発表年:2017年
ez的ジャンル:南米フォルクローレ・スーパー・トリオ
気分は... :ワン・アップ・・・
新作アルバムからAndre Mehmari、Juan Quintero、Carlos Aguirreというブラジル、アルゼンチンの人気フォルクローレ・アーティスト3名が共演した話題作『Serpentina』です。
南米フォルクローレ・スーパー・トリオと呼びたくなる3名の共演盤に歓喜している音楽ファンは多いのでは?僕もそんな一人です。
1977年リオデジャネイロ生まれのピアニスト/コンポーザーAndre Mehmariについては、サンパウロ出身のマルチ奏者/コンポーザーAntonio Loureiroとの共演作『MehmariLoureiro Duo』(2016年)を紹介済みです。
アルゼンチン、トゥクマン出身のシンガー・ソングライター/ギタリストJuan Quinteroについては、Mariano Cantero(ds、per、vo)、Andres Beeuwsaert(p、key、vo)とのトリオAca Seca Trioの『Ventanas』(2009年)を紹介済みです。
1965年アルゼンチン、エントレリオス州セギーの生まれのシンガー・ソングライター/ピアニスト/ギタリストCarlos Aguirreについては、『Orillania』(2012年)を紹介済みです。
これまでも交流のあった3名でしたが、約4年の準備期間を経て2017年3月ブラジル・サンパウロに集まり、3人のみで一気に創り上げた作品が本作『Serpentina』です。プロデュースはAndre Mehmari。
楽曲は3名の過去のレパートリーや今回のために書き下ろした新曲、さらにブラジル、アルゼンチンの音楽交流を象徴する名盤Mercedes Sosa/Leon Gieco/Milton Nascimento『Corazon Americano』(1986年)から2曲カヴァーしています。
アルバム全体の印象としては、Andre MehmariがJuan Quintero、Carlos Aguirreを迎えて、現代音楽+フォルクローレなケミストリーを起こした1枚という印象を受けます。
静かなる音楽/クワイエット・コーナー的な作品がお好きな人にとっては、大満足な1枚ではないかと思います。Quintero、Aguirreの味わい深く感動的なフォルクローレ・ワールドに、Mehmariの現代ブラジル音楽的な感性が加わることで、ワン・アップしたフォルクローレを楽しむことができます。
きっと今年のベスト・ディスクに挙げる人も多い1枚なのでは?
当ブログでも年末恒例『ezが選ぶ2017年の10枚』の有力候補となりそうです。
個人的にこの秋のヘビロテ間違いなしの1枚です。
『Serpentina』EPK
https://www.youtube.com/watch?v=Bd1Cdxh0m1E
全曲紹介しときやす。
「El Diminuto Juan」
Jorge Fandermole/Carlos Aguirre作。Aguirreのオリジナルは『Orillania』に収録されています。『Orillania』ヴァージョンにはJuan Quinteroも参加しています。Mehmariの現代音楽的なピアノが加わったことで、オリジナルのフォーキーな味わいに新たな魅力が上乗せされています。
「Clavelito Blanco」
Justiniano Torres Aparicio作。Aca Seca Trio『Avenido』(2006年)収録曲の再演です。Mehmariの美しくドラマチックなピアノをバックに、Quinteroのヴォーカルが躍動します。
「Tucuman」
Juan Quintero/Andre Mehmari作。Quinteroの故郷を題した新曲を、Mehmariのピアノ、シンセをバックに3人で歌い上げます。静かなる音楽/クワイエット・コーナー好きの人はグッとくる深遠な美しさを持つ仕上がりです。
「Entre Rios」
Andre Mehmari作。この3人の共演に相応しい感動的な仕上がり。美しい絵画のような音世界にグッと惹き込まれます。
「Los tres deseos de siempre」
Carlos Aguirre作。オリジナルはCarlos Aguirre Grupo『Crema』(2000年)に収録されています。透明感のあるAguirreワールドにMehmariのアコーディオンがいいアクセントを加えています。
「San Vicente」
『Corazon Americano』収録曲のカヴァー(Milton Nascimento/Fernando Brant作)。緩急をつけたアレンジが秀逸な素晴らしいフォルクローレ。澄み切った音世界の美しさにただただ感動するばかりです。
「Sueno con Serpientes」
『Corazon Americano』収録曲のカヴァー(Silvio Rodriguez/Luis Eduardo Aute作)。琴の音色も取り入れつつ、南米フォルクローレらしい民族色を強調した仕上がり。
「Cruce」
Andre Mehmari/Bernardo Maranhao作。オリジナルは『Canteiro』(2011年)に収録されています。雲がゆったりと流れていくかのような壮大な味わい深さがあります。
「Tata y Meme」
Juan Quintero作。Aca Seca Trio『Aca Seca Trio』(2003年)収録曲の再演です。こMehmariのアコーディオンが先導し、パンデイロが響くブラジル色の強い仕上がりで聴かせてくれます。
「Beatriz Durante」
Carlos Aguirre作。オリジナルはCarlos Aguirre Grupo『Crema』(2000年)に収録されています。オープニングの「El Diminuto Juan」と同じく、フォルクローレな味わいとMehmariの現代音楽的なピアノが融合した、このスーパー・トリオならではのケミストリーを感じる仕上がり。
「Chorinho da Cantareira」
Carlos Aguirre作。AguirreのピアノとMehmariのバンドリンが織り成すインスト。
「Ida e Volta」
Andre Mehmari/Rita Alterio作。オリジナルは『Canteiro』(2011年)に収録されています。静かなる音楽らしい引き算の美学を満喫できる演奏です。こういった曲でのQuinteroの味わい深いヴォーカルは格別ですね。
「Abraco」
Andre Mehmari作。オリジナルは『As Estacoes Na Cantareira』(2015年)に収録されています。Mehmari作品がAguirre、Quinteroとの共演でフォルクローレな魅力が加わっている感じがいいですね。
「O Mantra de Miguel」
Andre Mehmari作。『Ao Vivo No Auditorio Ibirapuera』(2013年)に収録されていた楽曲です。ジワジワと感動が込み上げてきます。ここでもMehmariの音世界にAguirre、Quinteroがいいアクセントをつけています。
「Bandera」
Juan Quintero作。オリジナルはLuna Monti y Juan Quintero『Despues De Usted』(2015年)に収録されています。Mehmariのピアノに先導され、Quinteroが軽快なフォルクローレを歌い上げます。
「Coplas al Agua」
Juan Quintero作。Aca Seca Trio『Aca Seca Trio』(2003年)収録曲の再演です。ピアノ、ヴィオラン、ベースのみの演奏をバックにQuinteroがしみじみと歌い上げます。
「Rezo」
Carlos Aguirre作。Aguirreのオリジナルは『Orillania』に収録されています。ここではMehmariの美しいヴィオラに魅了されます。
「Paseo」
Juan Quintero作。ラストは本作らしいフォルクローレ+現代音楽なサウンドで楽しく和やかな雰囲気で締め括ってくれます。
Andre Mehmari、Juan Quintero、Carlos Aguirreに関わる過去記事や、本作収録曲のオリジナルが収められた作品もチェックを!
Andre Mehmari『Ao Vivo No Auditorio Ibirapuera』(2013年)
Andre Mehmari『As Estacoes Na Cantareira』(2015年)
Andre Mehmari & Antonio Loureiro『MehmariLoureiro Duo』(2016年)
Aca Seca Trio『Aca Seca Trio』(2003年)
Aca Seca Trio『Avenido』(2006年)
Aca Seca Trio『Ventanas』(2009年)
Carlos Aguirre Grupo『Crema』(2000年)
Carlos Aguirre『Orillania』(2012年)
Mercedes Sosa/Leon Gieco/Milton Nascimento『Corazon Americano』(1986年)