2020年02月07日

Santana『Welcome』

新メンバーによるスピリチュアルな1枚☆Santana『Welcome』
ウェルカム
発表年:1973年
ez的ジャンル:スピリチュアル系ジャズ/フュージョン
気分は... :物質、精神の向こうに霊性がある・・・

ラテン・ロックの雄として人気を博したSantanaが新機軸を推し進めた『Welcome』(1973年)です。

Carlos Santana率いるSantanaに関して、これまで当ブログで紹介したのは以下の4枚。

 『Santana』(1969年)
 『Santana III』(1971年)
 『Borboletta』(1974年)
 『Festival』(1976年)

さらにCarlos SantanaMahavishnu OrchestraJohn McLaughlinの共演アルバム『Love Devotion Surrender』(1973年)も紹介済みです。

前作『Caravanserai』(1972年)でラテン・ロック・バンドからの変貌を遂げ、スピリチュアルな方向性を示したSantanaですが、音楽性の違いからGregg Rolie(key)、Neal Schon(g)といった主要メンバーが脱退してしまいます(2人はJourneyを結成)。

そのため、Tom Coster(key)、Richard Kermode(key)、Leon Thomas(vo)といった新メンバーを迎えてレコーディングされたアルバムが本作『Welcome』(1973年)です。

実際には『Caravanserai』(1972年)と『Welcome』(1973年)の間には、前述のCarlos SantanaJohn McLaughlinの共演アルバム『Love Devotion Surrender』(1973年)があります。

『Love Devotion Surrender』は、東洋思想に傾倒した2人が音楽を通して、自己の内面と向き合ったアルバムであり、その象徴としてJohn Coltraneの名曲を2曲カヴァーしています。

本作『Welcome』にも『Love Devotion Surrender』の影響が色濃く反映されています。

タイトル曲はJohn Coltraneのカヴァーですし、John McLaughlin(g)やJohn Coltraneの未亡人Alice Coltrane(p、org)がレコーディングに参加しています。

アルバム全体としてはスピリチュアルなジャズ/フュージョン作品に仕上がっています。ラテン、ブラジル、アフロなエッセンスを取り入れた演奏もありますが、ラテン・ロックではなく、あくまでジャズの流れでそれらを消化しています。

プロデュースはCarlos SantanaMike ShrieveTom Coster

本作におけるバンド・メンバーはCarlos Santana(g、b、kalimba、per、vo)、Tom Coster(org、p、el-p、marimba、per)、Richard Kermode(org、p、el-p、marimba、per)、Douglas Rauch(b)、Michael Shrieve(ds)、Jose "Chepito" Areas(per、congas、timbales)、Armando Peraza(per、congas、bongos、cabasa)、Leon Thomas(vo、whistling)。

やはり、レア・グルーヴ方面でも人気の男性ジャズ・シンガーLeon Thomasの参加が目を引きます。

また、John McLaughlinAlice Coltrane以外に、Wendy Haas(vo)、Flora Purim(vo)、Joe Farrell(fl)、Mel Martin(fl)、Douglas Rodriguez(g)、Tony Smith(ds)、Jules Broussard(ss)、Greg Adams(strings arr)がゲスト参加しています。

酷評されることも多いアルバムですが、スピリチュアル・ジャズもそれなりに好きな僕にはフィットする1枚です。

John Coltraneのカヴァーである美しく崇高なタイトル曲「Welcome」Leon ThomasとWendy Haasのヴォーカルが映えるスピリチュアル&ソウルフル&グルーヴィーな「Love, Devotion & Surrender」、トライバルな「Samba de Sausalito」「Mother Africa」Leon Thomasの個性的ヴォーカルを楽しめる「When I Look into Your Eyes」Flora Purimをフィーチャーしたブラジリアン・ジャズ調の「Yours Is the Light」あたりが僕のおススメです。

Carlos Santanaのギターを存分に満喫できるのは「Flame-Sky」くらいですが、それでも随所に聴き所のある1枚だと思います。

ラテン・ロックのイメージは捨てて、スピリチュアルなThe New Santana Bandを楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Going Home」
お馴染みドヴォルザーク「家路」をSantanaとAlice Coltraneがアレンジしたオープニング。スピリチュアル&コズミックな音の"新世界"を聴かせてくれます。The New Santana Bandの幕開けがCarlos Santanaのギターなしという点も興味深いです。
https://www.youtube.com/watch?v=Ko36L5hfiFU

「Love, Devotion & Surrender」
Carlos Santana/Richard Kermode作。アルバム『Love Devotion Surrender』のタイトルをそのまま冠した曲。Leon ThomasとWendy Haasのヴォーカルが映えるスピリチュアル&ソウルフル&グルーヴィーな僕好みの1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=qp3jDl2t1kw

「Samba de Sausalito」
Jose "Chepito" Areas作。アフロ・サンバ調のトライバルな演奏が印象的なインスト。作者Jose "Chepito" Areasらが叩き出すトライバル・リズムに乗った新メンバーTom Costerのエレピ、Richard Kermodeのハモンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=sRtHt-CSrwQ

「When I Look into Your Eyes」
Michael Shrieve/Tom Coster作。Leon Thomasの個性的なコーラスと甘美なリードのコントラストが印象的なメロウ&ソウルフルなフュージョン・ソウル。Joe Farrellのフルート・ソロも絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=jrtY2Yk6Oss

「Yours Is the Light」
Michael Shrieve/Richard Kermode作。Flora Purimのヴォーカルをフィーチャーしたブラジリアン・ジャズ調の仕上がり。ここでようやくCarlos Santanaが彼らしいギター・ソロを聴かせてくれます。Flora Purim好きの人であれば気に入る1曲なのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=_3DnCzrfLhI

「Mother Africa」
Herbie Mannの楽曲をベースにCarlos Santana/Tom Costerが共作。カリンバ、マリンバ、コンガらによるアフリカン・サウンドにティンバレスによるラテンのアクセントが加わるトライバル・フュージョン。Jules Broussardのサックス・ソロも盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=3yeb3TSoLaM

「Light of Life」
Carlos Santana/Richard Kermode/Tom Coster作。美しいストリングス入りのスピリチュアル・ジャズ。Leon Thomasのヴォーカルはこういう曲にもフィットします。Carlos Santanaのギターも控えめですが、いい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=Bq-eny1vesI

「Flame-Sky」
Doug Rauch/Carlos Santana/John McLaughlin作。Carlos SantanaとJohn McLaughlinのギター共演を満喫する1曲。『Love Devotion Surrender』での内面的な音世界の探求を再現しています。
https://www.youtube.com/watch?v=7BcNy3oe1QU

「Welcome」
ラストはJohn Coltraneのカヴァーとなるタイトル曲。オリジナルは『Kulu Se Mama』(1965年)に収録されています。ひたすら美しく崇高なスピリチュアル・サウンドで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=CVvSE6hgPh0

Santana関連の過去記事もご参照下さい。

『Santana』(1969年)
Santana

『Santana III』(1971年)
Santana III

Carlos Santana & John McLaughlin『Love Devotion Surrender』(1973年)
魂の兄弟たち(期間生産限定盤)

『Borboletta』(1974年)
不死蝶(期間生産限定盤)

『Festival』(1976年)
Festival
posted by ez at 02:05| Comment(2) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする