録音年:1963年
ez的ジャンル:コーラス×ジャズ・コンボ
気分は... :グラミー見ましたが・・・
昨日はグラミー賞でしたね。
毎年興味ないと言いつつ、見てしまうグラミー。
今年はチャンネルは合わせつつも、思わず見入ってしまうシーンは少なかったですね。
今年は女性のためのグラミーという主催者側の意図が見え見えでしたね。
Alicia Keysの司会ぶりは見事でしたが・・・
あとはグラミーという場に、全てを詰め込むののはそろそろ限界に達している印象を受けました。個人的には受賞式とトリビュートは分けた方がスッキリする気がします。
今回はジャズ・トランペット奏者Donald Byrdの意欲作『A New Perspective』(1963年)です。
ジャズ・トランペット奏者Donald Byrd(1932-2013)ついて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の6枚。
『Mustang』(1966年)
『Electric Byrd』(1970年)
『Black Byrd』(1972年)
『Street Lady』(1973年)
『Stepping Into Tomorrow』(1974年)
『Places and Spaces』(1975年)
本作『A New Perspective』(1963年)は、ジャケにBand & Voicesと明示されているように、8人編成の男女コーラスを配し、新たなアプローチに取り組んだ意欲作です(Blue Noteからのリリース)。
レコーディング・メンバーはDonald Byrd(tp)以下、Hank Mobley(ts)、Herbie Hancock(p)、Kenny Burrell(g)、Donald Best(vibe、vo)、Butch Warren(b)、Lex Humphries(ds)。
さらにColeridge-Taylor Perkinsonがディレクションを務める男性4名、女性4名のコーラス隊が参加しています。
また、アレンジャーとしてDuke Pearsonが起用され、楽曲提供も含めて本作に貢献しています。
L.A.ジャズ・シーンを牽引するサックス奏者Kamasi Washingtonの諸作では、クワイアを配したスケールの大きなスピリチュアル・ジャズを聴くことができます。
こうしたKamasiのアプローチの源流にあるジャズ・アルバムが本作『A New Perspective』(1963年)なのでは?
キング牧師の葬儀でも流れたことで知られる名曲「Cristo Redentor」をはじめ、コーラス隊とジャズ・コンボが融合した崇高な音世界は、従来のジャズという枠組みを超えた"新たな視点(A New Perspective)"を提示しています。
ハイライトとなる「Cristo Redentor」の印象からジャズとゴスペルの融合という形容されることも多いですが、「Cristo Redentor」以外はジャズ・コーラス×ジャズ・コンボのケミストリーを狙った演奏という印象を受けます。その意味では必要以上にジャズ×ゴスペルを強調しすぎるとミス・リードしてしまう気も・・・まぁ、その崇高な音世界はジャズという器では小さすぎる印象を受けるのは確かです。
個人的に本作に惹かれるのは、ヴォイス&バンドを駆使し、アフロ・アメリカンのアイデンティティを探求するような姿勢にあるのかもしれません。
Reid Milesによるジャケは、彼が手掛けた数あるBlue Note作品のジャケの中でも特に秀逸なのでは?
Childish Gambino「This Is America」のようなアメリカ社会に警鐘を鳴らす楽曲がグラミーの主要部門2冠を取るような今の時代だからこそ、本作『A New Perspective』を聴き直す価値があるのでは?
時代が一回りして、再び本作を聴くべきときが巡ってきた・・・
全曲紹介しときやす。
「Elijah」
Donald Byrd作。本作らしいコーラス隊とクールに疾走するセプテットの演奏が印象的なオープニング。演奏全体を牽引する若きHerbie Hancockのピアノがいい感じです。ソロの中ではMobleyの快調ぶりが光ります。
https://www.youtube.com/watch?v=V4iBZ-CA8Aw
「Beast of Burden」
Donald Byrd作。雰囲気のあるコーラス隊に呼応するブルージーな演奏が印象的です。全体的に抑えたトーンがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=J14zWJhgtkk
「Cristo Redentor」
Duke Pearson作。前述のようにキング牧師の葬儀でも流れたことで知られる本作のハイライト。ゴスペル・ジャズという呼称が相応しい崇高な演奏です。厳かなコーラスとByrdのトランペットをはじめとする鎮魂モードの寂しげなサウンドが胸の奥に刻まれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Y5ujEFsaInk
Pearson自身のヴァージョンは『How Insensitive』(1969年)に収録されています。また、当ブログではJohnny Lytle、Bobby Bryantのカヴァーを紹介済みです。それ以外にCharlie Musselwhite、Harvey Mandel、Ferrante & Teicher、David Sanbornもカヴァーしています。
定番サンプリング・ソースとしても人気です。N-Tyce feat. Method Man「Hush Hush Tip」、Shyheim「One's 4 Da Money」、Supreme NTM「Pass Pass Le Oinj」、Baby Fox「Za Za (Get Ready)」、Diam's「Daddy」 、Royce Da 5'9'' feat. Slaughterhouse & Melanie Rutherford「The Warriors」、S.Mos, Busta Rhymes & Donald Byrd「Christo Redentor」、Fixpen Sill「Train De Vie」、Big Baby Gandhi「Gandhi Mandhi Mandhi」、Smoke DZA「Best Seller」、Action Bronson「Hookers at the Point」、Goodie Mob「Father Time」、HD Been Dope「Closure」、ScHoolboy Q「Lord Have Mercy」等のサンプリング・ソースになっています。
Duke Pearson「Cristo Redentor」
https://www.youtube.com/watch?v=U6xWfqY7Ez8
Johnny Lytle「Cristo Redentor」
https://www.youtube.com/watch?v=fNd22BD-INE
N-Tyce feat. Method Man「Hush Hush Tip」
https://www.youtube.com/watch?v=L--5uMkfUNc
Shyheim「One's 4 Da Money」
https://www.youtube.com/watch?v=d_DG1zR6UWQ
Baby Fox「Za Za (Get Ready)」
https://www.youtube.com/watch?v=kgO-R31gUfA
Royce Da 5'9'' feat. Slaughterhouse & Melanie Rutherford「The Warriors」
https://www.youtube.com/watch?v=sLRaHFTbp4o
S.Mos, Busta Rhymes & Donald Byrd「Christo Redentor」
https://www.youtube.com/watch?v=MRc8NHNJpZc
Fixpen Sill「Train De Vie」
https://www.youtube.com/watch?v=tlxfZZw2kWY
Big Baby Gandhi「Gandhi Mandhi Mandhi」
https://www.youtube.com/watch?v=GlOeIKTZdVw
Smoke DZA「Best Seller」
https://www.youtube.com/watch?v=gryWMvpaxFU
Goodie Mob「Father Time」
https://www.youtube.com/watch?v=3hiH3ujx9Co
HD Been Dope「Closure」
https://www.youtube.com/watch?v=z0YFrOS8e1Q
「The Black Disciple」
Donald Byrd作。コーラス隊とセプテットが織り成す深淵かつスケールの大きなブラック・ミュージックは、Kamasi Washingtonの諸作に通ずるものがあるのでは?今聴いても実に新鮮に聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=1vn476KWrzU
「Chant」
Duke Pearson作。ラストはタイトルからも想像できるように、チャントとセクステットの見事な調和を楽しめます。このあたりはDuke Pearsonのセンスの良さでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=YctBC3Y6w_Y
Donald Byrd作品の過去記事もご参照下さい。
『Mustang』(1966年)
『Electric Byrd』(1970年)
『Black Byrd』(1972年)
『Street Lady』(1973年)
『Stepping Into Tomorrow』(1974年)
『Places and Spaces』(1975年)