発表年:1972年
ez的ジャンル:男性シンガー・ソングライター
気分は... :反脆弱性!
今回は再評価の高い70年代SSW作品からEric Justin Kaz『If You're Lonely』(1972年)です。
Eric Justin Kazは1947年、N.Y.ブルックリン生まれの男性シンガー・ソングライター。
60年代後半は、本作にも参加しているSteve Solesらと組んだサイケ・フォーク・ユニットBearやサイケ・ガレージ・バンドBlues Magoosで活動していました。
70年代に入り、HappyとArtie(Bear時代の同僚)のTraum兄弟の呼びかけで集まったプロジェクトMud Acresへ参加を経て、本作『If You're Lonely』(1972年)と『Cul-De-Sac』(1974年)という2枚のソロ・アルバムをリリース。
その間、彼の楽曲「Love Has No Pride」をBonnie RaittやLinda Ronstadtが取り上げたことで知名度を上げていきます。
さらにCraig Fullerらと組んだバンドAmerican Flyerでアルバム2枚をリリースしています。Craig Fullerとは共同名義のアルバム『Craig Fuller/Eric Kaz』(1978年)もリリースしています。
自身の作品では商業的成功と縁遠かったEric Kazですが、全米ヒットしたDon Johnson「Heartbeat」やMichael Bolton 「That's What Love Is All About」、USカントリー・チャートNo.1となったGeorge Strait「I Cross My Heart」などソングライターとして成功を収めています。
Eric Kazといえば、まず本作『If You're Lonely』(1972年)ということになりますね。
ヒットはしませんでしたが、シンガー・ソングライター名作として確固たる評価を確立しているアルバムです。
プロデュースはジャズ評論家としても知られるMichael Cuscuna。Eumir Deodatoがアレンジを手掛けています。
レコーディングにはEric Kaz(vo、p、g、harmonica)以下、Chuck Rainey(b)、Tony Levin(b)、George Duvivier(b)、Richard Davis(b)、Grady Tate(ds)、Paul Dickler(g)、Steven Soles(g、back vo)、Bonnie Raitt(steel g)、Ralph MacDonald(per、congas)、David Schiffman(congas)、Romeo Penque(english horn)、Seldon Powell(clarinet)、Don Butterfield(tuba)、Al Brown(strings)、Cissy Houston(back vo)、Dianne Davidson(back vo)、Josh Brown(back vo)、Sandie Cantrell(back vo)、Tracy Nelson(back vo)が参加しています。
N.Y.のジャズ/フュージョン系ミュージシャンが多数参加していますが、まず歌詞やメロディに惹かれるシンガー・ソングライター然とした作品である点がいいですね。個人的にはCissy Houstonらバック・コーラス隊のゴスペル/ソウルな味わいもアルバムの魅力向上に大きく貢献していると思います。
楽曲はすべてEric Kazのオリジナルです(共作含む)。
間違いのない男性シンガー・ソングライター作品だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Cruel Wind」
抑えたトーンながらも都会的サウンドが印象的なオープニング。淡々としたKazのヴォーカルとCissy Houstonらのゴスペル調バック・コーラスの組み合わせもいい感じです。Paul Dicklerのスライド・ギター、Deodatoによるストリングスもグッド!予備知識なく聴くと、ウエストコースト系だと感じるかも?
https://www.youtube.com/watch?v=vqalz1pxl5g
「If You're Lonely」
Kazのソングライティングの才を感じるタイトル曲。淋しい思いをしている人に優しくKazが語りかけます。Kaz自身のハーモニカやDeodatoによるストリングスが絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=ux7-2A5QTRA
「Temptation (Took Control Of Me And I Fell)」
Bonnie Raittのスティール・ギターが印象的なR&B調のブルージーな仕上がり。洗練されたイナたさがサイコーです。今回久々に聴き直して一番グッときたのがコレでした。
https://www.youtube.com/watch?v=mwv82BYspQM
「Time Has Come」
ピアノの弾き語りによるブルース。もうすぐ死を迎える男の心情を歌ったものですが、湿っぽくなく歌うところがこの人らしいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=s--HX7QEmeo
「Tonight, The Sky's About To Cry」
John Andreolliとの共作。本作にも参加している女性シンガーTracy NelsonがメンバーであったMother Earthへ提供した楽曲のセルフ・カヴァー(Mother Earthヴァージョンはアルバム『Bring Me Home』収録)。美しいストリングスと共に始まるセンチメンタルなバラードです。悲しみに浸りたい気分のときにどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=m_gh8fCR0Us
「Cry Like A Rainstorm」
人生に迷いながらもがいている歌詞には、Jackson Browneに通じる魅力がありますね。弱さも含めて自分に向き合い、しみじみと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=Vi2Ykr6VkaI
「Mother Earth (Provides For Me)」
本作にも参加している女性シンガーTracy Nelsonがアルバム『Tracy Nelson/Mother Earth』(1972年)で取り上げたことでも知られる楽曲。ソウルフルなコーラス隊とダブルベースが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=ORMn4hlUI90
「When I'm Gone」
旅立ちの心情を淡々と歌い上げます。Deodatoのアレンジ・センスが冴えます。
https://www.youtube.com/watch?v=dHAFVT1sTnM
「Someday, My Love May Grow」
「Mother Earth (Provides For Me)」同様、Tracy Nelsonがアルバム『Tracy Nelson/Mother Earth』(1972年)で取り上げた楽曲。恋に破れた男の心情を切々と歌い上げます。シンガー・ソングライター然とした感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-KKfR1mnUu0
「Christ, It's Mighty Cold Outside」
タイトルのように、キリストへ懺悔するバラードでアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=KP53ZSq30RI
Eric Kazの他作品もチェックを!
『Cul-De-Sac』(1974年)
Craig Fuller/Eric Kaz『Craig Fuller/Eric Kaz』(1978年)
『1000 Years Of Sorrow 』(2002年) ※未発表音源集
『エリック・カズ: 41年目の再会』(2015年)
Mud Acres『Music Among Friends』(1972年)
American Flyer『American Flyer』(1976年)
American Flyer『Spirit Of A Woman』(1977年)