発表年:2018年
ez的ジャンル:新世代ジャズ系UKビートメイキング・デュオ
気分は... :これぞ新世代サウンド!
新作アルバムから期待のUKビートメイキング・デュオBlue Lab Beatsの1stアルバム国内独自編集盤『Xover』です。
Blue Lab Beatsは、ビートメイカーNK OKことNamali Kwatenと、マルチ・インストゥルメンタル・プレイヤーMr DMことDavid Mrakporという若き才能2人がロンドンで結成したユニット。
Namali Kwatenの父はUKアシッド・ジャズの人気グループD-InfluenceのメンバーであったKwame Kwatenです。現在のKwame Kwatenは注目のUK女性シンガーLaura Mvulaのマネジャーとなっています。
これまで「Blue Skies EP」(2016年)、「Freedom EP」(2017年)という2枚のEPをリリースしてきた彼らが昨年末にデジタル・リリースした1stアルバムが『Xover』です。
今回紹介する国内独自編集盤『Xover』は、オリジナル『Xover』の13曲に「Freedom EP」、「Blue Skies EP」の楽曲を加えた全18曲構成となっています。
本作が注目されるもう1つの要因は、南ロンドンを拠点とするUKジャズ新世代ミュージシャンが大挙して参加している点です。
主なところを挙げると、UKジャズ・バンドEzra CollectiveのメンバーDylan JonesとFemi Koleoso、Moses Boyd Exodusを率いるロンドンの気鋭ジャズ・ドラマーMoses Boyd、女性サックス奏者Nubya Garcia、ロンドンのアフロビート・バンドKokorokoを率いる女性トランぺッターSheila M.Maurice-Greyと同じくメンバーである女性トロンボーン奏者Richie Seivwright、UKクロスオーヴァー・ジャズ・ユニットTriforceのキーボード奏者Dominic Canning。
これらのミュージシャンはGilles Petersonが期待のUKジャズ新世代を集めたコンピ・アルバム『We Out Here』で紹介されています。
『We Out Here』(2018年)
ちなみに先週に最新作『Your Queen Is A Reptile』を紹介したSons Of KemetのリーダーであるUKブラック・ジャズの最高峰Shabaka Hutchingsも『We Out Here』で紹介されています。そういえば、『Your Queen Is A Reptile』には上記ミュージシャンのうち、Moses Boyd、Nubya Garciaが参加していました。
話を本作『Xover』の参加ミュージシャンの話に戻すと、それ以外にNubya Garcia、Sheila M.Maurice-Greyも参加する女性ジャズ・バンドNerija、Triforceとも共演するサックス奏者Kaidi Akinnibi、南ロンドン出身のピアニストAshley HenryやベーシストDaniel Casimir等の新世代ミュージシャンが参加しています。
さらにはRuby Francis、NiCe、OthaSoul、Lala &ce、Kojey Radical、Tiana Major9、James Vickery、Boitumelo Mpye、Louis VIといったシンガー/ラッパーが参加しています。
このように参加ミュージシャンをチェックするだけでも楽しいアルバムですが、中身も南ロンドンの今を感じることができる充実作です。
J Dillaの影響を感じるHip-Hopサウンドやネオソウル調R&Bサウンドとロンドン新世代ジャズ・サウンドをビートメイカーらしいセンスで巧みに融合しています。クラブジャズ、フットワーク、ブロークンビーツ、カリビアン等のエッセンスを取り入れた楽曲があるあたりがロンドンらしいですね。
評論家の中には今ジャズとクラブジャズの間に一線を画し、今ジャズの面白さを主張する人もいますが、個人的には両者を区別すること自体馬鹿らしいと感じていたので、Hip-Hop/R&B、今ジャズ、クラブジャズ全てを飲み込んでしまうBlue Lab Beatsのようなアーティストは大歓迎です。
今のロンドンは興味深い音に溢れていますね。
全曲紹介しときやす。
「Intro」
幻想的なイントロ。
「Tea」
カリビアン系の男性シンガー・ソングライターMelo-Zedのギターをフィーチャー。ジャジーHip-Hop調のメロウなインスト・チューンです。
「Say Yes」
Ruby Francis & Ashley Henryをフィーチャー。キュートなRuby Francisの女性ヴォーカルを生かしたネオソウル調の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=ViU5xI2E_oQ
「Watch It x Blue Katana」
NiCe & Femi Koleosoをフィーチャー。J Dillaの影響を感じるNK OKのビートメイカーとしてのセンスを楽しめるトラックです。
「Dome」
ロンドンのHip-HopユニットOthaSoulのラップとDaniel Taylorのトークボックスをフィーチャー。J Dilla調ビート+トークボックス入りシンセ・ファンクな仕上がりは、UK版"Robert Glasper Experiment"といった趣です。
https://www.youtube.com/watch?v=LH4awKOWBlc
「Xover」
タイトル曲はMoses Boydをフィーチャー。スリリングなMoses Boydのドラミングを満喫できる短いインスト。
「Pineapple」
Moses Boyd & Nerijaをフィーチャー。カリビアン・テイストのレイドバック感が心地好いトロピカル・ジャズで和ませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=2ScpnUpCsM4
「Pina Colada」
Nubya Garciaのサックス、Richie Seivwrightのトロンボーンをフィーチャー。この曲もカリビアン・テイストですが、フューチャリスティックな雰囲気が加わったロンドンらしいサウンドを楽しめます。
「8O8」
Sheldon Agwu、Terry Smiles、Lala &ceをフィーチャー。Lala &ceの妖艶なヴォーカルが映える先鋭的なジャズ・サウンドはクラブジャズ好きの人も気に入るはず!
「Run Away」
Kaidi Akinnibiのサックスをフィーチャー。フットワーク調のトライバルなアッパー・サウンドで駆け抜けるロンドン新世代らしい仕上がり。
「Timeless」
Daniel Taylor、Dominic Canning、Dylan Jones、Ashley Henryをフィーチャー。トークボックス入りのAOR調メロウ・サウンドはThundercat『Drunk』あたりに通じるアプローチです。
「Sam Cooke & Marvin Gaye」
「Freedom EP」収録曲。Kojey Radical、Tiana Major9をフィーチャー。偉大なソウルマン2人を冠したタイトルですが、ネオソウル調のドリーミー・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=wEds2YR6QOA
「Blue Skies」
「Blue Skies EP」収録曲。Ashley Henry、Piers Haynes、Daniel Casimir、William Francis、Sheila M.Maurice-Greyをフィーチャー。Hip-Hop世代のジャズ・サウンドという点では"ロンドン新世代からUS今ジャズへの返答"とでも呼びたくなるインストです。
https://www.youtube.com/watch?v=xsTp_29XkW8
「My Dream」
James Vickeryをフィーチャー。このユニットの新世代らしいサウンド・センスを楽しめるR&Bチューン。ドリーミーな浮遊感が僕好みです。
https://www.youtube.com/watch?v=_k4TxTJsgt8
「Oooo Lala」
Kaidi Akinnibiをフィーチャー。メロウな中にも新世代ジャズらしさを感じるインスト。Roy Ayers調のヴァイヴの音色が心地好いです。
https://www.youtube.com/watch?v=zgRqpvGan0k
「Outro」
Daniel Taylorをフィーチャー。本編の余韻を楽しめるアウトロ。
ここからの2曲はボーナス・トラック扱い。
「Sweet Thing」
「Blue Skies EP」収録曲。Boitumelo Mpyeのキュートな女性ヴォーカルが映えるスウィートなネオソウル・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=f1CoLPDhYmM
「Freedom」
「Freedom EP」収録曲。Feat.Louis VIをフィーチャー。ジャズ・フィーリングのHip-Hopチューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=QWl8YR6dlHI
ご興味がある方は本作に参加しているEzra Collectiveあたりの作品もチェックしてみては?
Ezra Collective『Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher』(2017年)