発表年:2017年
ez的ジャンル:新進女性R&Bシンガー
気分は... :この才能は本物だ!
今回は先日のグラミーで素晴らしいパフォーマンスを披露し、 Best R&B Album、Best R&B Performanceも受賞した新進女性R&BシンガーH.E.R.のデビュー・アルバム『H.E.R.』です。
※デジタル、アナログのリリースは2017年ですが、CD化は2019年です。
H.E.R.ことGabriella Wilsonは1997年カリフォルニア生まれの女性R&Bシンガー/ソングライター。
幼少の頃から音楽に親しみ、14歳の時にはGabriella Wilson名義でメジャー・レーベルからデビューを飾りますが、その後は表舞台から姿を消します。
彼女はH.E.R.(Having Everything Revealedの略)として生まれ変わり、2016年にEP「H.E.R. Vol. 1」をリリースします。
「H.E.R. Vol. 1」はiTunesのR&Bチャート第1位に輝き、ミステリアスな新進女性R&BシンガーとしてH.E.R.の存在が注目されます。彼女の憧れのアーティストであるAlicia Keysをはじめ、有名アーティストが挙って彼女の才能を絶賛しました。
2017年には「H.E.R. Vol. 2」、「H.E.R. Vol. 2 – The B Sides」という2枚のEPをリリースし、益々彼女の存在がクローズアップされるようになります。そして、前述の3枚のEP収録曲を収めたデビュー・アルバム『H.E.R.』を2017年にリリースします。
『H.E.R.』はデジタル配信とアナログ(アナログは15曲のみの収録)のみでのリリースでしたが、大ヒットを記録し、先日のグラミーでは主要部門であるAlbum of the Year、Best New Artistをはじめ、Best R&B Album、Best R&B Performance、Best R&B Songの5部門にノミネートされました。そして、前述のようにBest R&B Album、Best R&B Performanceを受賞しています。
そんなタイミングで遂に『H.E.R.』の世界初CD化が実現しました。
グラミー後のエントリーで、"思わず見入ってしまうシーンは少なかった"と嘆いていた僕ですが、その数少ない見入ってしまったシーンの1つが
H.E.R.のパフォーマンスでした。ミステリアスなムードに包まれ、ギター片手に凛と歌う彼女の姿を見て画面に釘付けとなってしまいました。ちなみにグラミーで披露した曲はEP「I Used to Know Her: Part 2 」(2018年)収録の「Hard Place」です。
そんな流れでCDショップに出向き、本作『H.E.R.』をゲット!彼女の世界を堪能したいので日本語歌詞のある国内盤を購入しました。
アンビエント調の抑えたサウンドをバックに、同世代の女性を代弁するようなラブソングを切々と歌い上げるH.E.R.の音世界にグイグイと惹き込まれる1枚です。
メイン・プロデュースはH.E.R.自身と、H.E.R.となってからの彼女をサポートし続けている名プロデューサーSwagg R'celious、数多くの人気アーティストのプロデュース/ソングライティングを手掛けるDJ Camper。
グラミーBest R&B Performanceに輝いた、カナダ出身の新進男性R&Bシンガー/ソングライターDaniel Caesarとのデュエット「Best Part」、同じくグラミーBest R&B Songにノミネートされた「Focus」という話題の2曲をはじめ、EP「H.E.R. Vol. 1」ではショート・ヴァージョンだった「Pigment」のフル・ヴァージョン、Drakeのカヴァー「Jungle」など話題曲が満載です。
僕以外にもグラミーの彼女のパフォーマンスを見て気になった方は多かったのではないかと思います。
デビュー・アルバムにして、圧倒的な存在感と独自性を示してくれた女性R&Bの超新星の音世界をぜひご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Losing」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。切ない女心を歌ったオープニング。アンビエント・サウンドと切々としたH.E.R.の歌世界がよくマッチしています。途中、♪Let me know, let me know〜♪というThe Isley Brothers「(At Your Best) You Are Love」の一節が引用されています。おそらくH.E.R.の場合、Aaliyah feat. R. Kellyヴァージョンを意識したものだと思いますが・・・
https://www.youtube.com/watch?v=N1-i53r-yVQ
「Avenue」
Lophiileプロデュース。新進プロデューサーを迎え、すれ違う男女の心模様を歌い上げます。サウンドにフィットした歌い回しが絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=19J6LBLjNzI
「Let Me In」
Knox Brownプロデュース。♪どうして私たちいつも喧嘩ばかりしているの♪と嘆く切ないラブソング。ここでもアンビエントなサウンドと哀愁モードの歌世界のフィット感がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=l3SPIQN8evE
「Lights On」
H.E.R./Scribz Riley/Gradesプロデュース。UKオルタナティヴR&Bの歌姫Naoプロデュースで知られるGradesが関与している点で興味深いです。そうした観点から聴くと、Naoの音世界とリンクするものを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=qLsIl566m7s
「Say It Again」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。静けさの中に凄みを感じる1曲。この年齢にして、この貫禄には驚かされます。
https://www.youtube.com/watch?v=beEkN4DcJ8g
「Facts」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。自分の心に素直に向き合うラブソング。クール・サウンドと共に刻まれるビートが主人公の心臓の鼓動のように聴こえてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=c_xG0crdnrE
「Focus」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。前述のように、グラミーBest R&B Songにノミネートされた話題曲。美しいイントロから惹きつけられるドリーミーなメロウ・チューン。H.E.R.という才能を実感できる名曲ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Z5ze4CUAkE8
「U」
H.E.R./Swagg R'celiousプロデュース。自分中心の彼氏への不満を嘆く、切ないラブソング。この世界観が同世代の女性の共感を呼ぶのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=iLWayccuhts
「Every Kind Of Way」
DJ Camperプロデュース。愛する人への思いの丈を打ち明けるラブソング。新世代シンガーならではのメロウネスに溢れたメロディアスな音世界に魅了されます。
https://www.youtube.com/watch?v=Wn1FH9BS-Ic
「Best Part」
H.E.R./Daniel Caesarプロデュース。Daniel Caesarをフューチャーし、グラミーBest R&B Performanceを受賞した本作のハイライトの1つ。Daniel Caesarのデビュー・アルバム『Freudian』(2017年 ※デジタル、アナログのみ)にも収録されています。名曲と呼ぶに相応しい素敵なデュエット・ラブソング。飾らないナチュラル感にグッときてしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=hKgl5-lkT8U
「Changes」
H.E.R./Swagg R'celiousプロデュース。Gabriel Garzon-Montana「68」ネタのビートとアンビエントなサウンドに乗って、女性の心模様を歌い上げます。これがH.E.R.らしいスタイルなのでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=cdDMGa5K8Ug
「Jungle」
H.E.R./Swagg R'celiousプロデュース。Drakeの隠れた名曲をカヴァー。オリジナルはミックステープ『If You're Reading This It's Too Late』(2015年)に収録されています。オリジナルの雰囲気を受け継いだ感動的なカヴァーに仕上がっています。Drakeの世界観にH.E.R.が見事にシンクロしている感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=hhAs04sHlvA
「Free」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。先の見えない恋に揺れ動く女心を歌った哀愁ラブソング。不安な気持ちを見事に表現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=JsKQtvIqF2o
「Rather Be」
H.E.R./Swagg R'celiousプロデュース。美しいピアノに乗って、愛する人への強い思いを歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=8ZY56YQuP7Y
「2」
H.E.R./MNEKプロデュース。UK期待のアーティストMNEKの関与に注目ですね。ビートの効いたアンビエント・サウンドに乗って歌われる♪Too-too-too♪Too-too-too♪のフレーズに脳内が侵食されていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=WtCREZoiSQQ
「Hopes Up」
Swagg R'celious/Ant Bプロデュース。クールなエレクトロニカ・サウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=GHn0WuuGW18
「Still Down」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。愛する人の気持ちを確かめたい心模様を歌ったラブソング。実にクールです。
https://www.youtube.com/watch?v=rWp9oDRn8g4
「Wait For It」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。Floetry「Say Yes」を下敷きにしたメロディが印象的なメロウ・チューン。歌詞にUberが登場するあたり、今時のアーティストですね。
https://www.youtube.com/watch?v=fBTTVpfCQVc
「Pigment」
H.E.R./Qreamybeatsプロデュース。「H.E.R. Vol. 1」ではショート・ヴァージョンだった楽曲のフル・ヴァージョン。Robert Glasper Experiment「Lift Off/Mic Check」、Robert Glasper「Tribute」をサンプリングしたビューティフル・ソングです。ラップ・シンギングを織り交ぜながら、切々と歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=Rv4YCOYebNk
「Gone Away」
H.E.R./Syk Senseプロデュース。美しいメロディに惹き込まれる切ないラブソング。彼女が敬愛するAlicia Keysとの共通点を感じることができる素晴らしいバラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=08pbAX6varw
「I Won't」
H.E.R./DJ Camperプロデュース。内なる対話で揺れ動く恋心を問い直す切ないラブソングでアルバムを締め括ってくれます。歌詞にJanet Jacksonの楽曲「Feedback」も登場します。Bonnie Raitt「I Can't Make You Love Me」 の一節を改変した♪You can't make me love you if I don't♪のフレーズが胸の奥まで響きます。
https://www.youtube.com/watch?v=Dth04X2p5VU
本作以降にリリースされた「I Used to Know Her: The Prelude」(2018年)と「I Used to Know Her: Part 2」(2018年)という2枚のEPもCD化して欲しいですね。