2018年02月04日

Chris Dave And The Drumhedz『Chris Dave And The Drumhedz』

最も旬のドラマーが提示する最新形ブラック・ミュージック☆Chris Dave And The Drumhedz『Chris Dave And The Drumhedz』
クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ
発表年:2018年
ez的ジャンル:最新形ドラマー系ブラック・ミュージック
気分は... :ビートに抱かれて・・・

新作からジャンルの枠を超えて活躍する今最も旬のドラマーChris Daveの正式なデビュー・アルバム『Chris Dave And The Drumhedz』です。

個人的に今年最も心待ちにしていた新作アルバムが遂にリリースされました。

Chris Daveは1973年テキサス州ヒューストン生まれ。

Mint ConditionKenny GarrettMeshell Ndegeocelloらのレコーディングに参加し、キャリアを積み重ねていきます。

そして、現代ジャズ・シーンを牽引するジャズ・ピアニストRobert Glasperとの出会いが彼の運命を切り開きます。

その決定打となったのが、ジャズとHip-Hop/R&Bを統合させた名盤Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)です。

グラミー最優秀R&Bアルバム賞を受賞した同作で、リーダーのGlasperと共に、Hip-Hop世代のドラミングでジャズ・ドラムに革新をもたらしたChris Daveが注目を浴びました。

また、Adele『21』(2011年)、D'Angelo & The Vanguard『Black Messiah』(2014年)、Justin Bieber『Purpose』(2015年)等ジャンルの枠を超えて重要作品のレコーディングに参加しています。

そんな今最も旬のドラマー、待望のフル・アルバムが本作『Chris Dave And The Drumhedz』です。

Chris Dave And The Drumhedz名義でも、これまで『Mixtape』(2013年)、『Radio Show』(2017年)といった作品をリリースしていますが、正式には本作をデビュー・アルバムと位置付けていいと思います。

まず参加メンバーが僕の好みにジャスト・フィットしています。

本作でフィーチャリングされているアーティストはSiRAnderson .PaakBilalTweetKendra FosterStokley WilliamsGoapeleShafiq HusaynSa-Ra (Sa-Ra Creative Partners))、ElzhiEric RobersonPhonte ColemanThe Foreign Exchange)、Anna Wiseといった面々。

さらにレコーディングには、Robert Glasper Experimentの盟友Robert Glasper(el-p、p)とCasey Benjamin(vo)、D'Angelo & The Vanguardの仲間であるPino Palladino(b)とIsaiah Sharkey(g)、RC & The Gritzの名義作品が昨年話題となったR.C. Williams(moog b)、The Soulquariansメンバーとしてお馴染みJames Poyser(key、p)、当ブログでもお馴染みの女性R&BシンガーSy Smith(vo)、A Tribe Called QuestAli Shaheed Muhammad(vo)、L.A.のラッパーKrondon(vo)、レジェンドDJ Jazzy Jeff(dj)、L.A.ジャズの重要人物Miguel Atwood-Ferguson(strings)、今ジャズ注目のトランぺッターKeyon Harrold(tp)等さまざまなジャンルから多彩なミュージシャンが参加しています。

長く当ブログをご覧の方であれば、このメンツがモロに僕好みであることをご理解頂けると思います。

参加メンバーからはR&B寄りの作品をイメージするかもしれないし、名門Blue Noteからのリリースという点を考慮すれば、ジャズ作品なのかもしれません。

実際の音を聴くと、ジャンル云々を語ることは意味のないことに思えます。アルバム全体に漂うコズミック感覚も含めて、Chris Daveならではの音に挑戦しているブラック・ミュージック作品という印象を受けます。ただし、ジャズの枠を超えたサウンドを発信しつつ、本人にとっての一丁目一番はR&Bではなくジャズなのであろうと感じます。

RGE『Black Radio』のような作品をイメージすると、案外地味なので肩透かしうを食うかもしれません。しかしながら、丁寧に聴き込めば、音の新しさ、懐の深さに魅了される1枚になるのではないかと思います。

さり気ない刺激に満ちた1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Rocks Crying」
コズミック・フィーリングの電化サウンドが印象的なオープニング。

「Universal Language」
Robert Glasper、Krondon、Sy Smithらが参加。Erykah Baduを彷彿させるSy Smithのキュートなヴォーカルが映える今ジャズ的な電化ネオソウルといった感じです。R.C. Williamsのムーグ・ベースが効いています。

「Dat Feelin'」
当ブログでもプッシュしていた西海岸R&Bシンガー・ソングライターSiRをフィーチャー。Chris Daveの今ジャズ・フィーリングのR&BサウンドとSiRの持つアトモスフィアな雰囲気がうまく合体した1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=5WEXTZ0fIUA

「Black Hole」
旬なR&B/Hip-HopアーティストAnderson .Paakをフィーチャー。Paak色が強く出る共演と思いきや、意外にもシタール入りのアフロ・ジャズといった展開。でもこれが絶品!Chris Daveならではのハイパー・アフロ・ジャズになっているのがいいですね。Keyon Harroldも演奏&ソングライティングで貢献しています。
https://www.youtube.com/watch?v=OXRLE9K1SlQ

「2N1」
Chris Dave、Pino Palladino、Isaiah Sharkey、Andre Harrisによるインタールード的なインスト。

「Spread Her Wings」
Bilal、Tweetをフィーチャー。今ジャズ・フィーリングとネオソウル・フィーリングがいい塩梅でバランスしたメロウ・チューンに仕上がっています。

「Whateverer」
Shafiq Husayn、Ali Shaheed Muhammadらがヴォーカルで参加。さり気ないですが、リラックスした雰囲気で和ませてくれます。

「Sensitive Granite」
D'Angelo & The Vanguardで一緒であった女性R&BシンガーKendra Fosterをフィーチャー。浮遊した音空間の中で、最新形ドラマーらしいプレイを披露してくれます。

「Cosmic Intercourse」
Mint Conditionを通して旧知の中であるStokley Williamsのヴォーカルをフィーチャー。RGEの盟友Casey BenjaminのヴォコーダーやMiguel Atwood-Fergusonのストリングスも加わり、壮大かつ感動的なコズミック・サウンドが展開されます。本編に続き、ゴスペル調のスキットが挿入されています。

「Atlanta, Texas」
Goapele、Shafiq Husaynをフィーチャー。タイトル通りに南部のアーシーなテイストがある一方で、Chris Daveが参加したMe'Shell Ndegeocello『Comfort Woman』(2003年)に通じるダビー感覚も漂います。

「Destiny N Stereo」
Elzhi、Eric RobersonPhonte Colemanをフィーチャー。Phonte & Eric Roberson『Tigallerro』(2016年)が大好きだった僕としては嬉しい顔合わせです。Chris DaveによるJ Dilla的ビートを楽しめる1曲に仕上がっています。あのDJ Jazzy Jeffも参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=PSyB5rtMgSs

「Clear View」
Anderson .PaakSiRをフィーチャー。インディー・ロック的なオルタナ感のある演奏です。コズミックな演出は本作らしいですね。終盤はAnderson .Paak色を前面に出し、Paak節を楽しめます。

「Job Well Done」
Anna Wise、SiRをフィーチャー。人力クラブミュージック的なイントロに続き、SiRらしい音世界を打ち出した美しい本編へ展開します。ゆっくりと流れていくようなアトモスフィア感覚がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2x3dOieDGoU

「Lady Jane」
The New Tony Williams Lifetime「Lady Jade」のカヴァー。オリジナルは『Million Dollar Legs』(1976年)に収録されています。新しい音に挑戦するChris Daveの姿を革新的ジャズ・ドラマーの先輩Tony Williamsと重ねたくなりますね。

「Trippy Tispy」
ラストはコズミック&トライバルなジャズ演奏で締め括ってくれます。

『Black Radio』(2012年)、『Black Messiah』(2014年)はマストとして、それ以外のChris Dave参加作や本作に参加しているアーティストの作品を再チェックするのも楽しいと思います。ここでは当ブログで紹介した作品の中から3枚プッシュしておきます。3枚共にChris Dave参加作品です。

Me'Shell Ndegeocello『Comfort Woman』(2003年)
Comfort Woman

SiR『Seven Sundays』(2015年)
Seven Sundays

RC & The Gritz『The Feel』(2016年)
Feel
posted by ez at 03:10| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする