2018年07月09日

特別企画:『Jazz The New Chapter 5』が発売になりました・・・

話題の"今ジャズ"ムック本の第5弾『Jazz The New Chapter 5』が先月発売されました。

発売直後に購入したのですが、気分がW杯モードで未読のまま家の本棚に放置していました。W杯が終盤に入り、ようやく『Jazz The New Chapter 5』にちゃんと目を通すことができました。

『Jazz The New Chapter 5』
Jazz The New Chapter 5 (シンコー・ミュージックMOOK)

『Jazz The New Chapter』(上段左)
『Jazz The New Chapter 2』(上段右)
『Jazz The New Chapter 3』(下段左)
『Jazz The New Chapter 4』(下段右)
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK)
Jazz The New Chapter 3 (シンコー・ミュージックMOOK)Jazz The New Chapter 4 (シンコー・ミュージックMOOK)

当ブログでは、これまで3回、『Jazz The New Chapter』絡みの記事をエントリーしています。

2014年9月30日
 『Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間のおわりに』
2015年9月16日
 特別企画:『Jazz The New Chapter 3』が発売になりました・・・
2017年3月30日
 特別企画:『Jazz The New Chapter 4』掲載ディスクのご紹介

特に、2014年9月に"Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間"と称して、『Jazz The New Chapter』および『Jazz The New Chapter 2』の掲載ディスクを集中的に紹介し、そのまとめ的な記事『Jazz The New Chapter(JTNC)強化月間のおわりに』は、大きな反響をいただきました。

そんな流れで、『Jazz The New Chapter 5』についても触れておきたいと思います。

以前にも書きましたが、僕自身はJazz The New Chapter(JTNC)の熱狂的な信奉者というわけではなく、手放しでこのムック本の内容を支持しているわけではありません。特に『Jazz The New Chapter 3』あたりから、音楽シーンの新しい動きを無理矢理"JTNC"という枠に押し込めようとする窮屈さを感じ、批判的な視点も含めてスクエアなスタンスでJTNCを眺めるようにしています。

その意味で今回の『Jazz The New Chapter 5』は、"JTNC"という枠組みの押し付けは目立たず、注目の"今ジャズ"ミュージシャンのインタビュー中心の構成が好感持てました。評論家が不用意な主張をするよりも、重要ミュージシャンの生の声を届けてくれる方が、読者が時代の流れを的確に感じることができると思います。

個人的には、Shabaka HutchingsをはじめとするUKジャズが大きく取り上げられることを期待していたのですが、その部分は完全に肩透かしでした(UKジャズに関する記事も僅かながらありましたが)。

まぁ、僕のようなニーズの人間は『Jazz The New Chapter 5』ではなく、『別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲』を購入すればいいのでしょうが(笑)

『別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲』
別冊ele-king カマシ・ワシントン / UKジャズの逆襲 (ele-king books)


◆『Jazz The New Chapter 5』掲載ディスクの紹介

『Jazz The New Chapter 5』でセレクトされた120作品から、当ブログでもエントリー済みの作品を紹介したいと思います。

Thundercat『Drunk』(2017年)
Drunk [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]  (BRC542)
「Friend Zone」
https://www.youtube.com/watch?v=FqE_H1A-8B4

Moonchild『Voyager』(2017年)
Voyager [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC549)
「Cure」
https://www.youtube.com/watch?v=Ic1rvQ44gFc

Terrace Martin Presents The Pollyseeds『Sounds Of Crenshaw Vol. 1』(2017年)
Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]
「Funny How Time Flies」
https://www.youtube.com/watch?v=C0pVmsrg814

Christian Scott aTunde Adjuah『The Emancipation Procrastination』(2017年)
The Emancipation Procrastination
「Videotape」
https://www.youtube.com/watch?v=7-9-E0SOfMI

Chris Dave And The Drumhedz『Chris Dave And The Drumhedz』(2018年)
クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ
「Destiny N Stereo」
https://www.youtube.com/watch?v=PSyB5rtMgSs

Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile
「My Queen is Harriet Tubman」
https://www.youtube.com/watch?v=twjaSC5Ym9s

Mabuta『Welcome To This World』(2018年)
Welcome To This World [Daedelusによるリミックス音源のダウンロードコードつき]
「Welcome To This World」
https://www.youtube.com/watch?v=Zd8vWwi8Q1g ※スタジオ・セッション

R+R=Now『Collagically Speaking』(2018年)
コラージカリー・スピーキング
「Change Of Tone」
https://www.youtube.com/watch?v=GUDTso9yZ64

Kamasi Washington『Heaven And Earth』(2018年)
HEAVEN & EARTH
「Street Fighter Mas」
https://www.youtube.com/watch?v=LdyabrdFMC8


◆独断でセレクト!裏『Jazz The New Chapter 5』作品

『Jazz The New Chapter 5』から離れますが、今回本当に書きたかった部分はココから(笑)。

当ブログで紹介した作品で『Jazz The New Chapter 5』のセレクトから漏れたものの、個人的に"コレこそJTNCじゃねぇ"と思うディスクを独断で裏『Jazz The New Chapter 5』としてセレクトしました。
※『Jazz The New Chapter 4』発売以降のエントリーに限定しています。

Richard Spaven『The Self』(2017年)
ザ・セルフ
「The Self」(feat. Jordan Rakei)
https://www.youtube.com/watch?v=YattHO96UzI
『ezが選ぶ2017年の10枚』にもセレクトした現行ジャズとクラブジャズを行き来するUKの敏腕ドラマーの意欲作。これまでJTNCでも注目してきたミュージシャンであるにも関わらず、『Jazz The New Chapter 5』では完全にスルーされていましたね。何故だろう?

Dwight Trible With Matthew Halsall『Inspirations』(2017年)
インスピレーションズ(with マシュー・ハルソール)
「Tryin' Times」
https://www.youtube.com/watch?v=KSbSTH3Ly3U
Build An ArkThe Life Force TrioといったL.A.ジャズ作品でお馴染みのUS黒人男性ジャズ・シンガーDwight TribleがUKジャズ・トランぺッターMatthew Halsallと共演したアルバム。Matthew HalsallはGoGo Penguinの1st、2ndアルバムをリリースしたインディペンデント・レーベルGondwana Recordsの主宰者でもあります。この2人の顔合わせというだけでも十分にJTNCですよね。

30/70『Elevate』(2017年)
エレヴェイト
「Nu Spring」
https://www.youtube.com/watch?v=R0TZN_YQAZ0
Hiatus KaiyoteJordan RakeiがJTNCならば、このオージー・ソウル・コレクティヴも十分JTNCだと思います。音を聴けば、前述の2アーティスト以上に"今ジャズ"らしさがあるのが分かると思います。

The Breathing Effect『The Fisherman Abides』(2017年)
The Fisherman Abides (ザ・フィッシャーマン・アバイズ)
「Water Static (Blinding Phoenix)」
https://www.youtube.com/watch?v=WP0W01Rlgc4
前作『Mars Is a Very Bad Place for Love』(2015年)は『Jazz The New Chapter 4』でセレクトされていましたが、最新作である本作は選外に・・・。こういうのこそ進化形ジャズだと思いますが!!!

Aron Ottignon『Team Aquatic』(2017年)
Team Aquatic
「Waves」
https://www.youtube.com/watch?v=ulX0sA6fxRM
実力派ジャズ・ピアニストAndrew Hillの手ほどきを受けたこともあるニュージーランド出身ジャズ・ピアニストのデビュー作。スティール・パン、プログラミング&エレクトロニクスを駆使した独自の今ジャズを満喫できます。

Zara McFarlane『Arise』(2017年)
Arise [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRBW162)
「Pride」
https://www.youtube.com/watch?v=qGSe9eF1WtQ
UKジャマイカンの女性ジャズ・シンガーの最新作。Moses Boydプロデュース、Shabaka Hutchings参加という点も含めて、UKジャズの今を知るうえで欠かせない1枚だと思いますが・・・

Mike Lebrun『Shades』(2017年)
シェイズ
「Click 'n' Slap」
https://www.youtube.com/watch?v=L_daPLOmwN8
L.A.を拠点とするマルチリード奏者の初の単独アルバム。Moonchildの紅一点ヴォーカリストAmber Navranもフィーチャリングされています。

Blue Lab Beats『Xover』(2018年)
クロスオーヴァー
「Blue Skies」
https://www.youtube.com/watch?v=xsTp_29XkW8
南ロンドンを拠点とするUKジャズ新世代ミュージシャンが大挙して参加した期待のUKビートメイキング・デュオのデビュー作。"ロンドン新世代からUS今ジャズへの返答"とでも呼びたくなる1枚です。

Joe Armon-Jones『Starting Today』(2018年)
Starting Today [帯解説 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC572)
「Starting Today」
https://www.youtube.com/watch?v=mdz9jHg-mWM
南ロンドンの注目アフロ・ジャズ・ファンク・バンドEzra Collectiveのキーボード奏者の初ソロ・アルバム。南ロンドン新世代ジャズの魅力を余すことなく伝えてくれる1枚だと思います。

結局、UKジャズをはじめとするUSジャズ以外の作品が殆どです。今が旬のUKジャズをどのように捉えるのか?ですかね。

個人的にはShabaka And The AncestorsのメンバーやUSトランぺッターTheo Crokerも参加したNicola Conte & Spiritual Galaxy『Let Your Light Shine On』(2018年)あたりももJTNC的だと思います。ただし、JTNCでは一貫して無視されているNicola Conteに対しては先入観で拒否反応する人がいるかもしれないので、ひとまず裏『Jazz The New Chapter 5』作品のリストからは外しておきました。しかしながら、先入観なしにぜひチェックして欲しいですね。

まぁ、あれこれ書きましたが、『Jazz The New Chapter 5』は進化形ジャズやブラック・ミュージックに興味がある方ならば、一読の価値がある面白いムック本だと思います。
posted by ez at 00:47| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする