2018年12月12日

Art Farmer Quintet『The Time And The Place』

ライブのようでライブではない1枚☆Art Farmer Quintet『The Time And The Place』
ザ・タイム・アンド・プレイス
録音年:1967年
ez的ジャンル:管楽器の詩人系ファンキー・ジャズ
気分は... :ライブじゃなくて良かったのに・・・

今回は60年代ジャズからArt Farmer Quintet『The Time And The Place』です。

トランペット/フリューゲルホーン奏者Art Farmer(1928-1999年)の紹介は、Art Farmer Quartet feat. Jim Hall『To Sweden With Love』(1964年)に続き2回目となります。

本作『The Time And The Place』は元々1966年8月に行われたN.Y.MoMAでの野外ライブを収録したアルバムとして、Columbiaからリリース予定でした。しかしながら、録音内容にGOサインが出ず一旦保留となってしまいます。その一方で、ライブ録音を前提としたジャケは既に完成しており、そこにしっかり"Live Concert Performance"の文字が刻まれていました。

そこでレコード会社は、1967年2月、新たにスタジオ録音を行い、そこに聴衆の拍手を追加し、それをライブ・アルバムとしてリリースする暴挙に出ます。それが本作『The Time And The Place』です。

因みに、実際の1966年8月のライブ音源は、2007年に『The Time and the Place:The Lost Concert』としてリリースされています。

『The Time and the Place:The Lost Concert』(2007年)
The Time and the Place / The Lost Concert by Art Farmer (2007-12-11)

さて、本作『The Time And The Place』に話を戻すと、レコーディング・メンバーはArt Farmer(flh)、Jimmy Heath(ts)、Cedar Walton(p)、Walter Booker(b)、Mickey Roker(ds)。

プロデュースはTeo Macero

バラード名人として知られるArt Farmerですが、本作ではジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」といった変化をつけた演奏を楽しむことができます。一方で、アルバム後半にはArt Farmerらしいダンディズムを感じるオーソドックスな演奏が占められています。

結果として、どちらも実に聴きやすく、アルバムのバラエティ感もあるので、僕のような"永遠のジャズ初心者"には実にフィットする1枚に仕上がっています。

主役のFarmerのみならず、二管の相手を組むJimmy Heathのテナーも快調であり、Cedar Waltonも随所で小粋なピアノを聴かせてくれます。

惜しむらくは、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさですね。これが無ければ、よりアルバムの魅力が増していると思います。

まぁ、それでもArt Farmerを楽しめる1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「The Time and the Place」
Jimmy Heath作。ジャズ・ロックなファンキー・チューンがオープニング。ただし、Lee Morgan「The Sidewinder」Freddie Hubbard「The Return of the Prodigal Son」あたりと比較すると、少しソフトな演奏となっていますが、Art Farmerにはこの位が丁度いいのかもしれません。その分、Farmerと作者Jimmy Heathのソロが映えます。
https://www.youtube.com/watch?v=UDkXPZFV6wM

「The Shadow of Your Smile」
アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画『いそしぎ』の主題歌をカヴァー(Johnny Mandel/Paul Francis Webster作)。バラードの名手Farmerらしいプレイを楽しめる小粋な演奏を堪能しましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=ulidPstlB5w

「One for Juan」
Jimmy Heath作。Walter Bookerのベース、Cedar Waltonのピアノらによる美しいイントロに続き、メロウ・ボッサな演奏が展開されます。作者Jimmy Heathのテナー・サックスが実に雰囲気があっていいですね。正直、追加している聴衆の拍手が邪魔ですが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=5hVgVHytMBY

「Nino's Scene」
Art Farmer作。ボサノヴァに続いてカリプソです。寛いだ雰囲気のカリプソを楽します。Cedar Waltonのピアノが気が利いていていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Hncn-05fvmM

「Short Cake」
J.J. Johnson作。スウィンギー演奏ですが、Farmerにはこういったオーソドックスな演奏が似合いますね。
https://www.youtube.com/watch?v=KJGeTrVb-ao

「Make Someone Happy」
Jule Styne/Betty Comden/Adolph Green作。ミュージカル『Do Re Mi』のテーマ曲をカヴァー。当ブログではWe Fiveのカヴァーを紹介済みです。Farmer、Heathの二管による素敵なアンサンブルが印象的です。全体としても小気味良い雰囲気がいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=RBcJwgs-v0E

「On the Trail」
Ferde Grofe作。「Grand Canyon Suite(グランド・キャニオン組曲)」の中の1曲で、多くにジャズ・ミュージシャンによって演奏されているスタンダード。当ブログではDonald ByrdJon Hendricksのカヴァーを紹介済みです。ラストもリラックスした雰囲気の演奏でダンディに締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=pKzccJM1Cds

Art Farmerの他作品もチェックを!

『When Farmer Met Gryce』(1954–55年)
When Farmer Met Gryce

『Art Farmer Quintet』(1955年)
イヴニング・イン・カサブランカ

Art Farmer/Donald Byrd『2 Trumpets』(1957年)
2 Trumpets

『Farmer's Market』(1958年)
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『Portrait of Art Farmer』(1958年)
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『Modern Art』(1958年)
モダン・アート

Jazztet『Meet the Jazztet』(1960年)
ミート・ザ・ジャズテット

『Art』(1960年)
アート

Jazztet『Here And Now/Another Git Together』(1962年) ※2in1CD
Jazzplus: Here And Now + Another Git Together

『Interaction』(1963年)
インターアクション (+1)

『"Live" at the Half-Note』(1964年)
ライヴ・アット・ザ・ハーフ・ノート

Art Farmer Quartet feat. Jim Hall『To Sweden With Love』(1964年)
スウェーデンに愛をこめて

『Sing Me Softly of the Blues』(1965年)
ブルースをそっと歌って

『Yesterday's Thoughts』(1976年)
イエスタデイズ・ソウツ

『Crawl Space』(1977年)
クロール・スペース

『The Summer Knows』(1978年)
おもいでの夏

Art Farmer & Jim Hall『Big Blues』(1978年)
ビッグ・ブルース
posted by ez at 18:00| Comment(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする