2017年10月24日

Roberta Flack & Donny Hathaway『Roberta Flack & Donny Hathaway』

人気ソウル・シンガーのデュエットによる静かなるニューソウル!☆Roberta Flack & Donny Hathaway『Roberta Flack & Donny Hathaway』
ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ
発表年:1972年
ez的ジャンル:ニューソウル男女デュエット
気分は... :静かなるブラック・パワー...

今回はRoberta FlackDonny Hathawayという70年代ニューソウルを代表する男女アーティストによる大ヒット・デュエット作品Roberta Flack & Donny Hathaway『Roberta Flack & Donny Hathaway』(1972年)です。

「Killing Me Softly with His Song」「Feel Like Makin' Love」等の大ヒットで知られる人気女性シンガーRoberta Flackに関して、これまで当ブログで紹介したのは以下の2枚。
 『Feel Like Makin' Love』(1975年)
 『I'm The One』(1982年)

ニューソウルを代表する魂のソウル・シンガーDonny Hathaway(1945-1979年)に関して、これまで当ブログで紹介したのは以下の2枚。
 『Everything Is Everything』(1970年)
 『Live』(1972年)

2人共に当ブログで紹介するのは約10年ぶりです。本作について、当ブログで紹介するにはメジャーすぎる作品かなぁ(全米アルバム・チャート第3位、同R&Bアルバム・チャート第2位)・・・と思い、長年敬遠していた面がありましたが、今の季節にフィットしそうなアルバムなので取り上げてみました。

ハワード大学の同胞であるRoberta FlackDonny Hathawayの顔合わせは、各人のソロでは聴けないケミストリーを生んでいますね。特に、DonnyがRobertのソウル・シンガーとしての魅力を引き出している点に惹かれます。

レコーディングにはRoberta Flack(vo、p、org)、Donny Hathaway(vo、p、el-p)以下、Eric Gale(g)、Chuck Rainey(b)、Bernard Purdie(ds)、Ralph MacDonald(per)、David Spinozza(g)、Billy Cobham(ds)、Hubert Laws(fl)、Joe Gentle(fl)、Joe Farrell(sax)、Jack Jennings(vibe)等のミュージシャンが参加しています。

プロデュースはJoel DornArif Mardin

商業的には成功したアルバムですが、その割には地味な印象受けるアルバムかもしれません。

ハイライトは大ヒットした「Where Is the Love」と、同じくシングル・ヒットしたCarole Kingの名曲カヴァー「You've Got a Friend」ですが、それ以外の曲をどう評価するかで好き/嫌いが二分するアルバムかもしれません。

でも改めて聴き直すと、静かなるブラック・パワーを感じるニューソウル作品に仕上がっていると思います。「Where Is the Love」、「You've Got a Friend」以外であれば、「Be Real Black for Me」「When Love Has Grown」「You've Lost That Lovin' Feelin'」あたりが僕のオススメです。

ブラック・ライヴズ・マターが叫ばれる今だからこそ聴くべき1枚かもしれません。

全曲紹介しときやす。

「I (Who Have Nothing)」
Ben E. King、1963年のシングル曲をカヴァー(Jerry Leiber/Mike Stoller/Carlo Donida作)。オープニングはDonny Hathaway調のソウル・バラードで幕を開けます。
https://www.youtube.com/watch?v=JcHOc_-U7Vo

R.A. The Rugged Man feat. Sadat X「50,000 Heads」、The Jacka & Berner feat. Fed-X「Watch Me」等のサンプリング・ソースとなっています。
R.A. The Rugged Man feat. Sadat X「50,000 Heads」
 https://www.youtube.com/watch?v=P7QZrW6bwyM

「You've Got a Friend」
Carole Kingの名曲をカヴァー。Donnyの『Live』(1972年)での熱唱もお馴染みですね。アルバムに先駆けて1971年にシングル・リリースし、全米チャート第29位、同R&Bチャート第8位となっています。本ヴァージョンは『Live』ヴァージョンのスタジオ版といった位置づけかもしれませんね。『Live』と同じ感動が胸に込み上げてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZRDYYFyAYVg

Ram Squad feat. Q Ball「Control」、Pete Philly & Perquisite「Lazy」等のサンプリング・ソースとなっています。
Ram Squad feat. Q Ball「Control」
 https://www.youtube.com/watch?v=Q_7gd9DYACk

「Baby I Love You」
Aretha Franklin、1967年のヒット曲をカヴァー(Jimmy Holiday/Ronnie Shannon作)。Arethaのオリジナルはアルバム『Aretha Arrives』に収録されています。このカントリー・ソウル調のブラック・フィーリングはデュエット作品の相乗効果かもしれませんね。

「Be Real Black for Me」
Charles Mann/Donny Hathaway/Roberta Flack作。今回聴き直して一番胸に響いたのがゴスペル調の本曲。ブラック・ライヴズ・マター運動が注目を集める今日だからこそ胸に沁みるものがあるニュー・ソウルだと思います。2人が歌声は世代を超えて今でもリアル・ソウルとして伝わると思います。噛めば噛むほど味の出てくる1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=_ctAIoVv7Uk

M.O.P.「World Famous」、Scarface「My Block」、Charles Hamilton「There's Nothing Like It」、Coin Banks feat. ATOM & Danny Martin「Be Real」等のサンプリング・ソースとなっています。
M.O.P.「World Famous」
 https://www.youtube.com/watch?v=l0GXWBCmH5Q
Scarface「My Block」
 https://www.youtube.com/watch?v=DHyqs0PoBgE
Coin Banks feat. ATOM & Danny Martin「Be Real」
 https://www.youtube.com/watch?v=FRPiSrIKKXA

「You've Lost That Lovin' Feelin'」
The Righteous Brothers、1964年の大ヒット曲をカヴァー(Barry Mann/Phil Spector/Cynthia Weil作)。アルバムに先駆けて1971年にシングル・リリースされました。大ヒット曲を見事に都会的ソウルへ変貌させています。「Be Real Black for Me」と並び今回惚れ直した1曲。Chuck Rainey、Bernard Purdieをはじめとするバッキングによる激シブな都会派ファンキー・サウンドの素晴らしさも際立ちます。
https://www.youtube.com/watch?v=c0m812CC4kg

「For All We Know」
J. Fred Coots/Sam M. Lewis作のポピュラー・スタンダードをカヴァー。Donny Hathawaの素晴らしいヴォーカルを堪能できる1曲。彼の静かなる闘志のようなものを感じる素晴らしいソウル・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=r9v8CyIe7qM

「Where Is the Love」
Ralph MacDonald/William Salter作。本作のハイライトといえばこの大ヒット曲ですね。全米チャート第5位、同R&Bチャート第1位となっています。大きな愛に包まれたメロウ・ソウルにはエヴァーグリーンな魅力がありますね。各人ソロでは聴けないデュエット作品だからこそ生まれた名曲だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=ZcHPNUN-U8E

作者Ralph MacDonaldヴァージョンは当ブログで紹介した『Sound Of A Drum』(1976年)に収録されています。様々なアーティストがカヴァーしていますが、本ヴァージョンと同じ男女デュエットでいえば、Mica Paris & Will Downing、John Legend & Corinne Bailey Raeヴァージョンあたりもチェックしてみては?また、Nate Dogg feat. Snoop Dogg「Never Leave Me Alone」、RBL Posse「Gone Away」等のサンプリング・ソースとなっています。

Mica Paris & Will Downing「Where Is the Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=ES9Q5g9EsdA
John Legend & Corinne Bailey Rae
 https://www.youtube.com/watch?v=j6N2qgd9b0Q
Nate Dogg feat. Snoop Dogg「Never Leave Me Alone」
 https://www.youtube.com/watch?v=uzveEPBVQtA
RBL Posse「Gone Away」
 https://www.youtube.com/watch?v=tpydZvNtRHs

「When Love Has Grown」
Ralph MacDonald/William Salter作。「Where Is the Love」と同じコンビが書いた本曲は派手さはありませんが、「Where Is the Love」に通じるメロウな魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=J-NR8BTyWHY

「Come Ye Disconsolate」
トラディショナル・カヴァー。この2人のデュエットに相応しいゴスペル調バラード。ホーリーな雰囲気がよく似合います。Donnyのリードにより、Robertaのソウルな魅力がうまく引き出されている気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=2r8crQujfBE

「Mood」
Roberta Flack作。ラストはRobertaのピアノ、Donnyのエレピによる約7分のインスト。ラストにインストを持ってくるあたりに、2人の単なるシンガーに止まらないトータルなミュージシャンとしての矜持のようなものを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=helRy003dhc

RobertaとDonnyは1979年に再びデュエット・アルバムの制作に取り組みましたが、2曲のレコーディングを終えた後にDonnyがホテルから転落死してしまいます。それでもRobertaはアルバムを完成させ、『Roberta Flack Featuring Donny Hathaway(邦題:ダニーに捧ぐ)』(1980年)としてリリースしています。

『Roberta Flack Featuring Donny Hathaway』(1980年)
ダニーに捧ぐ(紙ジャケット&SHM-CD)

Roberta FlackDonny Hathawayの過去記事もご参照ください。

Roberta Flack『Feel Like Makin' Love』(1975年)
Feel Like Makin' Love

Roberta Flack『I'm The One』(1982年)
アイム・ザ・ワン(紙ジャケット&SHM-CD)

Donny Hathaway『Everything Is Everything』(1970年)
新しきソウルの光と道 +1

Donny Hathaway『Live』(1972年)
ライヴ
posted by ez at 06:59| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする