発表年:1984年
ez的ジャンル:ノー・ウェイブ×ブラジル音楽
気分は... :この組み合わせが面白い!
今回はN.Y.生まれながらブラジル人の心を持つミュージシャンArto LindsayがPeter Schererと組んだユニットAmbitious Loversの1stアルバム『Envy』(1984年)です。
当ブログで紹介したAmbitious LoversおよびArto Lindsay作品は以下の通りです。
Ambitious Lovers『Greed』(1988年)
Ambitious Lovers『Lust』(1991年)
Arto Lindsay『O Corpo Sutil/The Subtle Body』(1995年)
Arto Lindsay『Noon Chill』(1997年)
Arto Lindsay『Mundo Civilizado』(1996年)
Arto Lindsay『Prize』(1999年)
Arto Lindsay『Invoke』(2002年)
本作『Envy』(1984年)は、Ambitious Loversの1stアルバムという位置づけですが、厳密はArto LindsayとAmbitious Loversの名が併記されており、Peter Schererとの双頭ユニットというよりもArto Lindsayのソロ・プロジェクト的な色合いが強いアルバムです。
D.N.AのメンバーとしてN.Y.ノー・ウェイブの金字塔的アルバム『No New York』(1978年)へ参加し、その後もLounge Lizards、Golden Palominos等で活躍してきた前衛ギタリストとしてのArto Lindsayと、3歳から17歳までをブラジルで過し、ブラジル音楽から多大な影響を受けているArto Lindsayという2つの側面が融合した1枚です。
プロデュースはArto Lindsay、Peter Scherer、Mark E. Miller。Arto Lindsay、Peter Schererに加え、Mark E. Millerが作品に大きく貢献しています。
レコーディングにはArto Lindsay(vo、g)、Peter Scherer(syn、sampler)、Mark E. Miller(prog、tom‐tom、congas、vo)以下、Toni Nogueira(per、timpani)、Reinaldo Fernandes (per、vo)、Claudio Silva (vo、pandeiro、prog)、Jorge Silva(per)、Anton Fie(prog)、David Moss(vo)、Duncan Lindsay(vo)といったミュージシャンが参加しています。
ノー・ウェイヴ/ポストロックな楽曲、ブラジリアン・モードの楽曲、両者を融合させた楽曲、次作『Greed』を予感させるダンサブルな楽曲がバランス良く配した構成です。全13曲ですが、1分前後の小曲が5曲もあるので、意外とあっという間に聴き終えることができます。
アルバムで最もキャッチーな「Let's Be Adult」、本来のAmbitious Loversサウンドを実感できる「Locus Coruleus」、本作ならではのノー・ウェイヴ×ブラジルなアヴァンギャルド感を楽しめる「Cross Your Legs」や「Too Many Mansions」、ブラジリアン・モード全開の「Dora」あたりがおススメです。
アルバム1枚の中でArto Lindsayが持つ2つの顔をバランス良く楽しめる1枚です。プレAmbitious Loversという意味でも楽しめるはずです。
全曲紹介しときやす。
「Cross Your Legs」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ノー・ウェイヴ/ポストロック×ブラジルなオープニング。この組み合わせ自体がアヴァンギャルドですね。
https://www.youtube.com/watch?v=BLlyOXcjLrk
「Trouble Maker」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ブラジルの土着リズムのエッセンスを巧みに使ったミディアム・グルーヴ。ブラック・ミュージックのエッセンスも感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=DkUlMaSKZJ4
「Pagode Americano」
Claudio Silva/Reinaldo Fernandes/Toni Nogueira作。ブラジリアン・リズム全開の仕上がり。D.N.Aをイメージして聴くとギャップが大きいかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=6HFXF0WsvvQ
「Nothings Monstered」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/David Moss作。前曲から一転してノー・ウェイヴ/ポストロックな小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=GwRGDLKs2fU
「Crowning Roar」
Arto Lindsay/Mark E. Miller作。メタリック感のあるアヴァンギャルドな小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=evMdYnshAy0
「Too Many Mansions」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer作。ノー・ウェイヴ×ブラジルなアヴァンギャルド感を満喫できる1曲。前衛的なサウンドとブラジル音楽特有のサウダージな雰囲気を違和感なく同居させているのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=tBaPQJYczBE
「Let's Be Adult」
Arto Lindsay/Peter Scherer作。シンセ・ポップ調のダンサブル・チューンはアルバムで最もキャッチーな仕上がりです。Peter Schererとの双頭ユニットAmbitious Loversとしての本来の音なのでは?ニュー・ウェイヴ好きの人は気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=OU3rXvNnRr0
「Venus Lost Her Shirt」
Arto Lindsay/Mark E. Miller/Peter Scherer/Claudio Silva/Reinaldo Fernandes/Toni Nogueira作。ブラジリアン・ノー・ウェイヴと称したくなるミニマルな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=K8S6CtBlmTw
「My Competition」
Arto Lindsay/Mark E. Miller作。1分に満たない小曲ですが、ニュー・ウェイヴ的な格好良さがあります。
「Badu」
Claudio Silva/Jorge Silva/Toni Nogueira作。ブラジリアン・パーカッションのみのアフロ・ブラジリアンな小曲。
「Dora」
ブラジルの偉大なコンポーザー/シンガーDorival Caymmiの作品を取り上げています。Arto Lindsayのブラジルの心を最も実感できる仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=H6NlSU1EWfo
「Beberibe」
Arto Lindsay/Toni Nogueira作。ブラジリアン・モードのアヴァンギャルドを楽しめる小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=LTd-hTjk-7s
「Locus Coruleus」
Arto Lindsay/Peter Scherer/Anton Fier作。ラストは次作『Greed』につながるアヴァンギャルドなダンサブル・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=TekcXnCwmwk
Ambitious LoversおよびArto Lindsayのソロ作の過去記事もご参照ください。
Ambitious Lovers『Greed』(1988年)
Ambitious Lovers『Lust』(1991年)
Arto Lindsay『O Corpo Sutil/The Subtle Body』(1995年)
Arto Lindsay『Mundo Civilizado』(1996年)
Arto Lindsay『Noon Chill』(1997年)
Arto Lindsay『Prize』(1999年)
Arto Lindsay『Invoke』(2002年)