2018年07月13日

Klymaxx『Meeting In The Ladies Room』

大ヒット曲「I Miss You」収録☆Klymaxx『Meeting In The Ladies Room』
レディーズ・ルーム
発表年:1984年
ez的ジャンル:女性ファンク・グループ
気分は... :あの頃「I Miss You」・・・

今回は「I Miss You」の大ヒットで知られる、80年代に活躍した女性ファンク・グループKlymaxxの代表作『Meeting In The Ladies Room』(1984年)です。

既に紹介済みのアルバムだと思い込んでいましたが、メンバーBernadette Cooperのソロ・アルバム『Drama According to Bernadette Cooper』(1990年)を取り上げてようとして、本作が未紹介であることに気づき、取り上げました。

Klymaxxは1979年にL.A.で結成された女性ファンク・グループ。メンバーはBernadette Cooper(ds、vo)、Joyce "Fenderella" Irby(b、vo)、Lorena Porter Shelby(vo)、Lynn Malsby(key)、Robbin Grider(syn、g)、Cheryl Cooley(g、vo)という6名。

1981年にデビュー・アルバム『Never Underestimate the Power of a Woman』をリリース。

1984年に全米チャート第5位となった大ヒット・シングル「I Miss You」を含む3rdアルバム『Meeting In The Ladies Room』でブレイク。

続く4thアルバム『Klymaxx 』(1986年)からも「Man Size Love」「I'd Still Say Yes」といったヒットが生まれますが、メンバーのうち、Bernadette CooperJoyce "Fenderella" IrbyLynn Malsbyの3名が脱退してしまいます。

その後、残りのメンバーで5thアルバム『The Maxx Is Back』(1990年)をリリースしてグループは解散。1994年にリユニオン・アルバム『One Day』をリリースしています。

さて、本作『Meeting In The Ladies Room』(1984年)といえば、まずはグループ最大のヒット曲「I Miss You」ですね。

個人的にも思い出深い1曲です。当時20歳、この曲を聴いた瞬間、大学時代の懐かしい光景が目に浮かんできます。当時の僕のは「I Miss You」とForce M.D.'s「Tender Love」の2曲が1セットでよく聴いていた記憶があります。

ただし、「I Miss You」のイメージのみで聴くと、『Meeting In The Ladies Room』というアルバムを的確に捉えることはできません。ミネアポリス・ファンク等の影響を受けたフィーメール・エレクトリック・ファンクというのがアルバムの基本です。

Jam & Lewis(Jimmy Jam/Terry Lewis)LakesideStephen ShockleyMidnight StarBo WatsonCalloway兄弟(Vincent Calloway/Reggie Calloway)等のプロデューサー陣の顔ぶれを見れば、本作がファンク作品であることが分かると思います。また、外部プロデューサー頼みではなく、グループのセルフ・プロデュースも織り交ぜているあたりに彼女達のプライドを感じます。

「I Miss You」以外であれば、Calloway兄弟によるMidnight Star的エレクトリック・ファンクの「Meeting In The Ladies Room」「Love Bandit」、Jam & Lewisが手掛けた「Lock And Key」、ミネアポリス・ファンク的な「I Betcha」あたりがおススメです。

「I Miss You」は名曲ですが、それ以外のエレクトリック・ファンクも含めて楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「The Men All Pause」
Stephen Shockley/Bernadette Cooper/Fenderellaプロデュース。アルバムからの1stシングル。全米R&Bチャート第5位のヒットとなりました。リード・ヴォーカルはBernadette Cooper/Fenderella。セクシー・モードのファンク・チューン。このあたりの打ち込みサウンドは好き/嫌いが分かれるかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=34QVPwRLRKU

Crooked Path「Hatas All Pause」、Kurupt feat. Nate Dogg & Roscoe「Girls All Pause」等のサンプリング・ソースとなっています。
Crooked Path「Hatas All Pause」
 https://www.youtube.com/watch?v=ZFSD_4hYY8s
Kurupt feat. Nate Dogg & Roscoe「Girls All Pause」
 https://www.youtube.com/watch?v=DXMoAsqOPAY

「Lock And Key」
Jimmy Jam & Terry Lewis//Bernadette Cooperプロデュース。アルバムからの3rdシングルにもなりました。リード・ヴォーカルはLorena。初期Jam & Lewisの仕事ぶりを楽しめるダンサブルなファンク・チューンに仕上がっています。後のJanet Jackson作品等を予感させます。
https://www.youtube.com/watch?v=S9B1IMVKGY8

「I Miss You」
Klymaxxプロデュース。アルバムからの4thシングル。前述のように全米チャート第5位、同R&Bチャート第11位の大ヒットとなったグループの代表曲。リード・ヴォーカルはFenderella。切ない恋心はピュアに歌い上げるラブソングは、いつ聴いても胸に込み上げてくるエヴァーグリーンな魅力があります。あの頃、僕は若かった(笑)。Julia Waters、Maxine Waters、Oren WatersというThe Watersの面々がバック・コーラスを務めています。Boyz II Men等がカヴァーしています。
https://www.youtube.com/watch?v=gvlhHJNppQg

「Just Our Luck」
Barry DeVorzon/Joseph Conlanプロデュース。リード・ヴォーカルはFenderella。シンセポップ調のミディアム・グルーヴ。ミネアポリス・ファンクをシンセポップに昇華させたような感じですかね。

「Meeting In The Ladies Room」
Bo Watson/Vincent Calloway/Reggie Callowayプロデュース。タイトル曲はアルバムからの2ndシングル。全米R&Bチャート第4位のヒットとなりました。リード・ヴォーカルはLorena。Calloway兄弟らによるMidnight Star的なエレクトリック・ファンクを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=_odTlZaoLCA

「Video Kid」
Joyce "Fenderella" Irbyプロデュース。タイトルから想像できるようにビデオゲームをモチーフにしたポップ・ダンス調の仕上がり。リード・ヴォーカルはFenderella/Lorena。
https://www.youtube.com/watch?v=Ml7bQq3SRhQ

「Ask Me No Questions」
Klymaxxプロデュース。リード・ヴォーカルはLorena。女性グループらしい正統派バラードですが少しインパクトが弱いかも?
https://www.youtube.com/watch?v=1kIBj0Qr7Ms

「Love Bandit」
Bo Watson/Vincent Calloway/Reggie Callowayプロデュース。リード・ヴォーカルはLorena。再びCalloway兄弟らによるMidnight Star的なエレクトリック・ファンク。ブラコン好きの人であれば気に入る1曲に仕上がっていると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=13lKNTFbCVY

「I Betcha」
Joyce "Fenderella" Irbyプロデュース。リード・ヴォーカルはLorena。ラストはミネアポリス・ファンク的なダンサブル・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=uXfZ3-reenw

Klymaxxの他作品もチェックを!

『Girls Will Be Girls』(1982年)
Girls Will Be Girls

『Klymaxx 』(1986年)
Same

『The Maxx Is Back』(1990年)

klymaxx the maxx is back.jpg


『One Day』(1994年)
One Day
posted by ez at 10:50| Comment(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月12日

Judy Mowatt『Look At Love』

Sly & Robbieプロデュース!☆Judy Mowatt『Look At Love』
judy mowatt look at love.jpg
発表年:1991年
ez的ジャンル:フィメール・レゲエ
気分は... :モドリッチ&ラキティッチ最高!

W杯は間もなく準決勝の残り1試合「イングランド対クロアチア」。
個人的にはモドリッチ&ラキティッチのクロアチアを応援したいですが、決勝戦を考えると「フランス対イングランド」が観たい気も・・・

今回はレゲエ界の最高峰女性シンガーJudy Mowattが1991年にリリースした『Look At Love』です。

Bob Marley & The Wailersのバック・コーラス・グループI Threesのメンバーでもあった女性シンガーJudy Mowattの紹介は、代表作『Black Woman』(1979年)に続き2回目となります。

本作はプロデュースは最強リズム・セクションSly & Robbie(Sly Dunbar/Robbie Shakespeare)をプロデューサーに起用し、円熟味を増したJudyのヴォーカルを満喫できます。

プロデュースは最強リズム・セクションSly & Robbie(Sly Dunbar/Robbie Shakespeare)Michael 'Home T' Bennett(Mikey Bennett)

レコーディングにはSly Dunbar(ds、per)、Robbie Shakespeare(b)、Danny Browne(g)、Stephen Cat Coore(g)、Handel Tucker(key)、Robbie Lyn(key)、Tyrone Downie(key)、Bongo Herman(per)、Sticky(per)、Dean Frazer(sax)、Brian & Tony Gold(back vo)、Marcia Griffiths(back vo)、Yeshemabeth McGregor (back vo)等がレコーディングに参加しています。

南アフリカのレゲエ・バンドO'yabaのカヴァー2曲、Judyも参加していたBob Marley & The Wailersのシングル「Jah Live」のカヴァー、Young Rascalsの大ヒット曲のグラウンド・ビート・カヴァー「Groovin'」、UB 40のカヴァー「Watchdogs」あたりが目立つかもしれません。

個人的には「Candle In The Window」「Skin Of My Skin」「Day By Day」というオリジナルの素敵なラヴァーズ3曲がおススメです。

現在は廃盤ですが、中古盤がありますのでぜひお探しください。

全曲紹介しときやす。

「Fly African Eagle」
Tshidiso Alexis Fako/Oupa Mokwena作。南アフリカのレゲエ・バンドO'yabaの楽曲。O'yabaヴァージョンはアルバム『The Game Is Not Over』(1992年)に「Fly Away」のタイトルで収録されています。当時は南アフリカのアパルトヘイト政策が撤廃され、新たな時代の到来への期待が膨らんでいた時期であり、開放的なレゲエ・グルーヴに乗ってJudyがアフリカの同志に呼びかけます。
https://www.youtube.com/watch?v=_J94YHYOh40

「Watchdogs」
UKの人気レゲエ・バンドUB 40のカヴァー。オリジナルはアルバム『Rat In The Kitchen』(1986年)に収録されています。オリジナルの雰囲気を活かしつつ、フィメール・レゲエらしい艶やかな雰囲気で聴かせてくれます。

「Groovin'」
Young Rascalsの大ヒット曲をカヴァー(Felix Cavaliere/Eddie Brigati作)。当時はMaxi PriestAswad等のレゲエ・アーティストによるグラウンド・ビートが流行でしたが、本曲もそんな流れを汲む仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=Scaf27Eppno

「Guilty」
Michael 'Home T' Bennett作。少しダビー・テイストの哀愁レゲエ。当時のレゲエ・プロダクションらしいサウンドを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=zuyPf2MgF0s

「Candle In The Window」
Hopeton Lindo/Michael 'Home T' Bennett作。サマー・モードにフィットする素敵なラヴァーズです。個人的にも一番のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=k_9h5YP5qZg

「Jah Live」
Bob Marley & The Wailers、1975年のシングルをカヴァー。I Threesの同僚であったMarcia Griffithsらのバック・コーラスを従えて、亡きMarleの名曲を堂々と歌い上げ、その遺志を受け継いでいます。

「Tomorrow Nation」
Tshidiso Alexis Fako/Oupa Mokwena作。南アフリカのレゲエ・バンドO'Yabaのカヴァー。オリジナルは ‎アルバム『Caught Up』(1991年)に収録されています。軽快なリズムと共にポジティブなヴァイヴに溢れた1曲に仕上がっています。

「Skin Of My Skin」
Judy Mowatt作。「Candle In The Window」と並ぶお気に入り。メロウ・フィーリングの素敵なラヴァーズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=X2ur0CIOmh8

「Look At Love」
Owen Iblaka Ellis作。タイトル曲は90年代前半らしいレゲエ・グルーヴです。哀愁モードの疾走感が印象的です。

「Lioness In The Jungle」
Judy Mowatt/Owen Iblaka Ellis作。ナイヤビンギ調のパーカッシヴ・グルーヴが印象です。

「Day By Day」
Danny Browne/Judy Mowatt作。このキュートなラヴァーズも大好き!Ariwaラヴァーズが好きな人もきっと気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=vg3xmV8I7Q8

「Warrior Queen」
Michael 'Home T' Bennett/Vyris Edghill作。静かなる闘志を堂々と歌い上げるR&B調バラード。Judyのシンガーとしての成熟を感じる仕上がりです。

「Never Get Weary」
トラディショナル。ラストはSly & Robbieらしいグルーヴをバックに、Judyが生き生きとしたヴォーカルを披露してくれます。

Judy Mowattの他作品もチェックを!

『Black Woman』(1979年)
ブラック・ウーマン

『Only A Woman』(1982年)
Only a Woman By Judy Mowatt (2002-05-06)

『Working Wonders』(1985年)
Working Wonders
posted by ez at 02:04| Comment(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月10日

Pierre Maizeroi『Salsa』

フレンチ・カリビアンなキラー・チューン「Leve Leve」収録☆Pierre Maizeroi『Salsa』
サルサ
発表年:1979年
ez的ジャンル:マルティニーク系フレンチ・カリビアン
気分は... :フランス対ベルギー

明日はW杯準決勝「フランス対ベルギー」。
事実上の決勝戦かもしれませんね。

当初はフランス有利と思っていましたが、ブラジルとの戦いぶりを見て、ベルギーが日本戦を教訓に真の強さを持った気がします。

今回は再評価の高いフレンチ・カリビアン作品Pierre Maizeroi『Salsa』(1979年)です。

フランス海外県の1つ、カリブ海西インド諸島のマルティニーク出身のシンガー・ソングライターPierre Maizeroiの紹介は、『Pierre Maizeroi』(1983年)に続き2回目となります。

1stアルバムとなる本作『Salsa』(1979年)は、フレンチ・カリビアン・サンバなキラー・チューン「Leve Leve」が収録されていることで人気の高い1枚です。

Pierre Maizeroi(vo、per)以下、Mohaoe Meniri(g)、Victor Dexal(banjo、tambora)、Olivier Masselot(el-p、syn)、Morado Meniri(b)、Hocine Meniri (ds、timbales)、Dje Meniri(timbales)がレコーディングに参加しています。

キラー・チューン「Leve Leve」以外にも、バカンス・モードのカリビアン・グルーヴがズラリと並びます。特にメロウ&トライバルな感じが僕好みです。

全7曲30分足らずのアルバムですが、十分満足できる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Leve Leve」
本作のキラー・チューン。ガット・ギターの音色が心地好いフレンチ・カリビアン・サンバが夏モードへ誘ってくれます。メロウ・エレピもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=K7r12E9TzIM

「Mi Bagail」
ラテン好きの人は気に入るであろうカリビアン・モードのチャ・チャ・チャ。シンセの音色がいいアクセントになっています。

「Foyal」
ティンバレスが主役のパーカッシヴなインスト。トライバル好きの人向き。

「Tiembe Reid」
開放的なメロウ・カリビアン・サウンドが心地好いです。軽快なリズムと開放的なヴォーカルがバカンス気分に浸らせてくれます。

「Bo Canal」
メロウなカリビアン・グルーヴを楽しめます。演奏全体のヴィヴィッドな感じがいいですね。

「Soso」
ワールド・ミュージック好きの人は気に入りそうなカリプソ調の仕上がり。

「Madinina」
ラストは覚醒的なトライバル・グルーヴのインスト。ガラージ好きの人なんかも気に入りそうな1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=pYv3Q62UeJU

未聴の方は『Pierre Maizeroi』(1983年)もチェックを!

『Pierre Maizeroi』(1983年)
ピエール・マイゼロワ
posted by ez at 02:16| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月09日

特別企画:『Jazz The New Chapter 5』が発売になりました・・・

話題の"今ジャズ"ムック本の第5弾『Jazz The New Chapter 5』が先月発売されました。

発売直後に購入したのですが、気分がW杯モードで未読のまま家の本棚に放置していました。W杯が終盤に入り、ようやく『Jazz The New Chapter 5』にちゃんと目を通すことができました。

『Jazz The New Chapter 5』
Jazz The New Chapter 5 (シンコー・ミュージックMOOK)

『Jazz The New Chapter』(上段左)
『Jazz The New Chapter 2』(上段右)
『Jazz The New Chapter 3』(下段左)
『Jazz The New Chapter 4』(下段右)
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK)
Jazz The New Chapter 3 (シンコー・ミュージックMOOK)Jazz The New Chapter 4 (シンコー・ミュージックMOOK)

当ブログでは、これまで3回、『Jazz The New Chapter』絡みの記事をエントリーしています。

2014年9月30日
 『Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間のおわりに』
2015年9月16日
 特別企画:『Jazz The New Chapter 3』が発売になりました・・・
2017年3月30日
 特別企画:『Jazz The New Chapter 4』掲載ディスクのご紹介

特に、2014年9月に"Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間"と称して、『Jazz The New Chapter』および『Jazz The New Chapter 2』の掲載ディスクを集中的に紹介し、そのまとめ的な記事『Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間のおわりに』は、大きな反響をいただきました。

そんな流れで、『Jazz The New Chapter 5』についても触れておきたいと思います。

以前にも書きましたが、僕自身はJazz The New Chapter(JTNC)の熱狂的な信奉者というわけではなく、手放しでこのムック本の内容を支持しているわけではありません。特に『Jazz The New Chapter 3』あたりから、音楽シーンの新しい動きを無理矢理"JTNC"という枠に押し込めようとする窮屈さを感じ、批判的な視点も含めてスクエアなスタンスでJTNCを眺めるようにしています。

その意味で今回の『Jazz The New Chapter 5』は、"JTNC"という枠組みの押し付けは目立たず、注目の"今ジャズ"ミュージシャンのインタビュー中心の構成が好感持てました。評論家が不用意な主張をするよりも、重要ミュージシャンの生の声を届けてくれる方が、読者が時代の流れを的確に感じることができると思います。

個人的には、Shabaka HutchingsをはじめとするUKジャズが大きく取り上げられることを期待していたのですが、その部分は完全に肩透かしでした(UKジャズに関する記事も僅かながらありましたが)。

まぁ、僕のようなニーズの人間は『Jazz The New Chapter 5』ではなく、『別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲』を購入すればいいのでしょうが(笑)

『別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲』
別冊ele-king カマシ・ワシントン / UKジャズの逆襲 (ele-king books)


◆『Jazz The New Chapter 5』掲載ディスクの紹介

『Jazz The New Chapter 5』でセレクトされた120作品から、当ブログでもエントリー済みの作品を紹介したいと思います。

Thundercat『Drunk』(2017年)
Drunk [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]  (BRC542)
「Friend Zone」
https://www.youtube.com/watch?v=FqE_H1A-8B4

Moonchild『Voyager』(2017年)
Voyager [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC549)
「Cure」
https://www.youtube.com/watch?v=Ic1rvQ44gFc

Terrace Martin Presents The Pollyseeds『Sounds Of Crenshaw Vol. 1』(2017年)
Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]
「Funny How Time Flies」
https://www.youtube.com/watch?v=C0pVmsrg814

Christian Scott aTunde Adjuah『The Emancipation Procrastination』(2017年)
The Emancipation Procrastination
「Videotape」
https://www.youtube.com/watch?v=7-9-E0SOfMI

Chris Dave And The Drumhedz『Chris Dave And The Drumhedz』(2018年)
クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ
「Destiny N Stereo」
https://www.youtube.com/watch?v=PSyB5rtMgSs

Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile
「My Queen is Harriet Tubman」
https://www.youtube.com/watch?v=twjaSC5Ym9s

Mabuta『Welcome To This World』(2018年)
Welcome To This World [Daedelusによるリミックス音源のダウンロードコードつき]
「Welcome To This World」
https://www.youtube.com/watch?v=Zd8vWwi8Q1g ※スタジオ・セッション

R+R=Now『Collagically Speaking』(2018年)
コラージカリー・スピーキング
「Change Of Tone」
https://www.youtube.com/watch?v=GUDTso9yZ64

Kamasi Washington『Heaven And Earth』(2018年)
HEAVEN & EARTH
「Street Fighter Mas」
https://www.youtube.com/watch?v=LdyabrdFMC8


◆独断でセレクト!裏『Jazz The New Chapter 5』作品

『Jazz The New Chapter 5』から離れますが、今回本当に書きたかった部分はココから(笑)。

当ブログで紹介した作品で『Jazz The New Chapter 5』のセレクトから漏れたものの、個人的に"コレこそJTNCじゃねぇ"と思うディスクを独断で裏『Jazz The New Chapter 5』としてセレクトしました。
※『Jazz The New Chapter 4』発売以降のエントリーに限定しています。

Richard Spaven『The Self』(2017年)
ザ・セルフ
「The Self」(feat. Jordan Rakei)
https://www.youtube.com/watch?v=YattHO96UzI
『ezが選ぶ2017年の10枚』にもセレクトした現行ジャズとクラブジャズを行き来するUKの敏腕ドラマーの意欲作。これまでJTNCでも注目してきたミュージシャンであるにも関わらず、『Jazz The New Chapter 5』では完全にスルーされていましたね。何故だろう?

Dwight Trible With Matthew Halsall『Inspirations』(2017年)
インスピレーションズ(with マシュー・ハルソール)
「Tryin' Times」
https://www.youtube.com/watch?v=KSbSTH3Ly3U
Build An ArkThe Life Force TrioといったL.A.ジャズ作品でお馴染みのUS黒人男性ジャズ・シンガーDwight TribleがUKジャズ・トランぺッターMatthew Halsallと共演したアルバム。Matthew HalsallはGoGo Penguinの1st、2ndアルバムをリリースしたインディペンデント・レーベルGondwana Recordsの主宰者でもあります。この2人の顔合わせというだけでも十分にJTNCですよね。

30/70『Elevate』(2017年)
エレヴェイト
「Nu Spring」
https://www.youtube.com/watch?v=R0TZN_YQAZ0
Hiatus KaiyoteJordan RakeiがJTNCならば、このオージー・ソウル・コレクティヴも十分JTNCだと思います。音を聴けば、前述の2アーティスト以上に"今ジャズ"らしさがあるのが分かると思います。

The Breathing Effect『The Fisherman Abides』(2017年)
The Fisherman Abides (ザ・フィッシャーマン・アバイズ)
「Water Static (Blinding Phoenix)」
https://www.youtube.com/watch?v=WP0W01Rlgc4
前作『Mars Is a Very Bad Place for Love』(2015年)は『Jazz The New Chapter 4』でセレクトされていましたが、最新作である本作は選外に・・・。こういうのこそ進化形ジャズだと思いますが!!!

Aron Ottignon『Team Aquatic』(2017年)
Team Aquatic
「Waves」
https://www.youtube.com/watch?v=ulX0sA6fxRM
実力派ジャズ・ピアニストAndrew Hillの手ほどきを受けたこともあるニュージーランド出身ジャズ・ピアニストのデビュー作。スティール・パン、プログラミング&エレクトロニクスを駆使した独自の今ジャズを満喫できます。

Zara McFarlane『Arise』(2017年)
Arise [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRBW162)
「Pride」
https://www.youtube.com/watch?v=qGSe9eF1WtQ
UKジャマイカンの女性ジャズ・シンガーの最新作。Moses Boydプロデュース、Shabaka Hutchings参加という点も含めて、UKジャズの今を知るうえで欠かせない1枚だと思いますが・・・

Mike Lebrun『Shades』(2017年)
シェイズ
「Click 'n' Slap」
https://www.youtube.com/watch?v=L_daPLOmwN8
L.A.を拠点とするマルチリード奏者の初の単独アルバム。Moonchildの紅一点ヴォーカリストAmber Navranもフィーチャリングされています。

Blue Lab Beats『Xover』(2018年)
クロスオーヴァー
「Blue Skies」
https://www.youtube.com/watch?v=xsTp_29XkW8
南ロンドンを拠点とするUKジャズ新世代ミュージシャンが大挙して参加した期待のUKビートメイキング・デュオのデビュー作。"ロンドン新世代からUS今ジャズへの返答"とでも呼びたくなる1枚です。

Joe Armon-Jones『Starting Today』(2018年)
Starting Today [帯解説 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC572)
「Starting Today」
https://www.youtube.com/watch?v=mdz9jHg-mWM
南ロンドンの注目アフロ・ジャズ・ファンク・バンドEzra Collectiveのキーボード奏者の初ソロ・アルバム。南ロンドン新世代ジャズの魅力を余すことなく伝えてくれる1枚だと思います。

結局、UKジャズをはじめとするUSジャズ以外の作品が殆どです。今が旬のUKジャズをどのように捉えるのか?ですかね。

個人的にはShabaka And The AncestorsのメンバーやUSトランぺッターTheo Crokerも参加したNicola Conte & Spiritual Galaxy『Let Your Light Shine On』(2018年)あたりももJTNC的だと思います。ただし、JTNCでは一貫して無視されているNicola Conteに対しては先入観で拒否反応する人がいるかもしれないので、ひとまず裏『Jazz The New Chapter 5』作品のリストからは外しておきました。しかしながら、先入観なしにぜひチェックして欲しいですね。

まぁ、あれこれ書きましたが、『Jazz The New Chapter 5』は進化形ジャズやブラック・ミュージックに興味がある方ならば、一読の価値がある面白いムック本だと思います。
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2018年07月08日

Kamasi Washington『Heaven And Earth』

益々スケール・アップしたL.A.スピリチュアル・ジャズ☆Kamasi Washington『Heaven And Earth』
HEAVEN & EARTH
発表年:2018年
ez的ジャンル:L.A.スピリチュアル・ジャズ
気分は... :イングランド4強入り!

サッカーW杯はイングランドがスウェーデンに勝利し、4強入り。
気づけば有力な優勝候補に浮上といった感じですね。
フランス、ベルギーのような魅力には欠けますが、隙のない強さがありますね。

ベルギー対イングランドのグループG同士の決勝というのもあり得るのでは?

L.A.ジャズを牽引する、今最も旬なジャズ・サックス奏者Kamasi Washingtonの最新作『Heaven And Earth』です。

1981年L.A.生まれのジャズ・サックス奏者Kamasi Washingtonの紹介は、Flying LotusBrainfeederからリリースされ、各方面から絶賛されたCD3枚組超大作『The Epic』(2015年)、UKの人気レーベルYoung Turksからリリースされたミニ・アルバム『Harmony Of Difference』(2017年)に続き、3回目となります。

『The Epic』(2015年)以来の待望のフル・アルバム『Heaven And Earth』は、CD3枚組『The Epic』に続く、CD2枚組、約2時間半の大作です(後述する隠しCDのDisc3を含めると3時間以上)。

※7/9追記
僕が購入したのは輸入盤ですが、昨日のエントリー後、本編2枚以外に隠しCDとしてDisc3があることに気づきました。Amazonのレビューを読み、隠れCDの存在に初めて気づき、改めて自分の保有CDのジャケを手触りで確認したところ、非常に分かりづらいところに隠されていました。カッター等で自分でジャケに切り込みを入れないと取り出すことができません。取り出す際にはジャケに大きなダメージを与えないようにご注意を!


アルバムはタイトルの通り、Disc1が『Earth』、Disc2が『Heaven』という二部構成になっており、前者がKamasiが外向きに見る世界、すなわちKamasiが存在する世界、後者がKamasiが内向きに見る世界、すなわちKamasiの内面に存在する世界を表しているとのこと。言い換えると、『Earth』は現実に向き合う自分、『Heaven』はイマジネーションの世界の自分という人間の二面性がアルバムのコンセプトとなっているようです。

ちなみに隠しCDのDisc3には『The Choice』というタイトルが冠されています。

レコーディングにはKamasi Washington(ts)以下、Thundercat(b)、Ronald Bruner Jr.(ds)、Cameron Graves(p)、Miles Mosley (b)、Tony Austin(ds)、Brandon Coleman(key、org、vocoder)、Ryan Porter(tb)、Patrice Quinn(vo)といったKamasiの仲間的メンバーをはじめ、Terrace Martin(as)、Dwight Trible(vo)、Dontae Winslow(tp)、Robert Miller(ds)、Kahlil Cummings(per)、Allakoi Peete(per)、Gabe Noel(b)、Jonathan Pinson(ds)、Jamael Dean(p)、Robert "Sput" Searight(ds)、Carlitos Del Puerto(b)等のミュージシャンが参加しています。

相変わらずスケールの大きなL.A.スピリチュアル・ジャズ・ワールドが展開されます。

オーケストレーション、クワイアを交えた一大音楽絵巻のような壮大な音世界に圧倒されます。特に重厚なクワイアを巧みに用いた演奏の感動度合いが大きいですね。

普段ジャズを聴かない人にもぜひ聴いて欲しい、ジャンルの壁を超越した感動的なジャズ作品です。

益々スケール・アップしたカマシ・ワールドを存分に堪能しましょう!

全曲紹介しときやす(隠れCDのDisc3含む)。

《Disc 1 :Earth》

「Fists of Fury」
オープニングはブルース・リー主演の映画『ドラゴン 怒りの鉄拳(Fists of Fury)』(1972年)のテーマ曲をカヴァー(Joseph Koo/James Wong作)。Kamasiが同作のファンであり、以前からライブ・レパートリーであった楽曲です。EarthのテーマであるKamasiが存在する世界の象徴が映画『Fists of Fury』なのかもしれませんね。Patrice QuinnとDwight Tribleがリード・ヴォーカルをとり、Kamasiらしいスケールの大きなL.A.スピリチュアル・ジャズに仕上げています。ブルース・リーの魂が宿ったようなKamasiのブロウも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=052G6nMA2WA

「Can You Hear Him」
Kamasi Washington作。美しいオーケストレーション&クワイア&ホーン・アンサンブルと共に疾走しますが、途中Brandon Colemanのシンセが入ると演奏全体が一気にコズミックな雰囲気に・・・Ronald Bruner Jr.とTony Austinによるパワフルなツイン・ドラムも効果抜群です。

「Hub-Tones」
名トランぺッターFreddie Hubbardの名曲をカヴァー。オリジナルは『Hub Tones』(1962年)に収録されています。ホーン・アンサンブルはオリジナルの雰囲気を残しつつ、パーカッシヴに疾走するのがKamasiらしいカヴァーなのでは?Dontae WinslowとKamasiが素晴らしいソロでキメてくれます。それに続くドラム・ソロもエキサイティング!

「Connections」
Kamasi Washington作。オーケストレーションをバックにした重厚なクワイアと、Kamasiらの少し抑えたトーンの穏やかな演奏とのコントラストが印象的です。

「Tiffakonkae」
Kamasi Washington作。Terrace Martin参加曲。派手さはありませんが、スケールの大きなアンサンブルを楽しめます。

「The Invincible Youth」
Kamasi Washington作。Thundercat参加曲。カオスのようなイントロに続き、リラックスした穏やかな演奏を聴かせてくれます。中盤以降はThundercatのエレクトリック・ベースを存分に楽しめます。

「Testify」
Patrice Quinn/Kamasi Washington作。Patrice Quinnの女性ヴォーカルをフィーチャーしたメロディアス&ピースフルな1曲に仕上がっています。

「One of One」
Kamasi Washington作。激動のドラマを見ているような感覚になる、重厚なクワイアと共に疾走するドラマチックなアンサンブルでEarthを締め括ってくれます。

《Disc 2 :Heaven》

「The Space Traveler's Lullaby」
Kamasi Washington作。美しいオーケストレーションと共にHeavenが幕を開けます。オーケストレーション&クワイアによる感動的な音世界の中をKamasiのサックスが旅しているかのような演奏です。

「Vi Lua Vi Sol」
Kamasi Washington作。Brandon Colemanのヴォコーダーとトライバル・リズムが織り成すコズミック&スピリチュアルな雰囲気がいいですね。また、Ryan Porterのトロンボーンも印象的です。

「Street Fighter Mas」
Kamasi Washington作。Kamasiの人気ゲーム『ストリートファイター』好きが反映されたタイトルです。MVもKamasiが『ストリートファイター』王者決定戦に挑むストーリーとなっています。そんな関係でゲーム・サウンド的なエッセンスも散りばめられています。ビートミュージック的なミニマル・リズムとスピリチュアルな雰囲気の融合がL.A.ジャズらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=LdyabrdFMC8

「Songs for the Fallen」
Kamasi Washington作。Thundercat参加曲。1曲の中にドラマがあるKamasiらしい感動的なスピリチュアル・ジャズに仕上がっています。

「Journey」
Patrice Quinn/Kamasi Washington作。Patrice Quinnのヴォーカルをフィーチャー。Patrice Quinnの♪ハレルヤ♪というフレーズとBrandon Colemanのオルガン・プレイが印象的です。

「The Psalmist」
Kamasiも含めて本作と参加メンバーがほぼ同じの最新作『The Optimist』が好評のRyan Porterの作品。躍動するリズム隊をバックに、作者Ryan Porter、Kamasiが軽やかなソロを聴かせてくれます。

Ryan Porter『The Optimist』
The Optimist (ジ・オプティミスト)

「Show Us the Way」
Kamasi Washington作。心の視界が開けたような迷いのない演奏を楽しめます。Cameron Gravesの小粋なピアノ・ソロに続き、Kamasiがエモーショナルなソロで解き放たれます。

「Will You Sing」
Kamasi Washington作。ラストは神のお告げのようなクワイアを聴くことができる壮大なスピリチュアル・ジャズで感動的に締め括ってくれます。

※7/9追記 隠しCDのDisc3についてもコメントしました

《Disc 3 :The Choice》

「The Secret Of Jinsinson」
本編の流れを受け継いだ重厚なクワイアを従えた壮大なスケールのL.A.ジャズを満喫できます。

「Will You Love Me Tomorrow」
The Shirells、1960年USチャートNo.1の大ヒット曲をカヴァー(Gerry Goffin/Carole King作)。Patrice Quinnのヴォーカルをフィーチャーした深淵な味わいの素敵なバラードに仕上がっています。

「My Family」
ジェントル・ムードに包まれたリラックスした演奏が印象的です。正にファミリー・モードのジェントル・ジャズ!

「Agents Of Multiverse」
今ジャズ・ドラマーのトップ・ランナーChris Daveとの共演。余分なものを全て排したKamasiのサックスとChris Daveのドラムのコラボを楽しみましょう。

「Ooh Child」
The Five Stairstepsのカヴァー(Stan Vincent作)。フリーソウル人気曲でもあるValerie Carterヴァージョンが人気ですね。Valerieヴァージョンは当ブログでも紹介した『Just A Stone's Throw Away』(1977年)に収録されています。Matachi Nwosu、 Steven Wayneのヴォーカルをフィーチャーしたスピリチュアルな「Ooh Child」が異彩を放ちます。


Kamasi Washingtonの他作品もチェックを!

Young Jazz Giants『Young Jazz Giants』(2004年)
Young Jazz Giants

『The Proclamation』(2007年)
ザ・プロクラメイション

『The Epic』(2015年)
The Epic

『Harmony Of Difference』(2017年)
Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)
posted by ez at 01:48| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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