発表年:2019年
ez的ジャンル:L.A.ジャズ系エチオ・ジャズ
気分は... :エチオピア/東アフリカ探求の旅・・・
今回は新作ジャズ作品からDexter Story『Bahir』です。
Carlos Ninoを中心としたL.A.のミュージシャン集団Build An Arkや、Carlos NinoとのジョイントThe Life Force Trioでの活動でも知られるプロデューサー/コンポーザー/マルチ奏者/シンガーDexter Storyの紹介は、『Seasons』(2013年)、『Wondem』(2015年)に続き3回目となります。
キラー・チューン「Underway (Love Is...)」をはじめ、楽園モードのL.A.ジャズで高い支持を得た1stソロ・アルバム『Seasons』(2013年)。
それに対して、アフロ・ジャズ作品の再発で知られるUKのレーベルSoundwayからリリースされた2ndアルバム『Wondem』(2015年)は、エチオ・ジャズをはじめとする東アフリカのエッセンスが全面に打ち出された内容でファンを驚かせました。
エチオ・ジャズ/東アフリカ路線の背景には、トランぺッターTodd Simonが率いるL.A.エチオ・ジャズ・アンサンブルEthio Caliへの参加があります。Ethio CaliにはKamasi Washingtonも参加していました。
3rdアルバムとなる本作『Bahir』も前作『Wondem』と同じくSoundwayからのリリースであり、前作のエチオピア/東アフリカ路線をさらに推し進めた内容に仕上がっています。
プロデュースはDexter StoryとCarlos Nino。
Stones Throw期待のヴァイオリン奏者/シンガーSudan Archives、Zap MamaのMarie Daulne、L.A.の女性ネオソウル・シンガーJimetta Rose等がフィーチャリングされ、Miguel Atwood-Ferguson(strings)、Randal Fisher(ts、fl)、Alan Lightner(steel pan、per)、Josef Leimberg(tp)、Te'amir Sweeney(ds、per)等のミュージシャンが参加しています。
それ以外に多くのエチオピアのミュージシャンが起用され、本格的なエチオピア/東アフリカ色を強めています。
『Wondem』同様に、エチオ・ジャズ特有のクセのあるグルーヴがフィットするかどうかで好き/嫌いが分かれるかもしれません。しかしながら、『Wondem』以上にエチオ・ジャズを吸収しつつ、Dexterならではのクロスオーヴァー/ハイブリッドな音世界の創造に成功しており、『Wondem』で免疫ができている人には案外聴きやすいかもしれません。
新型エチオ・ジャズ・グルーヴをご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Techawit」
アルバムのプロローグ的な小曲。土着的なムードの中に美しさが漂います。
https://www.youtube.com/watch?v=bXI-9yDI8jI
「Bila」
US在住のエチオピアン・ミュージシャンKibrom Birhaneのヴォコーダーをフィーチャー。Zapp/Rogerがエチオ・ジャズしているみたいな面白さがあります。さり気ないですが、スティール・ドラムのアクセントもいい感じ。
https://www.youtube.com/watch?v=423jqC5MqUw
「Gold」
Sudan Archivesのヴァイオリン/ヴォーカルをフィーチャー。L.A.ネオソウル/R&B×エチオ・ジャズなクロスオーヴァーを楽しめます。意外にキャッチーなダンサブル・チューンです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZPbIHCYUrZo
「Ras」
US在住のエチオピアン・ミュージシャンHaile Supremeをフィーチャー。演歌調ヴォーカルも含めてエチオ・ジャズ特有の音世界が充満しています。
https://www.youtube.com/watch?v=dOT8MSd7k6s
「Mamdooh」
Miguel Atwood-Fergusonによるストリングスが印象的なインスト。アラビックなエッセンスも取り込んでいます。
https://www.youtube.com/watch?v=PvqEzYZVALE
「Buna Be Chow」
Jimetta Roseをフィーチャー。Storyの探求心が生んだエチオ・ジャズを飛び越えたハイブリッド・アフロ・ジャズ。こういうの好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=qQaEDBOKjXA
「Electric Gurage」
エチオピアのGurage民族のダンス音楽をエレクリック調に仕上げたのでこのタイトルになったそうです。レトロなダンサブル感が一蹴回って新しい気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=hjin84yMknw
「Jijiga Jijiya」
Marie Daulne(Zap Mama)とKibrom Birhaneをフィーチャー。これは(エチオピアに隣接する)ソマリアのリズムを使っているのだとか。東アフリカ調のエレクトリック・ソウルといった雰囲気もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=fFBETngQnBI
「Chemin De Fer」
エチオ・ジャズ・ファンクとでも呼びたくなるインスト・チューン。覚醒的なオルガンの響きもいい感じ。
https://www.youtube.com/watch?v=4amN6E-aAZI
「Desta's Groove」
次曲「Shuruba Song」のPart1的な1分半強のインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=Dh72HUFouvI
「Shuruba Song」
エチオピアの伝説的な女性シンガーHamelmal Abateをフィーチャー。ここではHamelmal Abateの素晴らしい歌声がメインであり、その分、バックのサウンドは控えめになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=4XJs1900Yv4
「Bahir」
エチオピアのエレクトリック・ミュージシャンEndeguena Muluをフィーチャー。エチオピアのエレクトリック・ミュージックとL.A.産エチオ・ジャズのケミストリーを楽しめる1曲に仕上がっています。Randal Fisherのテナー・サックスもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=ICcz77eoslI
「Abebaye」
本編のラストは再びMarie Daulne(Zap Mama)をフィーチャー。エチオ・ジャズというよりアイランド・モードのワールド・ミュージックといった雰囲気です。癒されます!
https://www.youtube.com/watch?v=h9oxap7Yp4o
「Wejene Aola」
国内盤CDボーナス・トラック。Kamasi Washingtonをフィーチャーし、Ethio CaliのリーダーTodd Simonも参加しています。本編とは異なる雰囲気のフューチャリスティックなエチオ・ジャズを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=JoeP8fnlrq4
ご興味がある方はDexter Storyの過去記事やThe Life Force Trioの作品もチェックを!
『Seasons』(2013年)
『Wondem』(2015年)
Dwight Trible & The Life Force Trio『Love Is the Answer』(2005年)
The Life Force Trio『Ima (Living Room Special Japanese Edition) 』(2006年)