発表年:2016年
ez的ジャンル:L.A.ジャズ系ブラック・ミュージック
気分は... :ジャケ最高!
クリスマスですが、日曜なので新作優先で紹介します。
多分、年内は今日を含めて新作紹介は残り2回になると思います。
ということで、新作ジャズ作品からJosef Leimberg『Astral Progressions』です。
Josef Leimbergは20年以上のキャリアを誇るL.A.を拠点とするトランぺッター/プロデューサー。
ジャズ・ミュージシャンであると同時に有能なHip-Hopプロデューサーである彼の名を有名にしたのは、昨年の音楽シーンを席巻した衝撃作Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』(2015年)のプロデュースでしょうね。
同作でJosef Leimbergは、同じくジャズ・ミュージシャン兼Hip-HopプロデューサーであるTerrace Martinとプロデュース・ユニットLoveDragonを組み、「How Much a Dollar Cost」、「You Ain't Gotta Lie (Momma Said)」の2曲を手掛けました。
こうした活動に代表されるように、JosefはSnoop Dogg、Erykah Badu、Robin Thicke、Shafiq Husayn(Sa-Ra (Sa-Ra Creative Partners))、Funkadelic、Freestyle Fellowship、Dr. Dre、Murs等といったHip-Hop/R&Bアーティストの作品にプロデューサー/ミュージシャンとして数多く参加しています。
当ブログで紹介した作品でいえば、以下の作品に関与しています。
(プロデューサーとして参加)
213『The Hard Way』(2004年)
Murs『Murs For President』(2008年)
Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』(2015年)
(ミュージシャンとして参加)
Avila Brothers『The Mood: Soundsational』(2005年)
Erykah Badu『New Amerykah: Part One (4th World War)』(2008年)
Sa-Ra Creative Partners『Nuclear Evolution: The Age Of Love』(2009年)
同時に、彼はKamasi Washington、Terrace Martinをはじめとする、今日のL.A.ジャズ・シーンを牽引するミュージシャンとも交流を持つと同時に、Flying LotusやThundercatといったL.A.ビートミュージックからの影響も受けます。
そうした中、2012年にJosefの母が逝去したことがきっかけとなり、初のリーダー・アルバムの制作を決意します。そして、遂に完成させたのが本作『Astral Progressions』です。ここに至るまでにはSa-RaのShafiq HusaynやTaz Arnoldの後押しがあったようです。
アルバムには、Kamasi Washington、Miguel Atwood-Ferguson、Georgia Anne Muldrow、Terrace Martin、Bilal、Tracy Wannomae、Kurupt、Jimetta Roseといったミュージシャンがフィーチャリングされています。
また、レコーディングにドラマーは参加せず、ビートはすべてJosefのプログラミングによるものです。その意味で、ジャズ・ミュージシャンとしての彼と、ビートメイカーとしての彼を融合させたアルバムと呼べるでしょう。
アルバム全体としては、L.A.ジャズとHip-Hop的センスが融合したブラック・ミュージック作品という印象です。Hip-Hop的センスもありますが、Kamasi Washingtonの傑作『Epic』(2015年)に通じる魅力もあります。
ちなみに印象的なジャケのアートワークはGeorgia Anne Muldrowのアルバム・ジャケで知られる日本人クリエイターTokio Aoyama(青山宗央)氏です。僕が本作が最初に気になったのも実はジャケでした。Georgia Anne Muldrow作品で青山氏のアートワークに魅了されていたので、自然と目に留まったのでしょうね。
今年聴いたジャズ・アルバムの中でも、かなり上位に入る1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Spirits Of The Ancestors」
Miguel Atwood-Fergusonのストリングス、Josefのトランペット、さらに厳かなコーラス等が織り成す壮大なスピリチュアル・ジャズでアルバムは幕を開けます。
「Interstellar Universe」
Kamasi Washingtonをフィーチャー。Kamasiの『Epic』に通じる雰囲気を持った現行ブラック・ジャズって雰囲気がいいですね。Kamasiの躍動するブロウに続き、Josefも負けじと快調なプレイを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Glie1tbc_ME
「As I Think Of You」
Georgia Anne Muldrow/Miguel Atwood-Fergusonをフィーチャー。当ブログでもお馴染み、独特の世界観を持つ女性R&BシンガーであるMuldrowが神秘的なヴォーカルを聴かせてくれます。ここでのMuldrowのヴォーカルはNina Simoneを意識しているrしいです。Muldrowが神秘的な雰囲気とMiguel Atwood-Fergusonがアレンジするストリングスの相性もバッチリです。
「The Awakening」
Terrace Martinと女性ジャズ・ミュージシャンTracy Wannomaeをフィーチャー。Josefのビートメイカーの側面を実感できるJ Dilla的なビートにのって、Martinのサックス、Wannomaeのバスクラリネット、Josefのトランペットが駆け巡ります。Robert Glasper Experimentあたりとは異なるアプローチでのジャズとHip-Hopの融合を楽しめます。
「Between Us 2」
Bilalをフィーチャー。Sa-RaのShafiq HusaynとJosefの共作曲です。さらにはKamasi Washington、Miguel Atwood-Fergusonも参加しています。アルバムの中でも最もキャッチーなネオソウルに仕上がっています。
「Celestial Visions」
Miguel Atwood-Fergusonの美しいストリングスをバックに、Josefが伸びやかなトランペットを響かせるビューティフル&ドリーミーな仕上がり。主役のJosef以上にMiguel Atwood-Fergusonの手腕が光る演奏かもしれません。
「Astral Progressions」
Kuruptのラップをフィーチャー。タイトル曲はHip-HopプロデューサーJosef Leimbergの側面を楽しめる1曲です。フツーに格好良いHip-Hopチューンとして楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=UkYVM0iOyYA
「Lonely Fire」
Terrace Martinをフィーチャー。Miles Davisのカヴァーです(オリジナルはアルバム『Big Fun』収録)。まさにエレクトリック・マイルスのような世界観を楽しめる演奏です。少しスピリチュアルなエッセンスが効いているのみグッド!
「Echoes Of One」
Jimetta Rose/Miguel Atwood-Fergusonをフィーチャー。Jimetta Roseのソウルフルな女性ヴォーカルを前面に打ち出した仕上がり。彼女は当ブログで紹介した作品でいえば、Visioneers『Hipology』(2012年)、Dexter Story『Seasons』(2013年)、Quantic Presenta Flowering Inferno『1000 Watts』(2016年)に参加しています。
「Psychedelic Sonia」
ラストは14分超の大作。本作を制作するきっかけとなった亡き母に捧げた1曲です。病床での母親の声が全編に流れる1曲です。ダンサーで画家でもあった彼の母はJosefに"ブルースのアルバムを作りなさい"と説いていたそうです。Josefの母への想いが伝わってくるスピリチュアル・ジャズです。
どうやら、Anderson .PaakがDr. Dreと制作しているアルバムに、Josef Leimbergが参加し、楽曲も提供しているらしいです。コチラも楽しみですね!