2018年12月13日

Armando Trovajoli『Dramma Della Gelosia』

映画音楽の巨匠の人気作☆Armando Trovajoli『Dramma Della Gelosia』
ジェラシー
発売年:1970年
ez的ジャンル:Armando Trovaioliサントラ
気分は... :ジェラシー・・・

今日はイタリア映画音楽を代表するArmando Trovaioliの人気サントラの1枚、『Dramma Della Gelosia(邦題:ジェラシー)』(1970年)です。

映画音楽の巨匠Armando Trovajoliのサントラ作品について、当ブログでこれまで紹介したのは以下の3枚。

 『7 Uomini D'Oro(Seven Golden Men)』(1965年)
 『La Matriarca(邦題:女性上位時代)』(1968年)
 『Sesso Matto』(1973年)

『Dramma Della Gelosia(邦題:ジェラシー)』は、1970年に公開されたイタリア映画。監督はEttore Scola、主演はMarcello MastroianniMonica VittiGiancarlo Giannini

映画自体を観ていませんが、妻子も顧みず、若い娘に恋した中年男が、ライバルとの恋の火花を散らす三角関係を描いたコメディ映画のようです。

肝心の音楽の方ですが、Armando Trovaioliらしいロマンティック&オシャレなサウンドを楽しめます。タイトル曲「Dramma Della Gelosia (Titoli)」の別ヴァージョンのようなトラックが続きますが、あの手この手で楽しませてくれます。

特に、本サントラの再評価を高めたサバービア/フリーソウル系人気曲「Sei Mesi Di Felicita」、その姉妹ヴァージョンのような「Paglia Nei Capelli」、グルーヴィーな躍動する「Incontro Alla Balera」、映画の中でキス・シーンを巧みに演出する「Adelaide」あたりが僕のおススメです。

Armando Trovaioli好きの人であれば、間違いのない1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Dramma Della Gelosia (Titoli)」
ロマンチック・ムードに溢れた美しいテーマ曲。チェレスタの音色がいい感じです。甘い恋の予感がしてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=btrlh3CDX6k

「Adelaide」
映画の中でキス・シーンを巧みに演出するテーマ曲の別ヴァージョン。しっとりとしたロマンチック・ムードが漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=d1Z5SnNi-Y4

「Per Motivi Di Gelosia」
幻想的なインストに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=c_hQFyXy2V8

「Vedo Un'Ombra Sul Tuo Volto」
Marcello MastroianniとMonica Vittiいう主演2人の会話をフィーチャー。
https://www.youtube.com/watch?v=iiIJlfE1LII

「Paglia Nei Capelli」
テーマ曲のスキャット入りメロウ・ヴァージョン。軽くボッサ・ビートも入っていて、後に登場する「Sei Mesi Di Felicita」の姉妹ヴァージョンのような雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=O2Q6bsVFJtE

「Tema Di Oreste」
寂しげなミュート・トランペットが印象的な哀愁トラック。
https://www.youtube.com/watch?v=Kxl_r7wNdPw

「Adelaide E Nello」
うっとりする美しいオーケストレーションがテーマ曲を奏でます。
https://www.youtube.com/watch?v=9YRo_ken4HI

「Se Tu Mi Lasceresti」
Marcello MastroianniとMonica Vittiの会話をフィーチャーしたミュージカル調の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=kU7oqaCBstM

「Sei Mesi Di Felicita」
本サントラの再評価を高めたサバービア/フリーソウル系人気曲。ロマンティックに疾走する、テーマ曲のスキャット入りボッサ・グルーヴ・ヴァージョン。コレがあるのでTrovajoliのサントラはいいんですよね。
https://www.youtube.com/watch?v=6GARpytn-r4

「Incontro Alla Balera」
グルーヴィーな躍動する格好良いロック・チューン。スウィンギン・ロンドンがお好きな人は気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=n8bloK_PaCs

「Finale」
フィナーレはタイトル曲のリフレイン。さて三角関係の恋の行方はどうなったのか・・・
https://www.youtube.com/watch?v=jnN7CjFd6cQ

僕の保有する国内盤CDには、ボーナス・トラックとして、「Se Tu Mi Lasceresti(Strumentale)」「Valzer E Motivo Conduttore」「Adelaide(Versione Breve)」「Sognando」「Finale(Mix II)」の5曲が追加収録されています。ボッサ・グルーヴな「Adelaide(Versione Breve)」、ビートの効いた「Finale(Mix II)」がおススメです。

Armando Trovajoliサントラの過去記事もご参照ください。

『7 Uomini D'Oro(Seven Golden Men)』(1965年)
Sette Uomini D'Oro (Seven Gold Men)

『La Matriarca(邦題:女性上位時代)』(1968年)
女性上位時代

『Sesso Matto』(1973年)
セッソ・マット
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2018年12月12日

Art Farmer Quintet『The Time And The Place』

ライブのようでライブではない1枚☆Art Farmer Quintet『The Time And The Place』
ザ・タイム・アンド・プレイス
録音年:1967年
ez的ジャンル:管楽器の詩人系ファンキー・ジャズ
気分は... :ライブじゃなくて良かったのに・・・

今回は60年代ジャズからArt Farmer Quintet『The Time And The Place』です。

トランペット/フリューゲルホーン奏者Art Farmer(1928-1999年)の紹介は、Art Farmer Quartet feat. Jim Hall『To Sweden With Love』(1964年)に続き2回目となります。

本作『The Time And The Place』は元々1966年8月に行われたN.Y.MoMAでの野外ライブを収録したアルバムとして、Columbiaからリリース予定でした。しかしながら、録音内容にGOサインが出ず一旦保留となってしまいます。その一方で、ライブ録音を前提としたジャケは既に完成しており、そこにしっかり"Live Concert Performance"の文字が刻まれていました。

そこでレコード会社は、1967年2月、新たにスタジオ録音を行い、そこに聴衆の拍手を追加し、それをライブ・アルバムとしてリリースする暴挙に出ます。それが本作『The Time And The Place』です。

因みに、実際の1966年8月のライブ音源は、2007年に『The Time and the Place:The Lost Concert』としてリリースされています。

『The Time and the Place:The Lost Concert』(2007年)
The Time and the Place / The Lost Concert by Art Farmer (2007-12-11)

さて、本作『The Time And The Place』に話を戻すと、レコーディング・メンバーはArt Farmer(flh)、Jimmy Heath(ts)、Cedar Walton(p)、Walter Booker(b)、Mickey Roker(ds)。

プロデュースはTeo Macero

バラード名人として知られるArt Farmerですが、本作ではジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」といった変化をつけた演奏を楽しむことができます。一方で、アルバム後半にはArt Farmerらしいダンディズムを感じるオーソドックスな演奏が占められています。

結果として、どちらも実に聴きやすく、アルバムのバラエティ感もあるので、僕のような"永遠のジャズ初心者"には実にフィットする1枚に仕上がっています。

主役のFarmerのみならず、二管の相手を組むJimmy Heathのテナーも快調であり、Cedar Waltonも随所で小粋なピアノを聴かせてくれます。

惜しむらくは、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさですね。これが無ければ、よりアルバムの魅力が増していると思います。

まぁ、それでもArt Farmerを楽しめる1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「The Time and the Place」
Jimmy Heath作。ジャズ・ロックなファンキー・チューンがオープニング。ただし、Lee Morgan「The Sidewinder」Freddie Hubbard「The Return of the Prodigal Son」あたりと比較すると、少しソフトな演奏となっていますが、Art Farmerにはこの位が丁度いいのかもしれません。その分、Farmerと作者Jimmy Heathのソロが映えます。
https://www.youtube.com/watch?v=UDkXPZFV6wM

「The Shadow of Your Smile」
アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画『いそしぎ』の主題歌をカヴァー(Johnny Mandel/Paul Francis Webster作)。バラードの名手Farmerらしいプレイを楽しめる小粋な演奏を堪能しましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=ulidPstlB5w

「One for Juan」
Jimmy Heath作。Walter Bookerのベース、Cedar Waltonのピアノらによる美しいイントロに続き、メロウ・ボッサな演奏が展開されます。作者Jimmy Heathのテナー・サックスが実に雰囲気があっていいですね。正直、追加している聴衆の拍手が邪魔ですが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=5hVgVHytMBY

「Nino's Scene」
Art Farmer作。ボサノヴァに続いてカリプソです。寛いだ雰囲気のカリプソを楽します。Cedar Waltonのピアノが気が利いていていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Hncn-05fvmM

「Short Cake」
J.J. Johnson作。スウィンギー演奏ですが、Farmerにはこういったオーソドックスな演奏が似合いますね。
https://www.youtube.com/watch?v=KJGeTrVb-ao

「Make Someone Happy」
Jule Styne/Betty Comden/Adolph Green作。ミュージカル『Do Re Mi』のテーマ曲をカヴァー。当ブログではWe Fiveのカヴァーを紹介済みです。Farmer、Heathの二管による素敵なアンサンブルが印象的です。全体としても小気味良い雰囲気がいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=RBcJwgs-v0E

「On the Trail」
Ferde Grofe作。「Grand Canyon Suite(グランド・キャニオン組曲)」の中の1曲で、多くにジャズ・ミュージシャンによって演奏されているスタンダード。当ブログではDonald ByrdJon Hendricksのカヴァーを紹介済みです。ラストもリラックスした雰囲気の演奏でダンディに締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=pKzccJM1Cds

Art Farmerの他作品もチェックを!

『When Farmer Met Gryce』(1954–55年)
When Farmer Met Gryce

『Art Farmer Quintet』(1955年)
イヴニング・イン・カサブランカ

Art Farmer/Donald Byrd『2 Trumpets』(1957年)
2 Trumpets

『Farmer's Market』(1958年)
Farmer's Market

『Portrait of Art Farmer』(1958年)
Portrait of Art Farmer

『Modern Art』(1958年)
モダン・アート

Jazztet『Meet the Jazztet』(1960年)
ミート・ザ・ジャズテット

『Art』(1960年)
アート

Jazztet『Here And Now/Another Git Together』(1962年) ※2in1CD
Jazzplus: Here And Now + Another Git Together

『Interaction』(1963年)
インターアクション (+1)

『"Live" at the Half-Note』(1964年)
ライヴ・アット・ザ・ハーフ・ノート

Art Farmer Quartet feat. Jim Hall『To Sweden With Love』(1964年)
スウェーデンに愛をこめて

『Sing Me Softly of the Blues』(1965年)
ブルースをそっと歌って

『Yesterday's Thoughts』(1976年)
イエスタデイズ・ソウツ

『Crawl Space』(1977年)
クロール・スペース

『The Summer Knows』(1978年)
おもいでの夏

Art Farmer & Jim Hall『Big Blues』(1978年)
ビッグ・ブルース
posted by ez at 18:00| Comment(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月10日

Xantone Blacq『To the Heavens and Beyond』

Stevie調ヴォーカルが魅力!UKクロスオーヴァー☆Xantone Blacq『To the Heavens and Beyond』
トゥ・ザ・ヘブンズ・アンド・ビヨンド
発表年:2006年
ez的ジャンル:UKクロスオーヴァー
気分は... :フリーレンジ・サンシャイン・ミュージック!

UKクロスオーヴァー作品からXantone Blacq『To the Heavens and Beyond』(2006年)です。

Xantone Blacqは、1974年ナイジェリア、ラゴス生まれのシンガー・ソングライター/マルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサー。

10代のときにイギリス、ロンドンに移住し、18歳から本格的な音楽活動を開始。2003年にリリースしたシングル「Search For The Sun」が話題となり、2006年にソロ・アルバムとなる本作『To the Heavens and Beyond』をリリースしています。

ソロ・アルバムは1stとなる本作『To the Heavens and Beyond』と2nd『Revelation』(2011年)の2枚のみですが、Funky DLらと組んだユニットGemini Infinity、ロンドンを拠点としたジャジー・ソウル・コレクティブPersonal Lifeとしてもアルバムをリリースしています。
※2018.12.13追記
当初ソロ・アルバムは本作のみと記述していましたが、配信のみの2ndアルバム『Revelation』(2011年)もリリースされている点をご指摘頂いた。それを踏まえて上記を訂正しました。

本作『To the Heavens and Beyond』(2006年)は、ソウル、ファンク、ジャズ、ブラジル、クラブジャズが融合したUKクロスオーヴァーらしいサウンドを随所で楽しめます。Xantoneは自身の音楽を"フリーレンジ・サンシャイン・ミュージック"と呼んでいるようですが、本作における実際のサウンドもポジティブなヴァイヴに溢れています。また、Stevie Wonder調のXantoneのソウルフル・ヴォーカルも魅力的です。

プロデュースはXantone自身、ソングライティングも「I Feel For You」Princeのカヴァー)、「Drive My Car」The Beatlesのカヴァー)以外はXantoneのオリジナルです。

アルバムにはLaura MvulaBecca Stevens『Regina』(2017年)等のプロデュースも手掛けたUKドラマーTroy Miller、ブラジル人女性シンガーPatricia Marx、イタリア人女性シンガーManuela Panizzo、サックス奏者Pee Wee Ellisもフィーチャーされています。

Xantoneの名を高めたシングル曲「Search For Th Sun」、アルバムのリード・シングルであり、Stevie節が全開の「Yes I Do」、サンバ調のダンサブルなブラジリアン・グルーヴ「Makes Me Wanna」、同じくブラジリアン・フレイヴァーの「With You」「Samba De Lagos」The Beatles名曲をブロークンビーツに変貌させた「Drive My Car」あたりが僕のおススメです。

あの手この手で楽しませてくる充実のUKクロスオーヴァー作品です。

全曲紹介しときやす。

「With You」
Manuela Panizzoをフィーチャー。ブラジリアン・フレイヴァーの爽快グルーヴがオープニング。コケティッシュなManuelaのヴォーカルとStevie Wonder調のXantoneのヴォーカルの組み合わせがグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=pRhjWGqavHA

「Yes I Do」
XantoneのStevie節が全開となるファンク・チューン。シングルにもなった人気曲です。ホーン・サウンドが演奏全体を盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=vRyQniekYD4

「Search For Th Sun」
前述のようにXantoneの名を高めたシングル曲。Roy Ayersあたりの流れを汲むメロウ・ミディアムのジャズ・ファンク。ヴォコーダーが効いているのも僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=N-XD3aZ_VdI

「I Feel For You」
大ヒットしたChaka Khanヴァージョンでもお馴染み、Princeの名曲をカヴァー。オリジナルは『Prince』(1979年)に収録されています。少しテンポを落としたミディアム・ファンクの「I Feel For You」を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=t-69aud4dCQ

「Samba De Lagos」
ブラジリアン・モードのメロウ・チューン。バカンス気分にフィットするメロウなボッサ・グルーヴです。
https://www.youtube.com/watch?v=tW1UOAP07xQ

「Makes Me Wanna」
ブラジル人女性シンガーPatricia Marxをフィーチャー。UKクロスオーヴァーらしいサンバ調のダンサブルなブラジリアン・グルーヴ。Xantoneの鍵盤が冴えわたります。
https://www.youtube.com/watch?v=dQRRQ3X1-4Q

「Drive My Car」
The Beatlesの名曲カヴァー。オリジナルは『Rubber Soul』(1965年)収録。ここではサックス奏者Pee Wee Ellisをフィーチャー。The Beatles名ナンバーをブロークンビーツ調のダンサブル・チューンへ変貌させる手腕はお見事。
https://www.youtube.com/watch?v=1Sm73b0E5IA

「You're So Fly」
オーガニックなソウル・フィーリングを楽しめるメロウ・ミディアムですが、ヴォコーダーでアクセントをつけています。
https://www.youtube.com/watch?v=QQ6ozsnISts

「Smokin'」
アッパーに疾走するパーカッシヴなフュージョン・ファンク。Stevie調のコーラスが心憎いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=ZTXyye3mHEg

「Frankincense & Myrhh」
10分超の大作。ミステリアスなコーラスが印象的なクロスオーヴァー・ジャズ。人知の及ばない神秘のクロスオーヴァーといった趣の壮大なスケール感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=4alCkD0WG_w

「Without You」
Troy Millerをフィーチャー。ラストはストレート・アヘッドなジャズで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=QLbw2KVn83M

ご興味がある方はGemini InfinityPersonal Lifeの作品もチェックを!

Gemini Infinity『Love Chase Dream』‎(2009年)
ラブ・チェイス・ドリーム

Personal Life『Morning Light』‎(2013年)
モーニング・ライト (帯ライナー付直輸入盤)
posted by ez at 01:07| Comment(2) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月09日

Alexia Bomtempo『Suspiro』

コスモポリタンな女性MPBシンガー、待望の最新作☆Alexia Bomtempo『Suspiro』
真夜中のため息
発表年:2018年
ez的ジャンル:コスモポリタン系女性MPB
気分は... :唐紅の髪飾・・・

新作アルバムから女性MPBシンガーAlexia Bomtempoの最新作『Suspiro(邦題:真夜中のため息)』です。

1985年ワシントンD.C.生まれ。母はアメリカ人で父がブラジル人というコスモポリタンな女性MPBシンガーAlexia Bomtempoについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。

 『Astrolabio』(2008年)
 Doces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)
 ※当時公私のパートナーであったPierre Aderneとのユニット
 『I Just Happen To Be Here』(2012年)

Dadiプロデュースによるドリーミーなデビュー・アルバム『Astrolabio』は、『ezが選ぶ2008年の10枚』にセレクトするほどのお気に入り作品でした。

また、アコースティックな透明感に溢れたDoces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』、Alexiaが敬愛する偉大なMPBアーティストCaetano Velosoの英語詩曲のカヴァー集『I Just Happen To Be Here』(2012年)も大好きな作品です。

2013年から活動拠点をN.Y.に移したAlexiaですが、昨年に久々の新作『Chasing Storms And Stars』をデジタル配信&アナログ限定でリリースしました。そこから短いインターバルで最新作『Suspiro』が届けられました。

現在の拠点であるN.Y.でレコーディングされ、フランス人のStephane San Juan、アメリカ人のJake Owenがプロデューサーを務めています。

Stephane San Juanはフランス人パーカッション奏者/シンガー・ソングライターですが、2002年にブラジルに渡り、KassinMoreno VelosoDomenico Lancellottiといった+ 2ユニットのメンバー等と交流を持ち、様々なブラジル人ミュージシャンの作品に参加しています。Orquestra Imperialにも参加していましたね。また、自身のソロ、Domenico LancellottiらとのユニットOs Ritmistasとしても作品もリリースしています。

もう一人のJake Owenはテキサス州出身で前述の『Chasing Storms And Stars』にもプロデューサー、ソングライター、ギタリストとして参加していました。

レコーディングには、Eduardo Belo(b、harmonica)、Vitor Goncalves(p、el-p)、Michael Leonhart(tp)、Jake Owen(g)、Stephane San Juan(ds、per、vo)、Guilherme Monteiro(g)が参加しています。

アルバム全体としては、AlexiaのボサノヴァDNAとN.Y.らしいジャジー・フィーリングを融合させたジャジー・メロウなボッサ作品という印象です。勿論、Alexiaの魅惑のコケティッシュ・ヴォーカルは健在であり、聴く者を悩殺します(笑)

オリジナルとカヴァーが半々といった構成です。カヴァーではEdu LoboJorge BenJoao Donatoといった大物ブラジル人アーティストの作品に加え、Domenico LancellottiFernando Temporaoといった新世代のブラジル人アーティストの作品も取り上げています。

オリジナルはAlexiaとJake Owenの共作が中心です。Alexiaらしいボッサ・フィーリングとテキサス出身のJake Owenのアーシーな南部フィーリングを融合させたサウンドを聴ける曲もあり、楽しませてくれます。

大好きなアーティストの新作ということで期待大でしたが、僕にとって素敵なクリスマス・プレゼントと呼びたくなるような1枚に仕上がっており、大満足です。

全曲紹介しときやす。

「I’m In Love Again」
Peggy Lee/Cy Coleman/Bill Schluger作。Peggy Leeのカヴァーがオープニング。オリジナルは『In Love Again!』(1964年)に収録されています。しっとりとしたジャジー・メロウなボッサ・サウンドと少しアンニュイなAlexiaのヴォーカルがよくマッチしています。Michael Leonhartのトランペットがロマンティック・ムードを盛り上げてくれます。

「Grao」
Alberto Continentino/Fernando Temporao作。ブラジル新世代SSWの作品をジャジー・フィーリングの爽快メロウ・ボッサで聴かせてくれます。ここでもAlexiaのアンニュイ・ヴォーカルに悩殺されてしまいます。

「Even Now」
Edu Lobo/Paula Stone作。Edu Loboの名曲「Cantiga de Longe」の英語カヴァー。「Cantiga de Longe」のオリジナルは『Cantiga de Longe』(1970年)、英語ヴァージョン「Even Now」のオリジナルは『Sergio Mendes Presents Lobo』(1970年)に収録されています。ジャジーな雰囲気なので、予備知識なしで聴くと、「Cantiga de Longe」だと分からないかも?ジャジーな中でも、この曲らしいパーカッシヴ感を強調しています。

「Suspiro」
Domenico Lancellotti/Bruno di Lullo作。タイトル曲はMoreno VelosoKassinとの+ 2ユニットで知られるブラジル新世代サウンドの重要ミュージシャンDomenico Lancellottiの作品。哀愁バラードを切々と歌い上げます。Michael Leonhartのミュート・トランペットの枯れ具合がサイコーです。

「Eles Querem Amar」
Jorge Ben作。Claudette Soaresヴァージョンで知られる楽曲です。ここでは溌剌としたジャズ・サンバ調で聴かせてくれます。Alexiaのコケティッシュ・ヴォーカルの魅力を存分に楽しめます。

「Mais Devagar」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。オリジナルですが、本作らしいジャジー・フィーリングとAlexiaのサウダージDNAが見事に融合したコスモポリタンなジャジー・ボッサに仕上がっています。かなり好きです。

「涙の河」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。これは日本語タイトルが冠されたインスト曲。ミステリアスな雰囲気のジャジー・サウンドを楽しめます。

「Serpente」
再びDomenico Lancellottiの作品を取り上げています。新世代SSWらしい曲調と本作らしいジャジー・フィーリングが見事に調和しているのがいいですね。独特のアンニュイ感がたまりません。

「Fim de Sonho」
Joao Donato/Joao Carlos Padua作。Donatoのオリジナルは『Quem e Quem』(1973年)に収録されています。美しいバラードを少し寂しげにしっとりと歌い上げます。ここでもMichael Leonhartのミュート・トランペットが素敵なムードを演出します。

「Les Chansons d’Amour」
Alberto Continentino/Stephane San Juan作。Stephane San Juanをフィーチャー。Stephane San Juanとのデュエットによるメロウ・ボッサ。抑えたトーンの2人のヴォーカルが実にいい雰囲気です。

「Evergreen」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。本編のラストはエレピとギターによるメロウ・チューン。Alexiaのコケティッシュな魅力を堪能できます。Alexiaらしいボッサ・フィーリングとテキサス出身のJake Owenのアーシーな南部フィーリングの融合も面白いですね。味わい深いハーモニカもいいアクセントになっています。

「Floating Away」
国内盤ボーナス・トラック。Alexia Bomtempo/Jake Owen/Michael Ramos作。「Evergreen」同様、ボサノヴァと南部フィーリング、さらにはラテンも加わったAlexiaらしいクロスオーヴァー・サウンドを楽しめます。

Alexia Bomtempoの過去記事もご参照下さい。

『Astrolabio』(2008年)
Astrolabio

Doces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)
Sweet Cariocas

『I Just Happen To Be Here』(2012年)
I Just Happen to Be Here
posted by ez at 01:41| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月08日

General Johnson『Generally Speaking』

Chairmen Of The Boardのフロントマンの1stソロ☆General Johnson『Generally Speaking』
ジェネラリー・スピーキング+4
発表年:1972年
ez的ジャンル:Invictus系男性ソウル
気分は... :少しズルしています(笑)

男性ソウル・グループChairmen Of The Boardのリード・ヴォーカルGeneral Johnsonの1stソロ・アルバム『Generally Speaking』(1972年)です。

Holland-Dozier-Holland(Brian Holland/Lamont Dozier/Eddie Holland)が設立したInvictusを代表する男性ソウル・グループThe Chairmen Of The Board

そのフロント・マンであったGeneral Johnsonは、グループの活動と並行してInvictusからソロ・アルバム『Generally Speaking』(1972年)をリリースしています。

General Johnsonは本作以降、Chairmen Of The Boardの活動休止期間中に、Aristaからソロ第2弾アルバム『General Johnson』(1976年)をリリースしています。

さて、本作『Generally Speaking』(1972年)ですが、全10曲中3曲がThe Chairmen Of The Board『In Session』(1970年)の収録曲をそのまま再収録されている点にご注意ください。

プロデュースはGeneral Johnson自身とGreg PerryRaynard MinerWilliam Weatherspoon

『In Session』(1970年)からの「It Was Almost Something」「All We Need Is Understanding」「Everything's Tuesday」という3曲はノーザン・ソウル的な魅力に溢れています。

それ以外の楽曲はミディアム系が中心ですが、適度にロックのエッセンスを効かせているのがいいですね。「Saginaw County Line」「I Never Get Tired Of You」「Things Are Bound To Get Better Later On」「Mary Lou Thomas」あたりが僕の好みです。

General Johnsonらしい泣きの節回しを存分に楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Saginaw County Line」
General Johnson/Greg Perry作。味わいのあるミディアム・チューンがオープニング。ソウルフルなロック・バラード的な魅力があります。

「God's Gift To Man」
General Johnson/Greg Perry作。60年代ラテン・ソウル・フレイヴァーを効かせた爽快ダンサブル・チューン。

「It Was Almost Something」
Raynard Miner/William Weatherspoon作。Chairmen Of The Board『In Session』収録曲の再収録1曲目。軽快なノーザン・ソウルとJohnsonの込み上げヴォーカルがよくマッチしています。ファズ・ギターがいいアクセントになっていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=-1CjlyliuSE

「Every Couples' Not A Pair」
Angelo Bond/General Johnson/Greg Perry作。Johnsonらしい歌い回しを満喫できるミディアム・バラード。

「All We Need Is Understanding」
Edith Wayne(Holland-Dozier-Holland)/Ronald Dunbar作。Chairmen Of The Board『In Session』収録曲の再収録2曲目。Johnson節が映えるミディアム・グルーヴ。Invictusらしさを存分に楽しめます。オルガンの音色も印象的です。Tokyo No.1 Soul Set「27,8」のサンプリング・ソースとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=vSXsXSic_ug

「Everything's Tuesday」
Edith Wayne(Holland-Dozier-Holland)/Daphne Dumas/Ronald Dunbar作。Chairmen Of The Board『In Session』収録曲の再収録3曲目。『In Session』からの1stシングルにもなりました。Holland-Dozier-Hollandらしさを満喫できるノーザン・ソウルです。
https://www.youtube.com/watch?v=Qc7v-w7cnEU

「I Never Get Tired Of You」
General Johnson/Greg Perry作。当時のLeon Russellあたりが歌っていそうな曲調のミディアム・バラード。パーカッシヴ感が増し、格好良いギター・ソロを聴ける後半の展開もたまりません。

Just-Ice feat. Big Daddy Kane「Just Rhymin' With Kane」のサンプリング・ソースとなっています。
Just-Ice feat. Big Daddy Kane「Just Rhymin' With Kane」
 https://www.youtube.com/watch?v=-pFT5zWuUcY

「My Credit Didn't Go Through」
General Johnson/Greg Perry作。イナたいアーシー感が印象的なミディアム・グルーヴ。サウンド・メイクにも一工夫あるのがいいですね。

「Things Are Bound To Get Better Later On」
General Johnson/Greg Perry作。味わい深いミディアム・バラード。中盤以降のパーカッシヴな展開も含めて僕好みの1曲に仕上がっています。

「Mary Lou Thomas」
General Johnson/Greg Perry作。格好良いバッキングと小粋なJohnsonの歌い回しにグッとくるミディアム・バラード。

Chairmen Of The BoardInvictus時代の他作品もチェックを!

Chairmen Of The Board『The Chairmen Of The Board』(1970年)
ギヴ・ミー・ジャスト・ア・リトル・モア・タイム

Chairmen Of The Board『In Session』(1970年)
イン・セッション

Chairmen Of The Board『Bittersweet/Skin I'm In』(1972,74年) ※2in1CD
Bittersweet / Skin I'm in
posted by ez at 13:43| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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