2018年03月07日

Leon Thomas『Spirits Known And Unknown』

個性派黒人ジャズ・シンガーによるスピリチュアル・ジャズ・クラシック☆Leon Thomas『Spirits Known And Unknown』
スピリッツ・ノウン&アンノウン +3  (日本独自企画盤、解説、歌詞付き)
発表年:1969年
ez的ジャンル:個性派黒人シンガー系スピリチュアル・ジャズ
気分は... :シンプルかつ個性的に!

今回は独自のヨーデル調スキャットで知られる男性ジャズ・シンガーLeon Thomasの1stソロ・アルバム『Spirits Known And Unknown』(1969年)です。スピリチュアル・ジャズ・クラシックとして再評価の高い1枚ですね。

Leon Thomas(1937-1999年)イリノイ州イーストセントルイス出身。

当ブログでも紹介したスピリチュアル・ジャズ名盤Pharoah Sanders『Karma』(1969年)への参加で注目され、『Karma』のプロデューサーであったBob Thieleが設立したレーベルFlying Dutchmanとの契約に成功します。

Pharoah Sanders『Karma』(1969年)
カーマ

そして、Flying Dutchmanから本作『Spirits Known And Unknown』(1969年)を皮切りに、『The Leon Thomas Album』(1970年)、『In Berlinb』(1971年)、『Blues And The Soulful Truth』(1972年)、『Full Circle』(1973年)といったアルバムをリリースしています。

本作『Spirits Known And Unknown』(1969年)は、ジャケに"New Vocal Frontiers"と表記されているように、ヨーデル調スキャットでジャズ・ヴォーカルの新たな可能性を示した作品です。

ただし、ヨーデル調スキャットで奇をてらうのではなく、本格的なスピリチュアル・ジャズ作品として魅力的な1枚です。

プロデュースはBob Thiele

レコーディング・メンバーはLeon Thomas(vo、per)以下、Roy Haynes(ds)、Lonnie Liston Smith(p)、Richard Landrum(bongos)、Richard Davis(b)、Cecil McBee(b)、James Spaulding(as、fl)、Little RockPharoah Sanders)(ts)。

Little Rockの変名で参加したPharoah Sanders、Leon Thomasと共に『Karma』で注目され、Flying Dutchmanから多くのリーダー作をリリースしたLonnie Liston Smithの参加が目を引きます。

目立つのは前述の『Karma』収録の名曲「The Creator Has A Master Plan」のリメイクですが、それ以外にも「Malcolm's Gone」「Song For My Father」Horace Silverの名曲カヴァー)、「Echoes」といった演奏にもスピリチュアル・ジャズらしい魅力が詰まっています。また、クラブジャズ的な格好良さを持つハイスピードの「One」もお気に入りです。

Pharoah Sandersのスピリチュアル・ジャズ・ワールドがお好きな人であれば、気に入る1枚です。

全曲紹介しときやす。

「The Creator Has A Master Plan」
Leon Thomas/Pharoah Sanders作。
前述のように、彼の名を一躍知らしめたPharoah Sanders『Karma』収録のスピリチュアル・ジャズ・クラシックのリメイク。『Karma』の30分超の長尺オリジナル・ヴァージョンを、約4分半のコンパクト・ヴァージョンで聴かせてくれます。オリジナルよりも少し遅いテンポで、Thomasがヨーデル調スキャットは少し控えめにしつつ、穏やかに歌い上げます。オリジナルと同じくLonnie Liston Smithの内部奏法、James Spauldingのフルートも楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=ipRZEHRx6ow

「One」
Leon Thomas作。クラブジャズ好きの人は要チェックの1曲。ハイスピードのバッキングを従え、ヨーデル調スキャット全開で格好良く疾走します。この時代らしいラブ&ピースな歌詞もいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=fzAPyoaBdp4

「Echoes」
Leon Thomas作。スピリチュアル・ジャズらしい神秘的な崇高さが魅力の演奏です。James Spauldingのフルートのアヴァンギャルドな響きとヨーデル調スキャットがよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=Dwk_8UIf6YQ

「Song For My Father」
Horace Silverの名曲をカヴァー。Silverのオリジナルは『Song For My Father』(1964年)に収録されています。Steely Dan「Rikki Don't Lose That Number(リキの電話番号)」のモチーフとしてもお馴染みですね。ここではEllen May Shashoyanによる歌詞を歌い上げ、この名曲にThomasらしいスピリチュアル・ジャズなエッセンスを吹き込んでいます。適度にパーカッシヴなのが僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=AqU-E6NGwoM

「Damn Nam (Ain't Goin' To Vietnam)」
Leon Thomas作。サウンドだけ聴けば、ブルージーで軽やかなジャズ演奏ですが、サブ・タイトルにもあるように、ベトナム戦争への反戦歌です。
https://www.youtube.com/watch?v=Dwk_8UIf6YQ

「Malcolm's Gone」
Leon Thomas/Pharoah Sanders作。タイトルからも分かるように黒人公民権運動活動家マルコムXの暗殺をモチーフにした社会派ソングです。Pharoah SandersもLittle Rockの変名で加勢し、重厚で壮大なスピリチュアル・ジャズ・ワールドを展開します。Pharoah Sanders好きの人ならば気に入るエネルギッシュな演奏です!
https://www.youtube.com/watch?v=QV6M94mZARE

「Let The Rain Fall On Me」
Aaron Bell/Carla Huston作。James Spauldingのフルート、Lonnie Liston Smithの美しいピアノが先導するビューティフル・ジャズ・バラードでジェントルに締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=EQDPVDG8Gr4

ボーナス・トラックとして、H. Rap Brownと共同名義でリリースされた『SNCC's Rap』(1970年)にも収録されているFilmore Eastでのライブから「A Night In Tunisia」「Damn Nam (Ain't Goin' To Vietnam)」「Um Um Um」の3曲が追加収録されています。

Leon Thomasの他作品もチェックを!

『The Leon Thomas Album』(1970年)
レオン・トーマス・アルバム  (日本初CD化、日本独自企画盤、解説、歌詞付き)

Leon Thomas With Oliver Nelson『In Berlinb』(1971年)
In Berlin

『Blues And The Soulful Truth』(1972年)
ブルース・アンド・ザ・ソウルフル・トゥルース (日本初CD化、日本独自企画盤、歌詞、解説付き)

『Full Circle』(1973年)
フル・サークル (日本初CD化、日本独自企画盤、歌詞、解説付き)
posted by ez at 00:25| Comment(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする