2017年05月30日

Cristina『Resgate』

Chico Buarqueの妹によるサンバ愛に溢れた1枚☆Cristina『Resgate』
サンバに自由を
発表年:1992年
ez的ジャンル:サンバ・リバイバル
気分は... :佐藤琢磨、歴史的快挙!

今、日本人として初めて世界三大レースの一つ「インディ500」を制した佐藤琢磨の勇姿を再放送で見ながら興奮気味です。

今回はサンバ愛に溢れたブラジル作品Cristina『Resgate』(1992年)です。

CristinaことCristina Buarqueは1950年サンパウロ生まれの女性シンガー。

Chico Buarqueを兄に、MiuchaJoao Gilbertoの元妻、Bebel Gilbertoの母)を姉に持つ音楽ファミリーの女性シンガーです。

1974年に初ソロ・アルバム『Cristina』をリリース。その後リオのサンバ・アーティストとの交流しながら、サンバ愛を深めていきます。

そんなCristinaのサンバ愛を反映した1枚が本作『Resgate』(1992年)です。

再発CD帯には1988年作品とありますが、国内盤は1992年リリース、本国ブラジルでは1994年リリースだと思います。

本作では名門エスコーラ、ポルテーラのベテラン・サンビスタが集まったグループVelha Guarda da Portelaをゲストに迎えるなどして、Cristinaが隠れたサンバ名曲の数々を歌い上げます。

また、Cristinaと交流が深かったものの、レコーディングの前年に逝去したサンバ・アーティストMauro Duarteの作品を3曲取り上げ、哀悼の意を示しています。

とにかく伝統サンバへの愛情に満ちた1枚です。
ノスタルジックな味わいがセンチメンタル気分を高めてくれるのがいいですね。

サンバに真摯に向き合うCristinaの思いが伝わってくる素敵なサンバ作品です。

全曲紹介しときやす。

「Amor Proibido/Eu Perdi Voce/Adeus, Eu Vou Partir」
Velha Guarda da PortelaのメンバーManaceiaとその兄弟であるAniceto、Mijinha(二人とも既に故人)の楽曲をメドレーで歌います。Manaceia、Cristina、さらにはManaceiaらの古くからの仲間Monarcoがリード・ヴォーカルをとります。
https://www.youtube.com/watch?v=40f6CCNCGR0

「O Mau Lavrador」
Elton Medeiros/Delcio Carvalho作。Orquestra De Cordas Brasileirasの哀愁メロウな演奏をバックに、Cristinaが切々と歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=D-RvQ-fau68

「Pedem Socorro」
Cartola作。偉大なサンビスタCartolaの未発表曲。ノスタルジックな躍動感がいいですね。終盤には姉Ana de Hollandaもヴォーカルに加わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=R3yMJearURc

「Samba Da Ilusao」
Paulo Cesar Pinheiro作。哀愁サンバをCristinaが雰囲気たっぷりに歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=8DWthQQ-c9Y

「Carioca Da Gema」
Mauro Duarte/Paulo Cesar Pinheiro作。作者Paulo Cesar Pinheiroも参加しています。リオ出身のPauloがサンパウロ出身のCristinaに、本物のカリオカを教えているといった感じでしょうか。カラっとした心地よさがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=vTHiauOWU9Q

「Ficara Comigo」
Nelson Sargento作。別れを歌った哀愁サンバですが、実に雰囲気があります。透明感のあるCristinaのヴォーカルもグッド”

「Quebrei A Jura」
Haroldo Lobo/Milton de Oliveira作。1930年代のヒット曲を楽し気に演奏します。
https://www.youtube.com/watch?v=7r_gyH3OuZQ

「Nunca Mais」
Ivone Lara/Dflcio Carvalho作。Cristinaの哀愁モードの節回しがいいですね。

「Nao Ha Mais Amor」
Aniceto Jose de Andrade作。再びVelha Guarda da Portelaのメンバーが参加しています。ポルテーラの定番曲らしく、息の合った一体感のあるヴォーカルを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=Twf7NahS8lI

「Coracao Marinheiro」
Marcio Proenca/Paulo Cesar Pinheiro作。アコーディオンが導かれ、哀愁のメロディをCristinaがしっとりと歌い上げます。

「Volta Para A Minha Companhia/Violao Amigo/Eu Pensei/Eu Vou Embora」
Mauro Duarte作品のメドレー。Walter Alfaiateもヴォーカルで加わっています。一体感のある演奏&ヴォーカルでMauro Duarteへのリスペクトを示しています。ラストにはWalter AlfaiateによるMauroへの讃辞の言葉も述べられます。
https://www.youtube.com/watch?v=eoX13fNJlbA

「Resgate」
Mauro Duarte/Paulo Cesar Pinheiro作。1987年に生前のMauro DuarteとCristinaによる自主制作シングルとしてレコーディングした音源で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=39Cgp4nC1o4

Cristina Buarqueの他作品もチェックを!

『Prato E Faca』(1976年)
Prato E Faca

Cristina Buarque & Henrique Cazes『Samba Sensual (Cancoes De Noel Rosa)』(1995年)
ノエール・ローザを歌う

Cristina Buarque e Terreiro Grande『Ao Vivo』(2007年)
Cristina Buarque & Terreiro Grande Ao Vivo
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2017年05月29日

Clarence Reid『Running Water』

マイアミ・ソウルの重要人物の代表作☆Clarence Reid『Running Water』
Running Water
発表年:1973年
ez的ジャンル:マイアミ・ソウル
気分は... :Blowflyは別人格です!

今回はマイアミ・ソウルの重要ミュージシャンClarence Reid『Running Water』(1973年)です。

Clarence Reidは、1939年ジョージア州コクラン生まれのミュージシャン、ソングライター、プロデューサー。

60年代半ばからミュージシャン、ソングライターとして活動するようになり、特に70年代に入りマイアミ・ソウルの総本山T.K. Recordsでソングライター、プロデューサーとして活躍するようになります。

最も有名なものがマイアミ・ソウルの女王Betty Wrightの代表曲「Clean Up Woman」のプロデュースです。

それ以外にも当ブログで紹介したBetty Wright『I Love The Way You Love』(1972年)、Reid Inc.『Reid Inc.』(1977年)、Lew Kirton『Just Arrived』(1980年)はClarence Reidプロデュースです。

また、Gwen McCraeKC & the Sunshine BandTimmy ThomasLatimoreJimmy "Bo" Horneなど数多くのアーティストに楽曲提供しています。

自身の作品としてはClarence Reid名義で『Nobody But You Babe』(1969年)、『Dancin' With Nobody But You Babe』(1969年)、『Running Water』(1973年)、『On The Job』(1976年)といったアルバムをリリースしています。

また、下ネタ大王キャラBlowfly名義でも数多くの作品をリリースしています。

良くも悪くもBlowflyの下ネタ大王キャラが立ちすぎている人ですが、これはあくまで別人格であり、Clarence Reid名義での活動とは切り離した方がいいでしょう。

本作『Running Water』(1973年)は、Clarence Reid名義の3作目であり、時期的にもニュー・ソウルな雰囲気を持ったアルバムです。

プロデュースはSteve AlaimoWillie Clarke

また、Little Beaverがアレンジ&ギターで参加しています。また、クレジットはありませんが、Timmy ThomasLatimoreも参加しているという話もあります。

定番ブレイクとしても大人気の「Living Together Is Keeping Us Apart」Little Beaverのファンキー・ギターが格好良い「If It Was Good Enough For Daddy」、キャッチーなグルーヴィー・ソウルの「Ruby」「Love Who You Can」、ブルージーなタイトル曲「Like Running Water」あたりが僕のオススメです。

Little Beaver好きの人が聴くと、彼のギターを随所で楽しめる1枚だと思います。

マイアミ・ソウル好きの人はぜひチェックを!

全曲紹介しときやす。

「Living Together Is Keeping Us Apart」
Clarence Reid/Willie Clarke作。アルバムのハイライトはこのオープニングかもしれませんね。格好良いドラム・ブレイクと共には始まる軽快なグルーヴとストリングスが織り成すニューソウル的なオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=EHjM5ghoGVo

格好良いイントロのドラムは定番ブレイクとして大人気です。Kanye West feat. Paul Wall & GLC「Drive Slow」、Kanye West, Kid Cudi, Lloyd Banks and Pusha T feat. Ryan Leslie「Christian Dior Denim Flow」、Dr. Dre & Snoop Dogg feat. Daz Dillinger, Nate Dogg & Warren G.「Deeez Nuuuts」、Dr. Dre feat. Daz Dillinger, RBX & Snoop Dogg「The Day the Niggaz Took Over」、Above the Law「Set Free」、A.D.O.R.「One for the Trouble」、Easy Business「Wear Your Anorak」、JT the Bigga Figga「X Filez」、San Quinn「No Glory」、Mr. Lif「A Glimpse at the Struggle」、Five Deez「Hey Young World」、Percee P feat. Prince Poetry「Last of the Greats」、Luke Christopher「I」、Logic「Common Logic/Midnight Marauder」、「Soul Food」、Illa Ghee feat. Lil' Fame「Salute the General」等のサンプリング・ソースとなっています。

Above the Law「Set Free」
 https://www.youtube.com/watch?v=-laRQHtn0_0
A.D.O.R.「One for the Trouble」
 https://www.youtube.com/watch?v=Gt5Y5w4vL9U
San Quinn「No Glory」
 https://www.youtube.com/watch?v=FpN5tIfcjNc
Mr. Lif「A Glimpse at the Struggle」
 https://www.youtube.com/watch?v=DlWvzMYXbag
Five Deez「Hey Young World」
 https://www.youtube.com/watch?v=cuqxj2_AIVo
Percee P feat. Prince Poetry「Last of the Greats」
 https://www.youtube.com/watch?v=JPpGcRJniUs
Luke Christopher「I」
 https://www.youtube.com/watch?v=UI5iNw522LI
Logic「Common Logic/Midnight Marauder」
 https://www.youtube.com/watch?v=4uGN96G_vdU
Illa Ghee feat. Lil' Fame「Salute the General」
 https://www.youtube.com/watch?v=zuls0TmAOQw

「New York City」
Clarence Reid/Willie Clarke作。Reid Inc.『Reid Inc.』『Reid Inc.』(1977年)で歌っていましたね。ビター・スウィートな魅力があるメロウ・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=CIalZ0hzsYU

「If It Was Good Enough For Daddy」
Clarence Reid作。Little Beaverの激シブなファンキー・ギターが格好良い1曲。Clarenceの低音ヴォーカルは少しBlowflyキャラが出かかっていますね(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=DPPrlRRdRK8

「Real Woman」
Clarence Reid作。イナたい雰囲気が魅力のグルーヴィー・ソウル。温かみがあっていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=C2bp_D56X10

Scientifik「It's Murda Son」のサンプリング・ソースとなっています。
Scientifik「It's Murda Son」
 https://www.youtube.com/watch?v=8W40Qakot_M

「Please Accept My Call」
Clarence Reid/Brad Shapiro作。J. P. Robinsonへの提供曲のセルフ・カヴァー。スウィート・ソウル調です。Clarenceは決して巧いシンガーではありませんが、味わいで勝負しています。
https://www.youtube.com/watch?v=p1X2byZhVyA

「The Truth」
Clarence Reid/Willie Clarke作。フルート&ストリングスが活躍するニューソウル風アレンジが印象的なブルージー・ソウル。
https://www.youtube.com/watch?v=bByjVtnP6ws

「Ruby」
Clarence Reid/R. Nesmith作。Little Beaverの軽快なギターが先導するポップ&グルーヴィーな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=4domVSkIy9U

「Love Who You Can」
Clarence Reid作。今回聴き直して魅力を再発見したグルーヴィー・ソウル。気の利いたアレンジとLittle Beaverのギターがいい味出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=NgHMjjg8v8g

「Please Stay Home」
Clarence Reid作。イナたいサザン・ソウル風味の仕上がりがグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=qmWEtHi-FXw

「Like Running Water」
Clarence Reid作。タイトル曲は8分半の大作。緩急でメリハリをつけたブルージー・ソウルで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=LcEnZwES1uY

Cheri Dennis「So Complete」、Casual「Tears」のサンプリング・ソースとなっています。
Cheri Dennis「So Complete」
 https://www.youtube.com/watch?v=3HnHWDl1inM
Casual「Tears」
 https://www.youtube.com/watch?v=lQfz6bGQKDM

Clarence Reid名義の他作品もチェックを!

『Nobody But You Babe』(1969年)
NOBODY BUT YOU BABE

『Dancin' With Nobody But You Babe』(1969年)
ダンシン・ウィズ・ノーバディ・バット・ユー・ベイブ

『On The Job』(1976年)
オン・ザ・ジョブ

ご興味がある方はBlowfly名義の作品もチェックを!

『Butterfly』(1973年)
Blowfly Butterfly

『The Weird World of Blowfly』(1973年)
The Weird World of Blowfly

『At The Movies』(1973年)
At The Movies

『On Tour』(1974年)
Blowfly on Tour

『Blowfly On TV』(1974年)
On TV

『Zodiac』(1975年)
Zodiac

『Oldies But Goodies』(1976年)
Oldies But Goodies

『Disco』(1977年)
Blowfly's Disco

『Zodiac Party』(1978年)
Zodiac Party

『Blowfly's Party』(1980年)
Blowfly's Party

『Rappin', Dancin', And Laughin'』(1980年)
Rappin', Dancin', and Laughin' by Blowfly (2012-05-03)

『Porno Freak』(1981年)
Porno Freak
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2017年05月28日

Kendrick Lamar『Damn.』

『To Pimp A Butterfly』に続く衝撃!☆Kendrick Lamar『Damn.』
Damn
発表年:2017年
ez的ジャンル:コンシャスHip-Hop
気分は... :リバース!

今回は新作アルバムから超話題のHip-Hop作品Kendrick Lamar『Damn.』です。

現代アメリカ社会に鋭く切り込むリリックで絶大なる支持を得ているKendrick Lamarの紹介は、大ヒットとなった歴史的名盤『To Pimp A Butterfly』(2015年)に続き2回目となります。

未発表曲集『Untitled Unmastered』(2016年)を挟んでリリースされた新作『Damn.』ですが、『To Pimp A Butterfly』に続く衝撃作だと思います。

アルバムは『To Pimp A Butterfly』『Untitled Unmastered』に続く全米アルバム・チャートNo.1に輝いています。

プロデューサー陣には、Anthony "TopDawg" TiffithBekonMike WiLL Made ItDJ DahiSounwaveJames BlakeRicci RieraTerrace MartinSteve LacyThe Internet)、BadBadNotGoodGreg KurstinTeddy WaltonThe AlchemistCardo9th Wonderという多彩な面々が起用されています。

アルバムではRihannaU2、Zacariがフィーチャーされ、それ以外にBekon(vo)、Kid Capri(vo)、Chelsea Blythe(vo)、DJ Dahi(vo)、Anna Wise(vo)、Steve Lacy(vo)、Rat Boy(vo)、Matt Schaeffer(g)、Thundercat(b)、Kamasi Washington(strings)、Sounwave(strings)、Mike Hector(ds)等が参加しています。

『To Pimp A Butterfly』もそうでしたが、曲単位で云々ではなくアルバム単位で1つの作品、メッセージになっている構成力の高さが、他のアーティストの追随を許さない魅力だと思います。

普段は歌詞内容やメッセージよりもサウンド重視で作品を聴く僕ですが、本作に関しては、リリックや世界観に圧倒され、サウンドは二の次になってしまいます。

本作に貫かれているテーマは「邪悪さと弱さ」。神になったかのように振る舞う邪悪な自分、その反対に己の弱さを克服しようとする自分、自分の中に存在する2つのパーソナリティの間を揺れ動きます。

そんなテーマを象徴するように、「Pride.(強欲)」「Humble.(謙虚さ)」「Lust.(色欲)」「Love.(愛)」といった対照的なタイトルの曲が並んだ構成になっています。

対照的といえば、オープニングの「Blood.」では、誤った選択が死を招くという内容、ラストの14曲目「Duckworth.」は正しい選択が運命を切り開く内容になっているのも意味深です。

さらにラストの「Duckworth.」の終盤にはテープの逆回し音と共に、アルバムがリバースされ、気づくとオープニングの「Blood.」に戻っているという仕掛けがあります。

本作は1曲目から聴くと、2つのパーソナリティの間を揺れ動きながらも、「Lust→Love」、「Pride→Humble」のように弱さを克服してエンディングを迎える流れになっています。しかし、逆回しの流れで14曲目からアルバムをリバースしながら聴くと、「Love→Lust」「Humble→Pride」のように邪悪な方向に流れ、ラストはその選択の誤りから銃で撃たれて絶命することになります。

どちらから聴き始めるかでストーリーが大きく異なってくる。それを選択するのはリスナー次第・・・
こうしたリバースの流れを意図して本作が制作されたのであれば脱帽です。

こんなアルバムを作ってしまうKendrick Lamarは真のアーティストですね。

僕も両方のパターンでアルバムをさらに聴き込みたいと思います。

全曲紹介しときやす。

「Blood.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Bekonプロデュース。Bekonのヴォーカルに続き、Kendrickが盲目の女性を助けようとしたところ、銃で撃たれて絶命する悲劇を語った後、銃声が響き、さらにFoxニュースのコメントのサンプリングが流れます。

最後のFoxニュースは、2015 BET AwardsにおけるKendrickの「Alright」のパフォーマンス(パトカーの上に乗った扇動的パフォーマンス)に対して、Foxニュースのコメンテーターが痛烈に批判したことが発端になっています。Kendrickが伝えたかったメッセージと全く逆の意味で受け止められてしまうもどかしさを伝えたいのでしょう。

「DNA.」
Mike WiLL Made Itプロデュース。少しダークなトラックにのって、「Blood」での鬱憤を晴らすかのように、自身の才能への自信を組み込まれたDNAの違いという切り口でまくし立てます。ここでもFoxニュースのコメントのサンプリングが挿入されています。
https://www.youtube.com/watch?v=NLZRYQMLDW4

「Yah.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Sounwaveプロデュース。タイトルには神を意味する"Yahweh"というニュアンスも込められているようです。サウンドからも宗教的なムードが漂います。♪buzzin',radaras in buzzin'♪のフレーズが脳内に刻まれます。

「Element.」
Sounwave/James Blake/Ricci Rieraプロデュース。Kid Capriがヴォーカルで参加しています。ポスト・ダブステップの貴公子James Blakeも関与した曲で、♪誰も俺を守ってくれない♪とKendrickが自身の脆さを吐露します。Juvenile「Ha」のフレーズが引用されています。

「Feel.」
Sounwaveプロデュース。超絶ベーシストThundercatが参加しています。そのThundercatのベース、O.C. Smith「Stormy」ネタのドラム・ループ、Chelsea Blytheのヴォーカルをバックに、富と名声を得た代償として孤独を感じる自身の内面に迫ります。

「Loyalty.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Sounwave/Terrace Martinプロデュース。Rihannaをフィーチャー。Bruno Marsの「24K Magic」をサンプリングし、大胆に逆回転させたトラックにのって、"バッドガール"Rihannaと共に大切な人への忠誠心を歌い上げます。

「Pride.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Steve Lacyプロデュース。注目のR&BユニットThe InternetのメンバーSteve Lacyがプロデュースに関与しています。そんなせいもあってサウンドがいいですね。ここでのKendrickのラップは不安定な心を露わにしています。

「Humble.」
Mike WiLL Made Itプロデュース。アルバムからのリード・シングルとして全米チャート、同R&Bチャート共にNo.1に輝いています。最後の晩餐を模したシーンも登場するPVが印象的です。謙虚でいることは難しい・・・
https://www.youtube.com/watch?v=tvTRZJ-4EyI

「Lust.」
BadBadNotGood/DJ Dahi/Sounwaveプロデュース。Kid CapriとRat Boyがヴォーカルで参加しています。L.A.ジャズの重要アーティストKamasi Washingtonがストリングスを手掛けています。哀愁モードのトラックにのって、色欲に流される人々を歌います。Rat Boy「Knock Knock Knock」のフレーズも登場します。

「Love.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Greg Kurstin/Sounwave/Teddy Waltonプロデュース。Zacariをフィーチャー。前曲「Lust」とは対照的に真の愛について歌います。そのテーマに相応しい崇高な美しさに包まれた仕上がりです。

「XXX.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/DJ Dahi/Mike WiLL Made It/Sounwaveプロデュース。U2をフィーチャーした話題曲。ここでのKendrickはオバマが去り、トランプが仕切る合衆国への絶望を明確に示しています。そんな苛立つKendrickをなだめるようにBonoのヴォーカルが響きます。James Brown「Get Up Offa That Thing」 、Young-Holt Unlimited「Wah Wah Man」
Foals「Fugue」 ネタ。

「Fear.」
The Alchemistプロデュース。不気味な空気が支配するトラックをバックに、Kendrickがこれまでの人生の節目で感じてきた恐怖心を歌います。The 24-Carat Black「Poverty's Paradise」の声ネタが正にFearですね!自身の「The Heart Part 4」のフレーズを引用しています。

「God.」
Anthony "TopDawg" Tiffith/Bekon/Cardo/DJ Dahi/Ricci Riera/Sounwaveプロデュース。「DNA.」や「Humble.」で自身の神ポジションを誇示していましたが、ここでは♪神はこのように感じているのか♪と謙虚な姿勢です。

「Duckworth.」
9th Wonderプロデュース。9th WonderらしいTed Taylor「Be Ever Wonderful」、Hiatus Kaiyote「Atari」、September「Ostavi Trag」、The Fatback Band「Let the Drums Speak」 ネタのソウルフル・トラックが冴えます。

ラストは自身の名字(Kendrick Lamar Duckworth)をタイトルに冠したエンディングのリリックは、20年前、Kendrickの父親と所属レーベルTop Dawg Entertainmentの社長Anthony "Top Dawg" Tiffithの間で本当にあった数奇な縁(レストランに強盗を企てようとしたTop Dawgに対して、その店で働くKendrickの父親が親切に接することで強盗を踏み止めさせた)をテーマにしています。

あの時、Top Dawgが強盗を犯していたら、あの時、Kendrickの父親が襲われて死亡していたら、Kendrick Lamarという才能が生まれることはなかった・・・この時の2人の選択がKendrickの人生を導いたという、嘘のようなアンビリバボーな実話から人生の選択の重要性を説きながらエンディングを迎えます・・・しかし、ここで終わらず銃声と共にテープの逆回転が始まり、アルバムがリバースし、気づけばオープニングの「Blood.」に戻ってアルバムは幕を閉じます。

Kendrick Lamarの他作品もチェックを!

『Section.80』(2011年)
Section.80 (Limited Edition Cdr)

『Good Kid, M.A.A.D City』(2012年)
Good Kid M.a.a.D City

『To Pimp A Butterfly』(2015年)
To Pimp a Butterfly

『Untitled Unmastered』(2016年)
untitled unmastered.
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2017年05月27日

Robert Glasper『In My Element』

故J Dillaに捧げた「J Dillalude」収録☆Robert Glasper『In My Element』
イン・マイ・エレメント
発表年:2007年
ez的ジャンル:進化形ジャズ・ピアノ・トリオ
気分は... :ピアノ・トリオによる『Black Radio』!

今日はジャズ・ピアノが聴きたい気分です。

セレクトしたのは、"今ジャズ"をリードするジャズ・ピアニストRobert Glasperの初期作品『In My Element』(2007年)です。

"今ジャズ"をリードするピアニストRobert Glasper率いる先鋭ジャズ・ユニット
1978年、テキサス州ヒューストン出身のジャズ・ピアニストRobert Glasperに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の7枚(Robert Glasper Experiment(RGE)名義の作品も含む)。

 『Double Booked』(2009年)
 『Black Radio』(2012年)
 『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年) ※リミックスEP
 『Black Radio 2』(2013年)
 『Covered』(2015年)
 Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)
 『ArtScience』(2016年)

本作はジャズ界に大きなインパクトを与えたRobert Glasper Experiment(RGE)結成以前の作品であり、Robert Glasper(p)、Vicente Archer(b)、Damion Reid(ds)というピアノ・トリオ編成でのレコーディングです。

ジャズ・ピアノ・トリオらしい美しいアコースティック・ジャズに加え、故J Dillaが手掛けたHip-Hop作品の数々を奏でる「J Dillalude」Radiohead「Everything in Its Right Place」のカヴァーなど、『Black Radio』を予感させる"今ジャズ"演奏も楽しめるのが本作の魅力です。

『Black Radio』からRobert Glasperを聴くようになったR&B/Hip-Hop系リスナーの方には、ピアノ・トリオ編成の本作に対する興味は薄いのかもしれません。

しかしながら、「J Dillalude」を聴けば、ピアノ・トリオでもJ Dillaの遺志を受け継ぐHip-Hop的なフィーリングを生み出すことができることを実感できるはずです。ピアノ・トリオによる『Black Radio』といった雰囲気ですよ。

進化形ジャズ・ピアノ・トリオを演奏を楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「G&B」
小気味よいオープニング。こういったジャズ・ピアノ・トリオらしい演奏でも、決して小難しい感じがしないのがGlasperですね。
https://www.youtube.com/watch?v=HFB7ZEGzJRk

「Of Dreams to Come」
タイトルの通り、夢の中のピアノ・ジャズといった雰囲気が伝わってくるエレガントな演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=nCsB6pHZQcs

「F.T.B.」
衝撃作『Black Radio』「Gonna Be Alright (F.T.B.)」として再演された楽曲です。『Black Radio』を聴いている人でれば、耳馴染みがあるので聴きやすいのでは?既にこの時点でピアノ・トリオによるBlack Radio感があってグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=uEh83c1wkMA

「Y'outta Praise Him (Intro)」
イントロといいながら3分半以上の叙情的な演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=3tEXOT4V2bU

「Y'outta Praise Him」
イントロに続く本編の方は"今ジャズ"のエッセンスがほんのり香る演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=oE3mFDcfMgM

「Beatrice」
サックス奏者Sam Riversの作品をカヴァー。オリジナルは『Fuchsia Swing Song 』(1965年)に収録されています。正統派ピアノ・トリオとしての実力も示してくれる演奏で、聴き応えがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=LXnXV2VvOLg

Sam Riversのオリジナルも素晴らしいのでチェックを!
Sam Rivers「Beatrice」
 https://www.youtube.com/watch?v=HxMIiTW59Co

「Medley: Maiden Voyage/Everything in Its Right Place」
「J Dillalude」と並ぶ本作のハイライト。Herbie Hancock「Maiden Voyage」Radiohead「Everything in Its Right Place」のカヴァー。ただし、単なるメドレーではなく、マッシュ・アップ感覚で聴かせるのが"今ジャズ"ミュージシャンらしいですね。深遠ながらも小粋な雰囲気が好きです。Radiohead「Everything in Its Right Place」が好きなので嬉しいカヴァーです。
https://www.youtube.com/watch?v=HJCFDlwMDxY

「J Dillalude」
J Dillaへのトリビュート。Q-Tipのヴォイス・メッセージに続き、Common「Thelonius」Jay Dee名義の「Doo Doo」、Slum Village「Fall in Love」De La Soul「Stakes Is High」というJ Dilla作品が演奏されます。Hip-Hop経由のジャズを堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=uNXosFXKll4

「Silly Rabbit」
スピーディー&スリリングな演奏です。終盤には「J Dillalude」の流れを汲むHip-Hopテイストの演奏で楽しませてくれます。

「One for 'Grew (for Mulgrew Miller)」
タイトルの通り、リスペクトするジャズ・ピアニストMulgrew Miller(1955-2013年)に捧げた曲です。オーセンティックな美しい演奏で魅了します。
https://www.youtube.com/watch?v=roX-vHvDr4U

「Tribute」
本編のラストはGlasperの魂の叫びと美しいピアノで締め括ってくれます。

国内盤CDにはボーナス・トラックとして、「Grey Days」が追加収録されています。

Robert Glasperの他作品もチェックを!

『Mood』(2003年)
MOOD

『Canvas』(2005年)
Canvas

『Double Booked』(2009年)
Double Booked

Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)
ブラック・レディオ

Robert Glasper Experiment『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Black Radio Recovered: the Remix Ep

Robert Glasper Experiment『Black Radio 2』(2013年)
ブラック・レディオ2

『Covered』(2015年)
カヴァード

Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)
エヴリシングス・ビューティフル

Robert Glasper Experiment『ArtScience』(2016年)
アートサイエンス
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2017年05月26日

Cheryl Lynn『Instant Love』

Luther Vandross全面プロデュース☆Cheryl Lynn『Instant Love』
インスタント・ラヴ(紙ジャケット仕様)
発表年:1982年
ez的ジャンル:アーバン・ソウル/ブギー
気分は... :心のアンチエイジング!

今回は女性ディスコ/ソウル・シンガーCheryl Lynnの4thアルバム『Instant Love』(1982年)です。

ダンス・クラシック「Got To Be Real」でお馴染みのディスコ/ソウル・シンガーCheryl Lynnの紹介は、『In The Night』(1981年)、『It's Gonna Be Right』(1985年)に続き3回目です。

本作『Instant Love』は、人気男性R&BシンガーLuther Vandrossが全面プロデュースした作品です。

ダンス・クラシック「Got To Be Real」に代表されるように、ディスコ・シンガーのイメージが強かったCheryl Lynnが、Luther Vandrossと組むことで、よりソウル・シンガーとしてのイメージを印象づけたかったのが本作のねらいかもしれません。

レコーディングにはMarcus Miller(b、syn)、Yogi Horton(ds)、Steve Ferrone(ds)、Nat Adderley Jr.(key、p)、Steve Love(g)、Michael McGloiry(g)、Michael Sembello(g)、Doc Powell(g)、Ed Walsh(syn)、Steve Kroon(per)、Paulinho Da Costa(per)、Crusher Bennett(per)、Tawatha Agee(back vo)、Brenda White(back vo)、Fonzi Thornton(back vo)、Michelle Cobbs(back vo)、Phillip Ballou(back vo)等が参加しています。

アルバムからはLuther Vandrossとのデュエットによるバラード「If This World Were Mine」が全米R&Bチャート第4位のヒットとなり、ソウルなCheryl Lynnを印象づけてくれました。

とは言うものの、個人的には「Instant Love」「Sleep Walkin'」「Look Before You Leap」「Say You'll Be Mine」といったアーバンなディスコ/ブギーに惹かれてしまいます。

アルバム単位でなかなか充実した1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Instant Love」
Luther Vandross/Marcus Miller作。タイトル曲はアルバムのリード・シングルにもなりました。華やかなアーバン・ブギーですが、ダンサブルながらもヴォーカル重視な感じが本作らしいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=brg3rvZjhN4

「Sleep Walkin'」
Luther Vandross/Marcus Miller作。煌びやかなシンセが印象的なアーバン・ブギー。「Instant Love」同様に、ダンサブルながらもヴォーカル重視のアレンジがグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=1I4AC_NEF6s

Madlib「Disco Break」 のサンプリング・ソースとなっています。
Madlib「Disco Break」
 https://www.youtube.com/watch?v=rVkygmURePY

「Day After Day」
Tawatha Agee作。しっとりと歌い上げるバラード。抑えたバッキングがCherylのヴォーカルを引き立てます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZSu0yWPchTk

「Look Before You Leap」
David Batteau/Michael Sembello作。アルバムからの3rdシングルとなったアーバン・ブギー。作者Michael Sembelloの爽快カッティング・ギターがCherylのヴォーカルを先導します。
https://www.youtube.com/watch?v=Og1FL3ZnDX8

「Say You'll Be Mine」
Tawatha Agee/Kevin Robinson作。実は昔も今も本作における僕の一番お気に入りはコレ。「Got To Be Real」なCheryl Lynnに会いたい人にはオススメです。
https://www.youtube.com/watch?v=4zP3E2M9yQE

「I Just Wanna Be Your Fantasy」
Cheryl Lynn/George Smith III作。Marcus Millerの格好良いベースが印象的なアーバンなミディアム・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=lfwp1_-HOc8

「Believe in Me」
Ashford & Simpson作。Ashford & Simpsonのオリジナルはアルバム『Come As You Are』(1976年)に収録されています。ピアノ&オーケストレーションをバックに、オーセンティックなビューティフル・バラードを歌い上げます。
Afta-1「Believe」のサンプリング・ソースとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=sOJ6fpJQLug

「If This World Were Mine」
ラストはMarvin Gaye & Tammi Terrell、1967年のシングル曲をカヴァー(Marvin Gaye作)。Luther Vandrossとのデュエットでアルバムからの2ndシングルとなり、全米R&Bチャート第4位のヒットとなっています。Luther Vandrossが素晴らしいヴォーカルでCherylヴォーカルをエスコートするオトナのバラードでアルバムを締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=NR-q4Gvdp0o

Saigon「If...(My Mommy)」、Jha Jha「If You Were Mine」、Da BackWudz「The World Could Be Yours」、Atlantic Connection「Wonderful Life」のサンプリング・ソースとなっています。
Saigon「If...(My Mommy)」
 https://www.youtube.com/watch?v=c3J49zm4nVw
Jha Jha「If You Were Mine」
 https://www.youtube.com/watch?v=vN0ILpPOtfs
Da BackWudz「The World Could Be Yours」
 https://www.youtube.com/watch?v=7mnQVsAggfM
Atlantic Connection「Wonderful Life」
 https://www.youtube.com/watch?v=YzEpQhxJa4Q

Cheryl Lynnの他作品もチェックを!

『Cheryl Lynn』(1978年)
シェリル・リン(紙ジャケット仕様)

『In Love』(1979年)
イン・ラヴ(紙ジャケット仕様)

『In The Night』(1981年)
イン・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)

『Preppie』(1983年)
プレッピー(紙ジャケット仕様)

『It's Gonna Be Right』(1985年)
ゴナ・ビー・ライト(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする