2018年06月17日

Bosq『Love and Resistance』

コロンビアを拠点とするDJ/プロデューサーのディープ・ディスコ☆Bosq『Love and Resistance』
Love And Resistance
発表年:2018年
ez的ジャンル:辺境系ディープ・ディスコ
気分は... :敵を知り、己を知れば百戦危うからず !

今日のW杯はグループリーグで唯一1日4試合の日、朝まで眠れません。

今観ている「ペルー対デンマーク」は、会場が「日本対コロンビア」と同じ。そのあたりにも注目したいですね。

新作アルバムから、コロンビア絡みの作品を紹介します。辺境系ディープ・ディスコ作品Bosq『Love and Resistance』です。

US西海岸の人気レーベルUbiquityからのリリースです。

Bosqはボストン出身、現在はコロンビア、メデシンを拠点とするDJ/プロデューサーBen Woodsのソロ・プロジェクト。

元々は2000年代後半からDJユニットWhiskey Baronsとして評価を高め、その後Bosq名義としての活動をスタートさせます。

これまでUbiquityから『Bosq Y Orchestra De Madera』(2013年)、『Celestial Strut』(2015年)という2枚のアルバムをリリースし、それ以外にプエルトリコのラテン・バンドLa Candela All Starsとの共演アルバム『San Jose 51』(2016年)をアナログ・リリースしています。

また、NitetimeBody Musicといったユニットでも作品をリリースしています。

さて、本作『Love and Resistance』ですが、 ファンク、ハウス、ジャズ、アフロ、ブラジル、ラテン、クンビアなど様々な音楽のエッセンスを飲み込んだディープ・ディスコ作品に仕上がっています。辺境系のスパイスが効いているのが、他のディスコ作品にはない魅力です。

アルバムには、サンパウロを拠点とするブラジル人男性シンガーBruno Morais、ベナン共和国出身のギタリストKaleta、US西海岸のソウル/ファンク・バンドSocial Loversの女性シンガーMegan Doherty、バークリー音楽大学出身でボストン在住の日本人マルチインストゥルメンタリストMonologこと
Yuki Kanesaka(金坂征広)、US西海岸のチカーノ・バンドBrownout、N.Y.のアフロビート・バンドKokolo Afrobeat OrchestraのリーダーRay Lugo、現行ファンク・シーンをリードする黒人女性シンガーNicole Willis、US西海岸のソウル・デュオMyron And Eのメンバー E Da Bossによる新プロジェクトLucid Paradise、マイアミ出身、現在はL.A.を拠点とするDJ/プロデューサー/シンガー/ソングライターInduceという気鋭アーティストたちがフィーチャリングされています。

アフロ/ブラジル/ラテン/クンビアなディスコ・ワールドはサッカーW杯モードにもフィットします。

全曲紹介しときやす。

「Com Forca」
Bruno Moraisをフィーチャー。サンバ・テイストの効いた辺境ディープ・ディスコがオープニング。軽やかな中にも一筋縄ではいかないクセが窺えます。Bruno MoraisのヴォーカルはJorge Benをイメージさせますね。
https://www.youtube.com/watch?v=vcJOqzPygC8

「Alode」
Kaletaをフィーチャー。Kaletaによる軽やかなアフロ・ギターが印象的なダンス・チューン。アフロ・ジャズ好きの人も楽しめるはず!

「Can't Seem To Hide」
Megan Dohertyをフィーチャー。Meganのキュートなヴォーカルが映える脱力系メロウ・ディスコ。爽やかなカッティング・ギターもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=e8nYJ0X8Hzs

「Feel It」
リズミックなディスコ・ハウスは実にキャッチーです。さまざまなジャンルの音楽のエッセンスをダンサブルに融合させてしまうBosqの才を満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=i54D4YP3A5w

「In Orbit」
ボストン在住の日本人マルチインストゥルメンタリストMonolog(Yuki Kanesaka)をフィーチャーしたインスト。ここでYukiはヴァイヴ、シンセ、ローズ、サックスを演奏しています。メロウなヴァイヴの音色が心地好い演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=1r3WQ7i3s6M

「Pegate Pa Sa」
Brownout、Ray Lugoをフィーチャー。個人的には一番のお気に入り。ラテン・ファンク×アフロ・ファンクによる濃密なクロスオーヴァー・グルーヴが実に刺激的です。
https://www.youtube.com/watch?v=kXWdXspzySw

「Gatekeeper」
Kaletaをフィーチャー。辺境モードのディープなアフロ・サウンドが刺激的な1曲に仕上がっています。

「Take Me There」
現行ファンクのディーヴァNicole Willisをフィーチャー。Nicoleのソウルフル・ヴォーカルとBosqらしいディープ・ディスコ・ワールドを融合させています。
https://www.youtube.com/watch?v=fHPr9KlO-5w

「The Love」
Lucid Paradiseをフィーチャー。妖艶なブギー・ディスコは昨今のモダン・ディスコ/ブギー好きの人であれば気に入ると思います。

「Tonight」
Nicole Willisをフィーチャー。クールなディスコ・ファンク・サウンドに合わせてNicoleも少し抑えめのトーンです。

「Step Into Midnight」
ラストはInduceをフィーチャー。Bosqらしい個性はあまり感じませんが、ある意味アルバムで一番メロウ&キャッチーかも?メロウ・ディスコ好きの人であれば気に入るはず。
https://www.youtube.com/watch?v=N1Be5YiW7VI

Bosqの他作品もチェックを!

Bosq Of Whiskey『Bosq Y Orchestra De Madera』(2013年)
BOSQ Y ORQUESTA DE MADERA

『Celestial Strut』(2015年)
セレスシャル・ストラット
posted by ez at 01:11| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月16日

Joyce『Ilha Brasil』

巧みなアレンジでJoyceの魅力を増幅!☆Joyce『Ilha Brasil』
イーリャ・ブラジル
発表年:1996年
ez的ジャンル:ブラジル人女性SSW
気分は... :ロナウド凄かった・・・

いよいよ昨晩から本格的にW杯モードの日々になりました。
昨日はいずれもW杯らしい見応えのある3試合でしたね。

特に「スペイン対ポルトガル」は、期待通りの強豪国同士の激闘で大満足です。眠れない夜が続く・・・

人気ブラジル人女性シンガー・ソングライターJoyce(Joyce Moreno)が1996年にリリースした『Ilha Brasil』です。

これまで当ブログで紹介したJoyce作品は以下の9枚。

 『Feminina』(1980年)
 『Agua e Luz』(1981年)
 『Tardes Cariocas』(1983年)
 『Music Inside』(1990年)
 『Hard Bossa』(1999年)
 『Gafieira Moderna』(2001年)
 Joyce & Banda Maluca『Just A Little Bit Crazy』(2003年)
 『Bossa Duets』(2003年)
 『Tudo』(2012年)

リオでレコーディングされた本作『Ilha Brasil』は、久々のほぼ新曲で占められている点が魅力の1枚です。

レコーディングには夫Tutty Moreno(ds、per)をはじめ、Hermeto Pascoal(fl、p)、Jaques Morelenbaum(cello)、Marcos Suzano(pandeiro)、Sizao Machado(b)、Mozar Terra (p)、Teco Cardoso(fl、as、ss、bs)、Ze Carlos(ts)、Chico Oliveira(tp)、Chico Oliveira(tb)、Yuka Kido(城戸夕果)(fl)等のミュージシャンが参加しています。

プロデュースは『Delirios de Orfeu』(1994年)も手掛けた日本人の吉田和雄さん。

Joyceらしい爽快なアコースティック・グルーヴを中心としつつも、ホーンやストリングス等も交えた巧みなアレンジで、アルバムにバリエーションを与えています。

爽快アコースティック・グルーヴの「Samba da Zona」「O Chines e a Bicicleta」、ブラジル北東部モードの「Rodando a Baiana」「Deus e o Diabo (Na Danca do Baiao)」、Jaques Morelenbaumのチェロが映える「Paraiso」「Oasis」、Hermeto Pascoalがピアノを弾く「Viola de Prata」あたりが僕のおススメです。

W杯が始まると、何となくブラジル音楽を欲するようになります。

全曲紹介しときやす。

「Samba da Zona」
Joyce作。開放的なホーン・サウンドと共に始まる爽快サンバがオープニング。Joyceらしい透明感のあるアコースティック・グルーヴと本作ならではの華やかなアレンジが見事に調和しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Xwu1MpEA0es

「Havana-Me」
Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。しっとりと落ち着いたメロウ・チューン。サンセット気分に浸れます。
https://www.youtube.com/watch?v=ojgXeRJIM5Q

「O Chines e a Bicicleta」
Joyce作。『Delirios de Orfeu』収録曲の再録。Joyceらしい爽快アコースティック・グルーヴを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=loKSpzFOJdw

「Rodando a Baiana」
Joyce/Mauricio Maestro作。タイトルの通り、バイーア・モードのサウンドです。途中、ラップ調のヴォーカルを披露してくれるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=ZlJksOW8zFY

「Ate Jazz」
Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。当時のブラジル政権のことを歌った社会メッセージ性の高い1曲。サウンドは小粋なジャズ・フィーリングが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=s0VsCSuyed0

「Sexy Silvia」
Edu Lobo/Joyce作。Edu Loboと共作曲は意外にもスウィンギーなジャズ仕立て。

「Receita de Samba」
Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。「サンバのレシピ」という邦題がJoyceらしい感じでいいですね。爽やかなアコースティック・サンバです。
https://www.youtube.com/watch?v=Mhhoc13retE

「Deus e o Diabo (Na Danca do Baiao)」
Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。Hermeto Pascoal、Jaques Morelenbaum、Marcos Suzanoらが参加した土着モードのバイアォン。ミステリアスな疾走感が僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=xzAViufXRus

「Paraiso」
Joyce/Mauricio Maestro作。美しいストリングスが印象的な追憶のラブソング。Jaques Morelenbaumが素晴らしいチェロを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=iwYvjIEUeAs

「Delicadeza」
Joyce作。のどかな雰囲気の仕上がりですが、繊細すぎる生き方を皮肉った、なかなか面白い内容の1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=hWJ82qHp_H0

「Feijao Com Arroz」
Joyce作。Joyceらしいスキャットを満喫できるアコースティック・グルーヴ。

「Oasis」
Joyce/Lea Freire作。ギター、ピアノ、チェロが織り成す美しい音世界がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=v2L7MgF44m4

「Viola de Prata」
Joyce/Paulo Cesar Pinheiro作。Hermeto Pascoalが気の利いたピアノを披露してくれます。シンプルながらも味わい深い仕上がり。

「Antonio/Ilha Brasil」
Joyce作の「Antonio」とJoyce/Paulo Cesar Pinheiro作の「Ilha Brasil」のメドレー。偉大なAntonio Carlos Jobimに捧げられた「Antonio」とブラジルの政治状況を批判する「Ilha Brasil」という2曲を並べることで、ブラジルの素晴らしさと闇のコントラストを鮮明にしたかったのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=DZN1AVjTpkA

Joyceの過去記事もご参照下さい。

『Feminina』(1980年)
フェミニーナ、そして水と光

『Agua e Luz』(1981年)
水と光

『Tardes Cariocas』(1983年)
Tardes Cariocas

『Music Inside』(1990年)
ミュージック・インサイド

『Hard Bossa』(1999年)
Hard Bossa

『Gafieira Moderna』(2001年)
Gafieira Moderna

Joyce & Banda Maluca『Just A Little Bit Crazy』(2003年)
ジャスト・ア・リトル・ビット・クレイジー(2003年作)

『Bossa Duets』(2003年)
ボッサ・デュエッツ

『Tudo』(2012年)
トゥード
posted by ez at 15:20| Comment(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月15日

The Bar-Kays『Injoy』

人気曲「Move Your Boogie Body」を含むヒット作☆The Bar-Kays『Injoy』
bar-kays injoy.jpg
発表年:1979年
ez的ジャンル:粘り腰ファンク/メロウ・ソウル
気分は... :W杯開幕!

いよいよサッカーW杯ロシア大会開幕!
地元ロシアが下馬評を覆す素晴らしいサッカーで開幕戦を圧勝。サウジアラビアにはショックの大きい敗戦でしたね。

今回はソウル/ファンク・バンドBar-Kays『Injoy』(1979年)です。

テネシー州メンフィスで結成されたソウル/ファンク・バンドBar-Kaysの紹介は、『Nightcruising』(1981年)に続き2回目となります。

本作『Injoy』は全米アルバム・チャート第35位、同R&Bアルバム・チャート第2位となったヒット・アルバム。R&Bアルバム・チャート第2位というのはグループにとっての最高位です。

また、同作からのシングル「Move Your Boogie Body」は全米R&Bチャート第3位のヒットとなりました。

本作におけるメンバーはJames Alexander(b)、Lloyd Smith(g)、Larry Dodson(vo)、Charles Allen(tp)、Frank Thompson(tb)、 Harvey Henderson(sax)、Winston Stewart(key、syn)、Mark Bynum(key、vo)、Michael Beard(ds)、Sherman Guy(per、vo)という10名。

プロデュースはAllen Jones

ヒットした粘り腰ファンク「Move Your Boogie Body」、素敵なメロウ・バラード「Running In and Out of My Life」、ホーン&ストリングス・アレンジが巧みな「Loving You is My Occupation」、ファンキー・ダンサー「Up in Here」、込み上げ系ソウル・バラード「Today is The Day」、ラテン・フレイヴァーのディスコ・チューン「More and More」あたりが僕のおススメです。

Sam Dees作の「You've Been」以外はメンバーらのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「More and More」
オープニングはラテン・フレイヴァーを効かせたブレイクが印象的なディスコ・チューン。実に軽やかな感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=dnAT8QXFRPY

「Move Your Boogie Body」
全米チャート第57位、同R&Bチャート第3位となったアルバムからの1stシングル。Bar-Kaysらしい粘り腰のファンク・チューン。聴いた瞬間にアドレナリンが出まくるキャッチーさがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=TZvReo9RuaE

サンプリング・ソースとしても大人気!415「Gimme My Props」、Sean T「Stay Off the Dick」、A Lighter Shade of Brown「If You Wanna Groove」、Gospel Gangstaz「Mobbin' (Gang Affiliated)」、Rappin' 4-Tay「Tear the Roof Off」、Young Soldierz「In the Mornin' Man」、Chunk「Devil Try to Do Me」、Mack Lew「High Speed」のサンプリング・ソースとなっています。
415「Gimme My Props」
 https://www.youtube.com/watch?v=ubqhYG3fIOk
A Lighter Shade of Brown「If You Wanna Groove」
 https://www.youtube.com/watch?v=t9YxwohZ7n4
Gospel Gangstaz「Mobbin' (Gang Affiliated)」
 https://www.youtube.com/watch?v=yCX3FX57Vso
Young Soldierz「In the Mornin' Man」
 https://www.youtube.com/watch?v=L33Lue4cZxQ

「Running In and Out of My Life」
「Move Your Boogie Body」と同じ位に人気があるであろうメロウ・バラード。ファルセット・ヴォーカルの映えるファンク・バンドならではの胸キュンの素敵なバラードに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=fMb_MZpW-Rw

Dom Kennedy「She Ain't in Love」のサンプリング・ソースとなっています。
Dom Kennedy「She Ain't in Love」
 https://www.youtube.com/watch?v=F878m9iQwQ0

「Girl I'm on Your Side」
重心の低いグルーヴ感が魅力のミディアム・ファンク。ブリブリ来る感じがいいですね。

「Loving You is My Occupation」
フュージョン・フィーリングの爽快ミディアム・ファンク。ホーン&ストリングス・アレンジが巧みです。

「Today is The Day」
アルバムからの2ndシングル(全米チャート第60位、同R&Bチャート第25位)。オーセンティックな込み上げ系ソウル・バラードですが、直球勝負感が好感持てます。
https://www.youtube.com/watch?v=_wyGACCRGFo

「You've Been」
Sam Dees作。Beau Williams(アルバム『Stay With Me』収録)やLarry Graham(アルバム『Victory』収録)でも知られる楽曲です。さすがSam Deesと思わせる素敵なバラードです。爽快かつ味わいのあるソウル・バラードで聴かせてくれるのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=DBzjnz9fILc

「Up in Here」
Bar-Kaysらしい粘り腰と爽快な雰囲気を両立させたファンキー・ダンサー!再評価の高い1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=f7m0B-jNV6I

Bar-Kaysの他作品もチェックを!

『Soul Finger』(1967年)
Soul Finger by BAR-KAYS (2012-10-03)

『Gotta Groove』(1969年)
ガッタ・グルーヴ

『Black Rock』(1971年)
ブラック・ロック+5 (紙)

『Do You See What I See?』(1972年)
Do You See What I See

『Too Hot to Stop』(1976年)
トゥー・ホット・トゥ・ストップ

『Flying High on Your Love』(1977年)
Flying High on Your Love

『Money Talks』(1978年)
Money Talks

『Light of Life/Injoy』(1978/1979年) ※2in1CD
LIGHT OF LIFE/INJOY

『As One』(1980年)
アズ・ワン

『Nightcruising』(1981年)
ナイト・クルージング

『Propositions』(1982年)
プロポジションズ

『Dangerous』(1984年)
Dangerous: Bar Kays
posted by ez at 04:21| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月13日

Laura Mvula『Sing To The Moon』

独自のヴォーカルワークで圧倒する黒人女性SSWのデビュー作☆Laura Mvula『Sing To The Moon』
SING TO THE MOON
発表年:2013年
ez的ジャンル:ゴスペルデリア系UK黒人女性SSW
気分は... :遂に光明が・・・

ようやくサッカーの西野ジャパンがパラグアイ戦で初勝利を収めました。
スイス戦から先発メンバー10名変更という采配に試合前から疑問の声が挙がっていましたが、結果的にはこれが大成功!今日の戦いぶりでコロンビアも誰が先発するのか予想しづらくなったかもしれませんね。

特に前線からの守備がユニットとして機能していましたね。コロンビア戦も守備重視ということであれば、前線は今日の岡崎、乾、香川、武藤という4名でいい気がします。柴崎も効いていたので本番も先発で起用して欲しいですね。

今回はUKの才能ある黒人女性シンガー・ソングライターLaura Mvulaの1stアルバム『Sing To The Moon』(2013年)です。

Laura Mvulaは1987年バーミンガム生まれ。父親の影響でジャズに触れ、教会でゴスペルに親しみ、10歳の頃からバイオリンとピアノを学ぶと同時に、Nina Simone、Jill ScottErykah BaduLauryn Hill等からも影響を受けていたようです。

バーミンガム音楽院で作曲を学んだ後、教職などの仕事に就きながら楽曲制作に取り組み、2012年にシングル「She」でデビュー。2013年に1stアルバムとなる本作『Sing To The Moon』をリリースし、UKアルバム・チャートの第9位となりました。同作は2013 BRIT AwardsのCritics' Choiceへのノミネート、BBC's Sound of 2013で第4位といった高評価を受けます。

多重ヴォーカルワークがの印象的な独自の音楽スタイルは"Gospeldelia"あるいは"Nina Simon Sings Beach Boys"とも称されました。

Metropole Orkestと共演したライブ・アルバム『At Abbey Road Studios』(2014年)を挟み、2016年に2ndスタジオ・アルバム『The Dreaming Room』をリリースしています。

当ブログで紹介した作品でいえば、Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)、Becca Stevens『Regina』(2017年)でフィーチャリングされています。

何となく紹介する機会を逃していたアーティストです。しかしながら、少し前に紹介したUKの新世代ビートメイキング・デュオBlue Lab BeatsのメンバーNK OK(Namali Kwaten)の父Kwame Kwaten(元D-Influenceのメンバー)が現在はLaura Mvulaのマネジャーであることを知り、それをきっかけに『Sing To The Moon』『The Dreaming Room』を最近何度が聴き直し、今回取り上げることにしました。

Nile Rodgers参加という点で『The Dreaming Room』も気になりますが、やはりインパクトという点で1st『Sing To The Moon』をセレクト。

プロデュースはUKの人気女性SSW、Rumerを手掛けたことで知られるSteve Brown。ソングライティング面でも9曲をLauraと共作しており、大きく貢献しています(残りの3曲はLauraの単独作)。

「She」「Green Garden」「That's Alright」の3曲がシングルになっています。

見た目の雰囲気でR&B/ソウルでイメージされそうですが、クラシックのエッセンスと緻密な多重コーラスを強調したドリーミー・ポップというのがアルバム全体の印象です。ゴスペル、R&B/ソウル、ジャズ、アフリカ音楽などのエッセンスも取り入れていますが、ブラック・ミュージックを期待して聴くと肩透かしを食うかもしれません。

Lauraが創り出す、唯一無二の音世界はジャンルの好みの枠を超えて、聴く者に特別な何かを届けてくれます。

改めて凄い作品だと再認識しました。

全曲紹介しときやす。

「Like The Morning Dew」
ドリーミーかつ深淵なコーラスワークで聴く者を虜にするオープニング。クラシックからの影響もサウンドに反映されています。
https://www.youtube.com/watch?v=Wn_AHzit2JE

「Make Me Lovely」
クラシックやジャズのエッセンスを巧みに取り入れた素敵なドリーミー・ポップに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=92GQNJjlHgc

「Green Garden」
「She」に続く2ndシングル。リズミカルなハンド・クラップ&チェレスタと共に始まるダンサブルなポップ・ソウル。R&Bファンも楽しめる1曲に仕上がっています。ヴォーカルにエフェクトを効かせてフューチャリスティックな雰囲気を醸し出します。
https://www.youtube.com/watch?v=5akYnlwubDo

「Can't Live With The World」
美しいハープの音色と共に無垢なヴォーカルを聴かせてくれるビューティフル・ポップ。ピュアな音世界に惹き込まれます。
https://www.youtube.com/watch?v=TbGK-dwFWqo

「Is There Anybody Out There?」
ゆったりと音の表情が移り変わっていく感じが印象なドリーミー・ポップ。他の曲もそうですが、音のない間の使い方が実に巧みですね。
https://www.youtube.com/watch?v=GDjNP4TyiUE

「Father, Father」
ピアノをバックに歌い上げる感動的なバラード。ジワジワと胸の奥まで感動がこみ上げてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=M70KHFJnf4c

「That's Alright」
3rdシングル。アフリカン・リズム×ゴスペル・コーラス×ドリーミー・ポップというクロスオーヴァーで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=hYjHixQ9Ns4

「She」
デビュー・シングル。Nina Simon Sings Beach Boysという形容がピッタリな無垢で深淵なヴォーカルワークでインパクト大です。誰にも真似だけないLaura Mvulaの音世界で聴く者を圧倒します。
https://www.youtube.com/watch?v=MAasfgE_Y-c

「I Don't Know What The Weather Will Be」
クラシックのエッセンスを強調したビューティフル・ポップ。大自然の未知のパワーを見事に音で表現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=e0IjNCd21po

「Sing To The Moon」
タイトル曲は月まで届きそうな素晴らしいヴォーカル・ワークと美しいストリングスで魅せてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=g6B-bGGMaF0

「Flying Without You」
マーチング調サウンドが印象的なポップ・チューン。

「Diamonds」
ラストはチェレスタとピアノの美しい響きを際立たせたビューティフル・バラードで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=20C7lqhdEaY

Laura Mvulaの他作品のチェックを!

Laura Mvula with Metropole Orkest conducted by Jules Buckley『At Abbey Road Studios』(2014年)
Laura Mvula Withmetropole Orkestconducted: By Julesbuckley At Abbeyroad Studios (Live)

『The Dreaming Room』(2016年)
Dreaming Room
posted by ez at 02:52| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月12日

Arto Lindsay/The Ambitious Lovers『Envy』

Arto Lindsayの2つの顔が聴ける衝撃作☆Arto Lindsay/The Ambitious Lovers『Envy』
Envy
発表年:1984年
ez的ジャンル:ノー・ウェイブ×ブラジル音楽
気分は... :この組み合わせが面白い!

今回はN.Y.生まれながらブラジル人の心を持つミュージシャンArto LindsayPeter Schererと組んだユニットAmbitious Loversの1stアルバム『Envy』(1984年)です。

当ブログで紹介したAmbitious LoversおよびArto Lindsay作品は以下の通りです。

 Ambitious Lovers『Greed』(1988年)
 Ambitious Lovers『Lust』(1991年)

 Arto Lindsay『O Corpo Sutil/The Subtle Body』(1995年)
 Arto Lindsay『Noon Chill』(1997年)
 Arto Lindsay『Mundo Civilizado』(1996年)
 Arto Lindsay『Prize』(1999年)
 Arto Lindsay『Invoke』(2002年)

本作『Envy』(1984年)は、Ambitious Loversの1stアルバムという位置づけですが、厳密はArto LindsayAmbitious Loversの名が併記されており、Peter Schererとの双頭ユニットというよりもArto Lindsayのソロ・プロジェクト的な色合いが強いアルバムです。

D.N.AのメンバーとしてN.Y.ノー・ウェイブの金字塔的アルバム『No New York』(1978年)へ参加し、その後もLounge LizardsGolden Palominos等で活躍してきた前衛ギタリストとしてのArto Lindsayと、3歳から17歳までをブラジルで過し、ブラジル音楽から多大な影響を受けているArto Lindsayという2つの側面が融合した1枚です。

プロデュースはArto LindsayPeter SchererMark E. Miller。Arto Lindsay、Peter Schererに加え、Mark E. Millerが作品に大きく貢献しています。

レコーディングにはArto Lindsay(vo、g)、Peter Scherer(syn、sampler)、Mark E. Miller(prog、tom‐tom、congas、vo)以下、Toni Nogueira(per、timpani)、Reinaldo Fernandes (per、vo)、Claudio Silva (vo、pandeiro、prog)、Jorge Silva(per)、Anton Fie(prog)、David Moss(vo)、Duncan Lindsay(vo)といったミュージシャンが参加しています。

ノー・ウェイヴ/ポストロックな楽曲、ブラジリアン・モードの楽曲、両者を融合させた楽曲、次作『Greed』を予感させるダンサブルな楽曲がバランス良く配した構成です。全13曲ですが、1分前後の小曲が5曲もあるので、意外とあっという間に聴き終えることができます。

アルバムで最もキャッチーな「Let's Be Adult」、本来のAmbitious Loversサウンドを実感できる「Locus Coruleus」、本作ならではのノー・ウェイヴ×ブラジルなアヴァンギャルド感を楽しめる「Cross Your Legs」「Too Many Mansions」、ブラジリアン・モード全開の「Dora」あたりがおススメです。

アルバム1枚の中でArto Lindsayが持つ2つの顔をバランス良く楽しめる1枚です。プレAmbitious Loversという意味でも楽しめるはずです。

全曲紹介しときやす。

「Cross Your Legs」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ノー・ウェイヴ/ポストロック×ブラジルなオープニング。この組み合わせ自体がアヴァンギャルドですね。
https://www.youtube.com/watch?v=BLlyOXcjLrk

「Trouble Maker」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ブラジルの土着リズムのエッセンスを巧みに使ったミディアム・グルーヴ。ブラック・ミュージックのエッセンスも感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=DkUlMaSKZJ4

「Pagode Americano」
Claudio Silva/Reinaldo Fernandes/Toni Nogueira作。ブラジリアン・リズム全開の仕上がり。D.N.Aをイメージして聴くとギャップが大きいかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=6HFXF0WsvvQ

「Nothings Monstered」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/David Moss作。前曲から一転してノー・ウェイヴ/ポストロックな小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=GwRGDLKs2fU

「Crowning Roar」
Arto Lindsay/Mark E. Miller作。メタリック感のあるアヴァンギャルドな小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=evMdYnshAy0

「Too Many Mansions」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ノー・ウェイヴ×ブラジルなアヴァンギャルド感を満喫できる1曲。前衛的なサウンドとブラジル音楽特有のサウダージな雰囲気を違和感なく同居させているのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=tBaPQJYczBE

「Let's Be Adult」
Arto Lindsay/Peter Scherer作。シンセ・ポップ調のダンサブル・チューンはアルバムで最もキャッチーな仕上がりです。Peter Schererとの双頭ユニットAmbitious Loversとしての本来の音なのでは?ニュー・ウェイヴ好きの人は気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=OU3rXvNnRr0

「Venus Lost Her Shirt」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer/Claudio Silva/Reinaldo Fernandes/Toni Nogueira作。ブラジリアン・ノー・ウェイヴと称したくなるミニマルな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=K8S6CtBlmTw

「My Competition」
Arto Lindsay/Mark E. Miller作。1分に満たない小曲ですが、ニュー・ウェイヴ的な格好良さがあります。

「Badu」
Claudio Silva/Jorge Silva/Toni Nogueira作。ブラジリアン・パーカッションのみのアフロ・ブラジリアンな小曲。

「Dora」
ブラジルの偉大なコンポーザー/シンガーDorival Caymmiの作品を取り上げています。Arto Lindsayのブラジルの心を最も実感できる仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=H6NlSU1EWfo

「Beberibe」
Arto Lindsay/Toni Nogueira作。ブラジリアン・モードのアヴァンギャルドを楽しめる小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=LTd-hTjk-7s

「Locus Coruleus」
Arto Lindsay/Peter Scherer/Anton Fier作。ラストは次作『Greed』につながるアヴァンギャルドなダンサブル・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=TekcXnCwmwk

Ambitious LoversおよびArto Lindsayのソロ作の過去記事もご参照ください。

Ambitious Lovers『Greed』(1988年)
Greed

Ambitious Lovers『Lust』(1991年)
Lust

Arto Lindsay『O Corpo Sutil/The Subtle Body』(1995年)
O Corpo Sutil

Arto Lindsay『Mundo Civilizado』(1996年)
Mundo Civilizado

Arto Lindsay『Noon Chill』(1997年)
Noon Chill

Arto Lindsay『Prize』(1999年)
プライズ

Arto Lindsay『Invoke』(2002年)
インヴォーク
posted by ez at 11:46| Comment(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする