発表年:2017年
ez的ジャンル:Hip-Hop/R&B×L.A.ジャズ
気分は... :これぞ今のL.A.の音!
今回は新作アルバムから今が旬のプロデューサー/ミュージシャンTerrace Martinによる新プロジェクト Terrace Martin Presents The Pollyseeds『Sounds Of Crenshaw Vol. 1』 です。
L.A.サウスセントラル生まれのプロデューサー/サックス奏者Terrace Martinの紹介は、グラミーのBest R&B Albumにもノミネートされた『Velvet Portraits』(2016年)に続き2回目となります。
2015年最大の衝撃作Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』のプロデュースで知名度を上げ、自身のアルバム『Velvet Portraits』がグラミーにノミネートされたことで、一躍注目の存在となったTerrace Martin。
そんなTerrace Martinが『Velvet Portraits』から長いインターバルを置かずにリリースしたのがThe Pollyseeds名義の『Sounds Of Crenshaw Vol. 1』 です。
Hip-Hop/R&B×L.A.ジャズという点では『Velvet Portraits』と同じですが、曲ごとにサウンドの振れ幅が大きく異なった『Velvet Portraits』に対して、本作では自身のサウンドに自信を深め、よりHip-Hop/R&B寄りのサウンドで貫かれています。
もう1つ特徴的なのがヴォコーダーが多用されている点です。このあたりはRGEのアプローチに近いかもしれません。加えて、TerraceのZapp/Rogerへの愛情を感じます。
Robert Glasper(el-p)をはじめ、Wyann Vaughn(両親はEW&F作品でお馴染みのキーボード奏者Wayne VaughnとThe EmotionsのメンバーWanda Vaughn)とRose Goldという『Velvet Portraits』にも参加していた女性シンガー2人、コンプトン出身のラッパーChachi、男性R&BシンガーPreston Harrisがフィーチャリングされています。
有名どころではKamasi Washington(ts)、Snarky PuppyのRobert Sput Searight(ds、per)もアルバムに参加しています。
それ以外にTerrace Martin(key、mini moog、as、ss、prophet、drum machine、MPC3000、vocoder、per)以下、Marlon Williams(g)、Craig Brockman(el-p、p)、Chris Cadenhead(el-p)、Curlee Martin(ds)、Brandon Eugene Owens(b)、Trevor Lawrence(ds、drum prog)、Adam Turchin(bs)、Kenneth Crouch(p)、Andrew Gouche(b)といったミュージシャンがレコーディングに参加しています。
多くの曲がTerrace MartinとMarlon Williamsの共同プロデュースです。
L.A.らしいサウンドの「Chef E Dubble」、G-Funk調の「Intentions」、Vocoderを駆使したメロウ「Funny How Time Flies」、アンビエントR&B的な「You And Me」、Zapp愛を感じる「Up And Away」、Terraceらしいサウンドの「Feelings Of The World」、Preston Harrisをフィーチャーした「Don't Trip」あたりが僕のオススメです。
前作『Velvet Portraits』に続き、本作でも評論家Y氏がライナーノーツを書いていますが、『Velvet Portraits』同様、事実誤認のあるフェイク・ライナーノーツでした。余計なことを書かなければいいのに、関連アーティストの一夜漬け知識を盛り込んだ結果、アラが見えてしまうパターンですね。
まぁ、どうでもいいことは忘れて、Terrace Martinの素晴らしい音世界を楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「Tapestry」
Terraceのミニ・ムーグとMarlon Williamsのギターによるアブストラクトなイントロ。
https://www.youtube.com/watch?v=KUDP7Z8rhFI
「Chef E Dubble」
Robert Glasperとの共同プロデュース。Kamasi WashingtonやRobert Sput Searightも参加しています。『Velvet Portraits』の流れを汲む今のL.A.らしいサウンドになっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=q8bTVm4fbSk
「Intentions」
コンプトン出身のラッパーChachiをフィーチャー。Terraceのビートメイカーとしての側面を楽しめる、哀愁シンセが響くG-Funk調の仕上がりです。終盤にはDeBarge「I Like It」のフレーズで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=osdJtySmEes
「Funny How Time Flies」
Robert Glasperとの共同プロデュース。TerraceとGlasperの両名をフィーチャーするかたちになっています。RGEにも通じるVocoderを駆使したメロウ・チューン。R&B×L.A.ジャズなTerraceらしいサウンドに仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=C0pVmsrg814
「Mama D/Leimert Park」
Terrace Martinのビートメイカーぶりを楽しむトラック。ジャズ・フィーリングを効かせつつ、Vocoderも駆使して聴きやすく仕上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=JErJLLw927E
「You And Me」
Rose Goldをフィーチャー。何処となく儚く浮遊するサウンドにはアンビエントR&B的な魅力も漂います。Rose Goldのコケティッシュ・ヴォーカルとそれに絡むPreston Harrisのコーラスもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=dSLhTSQjvvc
「Believe」
Chris Cadenheadのメロウ・エレピとTerraceの父Curlee Martinのドラムが目立ちます。また、Wyann VaughnのヴォーカルにTerraceのミニ・ムーグ、サックス、が寄り添います。Kamasi Washingtonも参加。
https://www.youtube.com/watch?v=00Tqns51e5Y
「Up And Away」
Vocoder使いという点ではこの曲が一番好きです。Zapp「Computer Love」的な雰囲気がある点は、前作『Velvet Portraits』収録の「With You」にも通じます。きっとTerraceは「Computer Love」がかなりお気に入りのはずだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=NSc2mPXptdg
「Wake Up」
本作で一番ストレート・アヘッドなジャズを演奏しています。Kenneth Crouchのピアノをバックに、Terraceが哀愁のソプラノを奏でます。
https://www.youtube.com/watch?v=fQ-7yQgsGFg
「Your Space」
Wyann Vaughnをフィーチャー。美しくも儚いアンビエントR&Bに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=GUAMRcUveDg
「Feelings Of The World」
Chachi/Rose Goldをフィーチャー。アンビエントR&BにヴォコーダーやMarlon Williamsの哀愁ギターも盛り込んだTerraceらしい1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=rSp_cCicMaw
「Reprise Of Us」
「Intentions」の終盤で聴けたDeBarge「I Like It」のフレーズが再び登場します。
https://www.youtube.com/watch?v=xoc12GY-6h8
「Don't Trip」
Preston Harrisをフィーチャー。ラストはビューティフルなR&Bバラードで締め括ってくれます。ヴォコーダーを交えつつも穏やかな雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=viie91FomnQ
Terrace Martinの他作品もチェックを!
Murs & Terrace Martin『Melrose』(2011年)
『3ChordFold』(2013年)
『Velvet Portraits』(2016年)