発表年:2018年
ez的ジャンル:次世代UKジャズ/アフロ・ジャズ
気分は... :衝撃の次世代ジャズ!
新作から注目のUKジャズ作品Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』です。
Sons Of Kemetは、次世代UKブラック・ジャズを牽引するジャズ・サックス奏者Shabaka Hutchingsが率いるジャズ・ユニット。
これまでNaim Jazzから『Burn』(2013年)、『Lest We Forget What We Came Here to Do』(2015年)という2枚のアルバムをリリースしています。
結成時のメンバーはShabaka Hutchings(sax)、Oren Marshall(tuba)、Tom Skinner(ds)、Seb Rochford(ds)という4名。
リーダーのShabaka Hutchingsは1984年ロンドン生まれ。南アフリカの精鋭ジャズ・ミュージシャンを従えたShabaka And The Ancestors『Wisdom Of Elders』(2016年)は、"ロンドンからKamasi Washingtonへの回答"と評され、一躍注目の存在となりました。Sons Of Kemet以外にMelt Yourself Down、The Comet Is Comingといったユニットにも参加しています。
また、ドラマーのSeb RochfordはUKエクスペリメンタル・ジャズ・バンドPolar Bearのリーダーとしても知られるミュージシャンです。
話を『Your Queen Is A Reptile』に戻すと、3rdアルバムとなる本作はImpulse!への移籍第一弾アルバムとなります。
アルバム・タイトルは女王を頂点とする英国の君主制、階級社会を皮肉ったものであり、すべての曲(すべてShabaka Hutchingsのオリジナル)のタイトルは「My Queen is 〜」のようになっており、英国女王ではない自分達の女王を提示している社会派作品になっています。
本作におけるメンバーは前作『Last Evenings On Earth』(2016年)と同じく、Shabaka Hutchings(sax)、Theon Cross(tuba)、Tom Skinner(ds)、Seb Rochford(ds)という4名。
さらにRebel MCとしても知られるラガ/ジャングルの革命児Congo Natty(vo)、LV & Joshua Idehen名義の作品リリースで知られるJoshua Idehen(vo)、Eddie Hicks(ds)、ロンドンの気鋭ジャズ・ドラマーMoses Boyd(ds)、Maxwell Hallett(ds)、Melt Yourself DownのリーダーPete Wareham(sax)、期待の女性ジャズ・サックス奏者
プロデュースはShabaka HutchingsとDemus(Dilip Harris)。
Two Banks Of Four(2BO4)等の活動で知られるDemusは、これまでの2枚のアルバムでも裏方として関与してきましたが、本作はプロデューサーとしてより深く作品に関わっています。
Demusの関与からも想像できるように、今ジャズ・リスナーのみならずクラブジャズ・リスナーも惹きつける1枚に仕上がっています。
基本編成はツイン・ドラムとサックス、チューバという変則的な編成ですが、ツイン・ドラムによる強力リズムをバックに、Shabakaがブラックネスに溢れたサックスを披露してくれます。また、Theon CrossのチューバがShabakaとのホーン・アンサンブルのみならず、ベース代わりにリズム隊を補完し、地味ながらも活躍しています。
全体的にトライバル・リズムによるアフロ・ジャズ的な演奏が多いのが僕の嗜好にフィットします。また、レゲエ/ダブ、カリブあたりのエッセンスを取り入れた演奏もあります。
闘う次世代UKジャズは今ジャズ・リスナーが聴いても、クラブジャズ・リスナーが聴いてもインパクトのある1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「My Queen is Ada Eastman」
Joshua Idehenをフィーチャー。ツイン・ドラムによるトライバル・リズムとShabakaのサックス、Theon Crossのチューバがアッパー&アヴァンギャルドに疾走します。聴いているうちに、ポスト・パンク系UKジャズ・ファンク・バンドPigbagを思い出してしまいました。本作のコンセプトも含めてUKポスト・パンクからの影響もあるかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=T19IrfO3-LQ
「My Queen is Mamie Phipps Clark」
Congo Nattyをフィーチャー。ラガ・スタイルのCongo Nattyのヴォーカルも含めて、レゲエ/ダブの影響を感じる演奏です。本作のコンセプトを踏まえれば、レベル・ミュージックの代表格であるレゲエのスタイルを取り入れるのは当然かもしれませんね。
「My Queen is Harriet Tubman」
トライバルに疾走する格好良さがたまりません。ドラム、サックス、チューバのみでこんなエキサイティングなサウンドを生み出してしまうのが凄いですね。これぞ"ロンドンからKamasi Washingtonへの回答"といった内容の演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=twjaSC5Ym9s
「My Queen is Anna Julia Cooper」
Melt Yourself DownのリーダーPete Warehamがサックスで参加。ShabakaとPete Warehamのサックスの掛け合いも含めて、クールな中に知的アヴァンギャルドを感じる演奏です。
「My Queen is Angela Davis」
アフロ・ジャズのエッセンスを強調した演奏です。中盤以降、一気に加速してエキサイティングな展開になります。Shabakaのサックスに負けないTheonのチューバの存在感もグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=HQOzgdAAirs
「My Queen is Nanny of the Maroons」
ダビー&トライバルな雰囲気ですが、本作の中で最もマイルドな演奏です。
「My Queen is Yaa Asantewaa」
期待の女性サックス奏者Nubya Garciaが参加。Shabaka、Theonとの素晴らしいアンサンブルを披露してくれます。最新形UKジャズを楽しめます。
「My Queen Is Albertina Sisulu」
強力トライバル・リズムに乗って、Shabaka、Theonが快調なプレイを繰り広げる、このユニットのエキサイティングな魅力がコンパクトに詰まっています。
「My Queen is Doreen Lawrence」
ラストは再びJoshua Idehenをフィーチャー。ダイナミックなドラム・アンサンブルとベースのように響くTheonのチューバが生み出すグルーヴが格好良いですね。Shabakaのプレイにはエスニックな雰囲気も漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=vnacmss4bPc
Sons Of Kemetの他作品やShabaka Hutchingsの関連作品もチェックを!
『Burn』(2013年)
『Lest We Forget What We Came Here to Do』(2015年)
Shabaka And The Ancestors『Wisdom Of Elders』(2016年)
Melt Yourself Down『Melt Yourself Down』(2013年)
Melt Yourself Down『Last Evenings On Earth』(2016年)
The Comet Is Coming『Channel The Spirits』(2016年)