2017年05月20日

Herbie Mann & Tamiko Jones『A Man And A Woman』

フリーソウルでお馴染みTamiko Jonesの初アルバム☆Herbie Mann & Tamiko Jones『A Man And A Woman』
男と女
発表年:1967年
ez的ジャンル:ソフト・ボッサ系ジャズ/ポップス
気分は... :1-2-3!

今回はジャズ・フルート奏者Herbie Mannが母親が日本人の黒人女性シンガーTamiko Jonesと共演したアルバム『A Man And A Woman』(1967年)です。

N.Y.出身の人気ジャズ・フルート奏者Herbie Mann(1930-2003年)について、これまで当ブログで紹介してきた作品は以下の3枚。
 『Memphis Underground』(1969年)、
 『Muscle Shoals Nitty Gritty』(1970年)
 『Push Push』(1971年)

また、1945年ウエスト・ヴァージニア生まれ、母親が日本人の女性シンガーTamiko Jonesについては、フリーソウル人気曲「Touch Me Baby」「Creepin'」収録のアルバム『Love Trip』(1975年)を紹介済みです。

フリーソウル人気作『Love Trip』(1975年)から入ると、ソウル・シンガーのイメージが強いTamiko Jonesですが、彼女の初アルバムは人気ジャズ・フルート奏者Herbie Mannとの共演によるジャズ/ポップス作品の本作です。

レコーディング・メンバーはHerbie Mann(fl)、Tamiko Jones(vo)以下、Joe Zawinul(p)、Victor Gaskin(b)、Reggie Workman(b)、Everett Barksdale(el-b)、Bruno Carr(ds)、Roy McCurdy(ds)、Carlos "Patato" Valdes(congas、per)、Roy Ayers(vibe)、Gary Burton(vibe)等。

アルバム全体はライト感覚のポップス作品に仕上がっています。ソフト・ボッサ調の曲が多いのが特徴です。

どちらかと言えば、ボッサ名曲カヴァーに惹かれて購入したのですが、実際に聴いて気に入ったのは「1-2-3」「Sidewinder」「A Good Thing (Is Hard to Come By)」といったビートの効いたヒップな演奏です。

Herbie Mannの持つクロスオーヴァーなポップ感覚がTamiko Jonesの魅力を上手に引き出している1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「A Man and a Woman」
お馴染みのフランス映画『Un Homme Et Une Femme(邦題:男と女)』(1966年)の主題歌をカヴァー(Francis Lai/Pierre Barouh作)。オリジナルの雰囲気を受け継いだソフト・ボッサな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=jPUl0hjRShE

「Day Tripper」
Beatlesソングをカヴァー(John Lennon/Paul McCartney作)。TamikoのヴォーカルをHerbie Mannのフルートが先導する疾走感のあるポップ・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=hv9wladnFy8

「Come Back to Me」
ミュージカル『On a Clear Day You Can See Forever』(1965年)の挿入歌をカヴァー(Burton Lane/Alan Jay Lerner作)。疾走感が心地好いボッサ・グルーヴで楽しませてくれます。

「Little Boat」
Roberto Menescal/Ronaldo Boscoli作の名曲「O Barquinho(小舟)」をカヴァー。イントロだけ聴くと、「A Man and a Woman」と混同しそうなソフト・ボッサです(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=b7lcAgOY2X4

本曲について、当ブログではElis Regina『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』『Elis Regina in London』『Aquarela Do Brasil』収録の3ヴァージョンやO QuartetoStacey KentTamba Trioのカヴァーを紹介済みです。

「It's Time That You Settled Down」
Neil Sheppard/Ray Fox作。ポップな魅力があるソフト・ボッサ。しっとりとしたTamikoのヴォーカルがチャーミングです。

「A Good Thing (Is Hard to Come By)」
Tamiko Jones作。R&Bフィーリングのサウンドでヒップに躍動します。パンチのあるサウンドとコケティッシュなTamikoのヴォーカルの組み合わせがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=o3ce4rUIHis

「1-2-3」
Len Barry、1965年のヒット曲をカヴァー(Len Barry/John Madara/Dave White作)。個人的には一番のお気に入り。快活なポップ・チューンでTamikoのキュートなヴォーカルが弾けます。
https://www.youtube.com/watch?v=a2nft9e1lfI

「Only Yesterday」
Jimmy Wisner作。しっとりと歌い上げるバラード。Tamiko Jonesのソロ・アルバム『Tamiko』(1968年)でも取り上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=dTVbOOoQY5E

「Sunny」
Bobby Hebbの1966年のヒット曲のカヴァー。このサウンド・プロダクションに見事にハマっています。あまりにも予定調和な感じが逆に物足りない気もしますが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=o1UVPOnhTUM

本曲について、当ブログではDusty SpringfieldBirgit LystagerClementineAnn BurtonJose FelicianoPapikVoices In Latinのカヴァーも紹介済みです。

「How Insensitive」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius De Moraes作のボサノヴァ名曲をカヴァー。少し憂いを帯びたヴォーカルでしっとりと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=p_10dVKwlHc

本曲について、当ブログではTriste JaneroDuke PearsonOscar PetersonEarl OkinStacey KentStan Getz & Luiz BonfaGenaiBobbi Boyle & The Trioのカヴァーを紹介済みです。

「Sidewinder」
Lee Morganのジャズ・ロック名曲をカヴァー。「1-2-3」と並ぶお気に入り。スウィンギン・ロンドン系の曲と一緒に聴きたくなるヒップな魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=AYXsUdyUPMw

Herbie MannTamiko Jonesの過去記事もチェックを!

Herbie Mann『Memphis Underground』(1969年)
Memphis Underground

Herbie Mann『Muscle Shoals Nitty Gritty』(1970年)
Muscle Shoals Nitty Gritty

Herbie Mann『Push Push』(1971年)
プッシュ・プッシュ

Tamiko Jones『Love Trip』(1975年)
ラヴ・トリップ
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2017年05月19日

Funkadelic『One Nation Under A Groove』

P-Funkを象徴する不滅の1枚☆Funkadelic『One Nation Under A Groove』
ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ+1(紙ジャケット仕様)
発表年:1978年
ez的ジャンル:本家P-Funk
気分は... :グルーヴで団結せよ!

George Clinton率いるP-Funk軍団Funkadelicの代表作『One Nation Under A Groove』(1978年)です。

これまで当ブログで紹介してきたFunkadelic/Parliament作品は以下の7枚。

 Parliament『Mothership Connection』(1975年)
 Parliament『The Clones Of Dr. Funkenstein』(1976年)
 Parliament『Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome』(1977年)
 Parliament『Trombipulation』(1980年)
 Funkadelic『Maggot Brain』(1971年)
 Funkadelic『Let's Take It to the Stage』(1975年)
 Funkadelic『Uncle Jam Wants You』(1979年)

本作『One Nation Under A Groove』は、Parliament『Mothership Connection』(1975年)あたりと並んでP-Funkを代表するアルバムですね。チャート的にもFunkadelic/Parliament作品で唯一の全米R&Bアルバム・チャートNo.1となったアルバムです。

2014年にはブック・スタイルの2枚組再発CDもリリースされています。

『One Nation Under A Groove』 ※2014年再発CD
One Nation Under a Groove

Parliamentとの比較で、ロックなイメージが強いFunkadelicですが、本作や次作『Uncle Jam Wants You』(1979年)は、Parliamentとの違いを意識せずに楽しむことができます。このあたりは賛否が分かれるところかもしれませんが、そのキャッチーな仕上がりがチャート・アクションにも結び付きました。

R&Bの旗を掲げ、グルーヴによる団結を呼びかけるジャケやタイトルだけでもインパクトがありますよね。P-Funkの精神を強く押し出した本作コンセプトに惹かれる人も多いのでは?

サウンド面では本作から元Ohio PlayersJunie MorrisonがP-Funk軍団に加入し、ミュージカル・ディレクター的な役割を果たしています。本作や『Uncle Jam Wants You』は彼の貢献度が大きいかもしれませんね。

勿論、プロデュースはGeorge Clinton

George Clinton(vo)以下、Junie Morrison(key、vo)、Bootsy Collins(b、ds、per)、Michael Hampton (g)、Garry Shider(g、vo)、Bernie Worrell(key)、Cordell Mosson(b)、Rodney Curtis(b)、Jerome Brailey(ds、per)、Larry Fratangelo(ds、per)、Tyrone Lampkin(ds、per)、Bobby Lewis(banjo)といった面々がレコーディングに参加しています。

さらにRay DavisRon FordMallia FranklinLynn MabryCordell MossonDawn SilvaGreg ThomasJeanette WashingtonDebbie Wrightがヴォーカルを務めます。

全米R&Bチャート第1位となったダンサブルなタイトル曲「One Nation Under a Groove」が目立ちますが、カリビアン・テイストの「Groovallegiance」、ロックな「Who Says a Funk Band Can't Play Rock?!」、ブルージーな「Promentalshitbackwashpsychosis Enema Squad (The Doo Doo Chasers)」、レゲエ調の「Into You」、P-Funkらしいファンク「Cholly (Funk Getting Ready To Roll!)」と幅広い音楽性が楽しめるアルバムに仕上がっています。

P-Funk好き、Funk好きの人は避けて通れない1枚かもしれませんね。

全曲を紹介しときやす。

「One Nation Under a Groove」
George Clinton/Junie Morrison/Garry Shider作。「(Not Just) Knee Deep」と並ぶFunkadelicの代表曲であり、全米R&Bチャート第1位となったヒット・シングルです。ダンサブルなファンク・グルーヴにのって団結を呼びかける、P-Funk魂をキャッチーに昇華させたシンボリックな1曲に仕上がっています。バンジョーやラテン・パーカッションの隠し味もいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=3WOZwwRH6XU

本曲は定番サンプリング・ソースとしてもお馴染みですね。EPMD「So Wat Cha Sayin'」、X-Clan「Earthbound」、En Vogue「Strange」、Ice Cube feat. George Clinton「Bop Gun (One Nation)」、Steady B「Mac Daddy」、Digital Underground「Tales Of The Funky」、Above the Law「Uncle Sam's Curse」、Kirk Franklin & God's Property feat. Salt「Stomp (Remix)」Janet Jackson「Go Deep」、Snoop Dogg「Gangsta Move」等80以上の曲のサンプリング・ソースとなっています。
EPMD「So Wat Cha Sayin'」
 https://www.youtube.com/watch?v=6Wwh8WHnBWE
X-Clan「Earthbound」
 https://www.youtube.com/watch?v=GNwgCkyOZB4
En Vogue「Strange」
 https://www.youtube.com/watch?v=W-GxnDMJXBQ
Ice Cube feat. George Clinton「Bop Gun (One Nation)」
 https://www.youtube.com/watch?v=DjsvqQUcqCs
Steady B「Mac Daddy」
 https://www.youtube.com/watch?v=3GtJ2pV5KDQ
Digital Underground「Tales Of The Funky」
 https://www.youtube.com/watch?v=lGwE1NyrX-Q
Kirk Franklin & God's Property feat. Salt「Stomp (Remix)」
 https://www.youtube.com/watch?v=v8mBWZmIric
Janet Jackson「Go Deep」
 https://www.youtube.com/watch?v=sO2-iFjjht4

「Groovallegiance」
George Clinton/Junie Morrison/Bernie Worrell作。カリビアン・テイストのグルーヴが開放的な気分にさせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=GZECQCQjP38

Foesum feat. Wayniac「Playin' Foe Keeps」のサンプリング・ソースとなっています。
Foesum feat. Wayniac「Playin' Foe Keeps」
 https://www.youtube.com/watch?v=CovJBvTeIbc

「Who Says a Funk Band Can't Play Rock?!」
George Clinton/Junie Morrison/Michael Hampton作。邦題「ファンク・バンドがロックを出来ないなんて誰が言ったんだ?」。タイトルの通り、ロッキンなギターが支配するファンク・ロックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=R2nqZCSnN1U

Rhythm Masters「Heavy Soul」、Deep​:​Her「Shame」のサンプリング・ソースとなっています。
Deep​:​Her「Shame」
 https://www.youtube.com/watch?v=JNAxDqPqWIQ

「Promentalshitbackwashpsychosis Enema Squad (The Doo Doo Chasers)」
George Clinton/Garry Shider/Linda Brown作。ブルージー&レイジーなサウンドが独特の雰囲気を醸し出します。込み上げてくる哀愁ギターが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=7wL1NyqLs5E

Scarface「Strictly for the Funk Lovers」のサンプリング・ソースとなっています。
Scarface「Strictly for the Funk Lovers」
 https://www.youtube.com/watch?v=YKB7GJhem7I

「Into You」
George Clinton/Junie Morrison/Bootsy Collins作。レゲエのエッセンスを取り入れた1曲。メロウな味わいですが、P-Funkならではのアクの強さも忘れていません。
https://www.youtube.com/watch?v=eJf5TJo3GKc

K-Dee「Into You」のサンプリング・ソースとなっています。
K-Dee「Into You」
 https://www.youtube.com/watch?v=XwMjfjJNxAA

「Cholly (Funk Getting Ready To Roll!)」
George Clinton/Junie Morrison/Bootsy Collins作。本編ラストはP-Funkらしいファンク・グルーヴで締め括ってくれます。うねるベース、ギターの格好良さでいえば、コレが一番かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=j0a1d9V_9js

RBL Posse「Bitches on the Ding Dong」のサンプリング・ソースとなっています。
RBL Posse「Bitches on the Ding Dong」
 https://www.youtube.com/watch?v=IyPVI0-NPyc

ここまでがオリジナルLPの本編です。ここから3曲はオリジナルLPに付属されていたボーナスEPの収録曲です。

「Lunchmeataphobia (Think! It Ain't Illegal Yet!)」
ハードなギターで迫るロック色の強いインストです。ある意味、本編以上にFunkadelicらしいサウンドかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=9n-0W6dDI40

「P.E. Squad/Doo Doo Chasers」
「Promentalshitbackwashpsychosis Enema Squad (The Doo Doo Chasers)」のインスト・ヴァージョンです。
https://www.youtube.com/watch?v=WiQitRFIQ7A

「Maggot Brain/Chant (Think It Ain't Illegal Yet!)」
初期の名曲「Maggot Brain」のライブ・ヴァージョン。泣きのギターを存分に楽しめます。ライブの熱気が伝わってくるエンディングもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=ZhFSpXLOGrY

Funkadelic/Parliamentの過去記事もご参照下さい。

Parliament『Mothership Connection』(1975年)
Mothership Connection

Parliament『The Clones Of Dr. Funkenstein』(1976年)
Clones of Dr Funkenstein

Parliament『Funkentelechy Vs. The Placebo Syndrome』(1977年)
Funkentelechy Vs. the Placebo Syndrome

Parliament『Trombipulation』(1980年)
トロンビピュレイション+2(紙ジャケット仕様)

Funkadelic『Maggot Brain』(1971年) 
Maggot Brain

Funkadelic『Let's Take It to the Stage』(1975年)
レッツ・テイク・イット・トゥ・ザ・ステージ [初回限定盤] [紙ジャケット仕様]

Funkadelic『Uncle Jam Wants You』(1979年)
Uncle Jam Wants You
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2017年05月18日

Meshell Ndegeocello『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』

人気女性ベーシストによるジャズ・プロジェクト☆Meshell Ndegeocello『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』
Dance of the Infidels
発表年:2005年
ez的ジャンル:ジャンル超越系女性ベーシスト/ヴォーカリスト
気分は... :世界観・・・

今回はジャンルを超越した音楽性でシーンにインパクトを与えてきた女性アーティストMeshell Ndegeocello『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』(2005年)です。

ワシントンD.C.育ちのアメリカ人ベーシスト/ヴォーカリスト/ソングライターMeshell Ndegeocello(Me'Shell Ndegeocello)の紹介は、『Comfort Woman』(2003年)に続き2回目となります。

本作『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』はMeshellが本格的ジャズ・アルバムに取り組んだ意欲作です。

本作と前後してPapillonというネーミングのジャズ・プロジェクトでライブ活動を行っており、本作はその延長線上にあるジャズ・アルバムです。正式なアルバム・タイトルも『Meshell Ndegeocello Presents - The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』であり、Meshellのソロ・アルバムというより、プロジェクト的な作品になっています。ヴォーカルは全て他人に任せ、中にはMeshellが演奏に参加していない曲もあります。

プロデュースはBob PowerMeshell Ndegeocello

レコーディングにはMeshell Ndegeocello(b、programming)以下、Brandon Ross(g)、Michael Cain(p、key)、Neal Evans(p、key)、Federico Gonzalez Pena(key)、Didi Gutman(key、programming)、Don Byron(horn)、Joshua Roseman(horn)、Oliver Lake(horn)、Wallace Roney(horn)、Kenny Garrett(horn)、Ron Blake(horn)、Oran Coltrane(horn)、Matt Garrison(b)、Dave Meshell(b、programming)、Chris Dave(ds)、Jack DeJohnette(ds)、Gene Lake(ds)、Pedro Martinez(per)、Yosvany Terry(per)、Mino Cinelu(per)、Gregoire Maret(harmonica)等の新旧ジャズ・ミュージシャンが参加しています。

また、ヴォーカル曲ではSabina SciubbaBrazilian Girls)、Cassandra WilsonLalah Hathawayといったヴォーカリストがフィーチャーされています。

アルバム全体としては、"今ジャズ"を先取りしていたかのような先見性のあるサウンド、神秘的なスピリチュアル・ジャズ・サウンド、抑えたトーンのヴォーカル曲がバランス良く配された構成だと思います。特に"今ジャズ"好きの人は興味深く聴くことができるはずです。

個人的には「Aquarium」「Papillon」「Dance Of The Infidel」「Mu Min」にグッときました。

スタンダード「When Did You Leave Heaven」以外はMeshellや参加メンバーによるオリジナルです。

本作ならではのMeshell Ndegeocelloによるジャズ・ワールドを楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Mu Min」
アルバムのイントロダクション的な短い演奏です。Chris Daveの生ドラムにプログラミングを組み合わせた"今ジャズ"なリズム感覚にMeshellの先見性を垣間見ることができます。

「Al Falaq 13」
Meshellは楽曲提供のみで演奏には参加していません。Kenny Garrett、Wallace Roney、Michael Cain、Gene Lake、Matt Garrisonらがミステリアスかつ緊張感のある演奏を繰り広げます。

「Aquarium」
Sabina Sciubba(vo、p)をフィーチャー。"今ジャズ"を先取りしていたかのようなサウンドは、ジャンルを超越した音楽性を持つMeshellならではのジャズ・サウンドですね。また、Brazilian GirlsのヴォーカリストSabina Sciubbaを巻き込むあたりにもMeshellの一歩先を行くセンスを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=M_Fg9EXkkH0

「Papillon」
本作と前後してライブ活動していたジャズ・プロジェクトの名を冠した約11分半の演奏です。Kenny Garrettのサックスを大きくフィーチャーしています。ベースはMatt GarrisonとMeshellの2人体制。壮大かつ神秘的な音世界はスピリチュアル・ジャズ的な魅力もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=5mW_g_01Pno

「Dance Of The Infidel」
John ColtraneAlice Coltraneの息子であるサックス奏者Oran ColtraneとMeshellの共作。『Persuance;The Music Of John Coltrane』(1996年)というColtran作品集を録音したKenny GarrettとColtranの息子Oranのサックス共演は興味深いですね。また、王道ジャズ演奏におけるChris DaveとMeshellのリズム隊に注目するのも楽しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=j63AqHq2EKo

「The Chosen」
Cassandra Wilsonをフィーチャー。Cassandraの"プリンセス・オブ・ダークネス"らしい低音ヴォーカルにグッろときます。さり気ないですが味わい深いですね。Brandon Rossのギターもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=OKR2k5eztE4

「Luqman」
ジャズ・プロジェクトらしいアンサンブルを楽しめます。特にMatt GarrisonとMeshellの2人体制ベース、Jack DeJohnetteのドラム、さらにはパーカッションも加わり生み出される強力グルーヴがいいですね。

「When Did You Leave Heaven」
Lalah Hathawayをフィーチャー。アカデミー賞を受賞したスタンダードをカヴァー(Richard Whiting/Walter Bullock作)。ラストはNeal Evans(p)、Michael Cain(key)、Chris Dave(ds)というシンプルなバッキングで、Lalahがしっとりと歌い上げます。抑えたトーンながらもエモーションが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=VjJWjtFDi4Q

Meshell Ndegeocelloの他作品もチェックを!

『Plantation Lullabies』(1993年)
Plantation Lullabies

『Peace Beyond Passion』(1996年)
Peace Beyond Passion

『Bitter』(1999年)
Bitter

『Cookie: The Anthropological Mixtape』(2002年)
Cookie: The Anthropological Mixtape

『Comfort Woman』(2003年)
Comfort Woman

『The World Has Made Me the Man of My Dreams』(2007年)
The World Has Made Me...

『Devil's Halo』(2009年)
Devil's Halo (Dig)

『Weather』(2011年)
Weather

『Pour une Ame Souveraine: A Dedication to Nina Simone』(2012年)
Pour Une Ame Souveraine (for a Sovereign Soul)

『Comet, Come to Me』(2014年)
Comet Come to Me -Digi-
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2017年05月17日

Aleke Kanonu『Aleke』

漆黒のファンクネス!アフロ・レア・グルーヴ☆Aleke Kanonu『Aleke』
ALEKE
発表年:1980年
ez的ジャンル:アフロ・レア・グルーヴ
気分は... :漆黒のファンクネス!

今回はアフロ・レア・グルーヴ作品、Aleke Kanonu『Aleke』(1980年)です。

Aleke Kanonuのバイオグラフィー不明のアーティストですが、ナイジェリア出身のドラマー/パーカッショニストのようです。

当ブログで紹介した作品でいえば、Stanley Cowell『Regeneration』(1975年)にドラマーとして参加しています。

本作『Aleke』(1980年)は、アフロ・レア・グルーヴの隠れた名盤といて発掘された1枚であり、昨年待望のCD化も実現しています。

N.Y.で行われたレコーディングにはAleke Kanonu(vo、per、kalimba、congas、bells)以下、Bill Fischer(ts、key、harpsichord、org、syn)、Wilbur Bascomb(b)、Buddy Williams (ds)、George Davis(g)、 Ben Carter (p)、Earl McIntyre (tb)、Milt Ward(tp)、Wynton Marsalis(flh)といったミュージシャンがレコーディングに参加しています。ジャズ・トランペットの神童Wynton Marsalisの参加は少し意外ですね。

プロデュースはAleke KanonuJohn Ekwuyasi

N.Y.録音ということで、本国ナイジェリア産のファンク作品とは異なり、よく練られて洗練されたアフロ・グルーヴという印象を受けます。

本編は全4曲ですが、ファンク系コンピでも取り上げられた漆黒ファンク「N'Gwode」、N.Y.らしいアフロ・ファンク「Keep New York Clean」、アフロ・スピリチュアル・ジャズな魅力がある「Mothers Day」、Wynton Marsalisがソロで盛り上げてくれるジャズ・ファンク「Home Sweet Home」と、いずれの演奏も魅力的です。

CDにはAleke Kanonu meets Tolbert, The Miracle Man名義で1982年にリリースされた12"シングル収録曲である「Happiness」「Nwanne, Nwanne, Nwanne」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

純粋に格好良いファンク作品としても楽しめる1枚だと思います。
アフロ・レア・グルーヴの逸品と呼べる1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「N'Gwode」
ファンク系コンピ作品でも取り上げられた漆黒のファンク・グルーヴがオープニング。アフロ・グルーヴという点をあまり意識せずとも、覚醒感のある格好良いファンク・グルーヴとして楽しめるはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=ji_1iyI3dAM

「Keep New York Clean」
タイトルの通り、N.Y.らしいアフロ・ファンクに仕上がっています。人種のるつぼであるN.Y.らしいファンクネスを楽しめます。「N'Gwode」同様、格好良いファンク・グルーヴとして楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=sJUVvyL75xc

「Mothers Day」
トライバルなパーカッシヴ・サウンドとジャズ・ピアノの組み合わせのコントラストが印象的なアフロ・スピリチュアル・ジャズです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZJGbOn9sv1Q

「Home Sweet Home」
Wilbur Bascombのうねるベースに先導され、神童Wynton Marsalisがフリューゲルホーン・ソロを披露してくれます。これもN.Y.ならではのジャズ・ファンクかもしれませんね。グルーヴィーなオルガンもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=E-W2yBoVdtY

ここから2曲は前述のCDボーナス・トラックです。

「Happiness」
ゴスペル調のアフロ・ソウルといったところでしょうか。

「Nwanne, Nwanne, Nwanne」
この曲はアフロビート/アフロ・ファンク系コンピでも取り上げられたアフロ・ファンクです。アフロ・グルーヴという点ではパーカッシヴな高速リズムで駆け抜けるコレが一番かも?
https://www.youtube.com/watch?v=e4wac8N9KcU

理屈ではなく、ありのままを感じる・・・
posted by ez at 02:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月16日

Bobby Womack『Communication』

初のR&Bアルバム・チャートTop10入り作品☆Bobby Womack『Communication』
コミュニケーション
発表年:1971年
ez的ジャンル:ザ・ラスト・ソウルマン
気分は... :マッスル・ショールズ

今回は"ザ・ラスト・ソウルマン"Bobby Womackが1971年にリリースした『Communication』です。

Bobby Womack(1944-2014年)に関して、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。
 『Understanding』(1972年)
 Bobby Womack & J.J. Johnson『Across 110th Street』(1972年)
 『Pieces』(1978年)

3rdアルバムとなる本作『Communication』は、初めて全米R&Bアルバム・チャートTop10入りしたアルバムです。

そんな成功を後押ししたのが、Barry Beckett(key)、Jimmy Johnson(g)、Roger Hawkins(ds)、David Hood(b)というMuscle Shoals Rhythm Sectionの最強ミュージシャン達によるバッキングバックです。

また、Friendly Womack, Jr.Curtis WomackHarry WomackWomack & Womackでお馴染みのCecil Womackといった兄弟や、『Coffy』(1973年)、『Foxy Brown』(1974年)でお馴染みの女優Pam Grier(当時Bobbyとの交際が噂されていたらしいです)等がバック・コーラスで参加しています。

プロデュースはBobby Womack自身。初のセルフ・プロデュースとなります。

アルバムからは初めて全米R&BチャートTop10入りした「That's The Way I Feel About Cha」というシングル・ヒットも生まれています。

個人的には、BobbyがプロデュースしたRonnie Wood『Now Look』(1975年)でもカヴァーされていた「(If You Don't Want My Love) Give It Back」のオリジナル・ヴァージョンを聴けるのが嬉しいですね。あとはファンキー&スワンピーなオープニング「Communication」の格好良さも格別です。

Norman Seeffによるジャケもキマっていますね。

マッスル・ショールズ・サウンドとBobby Womackのソウル魂が見事に融合した1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Communication」
Bobby Womack作。オープニングはファンキー&スワンピーな仕上がり。Sly & The Family Stoneが南部テイストになったような雰囲気があります。格好良さではコレが一番ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Y5YI1zWrZNI

「Come l'Amore」
Bob Hilliard/Leon Ware作。後にLara Saint Paulもカヴァーしています。カラっとしたサザン・ソウルにはイナたい魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=L0ZYtT2Kx_I

「Fire and Rain」
James Taylor、1970年の大ヒット曲をカヴァー。JTの名曲を完全にWomack流ソウル・チューンとして自分のモノにしています。
https://www.youtube.com/watch?v=OXIFF7QOosM

「(If You Don't Want My Love) Give It Back」
Bobby Womack作。僕の一番のお気に入り。『Across 110th Street』(1972年)のサントラにも別ヴァージョンが収録されています。僕の場合、最初にRonnie Woodヴァージョンを気に入り、そこからオリジナルを辿ったパターンですが・・・。オリジナル・ヴァージョンはアーシーなメロウ・グルーヴ感がサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=k2vQKyckBFc

Gabor SzaboやLea Robertsもカヴァーしていますね。SzaboヴァージョンはBobby Womack本人もギターで参加しています。
Ronnie Wood「If You Don't Want My Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=t3Q6hfzNTM8
Gabor Szabo「If You Don't Want My Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=EiCT6ipLmB0
Lea Roberts「(If You Don't Want My Love) Give It Back」
 https://www.youtube.com/watch?v=KY_6ersM6jM

「Medley: Monologue/(They Long to Be) Close to You」
Bobbyの自作「Monologue」とCarpentersの大ヒット曲「(They Long to Be) Close to You」(Burt Bacharach/Hal David作)のメドレー。ポップス名曲を塩辛風味の激シブ・ヴァージョンで聴かせてくれるのがBobby Womackらしくていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=XpZSdxASdik

「Everything is Beautiful」
Ray Stevens、1970年の大ヒット曲をカヴァー。ホッコリしたカントリー・ソウルに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=b9n8C6KBbMc

「That's The Way I Feel About Cha」
Jimmy Grisby/Joe Hicks/Bobby Womack作。全米R&Bチャート第2位、全米チャート第27位となったヒット・シングルです。Bobby Womackならではの味わい深いソウル・バラードに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=q2R6NRJIdt4

Aretha Franklin、Rome、Gerald Levert & Mary J. BligeCalvin Richardsonがカヴァーしています。また、Rick Ross feat. Jadakiss「Oil Money Gang」のサンプリング・ソースとなっています。
Rick Ross feat. Jadakiss「Oil Money Gang」
 https://www.youtube.com/watch?v=D874kQpNEpc

「Yield Not to Temptation」
聖歌「屈するなかれ」のカヴァー。ラストはゴスペル調で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=JcJMiDpWGQE

E. Ness & 9th Wonder feat. Rapper Big Pooh「Temptation」のサンプリング・ソースとなっています。
E. Ness & 9th Wonder feat. Rapper Big Pooh「Temptation」
 https://www.youtube.com/watch?v=rA9aCU1ksow

Bobby Womackの他作品をチェックを!

『Fly Me to the Moon』(1968年)
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

『My Prescription』(1969年)
マイ・プレスクリプション

『Understanding』(1972年)
Understanding

Bobby Womack & J.J. Johnson『Across 110th Street』(1972年)
Across 110th Street

『Facts of Life』(1973年)
Facts of Life

『Lookin' for a Love Again』(1974年)
Lookin for a Love Again

『I Don't Know What the World Is Coming To』(1975年)
誰にも未来はわからない

『Safety Zone』(1975年)
安全地帯

『BW Goes C&W』(1976年)
ボビー・ウーマック・ゴーズ・カントリー&ウエスタン

『Home Is Where the Heart Is 』(1976年)
我が魂の故郷(完全生産限定盤)(紙ジャケット仕様)

『Pieces』(1978年)
ピーシズ(完全生産限定盤)(紙ジャケット仕様)

『Roads of Life』(1979年)
ロード・オブ・ライフ(完全生産限定盤)(紙ジャケット仕様)

『The Poet』(1981年)
Poet

『The Poet II』(1984年)
Poet 2
posted by ez at 03:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする