2019年04月24日

The M-Zee Band『Doctor Rhythm』

人気プロデューサーMichael Zagerのディスコ・ユニット☆The M-Zee Band『Doctor Rhythm』
Doctor Rhythm
発表年:1981年
ez的ジャンル:N.Y.ディスコ/ファンク
気分は... :ジャケはスルーで・・・

ディスコ・ヒットThe Michael Zager Band「Let's All Chant」(1977年)で知られるプロデューサーMichael Zager率いるThe M-Zee Band唯一のアルバム『Doctor Rhythm』(1981年)です。

Michael Zagerは1943年ニュージャージー州生まれ。

60年代後半から70年代前半にかけて、プログレ/ジャズ・ロック・バンドTen Wheel Driveのキーボード奏者として活動した後、プロデューサー/ソングライターとして精力的に活動し、Cissy HoustonPeabo BrysonThe Spinners等数多くの作品を手掛ける売れっ子となります。

また、自身のグループThe Michael Zager Bandを率い、1977年にディスコ・ヒット「Let's All Chant」を放っています。

そのMichael ZagerがThe Michael Zager Bandとは別名義でリリースしたのが、The M-Zee Band名義の本作『Doctor Rhythm』(1981年)です。

メンバーとしてクレジットされているのが、Michael Zager(key、syn)、Alfred Adams(ds)、Jolyon Skinner(vo、b)、Michael Campbell(g)、Alvin Fields(back vo)の5名。

それ以外にJimmy Maelen(per)、Wayne Cooper(back vo)、Eltesa Weathersby(voice)、Pete Canarozzi(prog)等がレコーディングに参加しています。

内容は全編N.Y.らしいディスコ/ファンク/ブギーで埋め尽くされた1枚に仕上がっています。

「Doctor Rhythm」「Who's Funkin' You」あたりが人気のようですが、個人的にはアーバンな「Sure Shot」が一番のお気に入りです。

Michael Zagerのディスコ/ファンク・プロデューサーとしての才を存分に満喫できる1枚だと思います。

どうしようもないジャケに惑わされず、まず聴くべし!

全曲紹介しときやす。

「Doctor Rhythm」
N.Y.ディスコらしい洗練されたミディアム・ブギー。印象的なベース・ライン、妖しげなシンセは昨今のブギー・ブームにも符号する1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=_TtX5I7UEL8

「Who's Funkin' You」
人を喰ったようなカッティング・ギターの音色がいい感じのミディアム・ディスコ・ファンク。Michael Zagerのセンスを感じる、完成度の高いブギー・サウンドです。
https://www.youtube.com/watch?v=-NRM03vLY4k

「Bop Box」
本作らしいシンセ・サウンドが牽引する都会的なファンク・チューン。なかなかキャッチーです。
https://www.youtube.com/watch?v=Gzg_eSvokBM

「Sure Shot」
僕の一番のお気に入り。Chicあたりのエッセンスも感じるアーバンなディスコ・ファンク。
https://www.youtube.com/watch?v=0HFQGwKMx7g

「I'm Savin' It For The One I Love」
ポップ・ディスコ的な仕上がり。シンセのポップな音色が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=DfqTcGpyXVs

「Fun House」
うねるベース・ラインと妖しげなシンセの音色の組み合わせがいい感じのディスコ・ファンク。シンセ使いの妙とアンダーグラウンドな格好良さが魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=zuQl_MTPZ6E

「Street Beat」
ラストは軽快なギター・カッティングのディスコ・ファンクで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=C2DV4zB--Zo

The Michael Zager Band『Let's All Chant』(1978年)
LET'S ALL CHANT ~ EXPANDED EDITION
posted by ez at 01:46| Comment(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月23日

Alice Coltrane『Transcendence』

ヒンドゥー語ヴォーカルによる黒人霊歌/ゴスペル的アプローチ☆Alice Coltrane『Transcendence』
Transcendence]
発表年:1977年
ez的ジャンル:インド音楽×黒人霊歌/ゴスペル的ストリングス・ジャズ
気分は... :梵我一如・・・

70年代ジャズからAlice Coltrane『Transcendence』(1977年)です。

John Coltraneの妻としても知られるハープ&鍵盤奏者Alice Coltrane(1937-2007年)ついて、当ブログで紹介した作品は以下の3枚。

 『Journey In Satchidananda』(1970年)
 『World Galaxy』(1972年)
 『Eternity』(1976年)

本作『Transcendence』(1977年)は、『Eternity』(1976年)、『Radha-Krsna Nama Sankirtana』(1976年)に続くWarner Bros.第3弾アルバムです。

アルバムは大きく、The Satori Quartetによるストリングスを配した前半(オリジナルLPのA面)と、インド音楽×黒人霊歌/ゴスペルというアプローチの後半(オリジナルLPのB面)に分かれます。特に、ヒンドゥー語ヴォーカルで黒人霊歌/ゴスペル的なコール&レスポンスを試みる後半のアプローチは実にユニークです。

プロデュースはEd Michel

レコーディング・メンバーはAlice Coltrane(harp、org、el-p、tambura、wind Chimes)以下、Murray Adler(violin)、Jay Rosen(violin)、Pamela Goldsmith(viola)、Fred Seykora(cello)というThe Satori Quartetの面々、Jagajivana Dasa(mridangam)、Mukunda Dasa(mridangam)、Purushattama Hickson(vo)、Brahmajyoti Lee(vo)、Saieshwar Roberts(vo)、Shankari Adams(vo)等です。

The Satori Quartetを従えた美しい前半もいいですが、ヒンドゥー語ヴォーカルによる黒人霊歌/ゴスペル的アプローチという唯一無二の音世界を展開する後半が圧巻だと思います。

アフロ・アメリカンとしてのアイデンティティと、東洋思想的なスピリチュアル・ワールドの融合がどのようなケミストリーを起こすのか、ぜひお確かめください!

全曲紹介しときやす。

「Radhe-Shyam」
Alice Coltrane作。AliceのハープとThe Satori Quartetによる崇高で幻想的でコズミックな演奏です。聴いているだけで瞑想気分になれる悟りモードの演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=RaZ0TtWCwOE

「Vrindavana Sanchara」
Alice Coltrane作。Aliceがハープ、タンブラ等すべての楽器を演奏している彼女らしいインド的スピリチュアル・ジャズ。Aliceならではの宇宙が広がります。
https://www.youtube.com/watch?v=SM1JLW6ptUw

「Transcendence」
Alice Coltrane作。タイトル曲は再びThe Satori Quartetを従えた演奏です。ハープをはじめとする弦の響きの美しさを追求した室内音楽×スピリチュアル・ジャズな仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=oDcjFDVHZuk

ここまでがオリジナルLPのA面です。

「Sivaya」
トラディショナルのカヴァー。オルガン、ムリダンガム(インドの太鼓)、ハンドクラップ、ヒンドゥー語ヴォーカルが織り成す黒人霊歌/ゴスペル的アプローチの演奏です。アフロ・アメリカンとしてのアイデンティティと東洋思想からの影響をAliceらしく統合させた音世界です。
https://www.youtube.com/watch?v=L_TrSeYR4oM

Abstract Tribe Unique「These Lions」のサンプリング・ソースとなっています。
Abstract Tribe Unique「These Lions」
 https://www.youtube.com/watch?v=pnLj0kvfC68

「Ghana Nila」
トラディショナルのカヴァー。パーカッシヴなオルガン・グルーヴにのって、ヒンドゥー語ヴォーカルによるコール&レスポンスが展開されます。ノリはゴスペルなんですが、神秘的なインド・テイストも感じられます。
https://www.youtube.com/watch?v=-mj5hetFS3A

「Bhaja Govindam」
トラディショナルのカヴァー。インド音楽と黒人霊歌/ゴスペルの融合という意味で、黒人教会にいるのにヒンドゥー教の祈りを捧げているような不思議な音世界を体験できます。
https://www.youtube.com/watch?v=9J34p_Mr3eU

「Sri Nrsimha」
トラディショナルのカヴァー。ヒンドゥー語のコール&レスポンスにも慣れてきて、このインド的でソウルフルなスピリチュアル・ワールドが妙に耳に馴染んできます。
https://www.youtube.com/watch?v=10Cj7s-ouwc

他のAlice Coltrane作品もチェックを!

『A Monastic Trio』(1968年)
ア・モナスティック・トリオ(紙ジャケット仕様)

『Huntington Ashram Monastery』(1969年)
ハンティントン・アシュラム・モナストリー(紙ジャケット仕様)

『Journey In Satchidananda』(1970年)
Journey in Satchidananda

『Ptah, the El Daoud』(1970年)
Ptah, the El Daoud

『World Galaxy』(1972年)
ワールド・ギャラクシー~至上の愛

『Universal Consciousness』(1972年)
Universal Consciousness

『Lord of Lords』(1973年)
ロード・オブ・ローズ(紙ジャケット仕様)

『Illuminations 』(1974年) ※Carlos Santanaとのコラボ作
Illuminations

『The Elements』(1974年) ※Joe Hendersonとの共演
Elements

『Eternity』(1976年)
永遠なる愛

『Radha-Krisna Nama Sankirtana』(1976年)
Radha-Krsna Nama Sankirtana

『Transfiguration』(1978年)
Transfiguration
posted by ez at 03:05| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月22日

Eric Roberson『...Left』

ジェントル&メロウな魅力に溢れたR&B☆Eric Roberson『...Left』
レフト
発表年:2007年
ez的ジャンル:実力派男性R&Bシンガー/ソングライター
気分は... :メイン・ディッシュ登場!

今回は実力派男性R&BシンガーEric Roberson『...Left』(2007年)です。

1976年生まれ、ニュージャージー出身の男性R&Bシンガー/ソングライター/キーボード奏者であるEric Robersonの紹介は、Phonteとの共演アルバムPhonte & Eric Roberson『Tigallerro』(2016年)、『Esoteric...』(2004年)に続き、3回目となります。

前作『The Appetizer』(2005年)は未発表/レア音源集という"前菜"的アルバムだったので、本作『...Left』(2007年)はいよいよメイン・ディッシュ登場といった感じですね。

Eric Roberson自身、彼のツアー・ディレクターを務めるCurtis Chambers、Eric作品にはお馴染みのThaddaeus TribbettJ DillaJames PoyserDJ SpinnaSupa Dave West等がプロデュースを手掛けています。

また、Phonte(当時Little Brother)、女性R&BシンガーAlgebra Blessettといったアーティストがフィーチャリングしています。

アルバム全体としては、殆どミディアム〜スロウで示されたビューティフル/メロウなアルバムに仕上がっています。

Phonteとの共演曲「Been In Love」、Algebra Blessettとの素敵なデュエット「ILuvU2Much」J Dilla/James Poyserプロデュースの「Pretty Girl」、僕の一番のお気に入り「Too Soon」、Ericと人気ソングライターRich Harrisonとの共作「Open Your Eyes」、DJ Spinnaプロデュースの「Couldn't Hear Her」あたりが僕のお気に入りです。

Eric Robersonのジェントル&メロウな魅力に溢れた好盤だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Music」
Eric Roberson/Thaddaeus Tribbett/Darnell Miller/Dana Soreyプロデュース。意外にもオープニングはラテン・フレイヴァー。ラテン×ネオソウルによる穏やかなムードが印象的です。

「Evening」
Eric Roberson/Thaddaeus Tribbett/Curtis Chambersプロデュース。Curtis Chambersのギターが全体をリードするネオソウル。
https://www.youtube.com/watch?v=4em0mOgp1l4

「Been In Love」
Supa Dave Westプロデュース。当時Little BrotherのPhonteのラップをフィーチャー。どうやらPhonteサイドからEricへ共演を持ちかけたようです。Steely Dan「Black Cow」 をサンプリングしたメロウ・トラックに乗って、2人が共演する様は、後の共同名義アルバム『Tigallerro』(2016年)への第一歩といった感じです。。
https://www.youtube.com/watch?v=IerdvL1gWBU

「Pen Just Cries Away」
Kev Brownプロデュース。さり気ないミディアム・グルーヴですが、Eric Robersonらしい味わいがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=RzUPpMOtkA4

「ILuvU2Much」
Eric Roberson/Thaddaeus Tribbett/Darnell Millerプロデュース。女性R&BシンガーAlgebra Blessettをフィーチャー。アコギとパーカッションが心地好いメロウ・サウンドにのって、EricとAlgebraが素敵なデュエットを聴かせてくれる僕好みのラブソング。
https://www.youtube.com/watch?v=i9_FwQkZ21w

「Only For You」
Eric Roberson/Thaddaeus Tribbett/Curt Chambersプロデュース。ネオソウルらしい歌い回しの哀愁メロウ。淡々としながらも哀愁感がジワジワ伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=c3dS2JcGvuY

「Pretty Girl」
J Dilla/James Poyserプロデュース。興味深い共演ですが、主役Ericの魅力を引き出すプロデュースに徹した至極のビューティフル・ソングに仕上がっています。J DillaとEricの共演もっと聴きたかったなぁ・・・
https://www.youtube.com/watch?v=rdBInuHu1oE

「Too Soon」
Mark Hamilton/Nicole Hamiltonプロデュース。僕の一番のお気に入り曲。聴いているだけで優しい気持ちになれるビューティフル・ソング。Ericのジェントルなヴォーカルがサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=qT5_EP0xb3U

「If I Had A Chance」
J. RawlsのThe Liquid Crystal ProjectのメンバーB Jazzによるプロデュース。Hip-Hop調メロウ・トラックとEricのヴォーカルとの相性はグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=aVbapd4MABg

「Open Your Eyes」
Eric Roberson/Curt Chambers/Dana Soreyプロデュース。Ericと人気ソングライターRich Harrisonとの共作。全盛期のStevie Wonderを思い起こすような美しい楽曲を、Ericが真摯に歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=P-99Q44MUw0

「Right Or Wrong」
Eric Roberson/Curt Chambersプロデュース。Caldera「Seraphim (Angel)」をサンプリングしたビューティフル・トラックが印象的なドリーミー・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=sMu9kmriM3w

「The Baby Song」
Eric Roberson/Thaddaeus Tribbett/Darnell Miller/Dana Soreyプロデュース。ジャズ・フィーリングの落ち着きのある仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=yLnQ_qt5By0

「Couldn't Hear Her」
『The Vault, Vol. 1.5』(2004年)収録曲のDJ Spinnaプロデュースによる再レコーディング。Pat Metheny Group「San Lorenzo」をサンプリングした味わい深い哀愁メロウに仕上がっています。Curt Chambersがギター・ソロで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=dNpI_aMy8TA

「The Smoke Signals - Man Who Had It All」
CDボーナス・トラック。The Smoke Signals(Eric Roberson/Curt Chambers)プロデュース。ボーナス・トラックらしく本編にはない雰囲気で楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=dDT7exyoYyc

Eric Robersonの他作品もチェックを!

『Esoteric...』(2004年)
Esoteric

『The Vault, Vol. 1.5』(2004年)
Presents: The Vault 1.5

『The Appetizer』(2005年)
Appetizer

『Music Fan First』(2009年)
Music Fan First

『Mister Nice Guy』(2011年)
Mr. Nice Guy

『The Box』(2014年)
The Box

Phonte & Eric Roberson『Tigallerro』(2016年)
TIGALLERRO (ティガレロ) (直輸入盤帯付国内仕様)

『Fire』(2017年)
Fire

『Wind』(2017年)
Wind

『Earth』(2017年)
Earth
posted by ez at 01:14| Comment(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月21日

Theon Cross『Fyah』

盟友Moses Boyd、Nubya Garcia参加!Theon Crossの初ソロ・アルバム☆Theon Cross『Fyah』
ファイア
発表年:2019年
ez的ジャンル:新世代南ロンドン・ジャズ
気分は... :デモーニッシュ!

今回は新世代南ロンドン・ジャズの新作から、チューバ奏者Theon Crossの初ソロ・アルバム『Fyah』です。

Theon Crossは南ロンドン出身。2015年にMoses Boyd(ds)、Nubya Garcia(ts)を迎えて、初リーダー作となるEP「Aspirations EP」をレコーディングに参加しています。また、ホーン・セクションをフィーチャーしたジャズ・ユニットBrass Maskにも参加しています。

その後、新世代南ロンドン・ジャズを牽引するジャズ・サックス奏者Shabaka Hutchings率いるSons Of Kemetに参加し、『Last Evenings On Earth』(2016年)、『Your Queen Is A Reptile』(2018年)といったアルバムのレコーディングに参加しています。さらに
Brass Mask

また、今年に入り、10人編成のUK新世代ジャズ・ユニットSEED Ensembleのメンバーとして、1stアルバム『Driftglass』のレコーディングに参加しています。

CDショップの今ジャズ新作コーナーでSons Of KemetのリーダーShabaka Hutchingsによる別ユニットThe Comet Is Comingの最新作『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』(2019年)と、Theon Crossの初ソロ・アルバムとなる本作『Fyah』の2枚が並んでおり、両者を試聴してみました。

The Comet Is Coming『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』(2019年)
Trust in the Lifeforce..

サイケデリックでエレクトロニカなThe Comet Is Comingと、生音のダイナミズムのあるTheon Crossの初ソロは対照的な2枚でした。単純に良し悪しを比較できませんが、直観的に今聴くべきは後者であると感じ、本作を購入しました。

本作『Fyah』Theon Cross(tuba)以外の核となるミュージシャンがMoses Boyd(ds)とNubya Garcia(ts)。特にMoses BoydはTheon Cross自身と共に共同プロデュースを務めています。

共に、新世代南ロンドン・ジャズを牽引する期待のミュージシャンですね。当ブログでもMoses BoydはMoses Boyd Exodus名義の『Displaced Diaspora』(2018年)、Nubya Garciaは彼女が参加したジャズ・ユニットMaisha『There Is A Place』(2018年)を紹介済みです。

その2人以外にUnited VibrationsWayne Frances(ts)、Artie Zaitz (el-g)、Tim Doyle(per)、Nathaniel Cross(tb)といったミュージシャンが参加しています。

Theon、Boyd、Nubyaの三者によるスリリングなアンサンブルが本作の最大の魅力です。特に、Theonのチューバがベースの役割を担い、Boydのドラムと共にダイナミックなグルーヴを生み出しており、チューバという楽器のさらなる可能性を引き出しています。

楽曲はすべてTheon Crossのオリジナルです。

新世代南ロンドン・ジャズの勢いを感じるエキサイティングな1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Activate」
Boydのダイナミックなドラミング、ベース的な役割を担うTheonのチューバ、さらにNubyaのテナー・サックスが一体となってパワフルな新世代ジャズをプレイします。3者の研ぎ澄まされた感性が素晴らしいケミストリーを起こしています。
https://www.youtube.com/watch?v=EaSFwZFiKOQ

「The Offerings」
ロンドンらしくアフロ・ジャズのエッセンスを感じるアンサンブルです。特にNubyaのテナー・サックスとTheonのチューバのコントラストが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=K3JvGeF_X0E

「Radiation」
BoydのドラムとTheonのチューバが織り成すJ Dilla的な人力Hip-Hopビートにのって、Nubyaのテナーが鮮やかに響きます。
https://www.youtube.com/watch?v=Lj7WNbuEIf4

「Letting Go」
どっしり構えたTheonのチューバという中核の周りを、Nubyaの艶やかなテナーが衛星のように飛び交います。チューバという楽器の持つパワーを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=Ik6hEGI_NzM

「Candace of Meroe」
クラブジャズ好きも歓喜するであろう、ギター、パーカッションも加わったアフロ・ビート調アッパー・チューン。ここでのテナー・サックスはNubyaではなく、Wayne Frances。こうしたアッパー・チューンでもベース・ライン的なTheonのチューバは実に魅力的です。
https://www.youtube.com/watch?v=agk8SHjNg0g

「Panda Village」
オープニングの「Activate」と同じく、Boyd、Theon、Nubyaのスリリングかつダイナミックなアンサンブルを満喫できます。また、エレクトロニカなアクセントもいい感じです。クラブジャズ/クラブミュージックも飲み込んだロンドン新世代ジャズ・サウンドに魅了されます。
https://www.youtube.com/watch?v=S0SY7curw6s

「CIYA」
Theon、Boyd、Nubyaの三者にギターも加わったメロウな演奏です。Theonのチューバが全体を調和させています。
https://www.youtube.com/watch?v=pm3GKZ_7ITg

「LDN's Burning」
ラストはアフロ・ジャズ的なアプローチで締め括ってくれます。Theon、Boyd、Nubyaの三者によるコズミックな音世界が展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=Dt7j8l-gBO4

Theon Crossが参加したSons Of KemetMoses BoydNubya Garcia関連の過去記事もチェックを!

Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile

Moses Boyd Exodus『Displaced Diaspora』(2018年)
DISPLACED DIASPORA

Maisha『There Is A Place』(2018年)
There Is A Place [解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤CD] (BRC585)
posted by ez at 00:03| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月20日

Luiz Eca/Bebeto/Helcio Milito『Tamba』

通称"ブラック・タンバ(黒タンバ)"☆Luiz Eca/Bebeto/Helcio Milito『Tamba』
タンバ(期間生産限定盤)
発表年:1974年
ez的ジャンル:ブラジリアン・クロスオーヴァー
気分は... :黒のアヴァンギャルド・・・

ブラジルの最高峰ジャズ・サンバ・トリオTamba TrioLuis Eca/Bebeto/Helcio Milito名義でリリースした『Tamba』(1974年)です。

これまで当ブログで紹介したTamba Trio、Tamba 4作品は以下の5枚。

 Tamba Trio『Tamba Trio』(1962年)
 Tamba Trio『Avanco』(1963年)
 Tamba 4『We And The Sea』(1967年)
 Tamba 4『Samba Blim』(1968年)
 Tamba Trio『Tamba Trio』(1975年)

本作『Tamba』(1974年)は、Luiz Eca(p、key、per、vo)、Bebeto(b、sax、fl、per、vo)、Helcio Milito(ds、vo)というオリジナル・メンバーで復活し、RCAで制作された作品です。

ファンはご存知の通り、そのジャケの色合いから本作『Tamba』(1974年)は"ブラック・タンバ(黒タンバ)"、同じRCAで制作された次作『Tamba Trio』(1975年)は"ブルー・タンバ(青タンバ)"の通称で親しまれています。

"ブルー・タンバ"がメロウな印象のアルバムに仕上がっているのに対し、Tamba TrioLuis Eca/Bebeto/Helcio Milito名義の本作た"ブラック・タンバ"は、ジャケ同様に前衛的な印象のアルバムに仕上がっています。

アルバムは大きく、本来のTamba Trioらしいジャズ・サンバと、本作ならではの前衛的なクロスオーヴァー・サウンドに分かれます。

前者であれば、Tom E Dito作の「Se E Questao De Adeus Ate Logo」
Ivan Linsのカヴァー「Nao Tem Perdao」
Eumir Deodato/Marcos Valle/Joao Donatoという豪華なソングライティング陣の「Pra Machucar Meu Coracao/Rosa Maria/Nao Tenho Lagrimas」がおススメです。

後者の前衛的クロスオーヴァーであれば、「Reflexos」「Mestre Bimba」「Quadros」がおススメです。

それ以外に、バイーア風のAntonio Carlos E Jocafiのカヴァー「Ossaim (Bamboxe)」、アフロ・サンバなTom E Ditoのカヴァー「Amanhanga」あたりも印象的です。

"ブラック・タンバ(黒タンバ)"ならではのTamba Trioワールドを満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Se E Questao De Adeus Ate Logo」
Tom E Dito作。オリジナルはMilton Banana『Milton Banana』(1974年)ヴァージョンです。清涼感のあるフルートが似合うメロウ・ジャズ・サンバがオープニング。ハードなエレクトリック・ギターが本作らしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=D6PHQSdCPSs

「Nao Tem Perdao」
Ronaldo Monteiro/Ivan Lins作。Ivan Linsのオリジナルはアルバム『Modo Livre』に収録されています。彼ららしい洗練されたセンスの哀愁サンバを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Y-KjwbLDxRo

「Reflexos」
Luiz Eca作。本作らしい前衛的なムードの漂うオリジナル。シンセを駆使したTamba Trio流のクロスオーヴァー・サウンドで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=tM65wafU9P0

「Gazela」
Arlette Neves/Bebeto作。Bebetoの味わいのある寂しげなヴォーカルが胸に染み入ります。
https://www.youtube.com/watch?v=3ORhv13YGJc

「Mestre Bimba」
Luiz Eca/Helcio Milito/Adalberto作。前衛モード全開の演奏です。不気味なスペイシー・シンセと共にパーカッシヴに疾走します。
https://www.youtube.com/watch?v=ohwVmIhuhXE

「Ossaim (Bamboxe)」
Antonio Carlos/Jocafi/Ildazio Tavares作。Antonio Carlos E Jocafiのオリジナルはアルバム『Cada Segundo』(1972年)に収録されています。ここではバイーア風のミステリアスな音世界を展開します。
https://www.youtube.com/watch?v=edT9COfhc3c

「Em Casa」
Luiz Eca/Carlos Vereza作。EcaのピアノとBebetoのフルートによるシンプルながらも味わいのある演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=-nbpMUG0gBs

「Pra Machucar Meu Coracao/Rosa Maria/Nao Tenho Lagrimas」
Ary Barroso作「Pra Machucar Meu Coracao」、Anival Silvia/Eden Silvia作「Rosa Maria」、Max Bulhoes/Milton de Oliveira作「Nao Tenho Lagrimas」という1930〜40年代サンバ・クラシック3曲のメドレー。メロウ・エレピの似合う抑えたトーンの穏やかな演奏です。

「Quadros」
Luiz Eca作。Bebetoの格好良いベースが牽引するクロスオーヴァー・チューン。本作らしい前衛的なシンセ・サウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=VxYfQWoYDGQ

「Nao Tem Nada Nao」
Eumir Deodato/Marcos Valle/Joao Donato作。少しラテン・フレイヴァーの効いたメロウ・グルーヴに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=4BiTWJU9Wrc

「O Homem」
Luiz Eca作。メロウ・エレピとサックスの織り成す哀愁メロウ・ワールドがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=9OTxHMDt4Hw

「Morada」
Joao Bosco/Aldir Blanc作。Ecaのエレピをバックに、Bebetoの味わいのある寂しげなヴォーカルが映える哀愁メロウ。
https://www.youtube.com/watch?v=VnuYPKPdTbM

「Amanhanga」
Tom E Dito作。Tom E Ditoのオリジナルはアルバム『Obrigado Corcovado』(1971年)に収録されています。ミステリアスなアフロ・サンバ調の仕上がり。

「Infinito」
Luiz Eca/Helcio Milito/Adalberto作。ラストは1から43までの数字を読み上げていくミステリアスな演奏で締め括ってくれます。

Tamba Trio、Tamba 4の過去記事もご参照ください。

Tamba Trio『Tamba Trio』(1962年)
デビュー

Tamba Trio『Avanco』(1963年)
アヴァンソ

Tamba 4『We And The Sea』(1967年)
二人と海

Tamba 4『Samba Blim』(1968年)
サンバ・ブリン(紙ジャケット仕様)

Tamba Trio『Tamba Trio』(1975年)
タンバ・トリオ(紙ジャケット仕様)
posted by ez at 02:17| Comment(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする