2018年07月08日

Kamasi Washington『Heaven And Earth』

益々スケール・アップしたL.A.スピリチュアル・ジャズ☆Kamasi Washington『Heaven And Earth』
HEAVEN & EARTH
発表年:2018年
ez的ジャンル:L.A.スピリチュアル・ジャズ
気分は... :イングランド4強入り!

サッカーW杯はイングランドがスウェーデンに勝利し、4強入り。
気づけば有力な優勝候補に浮上といった感じですね。
フランス、ベルギーのような魅力には欠けますが、隙のない強さがありますね。

ベルギー対イングランドのグループG同士の決勝というのもあり得るのでは?

L.A.ジャズを牽引する、今最も旬なジャズ・サックス奏者Kamasi Washingtonの最新作『Heaven And Earth』です。

1981年L.A.生まれのジャズ・サックス奏者Kamasi Washingtonの紹介は、Flying LotusBrainfeederからリリースされ、各方面から絶賛されたCD3枚組超大作『The Epic』(2015年)、UKの人気レーベルYoung Turksからリリースされたミニ・アルバム『Harmony Of Difference』(2017年)に続き、3回目となります。

『The Epic』(2015年)以来の待望のフル・アルバム『Heaven And Earth』は、CD3枚組『The Epic』に続く、CD2枚組、約2時間半の大作です(後述する隠しCDのDisc3を含めると3時間以上)。

※7/9追記
僕が購入したのは輸入盤ですが、昨日のエントリー後、本編2枚以外に隠しCDとしてDisc3があることに気づきました。Amazonのレビューを読み、隠れCDの存在に初めて気づき、改めて自分の保有CDのジャケを手触りで確認したところ、非常に分かりづらいところに隠されていました。カッター等で自分でジャケに切り込みを入れないと取り出すことができません。取り出す際にはジャケに大きなダメージを与えないようにご注意を!


アルバムはタイトルの通り、Disc1が『Earth』、Disc2が『Heaven』という二部構成になっており、前者がKamasiが外向きに見る世界、すなわちKamasiが存在する世界、後者がKamasiが内向きに見る世界、すなわちKamasiの内面に存在する世界を表しているとのこと。言い換えると、『Earth』は現実に向き合う自分、『Heaven』はイマジネーションの世界の自分という人間の二面性がアルバムのコンセプトとなっているようです。

ちなみに隠しCDのDisc3には『The Choice』というタイトルが冠されています。

レコーディングにはKamasi Washington(ts)以下、Thundercat(b)、Ronald Bruner Jr.(ds)、Cameron Graves(p)、Miles Mosley (b)、Tony Austin(ds)、Brandon Coleman(key、org、vocoder)、Ryan Porter(tb)、Patrice Quinn(vo)といったKamasiの仲間的メンバーをはじめ、Terrace Martin(as)、Dwight Trible(vo)、Dontae Winslow(tp)、Robert Miller(ds)、Kahlil Cummings(per)、Allakoi Peete(per)、Gabe Noel(b)、Jonathan Pinson(ds)、Jamael Dean(p)、Robert "Sput" Searight(ds)、Carlitos Del Puerto(b)等のミュージシャンが参加しています。

相変わらずスケールの大きなL.A.スピリチュアル・ジャズ・ワールドが展開されます。

オーケストレーション、クワイアを交えた一大音楽絵巻のような壮大な音世界に圧倒されます。特に重厚なクワイアを巧みに用いた演奏の感動度合いが大きいですね。

普段ジャズを聴かない人にもぜひ聴いて欲しい、ジャンルの壁を超越した感動的なジャズ作品です。

益々スケール・アップしたカマシ・ワールドを存分に堪能しましょう!

全曲紹介しときやす(隠れCDのDisc3含む)。

《Disc 1 :Earth》

「Fists of Fury」
オープニングはブルース・リー主演の映画『ドラゴン 怒りの鉄拳(Fists of Fury)』(1972年)のテーマ曲をカヴァー(Joseph Koo/James Wong作)。Kamasiが同作のファンであり、以前からライブ・レパートリーであった楽曲です。EarthのテーマであるKamasiが存在する世界の象徴が映画『Fists of Fury』なのかもしれませんね。Patrice QuinnとDwight Tribleがリード・ヴォーカルをとり、Kamasiらしいスケールの大きなL.A.スピリチュアル・ジャズに仕上げています。ブルース・リーの魂が宿ったようなKamasiのブロウも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=052G6nMA2WA

「Can You Hear Him」
Kamasi Washington作。美しいオーケストレーション&クワイア&ホーン・アンサンブルと共に疾走しますが、途中Brandon Colemanのシンセが入ると演奏全体が一気にコズミックな雰囲気に・・・Ronald Bruner Jr.とTony Austinによるパワフルなツイン・ドラムも効果抜群です。

「Hub-Tones」
名トランぺッターFreddie Hubbardの名曲をカヴァー。オリジナルは『Hub Tones』(1962年)に収録されています。ホーン・アンサンブルはオリジナルの雰囲気を残しつつ、パーカッシヴに疾走するのがKamasiらしいカヴァーなのでは?Dontae WinslowとKamasiが素晴らしいソロでキメてくれます。それに続くドラム・ソロもエキサイティング!

「Connections」
Kamasi Washington作。オーケストレーションをバックにした重厚なクワイアと、Kamasiらの少し抑えたトーンの穏やかな演奏とのコントラストが印象的です。

「Tiffakonkae」
Kamasi Washington作。Terrace Martin参加曲。派手さはありませんが、スケールの大きなアンサンブルを楽しめます。

「The Invincible Youth」
Kamasi Washington作。Thundercat参加曲。カオスのようなイントロに続き、リラックスした穏やかな演奏を聴かせてくれます。中盤以降はThundercatのエレクトリック・ベースを存分に楽しめます。

「Testify」
Patrice Quinn/Kamasi Washington作。Patrice Quinnの女性ヴォーカルをフィーチャーしたメロディアス&ピースフルな1曲に仕上がっています。

「One of One」
Kamasi Washington作。激動のドラマを見ているような感覚になる、重厚なクワイアと共に疾走するドラマチックなアンサンブルでEarthを締め括ってくれます。

《Disc 2 :Heaven》

「The Space Traveler's Lullaby」
Kamasi Washington作。美しいオーケストレーションと共にHeavenが幕を開けます。オーケストレーション&クワイアによる感動的な音世界の中をKamasiのサックスが旅しているかのような演奏です。

「Vi Lua Vi Sol」
Kamasi Washington作。Brandon Colemanのヴォコーダーとトライバル・リズムが織り成すコズミック&スピリチュアルな雰囲気がいいですね。また、Ryan Porterのトロンボーンも印象的です。

「Street Fighter Mas」
Kamasi Washington作。Kamasiの人気ゲーム『ストリートファイター』好きが反映されたタイトルです。MVもKamasiが『ストリートファイター』王者決定戦に挑むストーリーとなっています。そんな関係でゲーム・サウンド的なエッセンスも散りばめられています。ビートミュージック的なミニマル・リズムとスピリチュアルな雰囲気の融合がL.A.ジャズらしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=LdyabrdFMC8

「Songs for the Fallen」
Kamasi Washington作。Thundercat参加曲。1曲の中にドラマがあるKamasiらしい感動的なスピリチュアル・ジャズに仕上がっています。

「Journey」
Patrice Quinn/Kamasi Washington作。Patrice Quinnのヴォーカルをフィーチャー。Patrice Quinnの♪ハレルヤ♪というフレーズとBrandon Colemanのオルガン・プレイが印象的です。

「The Psalmist」
Kamasiも含めて本作と参加メンバーがほぼ同じの最新作『The Optimist』が好評のRyan Porterの作品。躍動するリズム隊をバックに、作者Ryan Porter、Kamasiが軽やかなソロを聴かせてくれます。

Ryan Porter『The Optimist』
The Optimist (ジ・オプティミスト)

「Show Us the Way」
Kamasi Washington作。心の視界が開けたような迷いのない演奏を楽しめます。Cameron Gravesの小粋なピアノ・ソロに続き、Kamasiがエモーショナルなソロで解き放たれます。

「Will You Sing」
Kamasi Washington作。ラストは神のお告げのようなクワイアを聴くことができる壮大なスピリチュアル・ジャズで感動的に締め括ってくれます。

※7/9追記 隠しCDのDisc3についてもコメントしました

《Disc 3 :The Choice》

「The Secret Of Jinsinson」
本編の流れを受け継いだ重厚なクワイアを従えた壮大なスケールのL.A.ジャズを満喫できます。

「Will You Love Me Tomorrow」
The Shirells、1960年USチャートNo.1の大ヒット曲をカヴァー(Gerry Goffin/Carole King作)。Patrice Quinnのヴォーカルをフィーチャーした深淵な味わいの素敵なバラードに仕上がっています。

「My Family」
ジェントル・ムードに包まれたリラックスした演奏が印象的です。正にファミリー・モードのジェントル・ジャズ!

「Agents Of Multiverse」
今ジャズ・ドラマーのトップ・ランナーChris Daveとの共演。余分なものを全て排したKamasiのサックスとChris Daveのドラムのコラボを楽しみましょう。

「Ooh Child」
The Five Stairstepsのカヴァー(Stan Vincent作)。フリーソウル人気曲でもあるValerie Carterヴァージョンが人気ですね。Valerieヴァージョンは当ブログでも紹介した『Just A Stone's Throw Away』(1977年)に収録されています。Matachi Nwosu、 Steven Wayneのヴォーカルをフィーチャーしたスピリチュアルな「Ooh Child」が異彩を放ちます。


Kamasi Washingtonの他作品もチェックを!

Young Jazz Giants『Young Jazz Giants』(2004年)
Young Jazz Giants

『The Proclamation』(2007年)
ザ・プロクラメイション

『The Epic』(2015年)
The Epic

『Harmony Of Difference』(2017年)
Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)
posted by ez at 01:48| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする