発表年:1988年
ez的ジャンル:N.Y.ニューウェイヴ/オルタナティヴ
気分は... :パラダイム・シフト!
N.Y.ニューウェイヴを代表するグループTalking Headsのラスト・アルバム『Naked』(1988年)です。
David Byrne、Jerry Harrison、Tina Weymouth、Chris Frantzという4人組Talking Headsについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の6枚(Tom Tom Clubを含む)。
『Talking Heads: 77』(1977年)
『More Songs About Buildings And Food』(1978年)
『Fear Of Music』(1979年)
『Remain in Light』(1980年)
『True Stories』(1986年)
Tom Tom Club『Tom Tom Club』(1981年)
デビュー作『Talking Heads: 77』(1977年)以来、N.Y.ニューウェイヴの最重要バンドとして音楽シーンに君臨したTalking Headsですが、本作『Naked』(1988年)は結果的にグループのラスト・アルバムとなりました。
本作の翌年、David Byrneはラテン色を全面に打ち出した初ソロ・アルバム『Rei Momo』をリリースしています。
Talking Headsといえば、『Remain in Light』(1980年)を頂点とした初期作品のインパクトが強く、それらとの比較で後期作品になればなるほど評価はビミョーになってきます。その意味で、本作『Naked』(1988年)も今日酷評されることも少なくありません。
それでも個人的にはリアルタイムで頻繁に聴いたアルバムであり、今でも何となく愛着のある1枚です。
『Naked』は、アフリカ音楽へのアプローチが目立つ1枚です。
ただし、衝撃作『Remain in Light』(1980年)で聴かれたようなアフロビート/アフロ・ファンクではなく、リンガラやハイライフなどを取り入れたものであり、当時流行しつつあったワールド・ミュージックのトレンドにも合致したものです。
こうしたグループの狙いは、ワールド・ミュージック・ブームの中心地でパリでレコーディングを行い、アフリカ系ミュージシャンをはじめ、多様なミュージシャンとのセッションを繰り返した制作過程からも窺えます。
アフリカ音楽へアプローチしたといっても、それを前面に目立たせるばかりではなく、ラテン、アメリカン・ルーツ・ミュージックなどと融合させるハイブリッド感覚や、Talking Headsならではのオルタナ感覚を先鋭的センスも存分に楽しめます。
プロデュースは当時超売れっ子であったUKのプロデューサーSteve Lillywhite。
David Byrne(vo、g、key、p)、Jerry Harrison(g、p、key、vo)Tina Weymouth(b、g、key、vo)、Chris Frantz(ds、per、key)の4人以外のミュージシャンとして、有名どころではUKの人気バンドThe Smithsの中心メンバーであったJohnny Marr(g)、ワールド・ミュージックの注目アーティストであったMory Kante(kora)、元Tower of PowerのメンバーLenny Pickett(sax)、Steve Lillywhiteがプロデュースを手掛けていたThe PoguesのメンバーJames Fearnley(accordion)、Steve Lillywhiteの奥方でもあったUK女性シンガーKirsty MacColl (vo)が参加しています。
アルバムはUSアルバム・チャート第19位、UKアルバム・チャート第3位となっています。
他のTalking Heads作品と同じくSireからのリリースです。
楽曲はすべてメンバーのオリジナルです。
1つの時代の終わりと、ワールド・ミュージック・ブームの到来を予感させる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Blind」
アルバムからの1stシングル。Talking Headsらしい曲調ですが、ラテン・タッチなピアノ、トーキング・ドラムのアフリカン・リズムなどワールド・ミュージック的サウンドで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=52A6p8IvSkU
「Mr. Jones」
「Ye ke ye ke」のヒットで注目を浴びていたギニア人アーティストMory Kanteのコラをフィーチャーした1曲。こう聞けばアフリカ色の強い演奏をイメージするかもしれませんが、全体的にはラテン色が強く、David Byrneの1stソロ『Rei Momo』を予感させる仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=BxRnYhoZDSw
「Totally Nude」
リンガラへアプローチしたほんわかムードの演奏ですが、Talking Heads作品として聴いているとテックスメックス風にも聴こえてくるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=LCjK-lVHXXs
「Ruby Dear」
ニューウェイヴ×ワールド・ミュージックのハイブリッド感が魅力の演奏です。Steve LillywhiteプロデュースっぽいUKロックの香りもします。
https://www.youtube.com/watch?v=33z58nGSpB8
「(Nothing But) Flowers」
アルバムからの2ndシングル。本作を象徴するアフリカン・テイストのワールド・ミュージック的な1曲。開放的なのに何処となく物悲しい雰囲気も漂わせるのがTalking Headsらしいセンスですね。個人的にもアルバムで一番のお気に入り。
https://www.youtube.com/watch?v=2twY8YQYDBE
「The Democratic Circus」
Eric Weissbergが弾くドブロの音色が印象的なアメリカン・ルーツ・ミュージックですが、一筋縄ではいかないのがTalking Headsです。
https://www.youtube.com/watch?v=S1_Ys6UchLo
「The Facts Of Life」
Talking Headsらしいシニカルな物悲しさが漂うダーク・トーンの哀愁チューン。ワールド・ミュージック色は影を潜めているように感じますが、Mory Kanteのコラなどが隠し味で効いています。
https://www.youtube.com/watch?v=FRdzLlqpltQ
「Mommy Daddy You And I」
レゲエ×ワールド・ミュージックといったハイブリッド感が印象的な1曲。The PoguesのJames Fearnleyのアコーディオンがアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zwTeFMrJ8_Q
「Big Daddy」
アメリカン・ルーツ・ミュージックとラテン・ミュージックをオルタナ・ロックを介して融合させたようなTalking Headsならではのセンスに満ちた1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=7swUu10Rb9M
「Bill」
CDのみに収録されている楽曲。淡々とした哀愁チューン。哀愁がジワジワ沁み込んできます。
https://www.youtube.com/watch?v=PWn_y_DJJZU
「Cool Water」
ラストはJohnny Marrの幽玄のようなギターが揺らめく哀愁チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=kJU4WfHYGiM
Talking Headsの過去記事もご参照下さい。
『Talking Heads: 77』(1977年)
『More Songs About Buildings And Food』(1978年)
『Fear Of Music』(1979年)
『Remain in Light』(1980年)
『True Stories』(1986年)
Tom Tom Club『Tom Tom Club』(1981年)