発表年:1990年
ez的ジャンル:M-Base系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :M-Baseの精神・・・
ジャズを超越した最高の女性シンガーCassandra Wilsonの初期作品『Jumpworld』(1990年)です。
これまで当ブログで紹介したCassandra Wilsonは以下の7枚(発売年順)。
『Point Of View』(1986年)
『Days Aweigh』(1987年)
『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
『New Moon Daughter』(1995年)
『Traveling Miles』(1999年)
『Belly Of The Sun』(2002年)
『Glamoured』(2003年)
本作『Jumpworld』(1990年)は、『Point Of View』(1986年)、『Days Aweigh』(1987年)、『Blue Skies』(1988年)に続くJMT第4弾アルバムとなります。
本作で注目すべきは、当時Cassandraも所属していた先鋭ジャズ・コレクティヴM-Baseの面々が大挙して参加している点です。
Rod Williams(p、key)、Kevin Bruce Harris(b)、Mark Johnson(ds)という当時のレギュラー・メンバーに加え、Steve Coleman(sax)、Greg Osby(sax)、Gary Thomas(sax)、Graham Haynes(tp)、Robin Eubanks(tb)、David Gilmore(g)、Lonnie Plaxico(b)といったM-Baseメンバーがレコーディングに参加しています。
今日ではM-Baseと言ってもピンと来ない人も多いのでしょうが・・・
プロデュースはCassandra Wilson自身。
前作『Blue Skies』(1988年)がスタンダード集であった反動からか、本作は全11曲中10曲がCassandraのオリジナルです(共作含む)。
レコーディング・メンバーから想像できるように、1990年当時の"最新ジャズ"を楽しめます。最も顕著なのはラップを取り入れたタイトル曲「Jump World」。先鋭ジャズ集団からのHip-Hopアプローチは、Hip-Hopとジャズの融合の代名詞であるJazzmatazzあたりと比較すると興味深く聴けるはずです。
それ以外にもCassandraのダーク&ミステリアスなヴォーカルとSteve ColemanをはじめとするM-Baseメンバーによる独自のクールなジャズ・ワールドを楽しめます。
決してCassandraの代表作の類ではありませんが、M-BaseメンバーとしてのCassandra Wilsonを満喫できる点で見逃せない1枚なのでは?
全曲紹介しときやす。
「Woman on the Edge」
Cassandra Wilson作。ミステリアスな雰囲気の中でCassandraが強く生きる女性にエールを送るオープニング。Graham Haynes、Gary Thomasがソロで盛り上げてくれます。
「Domination Switch」
Steve Coleman/Cassandra Wilson作。ファンク・テイストのM-Baseらしいサウンドをバックに、Colemanのサックス、Cassandraのヴォーカル、David Gilmoreのギターが輝きを放ちます。
https://www.youtube.com/watch?v=OhaTWZ21sMI
「Phase Jump」
Steve Coleman/Cassandra Wilson作。インタールード的な小曲ですが、なかなかエキサイティングです。
「Lies」
Cassandra Wilson作。哀愁ミディアム・バラードですが、少しカリビアン風なテイストがいいですね。
「Grand System Masters」
参加メンバーGraham Haynesの作品。作者Graham Haynesのミュート・トランペットがナビゲートされ、Cassandraのスキャットが浮遊します。
「Jump World」
Kirth Atkins/Steve Coleman/James Moore/Cassandra Wilson作。タイトル曲はKurtis Blow作品でお馴染みのプロデューサー/シンガーソングライターJ.B. Moore(James Moore)のラップをフィーチャーしています。この当時のジャズ作品で違和感なくHip-Hopを取り入れているあたりがM-Baseのセンスですね。
https://www.youtube.com/watch?v=ukzOCNOe5oM ※一部のみ
「Love Phases Dimensions」
Kevin Bruce Harris/Rod Williams/Cassandra Wilson作。プリンセス・オブ・ダークネスらしいヴォーカルで壮大なスケールの愛を歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=HsBvVd-Mpkw
「Whirlwind Soldier」
Cassandra Wilson作。オーセンティックなアコースティック・バラードをしっとりと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=1DB5FcKEUgI
「Warm Spot」
Kevin Bruce Harris/Mark Johnson/Rod Williams/Cassandra Wilson作。Cassandraのヴォーカルとバッキングが一体化して躍動する感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=IGlc-BOFAk4
「Dancing in Dream Time」
David Gilmore/Cassandra Wilson作。夢の中を浮遊するかのようなミステリアスな雰囲気があります。作者David Gilmoreのギターの音色がミステリアス・ムードを醸し出しています。
「Rock This Calling」
Steve Coleman/Cassandra Wilson作。ラストはColemanのサックス・ソロが印象的なミステリアス・チューンで締め括ってくれます。
Cassandra Wilson作品の過去記事もご参照下さい。
『Point Of View』(1986年)
『Days Aweigh』(1987年)
『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
『New Moon Daughter』(1995年)
『Traveling Miles』(1999年)
『Belly Of The Sun』(2002年)
『Glamoured』(2003年)