2018年07月25日

Soulstance『Life Size』

Lo Greco兄弟によるミラノ発クラブジャズの第3弾☆Soulstance『Life Size』
Life Size
発表年:2003年
ez的ジャンル:Schema系クラブジャズ
気分は... :それでもクラブジャズ・・・

今回は久々にイタリア、ミラノの人気クラブジャズ・レーベルSchema作品を紹介したいと思います。セレクトしたのはSoulstance『Life Size』(2003年)です。

Gianni Lo GrecoEnzo Lo GrecoLo Greco兄弟によるクラブジャズ・ユニットSoulstanceの紹介は、『En Route』(1999年)、『Act On!』(2000年)に続き3回目となります。

少し前に『Lead the Way』(2006年)以来、約12年ぶりとなる新作アルバム『Electronic Chamber Jazz』Irma からリリースしたSoulstance

『Electronic Chamber Jazz』(2018年)
Electronic Chamber Jazz

そんな新作リリースのニュースを聞き、未エントリーの彼らの作品を取り上げることにしました。

プロデュース&アレンジはLo Greco兄弟
Enzo Lo Grecoがすべてのソングライティングを手掛けています。

レコーディングにはGianni Lo Greco(ds、per)、Enzo Lo Greco(b、g、p、fl、prog)以下、Giacomo Tringali(per、vibes)、Pepe Ragonese(tp)、Tullio Ricci(sax、fl)、Marco Bianchi(p)、Andrea Dulbecco(vibes)、Michael Rosen(sax)、Michele Fazio(p)、Licia Russo(vo)、Milena Spada(vo)、Arthur Miles(vo)、Angela Baggi(vo)、Patrizia Di Malta(back vo)、Laura Piccinelli(back vo)といったミュージシャンが参加しています。

シングルにもなった「Caribe」をはじめ、「Lift Up」「The Time」「High Five」といった各種コンピで取り上げられた楽曲が聴きものだと思います。

ここ数年のJazz The New Chapterを契機とした"今ジャズ"ブームの煽りで、肩身が狭くなった印象のクラブジャズですが、本作を聴きながら自分のクラブジャズ好きを再認識しました。

これからもクラブジャズ作品を積極的に取り上げたいと思います。

全曲紹介しときやす。

「Caribe」
シングルにもなったオープニング。各種コンピにも収録されています。ラウンジ感覚のラテン・ジャズ×エレクトロニカな感じがSchemaらしくてグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=YdCe72sKwgE

「Au Revoir La Nuit」
ワルツ・ジャズ×ドラムンベースな女性スキャット入りクラブジャズに仕上がっています。浮遊するシンセとダブルベースの組み合わせがいい感じですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OoCNgp5mri8

「Zenith」
土着的なアフロ・ブラジリアン・リズムとシンセによる人工的なウワモノのコントラストが鮮やかな仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=I95pew1Vh-I

「Lift Up」
各種コンピにも収録されている人気曲。ラウンジ調の落ち着いた雰囲気とドラムンベースな疾走感がモロに僕好みです。Pepe Ragoneseのミュート・トランペットがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=HjgECoIzcBg

「Honesty」
Licia Russoの女性ヴォーカルをフィーチャー。Licia Russoの艶やかな哀愁ヴォーカルとエレガントさを加味したボッサ・ジャズ・サウンドの組み合わせがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=GeUaLUs_MPY

「Soul Ensemble」
ハイパーな疾走感が心地好い1曲。Schemaらしいダンサブルなクラブジャズを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=SJxdotmmkjI

「Lost On A Wave」
女性スキャット入りのクール&メロウな疾走感が僕好み。ありがちなパターンの曲ですが、こういう感じ好きなんです!
https://www.youtube.com/watch?v=mfFrheAXcMo

「Love Comes Again」
ヴァイヴの音色が心地好いミラノ・ジャズならではのラウンジ感がいい感じの1曲。
https://www.youtube.com/watch?v=Ury9KbnhuuM

「Nucleus」
ダブルベースのハードボイルドな響きが格好良いダンサブル・チューン。Andrea Dulbeccoのヴァイヴ・ソロもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=FPx3uT7CuFc

「Angel's Eyes」
Angela Baggiのヴォーカルをフィーチャー。少しレイジーのAngela Baggiのヴォーカルを活かした仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=Nbn4Q-F-c58

「Life Size」
タイトル曲は近未来的エレクトロニカ・サウンドと旧き良きイタリアン・ジャズのエッセンスを融合させたクラブジャズらしい1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=8wbxdGW1BuE

「High Five」
パーカッシヴに疾走するダンサブル・チューン。各種コンピにも収録された楽曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=Eo_R-90QiUE

「The Time」
ラストは各種コンピにも収録された人気曲。「Lift Up」と並ぶ本作のハイライト。Arthur Milesのヴォーカルをフィーチャーした哀愁メロウ・グルーヴです。シブいArthur MilesのヴォーカルとPepe Ragoneseのミュート・トランペットがたまりません。
https://www.youtube.com/watch?v=w6bksh4x6ug

Soulstanceの他作品もチェックを!

『En Route』(1999年)
En Route

『Act On!』(2000年)
Act On!

『Lead the Way』(2006年)
Lead the Way
posted by ez at 13:01| Comment(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月24日

Howard Hewett『Howard Hewett』

ヒット曲「Show Me」収録。元Shalamar中心メンバーのソロ第3弾☆Howard Hewett『Howard Hewett』
Howard Hewett
発表年:1990年
ez的ジャンル:男性コンテンポラリーR&B
気分は... :Show Me・・・

Shalamar黄金期を支えた男性R&BシンガーHoward Hewettの3rdアルバム『Howard Hewett』(1990年)です。

Howard Hewettは1955年オハイオ州アクロン生まれ。

1977年にShalamarに加入し、Jody WatleyJeffrey Danielと共に、Shalamar黄金期を支え、ダンス・クラシック「A Night to Remember」等のヒットを放ちました。

1983年のJody WatleyJeffrey Daniel脱退後もShalamarでの活動を継続させますが、1986年にグループを脱退し、ソロ活動を開始します。

本作『Howard Hewett』(1990年)は、『I Commit to Love』(1986年)、『Forever and Ever』(1988年)に続くソロ第3作となります。

アルバムにはShalamarを手掛けたLeon Sylvers IIIをはじめ、Jon Nettlesbey/Terry CoffeyBarry Eastmond、元Scritti PolittiDavid Gamson、大ヒット「Break My Stride」で知られるMatthew Wilder等がプロデュースを手掛けています。

また、Anita Bakerがデュエット参加したり、Gary GlennAlex Brown、姉妹ソウル・グループPerri等がバック・コーラスを務めています。

アルバム全体としては、全米R&Bチャート第2位のヒットとなった「Show Me」、同じくシングル曲の「If I Could Only Have That Day Back」「Let Me Show You How To Fall In Love」Anita Bakerとデュエット「When Will It Be」をはじめ、スロウ〜ミディアム系が充実したオトナR&B作品に仕上がっています。

また、ShalamarファンにはLeon Sylvers IIIプロデュースの「I Do」がおススメです。Scritti Politti好きの僕としてはDavid Gamson絡みのダンサブル・チューン「Let's Get Deeper」あたりにもグッときます。

久々に聴き直しましたが、Howard Hewettの魅力が伝わってくるオトナR&B作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「When Will It Be」
Barry Eastmondプロデュース。Anita Bakerとデュエットした話題曲がオープニング。クワイエットストームなオトナのR&Bデュエットがアルバムの全体像を象徴しています。AOR/クワイエットストーム好きから再評価の高い男性ソウル・シンガー/ソングライターGary Glennがバック・コーラスを務めています。
https://www.youtube.com/watch?v=rrkQ0YE8wGw

「Show Me」
Jon Nettlesbey/Terry Coffeyプロデュース。アルバムからの1stシングルとして全米R&Bチャート第2位のヒットとなりました。Howardの魅力を存分に堪能できる名バラードに仕上がっています。夏に聴くスロウとしてフィットするのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=hWEyLeOlLbg

Xscape「Just Kickin' It」、Fam Bam Clicc「Dam' Near to Oakland」、Shaquille O'Neal「Got to Let Me Know」、J Stalin「Show Me」、J Stalin feat. Joe Blow & Smiggz「Come Out to Play」のサンプリング・ソースになっています。
Xscape「Just Kickin' It」
 https://www.youtube.com/watch?v=w_BTEFAVwjU
Fam Bam Clicc「Dam' Near to Oakland」
 https://www.youtube.com/watch?v=aVYIJJsnu6I
Shaquille O'Neal「Got to Let Me Know」
 https://www.youtube.com/watch?v=OASHoczI4zg
J Stalin「Show Me」
 https://www.youtube.com/watch?v=53Ez1QhkiLU

「If I Could Only Have That Day Back」
大ヒット「Break My Stride」で知られるMatthew Wilderプロデュース。Paul Jackson Jr.(g)やTotoのJeffrey Porcaro(ds)がレコーディングに参加しています。さらにレア・グルーヴで再評価の高い女性ソウル・シンガーAlex Brownがバック・コーラスで参加しています。アルバムからの2ndシングルとして全米R&Bチャート第14位のヒットとなりました。Paul Jackson Jr.のギターが先導するアーバン・コンテンポラリーな仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=LSPCTvPvB90

「Let Me Show You How To Fall In Love」
Howard Hewettプロデュース。姉妹ソウル・グループPerriの面々等がバック・コーラスを務めています。アルバムからの3rdシングル。Ray Fullerの素敵なギターと共に始まる感動的なラブ・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=cX1Tx7cxBpI

「I Do」
Shalamarを手掛けたLeon Sylvers IIIプロデュース。80年代ブラコンの香りがするメロウ・ミディアムは僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=_g02ISoVhA8

「The More I Get (The More I Want)」
この曲もLeon Sylvers IIIプロデュース。プログラミングを駆使したアーバンなダンサブル・チューン。90年代好きの人は楽しめる1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=QOEJ6DI6LUA

「Let's Get Deeper」
Scritti PolittiのDavid Gamsonによるトラック制作。また、NewbanAtlantic Starrのメンバーとして活躍したPorter Carrollがバック・コーラスを務めています。Scritti Politti好きの僕としてはグッとくるダンサブル・チューンです。David Gamsonのセンスがハマった1曲だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=2kY4ey5LW-U

「Shadow」
Attala Zane Gilesプロデュース。Gerald Albrightのサックス・ソロが印象的なアーバン・ミディアム。オトナの哀愁モードがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Tz3b0RE2-VU

「I Know You'll Be Comin' Back」
David Gamson参加曲の2曲目。NJS調の仕上がりですが、Howard Hewettらしいとは思いませんが、時代の流れでこのタイプが1曲必要だったのでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=BCMiO7YMqG0

「Don't Give In」
David Gamson参加曲の3曲目。オーセンティックなバラードですが、Howardにフィットしたビューティフル・バラードです。Gerald Albrightのサックスが盛り上げてくれます。。
https://www.youtube.com/watch?v=HTE8DUjTqmo

「Jesus」
Howard Hewett/Monty Sewardプロデュース姉妹ソウル・グループPerriの面々等がバック・コーラスを務めています。ラストはゴスペル・モードのバラードで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=9t4J-M3D3aU

Howard Hewettの他作品もチェックを!

『I Commit to Love』(1986年)
アイ・コミット・トゥ・ラヴ

『Allegiance』(1992年)
Allegiance

『It's Time』(1994年)
It's Time

『The Journey』(2001年)
Journey

『If Only』(2007年)
If Only
posted by ez at 01:37| Comment(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月23日

Stargard『Stargard』

全米R&Bチャート第1位「Theme From "Which Way Is Up"」収録☆Stargard『Stargard』
銀河からの訪問者
発表年:1978年
ez的ジャンル:スペイシー・ディスコ系女性コーラス・グループ
気分は... :激闘!全英オープン

今回は黒人女性コーラス・グループStargardのデビュー・アルバム『Stargard』(1978年)です。

Stargardは1976年、L.A.で結成された黒人女性コーラス・グループ。

メンバーはRochelle RunnelsJanice WilliamsDebra Andersonの3名。

デビュー・シングルとなったコメディ映画『Which Way is Up?』(1977年)の主題歌「Theme From "Which Way Is Up"(邦題:銀河からの訪問者)」が、全米R&Bチャート第1位、全米チャート第21位という大ヒットとなります。

また、1978年には映画『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』にキャストの一員として参加し、「Lucy in the Sky With Diamonds」「I Want You (She's So Heavy) 」といったBeatlesソングをカヴァーしています。

アルバムとしては、『Stargard』(1978年)、『What You Waiting For』(1978年)、『Changing Of The Gard』(1979年)、『Back 2 Back』(1981年)、『Nine Lives』(1982年)という5枚をリリースしています。『Back 2 Back』、『Nine Lives』の2枚はDebraが脱退し、Rochelle、Janiceの2名体制でした。

結果として、デビュー・シングルのスペイシー・ディスコ「Theme From "Which Way Is Up"(邦題:銀河からの訪問者)」が最大のヒットとなり、一発屋グループ的なイメージが強いのかもしれませんね。

そのデビュー・シングル「Theme From "Which Way Is Up"」が収録されているのが本作『Stargard』(1978年)であり、全米アルバム・チャート第26位、同R&Bチャート第12位となっています。

プロデュースはMark Davis

前述の「Theme From "Which Way Is Up"(邦題:銀河からの訪問者)」が目立つかもしれませんが、同じくスペイシー・ディスコな「Disco Rufus」、パワフルなファンキー・グルーヴ「The Force」、ダイナミックなダンス・チューン「Smile」、シングルにもなったラブ・バラード「Love Is So Easy」あたりもおススメです。

スペイシーなファンキー・ダンサーをご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Three Girls」
Debra Anderson/Janice Williams/Rochelle Runnells作。メンバー自らの自己紹介的なオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=zDHfXf8UEao

「Smile」
Rochelle Runnells作。開放的なホーン・サウンドと共にスタートするダイナミックなダンス・チューン。なかなかノリのいい仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=T0QvH1dHW3g

「Love Is So Easy」
Rochelle Runnells作。2ndシングルにもなったラブ・バラード。女性ソウル・グループとしての彼女たちの魅力を堪能できる正統派バラードです。ストリングス・アレンジはGene Page
https://www.youtube.com/watch?v=HoyVCzggPhM

「Don't Change」
Chuck Jackson/Marvin Yancy作。「Love Is So Easy」に続きオーセンティックなバラードです。なかなか味わい深い仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=-6D2-wgecQo

「Theme From "Which Way Is Up"」
Norman Whitfield作。前述のようにグループ最大のヒット曲。スペイシーなシンセが響くディスコ・ファンクはこの時代らしいですね。Enigma、Marcia Hineがカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=xSJi1H3jZPk

「The Force」
「Theme From "Which Way Is Up"」と同じくNorman Whitfield作。パワフルなファンキー・グルーヴ。個人的にはアルバムで一番のお気に入り。ファンキーという点ではコレが一番魅力的だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=rGFWhK79vXU

「I'll Always Love You」
Mark Davis作。ソウルフルなヴォーカルを満喫できるミディアム。溌剌としたパワフルさがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Iwx2xvyLGBQ

「Disco Rufus」
Mark Davis/Michael Nash作。シングル「Theme From "Which Way Is Up"」のB面曲。「Theme From "Which Way Is Up"」と同路線のスペイシー・シンセが印象的なディスコ・チューンです。
https://www.youtube.com/watch?v=UJClOWPY12o

再発CDには『What You Waiting For』(1978年)のタイトル曲でシングルにもなったNorman Whitfield作の「What You Waiting For」がボーナス・トラックとして追加収録されています。
「What You Waiting For」
 https://www.youtube.com/watch?v=tcX0T4QCjM0

『Changing Of The Gard』(1979年)
チェンジング・オブ・ザ・ガード
posted by ez at 02:18| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月22日

Kamaal Williams『The Return』

Yussef Kamaalの衝撃が再び!☆Kamaal Williams『The Return』
RETURN
発表年:2018年
ez的ジャンル:南ロンドン新世代ジャズ/ジャズ・ファンク
気分は... :やはり南ロンドン!

今回は新作アルバムから南ロンドンの注目ジャズ・アーティストの一人、Kamaal Williamsの初ソロ・アルバム『The Return』です。

Kamaal WilliamsHenry Wu)は南ロンドン、ベッカム出身のプロデューサー/キーボード奏者。

「Good Morning Peckham」(2015年)をはじめとするHenry Wu名義の作品やK15とのユニットWu15の作品で、Kamaalはプロデューサー/トラックメイカーとしてハウス/ブロークン・ビーツ/ジャズ・ファンク方面で注目されるようになります。

Kamaalがキーボード奏者としてジャズ方面で注目されたのはドラマーYussef DayesとのユニットYussef Kamaalのアルバム『Black Focus』(2016年)でした。Gilles PetersonBrownswood Recordingsからリリースされ、Shabaka Hutchingsも参加した『Black Focus』は、南ロンドンの新世代ジャズ/ジャズ・ファンクを象徴する1枚として、シーンに大きなインパクトを与えました。

Yussef Dayesの離脱によりYussef Kamaalとしての活動を断念せざるを得なくなったKamaalですが、Yussef Kamaalで掴んだ生演奏ジャズ/ジャズ・ファンクのベクトルをさらに推進すべく、自らのレーベルBlack Focus Recordsを設立し、レコーディングしたのが初ソロ・アルバム『The Return』です。

Kamaal自身がHenry Wu名義でプロデュースし、レコーディング・メンバーはKamaal Williams(el-p、syn)、Pete Martin(b)、Joshua McKenzie(ds)というトリオ編成。また、『Black Focus』にも参加していたUKクロスオーヴァー・ジャズ・ユニットTriforceのギタリストMansur Brownの参加曲もあります。

Lonnie Liston SmithRoy Ayersあたりの流れを汲むジャズ・ファンク・サウンドを、Kaidi TathamDegoといったUKクロスオーヴァー/ブロークン・ビーツの影響も受けつつ、今ジャズ的な生演奏で聴かせてくれる内容に仕上がっています。

特に先行シングルにもなった「Catch The Loop」、コズミックな「Salaam」Kaidi Tathamあたりとの接点も感じる「Broken Theme」、Mansur Brownがギターで参加している「LDN Shuffle」あたりがおススメです。

南ロンドン新世代ジャズの面白さを実感できる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Salaam」
70年代のLonnie Liston Smith作品を2018年南ロンドン・モードにアップデートさせたようなコズミックなジャズ・ファンクがオープニング。Kamaalのトラックメイカー的センスも感じる演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=_dTch-9KUaQ

「Broken Theme」
ブロークン・ビーツ経由の南ロンドン新世代ジャズといった趣がいいですね。先週紹介したKaidi Tatham『It's A World Before You』あたりの接点も感じるし、USの今ジャズ的な雰囲気もあるのがいいですね。

「The Return」
タイトル曲はビートレスの繋ぎの小曲。

「High Roller」
南ロンドンらしいコズミック・ファンクを楽しめる1曲。もっと長尺で聴きたいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=BvOZVPbTNMU

「Situations (Live In Milan)」
(多分)ミラノでのライブ録音。幻想的な雰囲気が支配する演奏です。

「Catch The Loop」
先行シングルにもなったアルバムのハイライト。今ジャズ×ブロークン・ビーツなハイパー・ジャズ・ファンクは実にエキサイティングだし、ロンドン的サウンドだと思います。KamaalがKaidi TathamDegoからの影響を受けていることがよく分かる演奏だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=_AjGzkKn138

「Rhythm Commission」
Lonnie Liston SmithRoy Ayersの諸作を彷彿させるジャズ・ファンク・サウンドを楽しめる1曲。

「Medina」
ジャズ・ファンク一辺倒ではなく、ジャズな側面を楽しめる演奏です。

「LDN Shuffle」
Mansur Brown参加曲。スリリングなジャズ・ファンクにMansur Brownのギターが加わり、よりパワフルな演奏を楽しめます。

「Aisha」
ラストは夏の夜空のような幻想的なコズミック・サウンドで締め括ってくれます。

未聴の方はYussef Kamaal『Black Focus』(2016年)もぜひチェックを!

Yussef Kamaal『Black Focus』(2016年)
Black Focus [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRBW157)
posted by ez at 01:41| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月20日

Grant Green『The Latin Bit』

ラテン・ジャズにアプローチした企画作品☆Grant Green『The Latin Bit』
Latin Bit (Reis)
録音年:1962年
ez的ジャンル:人気ジャズ・ギタリスト系ラテン・ジャズ
気分は... :ラテンで陽気に・・・

今回は人気ジャズ・ギタリストGrant Greenがラテン・ジャズにアプローチした『The Latin Bit』<(1962年)です。

これまで当ブログで紹介したGrant Green作品は以下の6枚。

 『Carryin' On』(1969年)
 『Green Is Beautiful』(1970年)
 『Alive!』(1970年)
 『Visions』(1971年)
 『Live at the Lighthouse』(1972年)
 『The Final Comedown』(1972年)

本作『The Latin Bit』<(1962年)は、タイトル、ジャケの通り、ラテン・ジャズにアプローチした作品です。ブルージー&ファンキーなイメージが強いGrant Greenにとっては異色作と呼べるかもしれませんね。

1962年4月に行われたオリジナル6曲のレコーディングにはGrant Green(g)以下、John Acea(p)、Wendell Marshall(b)、Willie Bobo(ds)、Carlos "Patato" Valdes(congas)、Garvin Masseaux(chekere)といったミュージシャンが参加しています。

企画的な要素もあるせいか、非常にリラックスしたGreenのギター・プレイを楽しめます。また、ラテン一辺倒ではなく、ブルージー&スウィンギーなエッセンスも織り交ぜているのがGreenらしいですね。

異色作ですが、リラックス・モードのGrant Greenもいいですよ。

全曲紹介しときやす。

「Mambo Inn」
Mario Bauza/Edgar Sampson/Bobby Woodlen作。Cal Tjader等でもお馴染みのアフロ・キューバン・ジャズ名曲をカヴァー。リラックスしたGreenのギターで寛げる開放的なラテン・ジャズです。
https://www.youtube.com/watch?v=ws01ny-4mCw

「Besame Mucho」
Consuelo Velazquez作。メキシコ産のラテン名曲「ベサメムーチョ」をカヴァー。お馴染みの名曲をムード・ラテン調の雰囲気で聴かせてくれますが、途中ブルージーになるのがGreenらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=XhqzGU18VME

「Mama Inez」
Louis Wolfe Gilbert/Eliseo Grenet作。軽やかなラテン・ジャズですが、本作らしく途中でスウィンギンな展開になります。

「Brazil」
Ary Barroso作のブラジル名曲「ブラジルの水彩画(Aquarela Do Brasil)」をカヴァー。華やか、軽やかなギターでお馴染みのメロディを奏でてくれるのが何とも心地好いですね。Greenらしい「ブラジルの水彩画」を満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=mW_d-Ngvej0

本曲に関して、当ブログではElis ReginaSonzeiraGal CostaGeoff & Maria Muldaur映画『未来世紀ブラジル』サントラのカヴァーを紹介済みです。

「Tico Tico」
Zequinha de Abreu作のラテン名曲「Tico-Tico no Fuba」をカヴァー。格好良いコンガ・ブレイクと共にスタートする妖艶なラテン・ジャズですが、中盤のラテン×スウィンギンな演奏は本作ならではです。
https://www.youtube.com/watch?v=dUjMkZRqv18

「My Little Suede Shoes」
Charlie Parker作。ラストは敬愛するParker作品で締め括ってくれます。本作らしくラテン・ジャズでスタートした後、中盤はスウィンギンな演奏に終始し、最後は再びラテン調でエンディングを迎えます。
https://www.youtube.com/watch?v=xELiQUA33wE

再発CDにはボーナス・トラックとして、「Blues for Juanita」「Granada」「Hey There」の3曲が追加収録されています。

3曲のうち、「Blues for Juanita」はオリジナル6曲と同日、同メンバーのセッションですが、「Granada」「Hey There」は1962年9月のセッションであり、ピアノがSonny Clarkに代わり、さらにIke Quebec(ts)が加わっています。

Grant Greenの過去記事もご参照下さい。

『Carryin' On』(1969年)
Carryin' On

『Green Is Beautiful』(1970年)
グリーン・イズ・ビューティフル

『Alive!』(1970年)
アライヴ

『Visions』(1971年)
ヴィジョンズ

『Live at the Lighthouse』(1972年)
Live at the Lighthouse

『The Final Comedown』(1972年)
ザ・ファイナル・カムダウン
posted by ez at 00:40| Comment(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする