
発表年:2018年
ez的ジャンル:コスモポリタン系女性MPB
気分は... :唐紅の髪飾・・・
新作アルバムから女性MPBシンガーAlexia Bomtempoの最新作『Suspiro(邦題:真夜中のため息)』です。
1985年ワシントンD.C.生まれ。母はアメリカ人で父がブラジル人というコスモポリタンな女性MPBシンガーAlexia Bomtempoについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。
『Astrolabio』(2008年)
Doces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)
※当時公私のパートナーであったPierre Aderneとのユニット
『I Just Happen To Be Here』(2012年)
Dadiプロデュースによるドリーミーなデビュー・アルバム『Astrolabio』は、『ezが選ぶ2008年の10枚』にセレクトするほどのお気に入り作品でした。
また、アコースティックな透明感に溢れたDoces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』、Alexiaが敬愛する偉大なMPBアーティストCaetano Velosoの英語詩曲のカヴァー集『I Just Happen To Be Here』(2012年)も大好きな作品です。
2013年から活動拠点をN.Y.に移したAlexiaですが、昨年に久々の新作『Chasing Storms And Stars』をデジタル配信&アナログ限定でリリースしました。そこから短いインターバルで最新作『Suspiro』が届けられました。
現在の拠点であるN.Y.でレコーディングされ、フランス人のStephane San Juan、アメリカ人のJake Owenがプロデューサーを務めています。
Stephane San Juanはフランス人パーカッション奏者/シンガー・ソングライターですが、2002年にブラジルに渡り、Kassin、Moreno Veloso、Domenico Lancellottiといった+ 2ユニットのメンバー等と交流を持ち、様々なブラジル人ミュージシャンの作品に参加しています。Orquestra Imperialにも参加していましたね。また、自身のソロ、Domenico LancellottiらとのユニットOs Ritmistasとしても作品もリリースしています。
もう一人のJake Owenはテキサス州出身で前述の『Chasing Storms And Stars』にもプロデューサー、ソングライター、ギタリストとして参加していました。
レコーディングには、Eduardo Belo(b、harmonica)、Vitor Goncalves(p、el-p)、Michael Leonhart(tp)、Jake Owen(g)、Stephane San Juan(ds、per、vo)、Guilherme Monteiro(g)が参加しています。
アルバム全体としては、AlexiaのボサノヴァDNAとN.Y.らしいジャジー・フィーリングを融合させたジャジー・メロウなボッサ作品という印象です。勿論、Alexiaの魅惑のコケティッシュ・ヴォーカルは健在であり、聴く者を悩殺します(笑)
オリジナルとカヴァーが半々といった構成です。カヴァーではEdu Lobo、Jorge Ben、Joao Donatoといった大物ブラジル人アーティストの作品に加え、Domenico Lancellotti、Fernando Temporaoといった新世代のブラジル人アーティストの作品も取り上げています。
オリジナルはAlexiaとJake Owenの共作が中心です。Alexiaらしいボッサ・フィーリングとテキサス出身のJake Owenのアーシーな南部フィーリングを融合させたサウンドを聴ける曲もあり、楽しませてくれます。
大好きなアーティストの新作ということで期待大でしたが、僕にとって素敵なクリスマス・プレゼントと呼びたくなるような1枚に仕上がっており、大満足です。
全曲紹介しときやす。
「I’m In Love Again」
Peggy Lee/Cy Coleman/Bill Schluger作。Peggy Leeのカヴァーがオープニング。オリジナルは『In Love Again!』(1964年)に収録されています。しっとりとしたジャジー・メロウなボッサ・サウンドと少しアンニュイなAlexiaのヴォーカルがよくマッチしています。Michael Leonhartのトランペットがロマンティック・ムードを盛り上げてくれます。
「Grao」
Alberto Continentino/Fernando Temporao作。ブラジル新世代SSWの作品をジャジー・フィーリングの爽快メロウ・ボッサで聴かせてくれます。ここでもAlexiaのアンニュイ・ヴォーカルに悩殺されてしまいます。
「Even Now」
Edu Lobo/Paula Stone作。Edu Loboの名曲「Cantiga de Longe」の英語カヴァー。「Cantiga de Longe」のオリジナルは『Cantiga de Longe』(1970年)、英語ヴァージョン「Even Now」のオリジナルは『Sergio Mendes Presents Lobo』(1970年)に収録されています。ジャジーな雰囲気なので、予備知識なしで聴くと、「Cantiga de Longe」だと分からないかも?ジャジーな中でも、この曲らしいパーカッシヴ感を強調しています。
「Suspiro」
Domenico Lancellotti/Bruno di Lullo作。タイトル曲はMoreno Veloso、Kassinとの+ 2ユニットで知られるブラジル新世代サウンドの重要ミュージシャンDomenico Lancellottiの作品。哀愁バラードを切々と歌い上げます。Michael Leonhartのミュート・トランペットの枯れ具合がサイコーです。
「Eles Querem Amar」
Jorge Ben作。Claudette Soaresヴァージョンで知られる楽曲です。ここでは溌剌としたジャズ・サンバ調で聴かせてくれます。Alexiaのコケティッシュ・ヴォーカルの魅力を存分に楽しめます。
「Mais Devagar」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。オリジナルですが、本作らしいジャジー・フィーリングとAlexiaのサウダージDNAが見事に融合したコスモポリタンなジャジー・ボッサに仕上がっています。かなり好きです。
「涙の河」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。これは日本語タイトルが冠されたインスト曲。ミステリアスな雰囲気のジャジー・サウンドを楽しめます。
「Serpente」
再びDomenico Lancellottiの作品を取り上げています。新世代SSWらしい曲調と本作らしいジャジー・フィーリングが見事に調和しているのがいいですね。独特のアンニュイ感がたまりません。
「Fim de Sonho」
Joao Donato/Joao Carlos Padua作。Donatoのオリジナルは『Quem e Quem』(1973年)に収録されています。美しいバラードを少し寂しげにしっとりと歌い上げます。ここでもMichael Leonhartのミュート・トランペットが素敵なムードを演出します。
「Les Chansons d’Amour」
Alberto Continentino/Stephane San Juan作。Stephane San Juanをフィーチャー。Stephane San Juanとのデュエットによるメロウ・ボッサ。抑えたトーンの2人のヴォーカルが実にいい雰囲気です。
「Evergreen」
Alexia Bomtempo/Jake Owen作。本編のラストはエレピとギターによるメロウ・チューン。Alexiaのコケティッシュな魅力を堪能できます。Alexiaらしいボッサ・フィーリングとテキサス出身のJake Owenのアーシーな南部フィーリングの融合も面白いですね。味わい深いハーモニカもいいアクセントになっています。
「Floating Away」
国内盤ボーナス・トラック。Alexia Bomtempo/Jake Owen/Michael Ramos作。「Evergreen」同様、ボサノヴァと南部フィーリング、さらにはラテンも加わったAlexiaらしいクロスオーヴァー・サウンドを楽しめます。
Alexia Bomtempoの過去記事もご参照下さい。
『Astrolabio』(2008年)

Doces Cariocas『Doces Cariocas(Sweet Cariocas)』(2009年)

『I Just Happen To Be Here』(2012年)
