2018年09月26日

Miles Davis『Tutu』

Marcus Millerと組んだ80年代の代表作☆Miles Davis『Tutu』
TUTU<SHM-CD>
発表年:1986年
ez的ジャンル:80年代マイルス
気分は... :顔に人格あり!

今回はジャズ界の帝王Miles Davis『Tutu』(1986年)です。

ジャズ界の帝王Miles Davisに関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の17枚。

 『Bag's Groove』(1954年)
 『'Round About Midnight』(1955、56年)
 『Cookin'』(1956年)
 『Miles Ahead』(1957年)
 『Milestones』(1958年)
 『Someday My Prince Will Come』(1961年)
 『E.S.P.』(1965年)
 『Miles Smiles』(1966年)
 『Nefertiti』(1967年)
 『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
 『In A Silent Way』(1969年)
 『Live Evil』(1970年)
 『On The Corner』(1972年)
 『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
 『Dark Magus』(1974年)
 『Agharta』(1975年)
 『The Man With The Horn』(1981年)

長年在籍していたColumbiaを離れ、Warner Bros.へ移籍した第1弾アルバムです。

当時は賛否両論、特にジャズ・ファンには批判的な意見の人が多かった気がしますが、今日では80年代復活後のMilesを代表する1枚として、一定の評価を得ているのではないかと思います。

アルバム・タイトルは、反アパルトヘイト・人権活動家であり、南アフリカの聖公会牧師として黒人初のケープタウン大主教となったDesmond Mpilo Tutuを称えたものです。彼は1984年のノーベル平和賞を受賞しています。

本作には反アパルトヘイトの象徴であり、後に南アフリカの大統領となるNelson Mandelaに因んだ「Full Nelson」という楽曲も収録されています。

Milesは本作の前年となる1985年に著名なミュージシャンが多数参加した反アパルトヘイト・ソング「Sun City」(1985年)に参加しており、彼のアパルトヘイト批判の強い意志が反映されたアルバムといえるでしょう。

インパクト大のジャケ写真も、黒人としてのアイデンティティを前面に示したMilesの強い意志の表れでしょう。戦闘モードのMilesといったところでしょうか。石岡瑛子がデザインし、Irving Pennが写真撮影した本ジャケは、グラミー賞最優秀アルバム・パッケージを受賞しました。

肝心のサウンドの方は、プログラミングなど最新テクノロジーを駆使しつつ、コンテンポラリーなファンク/R&Bに大きく接近した内容となっています。その意味では戦闘モードのMilesというより、新しいサウンドへの好奇心旺盛なMilesというのが本作の実体かもしれません。

当初はMilesと当時スーパースター街道を駆け上っていたPrinceとの共同プロデュースという計画もあったようですが、結局その話は流れてしまいました。

そして、本作でMilesの右腕として抜擢されているのが、当時期待の若手ベーシストであったMarcus Miller

『The Man With The Horn』(1981年)など80年代前半のMiles作品に参加した経験を持つMarcus Millerでしたが、本作ではTommy LiPumaと共にプロデュースを務め、楽曲提供や演奏面でもMilesから一任された格好です。

レコーディングにはMiles Davis(tp)、Marcus Miller(b、g、syn、drum prog、bcla、ss、other instruments)以外に、Jason Miles(syn prog)、Paulinho da Costa(per)、Adam Holzman(syn)、Steve Reid(per)、George DukeOmar Hakim(ds、per)、Bernard Wright(syn)、Michal Urbaniak(el-violin)、Jabali Billy Hart(ds、bongo)が参加しています。

個人的なハイライトは、当時大人気であったScritti Polittiのヒット曲カヴァー「Perfect Way」と、アルバムで最もキャッチーなダンサブル・チューン「Full Nelson」

それ以外にクールなタイトル曲「Tutu」、レゲエ/ダブ調の「Don't Lose Your Mind」、本作らしいジャズ・ファンク「Splatch」あたりもおススメです。

ジャズ界の帝王Milesの作品ということを意識せず、クールで格好良い80年代サウンドを楽しむという感覚で聴くと良いのでは?

全曲紹介しときやす。

「Tutu」
Marcus Miller作。タイトル曲はMarcus Millerによる抑えたトーンのコンテンポラリー・トラックとMilesらしいミュート・トランペットの組み合わせが実にクールな演奏です。派手さはありませんがグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=sAMJy-PHzKE

Am-Fm「Go-Go in the Sunshine」、South Central Cartel「Gang Stories」のサンプリング・ソースとなっています。
South Central Cartel「Gang Stories」
 https://www.youtube.com/watch?v=lksCJJoJwvw

「Tomaas」
Miles Davis/Marcus Miller作。プログラミングを駆使した本作らしいサウンドを楽しめます。最新サウンドでジャズを切り拓こうとするMilesの姿勢を実感できる演奏なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=FH-I1gWRWb0

「Portia」
Marcus Miller作。ミステリアスなバラード。無国籍なムードがいいですね。Marcusのベースが効いています。
https://www.youtube.com/watch?v=eiIdeHm5Xnc

「Splatch」
Marcus Miller作。Marcusの本領発揮といったジャズ・ファンク・グルーヴ。80年代仕様の最新型Milesを楽しめる演奏だと思います。Adam Holzmanのスペイシーなシンセが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Bj-VltBIfRE

「Backyard Ritual」
George Duke作。本トラックのみプロデュース&アレンジはGeorge Duke。演奏も彼が中心です。ただし、他のトラックから大きく外れることはなく、本作らしいプログラミングを駆使したジャズ・ファンクを展開します。
https://www.youtube.com/watch?v=3-Pj0XtEz4c

「Perfect Way」
当時大人気であったScritti Polittiのヒット曲をカヴァー(David Gamson, Green Gartside作)。同曲が収録された彼らのアルバム『Cupid & Psyche 85』(1985年)は、最新テクノロジーをを駆使しながら、レゲエ、ファンク、ソウル、テクノなどさまざまな音楽のエッセンスを取り入れた当時の最新型ダンス・ミュージックが詰まった1枚でした。オリジナルにクリソツなトラックづくりをみると、相当Milesは『Cupid & Psyche 85』に触発されたのでは?当ブログでも紹介したように、後にMilesは彼らのアルバム『Provision』(1988年)に参加することになります。
https://www.youtube.com/watch?v=E5IkLhDyTtI

「Don't Lose Your Mind」
Marcus Miller作。レゲエ/ダブ調のダークなトーンの演奏です。昔は地味な演奏だと思っていましたが、今回聴き直してダーク&ダビーなサウンドが結構気に入りました。
https://www.youtube.com/watch?v=GKl1oZ5qRLw

Queen Latifah feat. Daddy-O「The Pros」、O.S.T.R.「Miles, Trąbka I Ja」のサンプリング・ソースとなっています。
Queen Latifah feat. Daddy-O「The Pros」
 https://www.youtube.com/watch?v=ytDCeYj0fe8
O.S.T.R.「Miles, Trąbka I Ja」
 https://www.youtube.com/watch?v=SKHG9VC-4jU

「Full Nelson」
Marcus Miller作。前述のように当時反アパルトヘイトの象徴であったNelson Mandelaをタイトルに冠した楽曲。アルバム中最もキャッチーなダンサブル・チューンです。こうしたファンク/R&BへのアプローチこそがMarcus Miller起用のねらいだったと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=M2-ufBNFFlc

再発CDのうち、Deluxe editionには1986年のフランス、ニースでのライブ・アルバムを収めたDisc2が追加されています。

Miles Davisの過去記事もご参照下さい。

『Bag's Groove』(1954年)
バグズ・グルーヴ

『'Round About Midnight』(1955、56年)
'Round About Midnight

『Cookin'』(1956年)
クッキン

『Miles Ahead』(1957年)
Miles Ahead

『Milestones』(1958年)
マイルストーンズ+3

『Someday My Prince Will Come』(1961年)
Someday My Prince Will Come

『E.S.P.』(1965年)
E.S.P.

『Miles Smiles』(1966年)
マイルス・スマイルズ

『Nefertiti』(1967年)
ネフェルティティ + 4

『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
キリマンジャロの娘

『In A Silent Way』(1969年)
In a Silent Way (Dlx)

『Live Evil』(1970年)
ライヴ・イヴル

『On The Corner』(1972年)
Blu-spec CD オン・ザ・コーナー

『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
ゲット・アップ・ウィズ・イット

『Dark Magus』(1974年)
ダーク・メイガス

『Agharta』(1975年)
Agharta

『The Man With The Horn』(1981年)
The Man with the Horn
posted by ez at 01:40| Comment(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする