2017年08月09日

Mos Def『The New Danger』

ロック、ブルースへのアプローチが印象的な賛否両論の2nd☆Mos Def『The New Danger』
New Danger
発表年:2004年
ez的ジャンル:ブラック・ロック×Hip-Hop
気分は... :ロックはブラックミュージック!

今回は知的リリシストとして人気を博すHip-HopアーティストMos Defの2ndアルバム『The New Danger』(2004年)です。

1973年N.Y.ブルックリン生まれのMos Def(本名:Dante Terrel Smith)の紹介は、Talib KweliとのユニットBlack Starのアルバム『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』(1998年)、ソロ第1弾アルバム『Black On Both Sides』(1999年)に続き3回目となります。

昨年、Yasiin Beyと改名し、年内での引退を表明していたMos Defですが、引退作になるとされていた『Negus In Natural Person』は発売されておらず、今後の動向が気になります。

さて、今日紹介する2ndアルバム『The New Danger』(2004年)は、全米アルバム・チャート第5位、同R&Bアルバム・チャート第2位となった大ヒット作ですが、ファンの間では賛否が分かれた1枚となりました。

『Black On Both Sides』収録の「Rock N Roll」で、♪ロックを始めたのは黒人であり、ロックはブラックミュージックだ♪と言い切ったMos Defのロック・アプローチが強調されている点がアルバム最大の特徴です。

そんなロック・アプローチの象徴が、当時Mos Defが主導していた黒人ロック・プロジェクトBlack Jack Johnsonの参加です。メンバーはBad BrainsDr. Know(g)、P-Funkの重鎮Bernie WorrellLiving ColourDoug Wimbish(b)とWill Calhoun(ds)。Bad BrainsとLiving Colourというブラック・ロックの2大バンドのメンバー参加が興味深いですね。

ロック以外にもブルース、ソウルのエッセンスも積極的に取り入れたHip-Hopの枠に囚われない1枚に仕上がっています。しかしながら、こうしたアプローチに対して、コアなHip-Hopファンからは批判的な声も多く挙がりました。

個人的にはジャンルの枠に囚われない音が好きなので、こういったアプローチは大歓迎です。また、最近はめっきり一般的なロックを聴く機会が少なくなった僕にとって、黒人Hip-Hopアーティストによるブラック・ロック的アプローチというのは、案外すんなり聴ける音なのかもしれません。

アルバムではMos Def自身に加え、MinnesotaKanye WestPsycho LesThe Beatnuts)、Raphael SaadiqEasy Mo BeeWarryn CampbellMolecules88-Keysがプロデュースを務めています。

改めて聴き直しても、ブラック・ロック、ブルース、ソウルのエッセンスを巧み取り入れた格好良いサウンドだと思います。

正にデンジャーなMos Defワールドを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「The Boogie Man Song」
Mos Def/Raphael Saadiqプロデュース。Raphaelがギター、ベース、Mos Defがピアノ、ドラムを演奏しているオープニング。この曲だけは前作『Black On Both Sides』の名残りを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=SrifgzFrjN4

「Freaky Black Greetings」
Mos Defプロデュース。Black Jack Johnson参加の1曲目。ここからがブラック・ロック・アプローチのスタート!Mos Def流のブラック・ロックをお披露目してくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=WWh6Bhglg6I

「Ghetto Rock」
Minnesotaプロデュース。ロッキンなHip-Hopチューンには、ずっしりとした重量感があります。Doug E. Fresh & Slick Rick「La Di Da Di」、Trick Daddy「Shut Up」のフレーズを引用しています。
https://www.youtube.com/watch?v=lhvd4jPboyQ

「Zimzallabim」
Easy Mo Bee/Mos Defプロデュース。Black Jack Johnson参加の2曲目。ブラック・フィーリングの効いたロック・サウンドが格好良いですね。そんなブラック・ロックをバックに、Mos Defのフロウも快調です。
https://www.youtube.com/watch?v=u1n_QT0uZlM

「The Rape Over」
Kanye Westプロデュース。蟹江氏の師匠Jay-Z「Takeover」(蟹江プロデュース)を引用し、音楽業界を厳しく批判しています。「Takeover」と同じくThe Doors「Five to One」をサンプリングしています。
https://www.youtube.com/watch?v=QfqRipvk6WE

「Blue Black Jack」
Minnesotaプロデュース。Shuggie Otisをフィーチャー。偉大なブルース・ミュージシャンJohnny Otisを父に持ち、60年代半ばから活躍するギタリストShuggie Otisを招いたブルース演奏は興味深いです。
https://www.youtube.com/watch?v=dMYg683-LtU

「Bedstuy Parade & Funeral March」
Mos Defプロデュース。ブルース・アーティストPaul Oscherをフィーチャー。この曲もブルース調です。それ以上にカタカナ日本語調で♪モット、モット、シテヨ♪ナイス!ナイス!ナイス♪のフレーズが脳裏から離れません。
https://www.youtube.com/watch?v=XfmnRQRAt3g

「Sex, Love & Money」
Warryn Campbellプロデュース。アルバムからの1stシングルにもなりました。ここではロック・アプローチは一休みして、シンバルが刻むビートと妖しげなフルートの音色が印象的なHip-Hopチューンに仕上がってきます。Mos Def feat. Q-Tip & Tash 「Body Rock」のフレーズも聴こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Qy55uD9BK0o

「Sunshine」
Kanye Westプロデュース。Melba Moore「The Flesh Failures (Let the Sunshine In) 」をサンプリングした当時の蟹江氏らしい早回しを楽しめます。コレは主役のMos Defより、蟹江氏の仕事を楽しむトラックかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=oKzd3QV8MZw

「Close Edge」
Minnesotaプロデュース。Kool & the Gang「Open Sesame」をサンプリングしたダークなトラックやタブラ・ビートが僕好み。純粋に格好良いHip-Hopトラックだと思います。Grandmaster Flash & The Furious Five feat. Grandmaster Melle Mel & Duke Bootee「The Message」のフレーズを引用しています。
https://www.youtube.com/watch?v=olAWW3upODI

「The Panties」
Minnesotaプロデュース。Tom Brock「I Love You More and More」をサンプリングしたソウルフルな仕上がり。後半にはThe Moments「Sexy Mama」のフレーズも聴こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=EWDhdXsNMG4

「War」
Mos Def/Psycho Lesプロデュース。Black Jack Johnson参加の3曲目。前作で「Rock N Roll」をプロデュースしたコンビがBlack Jack Johnsonを起用し、ブラックミュージックとしてのロックを聴かせてくれます。後半一気にギア全開となります。
https://www.youtube.com/watch?v=6XK_DBqAQcI

「Grown Man Business (Fresh Vintage Bottles)」
Minnesotaをフィーチャーし、Minnesota自身がプロデュースしています。The Cecil Holmes Soulful Sounds「I'm Gonna Love You Just a Little More Baby」をサンプリングしたHip-Hopらしいトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=EG3BU_C2mY4

「Modern Marvel」
Minnesotaプロデュース。9分半近いMarvin Gayeへのオマージュです。名盤『What's Going On』収録の「Flyin' High (In the Friendly Sky) 」をサンプリングし、さらに「What's Going On」のフレーズを引用しています。Mos DefのMarvin愛が伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=-14oz9jyBY8

「Life Is Real」
Moleculesプロデュース。Madelaine「Who Is She and What Is She to You」 のサンプリングに、Roy Ayers Ubiquity「Everybody Loves the Sunshine」のフレーズを重ねたブラックスプロイテーションのサントラ風の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=CZ7YLjyJkZg

「The Easy Spell」
Mos Defプロデュース。ここではすべての楽器をMos Def自身が演奏し、ロッキンなHip-Hopを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Wyt2y-n16B8

「The Beggar」
Mos Defプロデュース。Black Jack Johnson参加の4曲目。それまでの3曲とは異なり、哀愁モードのロック・サウンドを聴かせてくれます。Mos Defの憂いを帯びたヴォーカルも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=jndrcIF0ock

「Champion Requiem」
88-Keysプロデュース。偉大な黒人達へのレクイエムでアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=bCmdzvpm7bc

Mos Def関連の他作品もチェックを!

Black Star『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』(1998年)
Black Star

『Black On Both Sides』(1999年)
Black on Both Sides

『True Magic』(2006年)
True Magic

『Ecstatic』(2009年)
Ecstatic
posted by ez at 01:55| Comment(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする