発表年:2017年
ez的ジャンル:リアル・ソウル系男性R&Bアーティスト
気分は... :差別なき世界へ!
今回は新作R&Bから期待の男性R&Bアーティストの2ndアルバムAaron Abernathy『Dialogue』です。
Aaron Abernathyはオハイオ州クリーブランド出身の男性R&Bシンガー/ソングライター/キーボード奏者/プロデューサー。現在はワシントンD.C.を拠点にしているようです。
名門ハワード大学で音楽を学び、2005年にAb & The Souljourners名義でアルバム『Lyrically Inclined 1.3:The Odyssey』をリリースしています。
さらにSlum Villageのワールド・ツアーのミュージック・ディレクターに起用されたり、Eric Roberson『Music Fan First』(2009年)収録の「Howard Girls」でフィーチャリングされるなど実績を重ねていきます。
昨年にはAaron Abernathy名義の1stアルバム『Monologue』をリリースしました。Phonte、Zo!、Black Milk、Deborah Bond等をゲストに迎えた同作は、ディープなR&Bファンから高い支持を得ました。
そして、リリースされた最新作『Dialogue』。前作のような目立ったゲストはなく、自身と少数のミュージシャンのみでレコーディングしています。プロデュース&アレンジ&ソングライティングはAaron Abernathy本人。前作にも参加していたBlack Milkがミキシングを手掛けています。
一方、公民権運動、黒人解放運動に尽力した政治家、牧師、作家、アーティストのスピーチ、インタビュー等を数多く取り入れたメッセージ色の強い1枚に仕上がっています。背景には近年アメリカで大きな社会現象となっているブラック・ライヴズ・マター運動があると思います。
サウンド的にもMarvin Gaye、Curtis Mayfield、Sly & The Family Stoneといった70年代ニュー・ソウルの影響が感じられます。
ただし、単なる70年代ニュー・ソウルのオマージュではなく、21世紀ならではのブラック・パワーに満ちたブラック・ミュージックを聴くことができます。
決して派手なアルバムではありませんが、聴いた者の心に響くリアル・ソウルがココにはあります。
21世紀版ニュー・ソウルをぜひチェックしてみて下さい!
全曲紹介しときやす。
「Daily Prayer」
Sly & The Family Stoneの諸作に通じるブラック・パワーを感じるヘヴィ・グルーヴ。ワシントンD.C.が拠点ということでGo-Go Funkの影響を感じます。
「Children of the City」
黒人解放運動の象徴的存在である女性作家Angela Davisの言葉と共に始まり、さらに黒人女性シンガーNina Simoneの言葉の引用と共に始まるブラック・ライヴズ・マターなヘヴィ・ファンク・グルーヴ。ダークなブラック・グルーヴが癖になります。
「Restrictions」
モダンな生音ソウル・グルーヴでMarvin Gayeを甦らせたような仕上がりです。どこまでセクシーで、どこまでもブラックなグルーヴがたまりません。
「Generation」
黒人女性初の米連邦下院議員Shirley Chisholm、黒人女性作家Lorraine Hansberry、さらにはNina Simoneのスピーチ/インタビューを引用したブラック・パワー炸裂のリアル・ソウル!60〜70年代ブラック・ミュージックの空気感を21世紀モードにアップデートしたような仕上がりです。
「Am I Good Enough To Love?」
愛に満ちたソウル・グルーヴ。ヴィンテージ感がありながらも単なるレトロで終わらないヴィヴィドな魅力があります。
「Human Actions Matter (Leviticus)」
Marvin Gayeモードの小曲。次曲「Now A Days」への助走のような位置づけかな。
「Now A Days」
アルバムに先駆けて昨年3月に発表した楽曲。公民権運動家の黒人牧師Ralph Abernathyのインタビュー音声をサンプリングした"21世紀ニュー・ソウル"。公民権運動の時代から今日まで黒人に対する差別が解決されていないことを訴える社会派ソウル。メッセージのみならずサウンド面でもMarvin Gayeライクの魅力的なソウル・グルーヴに仕上がっています。
「Forecast」
過去ではなく未来に目を向けようとする願いが込められたリアル・ソウル。美しくも切ないヴォーカル&サウンドが胸に響きます。
「The Villain In Me」
ラストは呪術的なダーク・グルーヴで締め括ってくれます。このエンディングが示唆するものは・・・
ご興味がある方は1stアルバム『Monologue』(2016年)もチェックを!
『Monologue』(2016年)