発表年:2020年
ez的ジャンル:新世代男性ジャズ・シンガー
気分は... :2020年カテゴリー新設
遂に当ブログで10年ぶりの新カテゴリー"2020年代"を設けました。
まさか2020年代カテゴリーを作るまでブログを続けているとは思っていなかったので感慨深いものがあります。
その2020年代カテゴリーの1枚目となる作品は、新世代ジャズを代表する男性ジャズ・シンガーJose Jamesの最新作『No Beginning No End 2』です。
1978年ミネアポリス生まれの男性ジャズ・シンガーJose Jamesについて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の7枚。
『The Dreamer』(2007年)
『Blackmagic』(2010年)
『No Beginning No End』(2013年)
『While You Were Sleeping』(2014年)
『Yesterday I Had The Blues』(2015年)
『Love In A Time Of Madness』(2017年)
『Lean On Me』(2018年)
本作『No Beginning No End 2』は、Jose Jamesの人気を決定づけたBlue Note移籍第一弾アルバム『No Beginning No End』(2013年)の続編アルバムとなります。
ジャズとソウルを融合させた『No Beginning No End』の音世界は、D'Angelo『Voodoo』(2000年)を聴いたときのようなインパクトを僕に与えました。
『No Beginning No End』(2013年)
その後Blue Noteを代表する男性ジャズ・シンガーとして4枚のリーダー作をリリースしてきたJoseですが、本作はそのBlue Noteを放て、新たに立ち上げた自身のレーベルRainbow Blondeからのリリースとなります。
Joseと並ぶBlue Noteの看板アーティストだったRobert Glasperも昨年Blue Noteを離れ、ジャズ界の大きさサイクルに1つの区切りがついた印象を受けますね。
このJoseの心機一転に影響を与えているのはイスラエルをルーツに持つ女性シンガー・ソングライターTaali(Talia Billig)。
彼女は過去にもJose James作品に参加していましたが、先に述べたJoseが立ち上げたレーベルRainbow Blondeの第一弾アーティストとして初ソロ・アルバムTaali『I Am Here』を2019年3月にリリースします。さらに2019年5月にJoseとTaaliは結婚します。
Taali『I Am Here』(2019年)
このタイミングで新レーベルを立ち上げ、『No Beginning No End』のパート2を制作したのは、Joseにとって大きな意味を持つものなのでしょうね。
その最新作『No Beginning No End 2』は、パート1と同じくジャズの枠に囚われないJose Jamesらしい1枚に仕上がっています。
プロデュースはJose JamesとBrian Bender。
公私のパートナーとなったTaali(Talia Billig)(vo)をはじめ、当ブログでお馴染みの女性ネオソウル・シンガーLedisi(vo)、現在進行形ジャズを牽引するジャズ・トランぺッターChristian Scott aTunde Adjuah(tp)、ワシントンD.C.出身の新進女性シンガーCecily(vo)、アングラHip-HopユニットEmanonのメンバーから人気男性R&Bシンガーへと飛躍したAloe Blaccブルックリンを拠点とする男性シンガーJ. Hoard(Jonathan Hoard)(vo)、独自のヴォーカルワークで人気のUK黒人女性シンガー・ソングライターLaura Mvula(vo)、現在進行形ジャズを代表する黒人ジャズ・ピアニストKris Bowers(key)、既に6枚のリーダー・アルバムをリリースしている黒人女性ジャズ・シンガーLizz Wright(vo)、ブルース/ロック系作品に参加してきた黒人ギタリストMarcus Machado(g)、モロッコ生まれ、パリ育ちの女性シンガー・ソングライターHindi Zahra(vo)、スイス出身のフランス人ジャズ・トランぺッターErik Truffaz(tp)といった多彩なアーティストがフィーチャリングされています。
それ以外の主要レコーディング・メンバーはBrett Williams(key)、Takeshi Ohbayashi(大林武司)(key)、Alan Hampton(g)、Brian Bender(g)、Ben Williams(b)、Jamire Williams(ds)、Justin Tyson(ds)、Alberto Lopez (Quetzal)(per)。
Alan Hampton、Ben Williams、Jamire Williams、Justin TysonはJazz The New Chapter好きの人であれば、お馴染みのミュージシャンですね。
アルバム全体はハッピー&ポジティヴな雰囲気に包まれています。JoseとTaaliの愛を感じる曲が多いのも印象的です。
いわゆるオーセンティックなジャズは1曲のみで、それ以外はR&B/ソウル寄りの楽曲が多いですね。
"ジャズ"という形容での説明不要なアーティストであることを改めて示してくれたJose Jamesの現在地をそのままパッケージングした1枚だと思います。
パート1に引けを取らない名盤だと思います。
全曲紹介しときやす。
「I Need Your Love」
LedisiとChristian Scott aTunde Adjuahをフィーチャー。JoseとLedisiの共作です。
Jose自身の味のあるアコギをバックに、Joseのファルセット・ヴォーカルとLedisiの艶やかなヴォーカルが映える哀愁ネオソウルに仕上がっています。Christian Scott aTunde Adjuahがオトナの哀愁ムードを演出します。
https://www.youtube.com/watch?v=ux5efB3tpvQ
「You Know What it Do」
Jose James/Taali/Scott Jacoby作。札幌出身の女性シンガー・ソングライターRihwa(リファ)による♪いち、に♪いち、に、さん、し♪という日本語カウントで始まる軽快なロックンロール。実にリラックスした楽しげな演奏です。
「Feels So Good」
Cecilyをフィーチャー。Jose James/Taali/Scott Jacoby作。Marcus Machadoの軽快なギター・カッティングが牽引する爽快メロウ・ダンサー。Minnie Ripertonを思わせるCecilyの透明感のある天使の歌声とサウンドがよくマッチしています。
「Turn Me Up」
Aloe Blaccをフィーチャー。Jose、Aloe Blacc、Taali、Scott Jacoby、Kris Bowers、Ben Williams、Jamire WilliamsさらにはPino Palladinoとの共作。開放的なファンキー・グルーヴ。演奏全体に漲るポジティヴ・モードがJoseの現在そのもののようです。
https://www.youtube.com/watch?v=hJfz0ypikxg
「Just The Way You Are」
本作唯一のカヴァーはBilly Joelの名曲「素顔のままで」。オリジナルは『The Stranger』(1977年)収録。意外なセレクトにも思えますが、愛するTaaliへの思いを込めたカヴァーと考えれば至極当然のカヴァー・セレクトといえるでしょう。JoseのTaaliへの素直な思いを込めたヴォーカルが心に沁みてきます。Marcus Machadoのギター・ソロもグッド!
永遠の名曲「Just The Way You Are」に関して、当ブログではMeta Roos & Nippe Sylwens Band、Till Bronner、Dardanelles、Genaiのカヴァーも紹介済みです。
「Baby Don't Cry」
J. Hoardをフィーチャー。Jose James/Taali/Scott Jacoby作。これはMarvin Gayeを意識した雰囲気のセクシー&メロウなソウル・グルーヴはソウル/R&Bファンならば気に入るはず。Brett Williamsのメロウ・エレピも印象的です。
「Nobody Knows My Name」
Laura MvulaとKris Bowersをフィーチャー。曲もJoseとKris Bowersの共作。アルバムでは唯一のオーセンティックなジャズ演奏を聴くことができます。Bowersを中心としたピアノ・トリオのバッキングのみならず、ア・カペラ・パートも含めてJoseとMvulaが素晴らしいヴォーカルを披露してくれます。
「Take Me Home」
Lizz Wrightをフィーチャー。Jose James作。ブルージーなソウル・チューンをJoseとLizzがデュエットします。現代ジャズらしいアーシー・サウンドがいい味わいです。
「I Found a Love」
愛妻Taaliをフィーチャー。曲も2人の共作です。Brett Williamsのウーリッツァー・ピアノをバックにJoseとTaaliが二人が見つけた愛を歌い上げる感動バラード。Stevie Wonderの名バラードに通じる感動があります。
「Saint James」
この曲もJoseとTaaliの共作。シンガー・ソングライター的な雰囲気のアコースティック・バラード。優しさと寂しさが同居する本作には珍しい哀愁チューンです。
「Miss Me When I’m Gone」
Marcus Machadoのギターをフィーチャー。Jose James作。Machadoのギターが映える味わい深いブルージー・バラード。Alan Hamptonのアコギもさり気ないですがいい味出しています。
「Oracle (高尾山)」
Hindi ZahraのヴォーカルとErik Truffazのトランペットをフィーチャー。Jose James/Taali/Scott Jacoby作。実際に高尾山に登り、パワースポットから何を感じた体験が詞になっています。そのせいもあってスピリチャルな雰囲気を帯びた深淵バラードに仕上がっています。
「You Know What It Do (Scott Jacoby Version)」
国内盤ボーナス・トラック。「You Know What It Do」の別ヴァージョンです。こちらのカウントは♪One,two♪One,two,three,four♪です(笑)。
Jose Jamesの他作品もチェックを!
『The Dreamer』(2007年)
『Blackmagic』(2010年)
Jose James & Jef Neve『For All We Know』(2010年)
『No Beginning No End』(2013年)
『While You Were Sleeping』(2014年)
『Yesterday I Had The Blues』(2015年)
『Love In A Time Of Madness』(2017年)
『Lean On Me』(2018年)