム『Come Away With ESG』収録。ヴォーカル入りなので、このバンドのキュートな側面が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=hyjuN6AIbpE
「Come Away」
アルバム『Come Away With ESG』収録。このヘタウマ・ビートが一周回って面白いかも?
https://www.youtube.com/watch?v=GkZ1bC1FQBk
「Dance」
EP「ESG Says Dance To The Beat Of Moody」およびアルバム『Come Away With ESG』収録。このバンドのファンクな魅力を満喫できる1曲。「Moody」、「UFO」に次ぐ僕のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=bCGdZnPzX8E
「Parking Lot Blues」
アルバム『Come Away With ESG』収録。ポスト・ロックな疾走感が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=dtMWnzf0x3E
「Chistelle」
アルバム『Come Away With ESG』収録。哀愁ギターとドタドタ・リズムから漂うダビーな雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=NsntZfz4Ftw
「About You」
アルバム『Come Away With ESG』収録。ベース・ラインでグイグイ引っ張る演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=RzYHyr6i-1E
「Erase You」
アルバム『ESG』収録。ここから4曲は90年代の音なので、全然雰囲気が違います。音はカラフルになっていますが、さすがにインパクトは弱いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=iaxTHyY58og
「Get Funky」
アルバム『ESG』収録。ダンサブル・サウンドはキャッチーで格好良いですが、ここまでポップになってしまうとESGらしくない気も・・・
https://www.youtube.com/watch?v=dAiPWjjomWc
「Hold Me Right」
アルバム『ESG』収録。重低音ベース・ラインによるダークな音世界がいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=iJaRYmVBbTs
「I Can't Tell You What To Do」
アルバム『ESG』収録。格好良いヘタウマなダンサブル・サウンドがいいですね。『ESG』からの4曲ではコレが一番好き。
https://www.youtube.com/watch?v=VPYa-TNDHos
本作の続編として、『A South Bronx Story 2』(2007年)もあります。
『A South Bronx Story 2』(2007年)